琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

補助金出すなら石油掘れ

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 黙っていていいことと悪いことがある。石油の掘削だ。中国が日本の排他的経済水域EEZ)内で海底の堆積物を勝手に試掘した。日本の領土にのうのうと入ってきて石油を掘るなど放置できることではない。

 しかし、軍事行動を起こせというのではない。日本も掘るべきだなのだ。石油があることが分かっているのに放っておくことは怠慢以外の何ものでもない。日本政府は即刻、石油を掘るべきだ。

 9月9日、政府はガソリンなど燃料価格の高騰を抑えるために石油元売りに配る補助金を今のまま維持して12月まで延長すると決めた。ガソリンの全国平均価格が1リットル168円程度になるように石油元売りに補助金を配る。本来なら11月で補助上限を縮小する方針だったが慎重論が多く一転して見送る。庶民の生活はこれで少し楽になるが、一方で国の負担は月3000億円超。ますます国の借金は増える。

 ばかばかしい。国が石油を掘ればいいのだ。国が掘ってくればいくらでも国内には製油所がある。閉鎖した製油所も国が買い上げ、石油製品に仕上げて国内で消費し余った分は輸出すればいい。補助金など出す必要はない。輸出で稼いだお国の借金を返せばいい。円安もおさまる。

 中国が今回、掘削した沖縄県石垣島北方のあたりには石油があることが国際機関の調査ですでに明かになっている。だから中国も掘ったのだ。日本が開発を放擲し続けるなら、中国の侵食は続く。

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 今日本では台湾有事の議論が沸騰している。政府は南西諸島に火薬庫を増設し台湾有事への備えを厚くする検討に入るなど紛争を前提とした動きに入りつつある。中国軍が軍事演習で台湾周辺に弾道ミサイルを発射し、数発が日本の排他的経済水域EEZ)に着弾したことがきっかけだ。こうしたことには国はすぐに反応する。お金も使う。

 だが、本気にならなければならないのは石油だ。補助金で3000億円を出すくらいなら、その10分の1でも石油開発に回すべきだ。

まず掘ってみろ。答えはそこにある。(了)

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中国が日本攻撃を想定して軍事訓練? ~乗ってはいけない陽動作戦~

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 中国が新疆ウイグル自治区の砂漠地帯に設置していた巨大構造物を破壊する実験に成功した。これだけなら、よくある軍事訓練かもしれない。しかし、この構造物が日本の航空自衛隊早期警戒管制機(AWACS)にそっくりだとしたら穏やかではない。中国は日本を対象としたミサイル攻撃の具体的な戦略を練り始めている。これはその示威行為だ。それは間違いない。だとすると日本のとるべき道は何か。


●「ほら、写せ」
 実験が実施されたのは7月の上旬。人民解放軍の管理区域内での実験で、米軍艦と同型状の物体も複数見つかっている。日本の自衛隊機形の構造物のまわりに中国の戦闘機を模した構造物を配置し、日本の自衛隊機形の構造物だけを破壊した。つまり中国のミサイルが自国の戦闘機を避けて日本のAWACSだけを狙い撃ちすることができるのかを確認したとみられるのだ。実験は見事に成功、写真にはAWACSに似た形の焦げ跡が地面にくっきりと浮かびあがった。
 この実験、米国の衛星運用会社の映像に鮮明に写し出されている。まるで「ほら、写せよ」と言わんばかりである。そう。写されることを完全に想定している。ここで日本がどう出るかをまるで計っているようだ。
 では日本はどうでたか。案の定である。日本政府は2023年度の予算案で防衛費に上限を設けない方針を決めた。防衛費だけは他の予算とは別だてとする計画で7月中にも閣議了解をとる見通しだ。「中国がいよいよ日本を攻めてくる。日本も備えを」というわけだ。

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●中国と米国、連携プレー
 しかし、どうだろう。これは正しい選択なのだろうか。もちろん国守りは必要だ。丸腰でいいはずはない。領土も人民も守らねばならない。必要な武装は進めてもらいたいが、日本は戦争を放棄している国であることを重々、肝に銘じてもらいたい。守りを固めるということと戦争をするということは全く別次元の問題なのだ。
 そもそもよく見抜いて欲しい。この中国の日本を標的とした軍事訓練の様子を撮影したのは米国である。米国の衛星が世界中を飛び回っているのは当たり前。その衛星に日本攻撃を想定した画を撮らせる。完全に連携プレー。中国と米国が共同で日本を戦争に追い込んでいった第2次世界大戦と同様の構図だ。
 戦争をしたい勢力はどこにでもいる。いつもうごめいている。それに踊らされてはいけない。ウクライナ問題を引き合いに出すまでもなく世界は動乱。だからこそ冷静な目で世界を見つめ、精緻に状況を見極めていく必要がある。集団的自衛権を理由に「米国を守る」などとして中国との戦争に引きずりこまれてはならない。中国と米国は組んでいるのだから。日本は賢くなければならない。(了)

停戦せよ 市民の命、いつからゼレンスキーのものになった

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 市民の命はいつから為政者のものになったのか。ウクライナのゼレンスキー大統領は南東部の港湾都市マリウポリを巡るロシアとの攻防戦で「最後まで戦う」と宣言した。徹底抗戦の姿勢崩さない大統領の声明に背中を押される形で人々は次々と戦場に駆り立てられていくが、いったいこの戦いに何の意味があるのか。すでに勝負はついている。ゼレンスキーが選択すべきは市民の命を盾にした消耗戦ではなく、停戦だ。


 問題のマリウポリは人口約40万人。ロシア軍は3月初めから包囲を開始、砲撃を加えて4月16日には市街地を「完全に解放した」。製鉄所には民間人1000人と負傷兵500人がいるとみられるが、製鉄所にあった2~3週間分の食料は、既に包囲が始まってから約8週間が経過していることから考えると、食料は尽きかけている。製鉄所内の人々の命は日々、刻々と削られている。
 ウクライナはもう戦いをやめる時だ。十分に戦った。マリウポリが「全滅」すればロシアとの停戦協議を打ち切るとウクライナは主張しているが、「全滅」などさせてはならない。1国のトップが、軽々にそんな絶望的な状況を提示すべきではない。最悪の事態に至らないうちに、停戦すればいい。それが大統領の仕事ではないか。


 日本ですら太平洋戦争時、本土決戦は回避した。国民は守られた。ゼレンスキーはいったい何を守ろうとしているのか。ロシアはウクライナの東部と南部を完全に制圧することを目標として表明しており、ウクライナが停戦を申し出なければ、ロシアが善か悪は別として戦いは続く。ならばいったん戦争は打ち切るべきだ。いかにNATOが後ろ盾だとしてもNATOがこの戦争に全面的に入ってくることがなければ、ウクライナがロシアに勝利することはない。時間が経過する分だけ、市民の犠牲が増える。


 開戦以降、プーチンの精神状態が問題視されてきた。しかし、ゼレンスキーはどうだ。正常と言えるのか。自国の都市の全滅が目前に迫るなかで、かたくなに戦いつづける。それはやはり異常だ。
 盾は市民。か弱き子供、女性、老人も……。理屈も正義もプライドも捨てよ。まずは停戦、国民の命が先なのだ。(了)

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暗礁に乗り上げたロシアとの平和条約交渉 欧米追従の大きすぎる代償  

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 不良仲間に入れてもらいたくて、弱い者いじめに一生懸命に加担している――。今の日本の姿はそんなふうに映る。岸田文雄首相は4月8日、「国際社会と歩調を合わせる」としてロシアに対する追加の制裁措置を発表したが、日本がこれに加わったからとて大勢に影響がないものばかり。ところが、日本が失う国益は計り知れない。大国ぶっているうちに日本の国益はどんどん失われていく。

 まずは岸田首相が示した追加制裁を中身を見てみよう。柱は5つ。①ロシアからの石炭の輸入の禁止②機械類や一部の木材、ウォッカなどの輸入禁止③ロシアへの新規投資の禁止④ロシア最大の金融機関「ズベルバンク」や国内4位で民間最大の金融機関である「アルファバンク」の資産凍結⑤プーチン大統領らに行っている資産凍結の対象にロシア軍関係者や議員など400人近くと、国有企業を含むおよそ20の軍事関連団体を新たに加える。

 この5つのなかで日本と関係が深いものはどれか。ゼロだ。例えば「ズベルバンク」「アルファバンク」。日常の生活の中で名前を聞いたことがある日本人はほとんどいないだろう。欧米諸国が実施している追加制裁にわざわざ日本が無理に加わっても、ロシアへの制裁の効果は上がらない。にもかかわらず勢い込んで制裁に加わり、その見返りとして日本が払った代償はあまりにも大きい。

 その代償とは何か。「平和条約交渉の打ち切り」だ。ロシア外務省は3月21日、欧米に無節操に同調していく日本に対し「日本との平和条約締結に関する交渉を継続するつもりはない」との声明を発表していたが、今回の追加的経済制裁でロシアとの亀裂は決定的なものとなった。ウクライナ戦争終結後、ロシアとの関係を修復するには膨大な時間と資金が必要になるだろう。

 このことの意味は大きい。日本が世界で飛躍していくためにはロシアを中核とする東側諸国との関係強化がどうしても必要になる。窓口となるロシアとの平和条約は絶対的に結ばざるをえない。

 そのロシアとの平和条約の締結は領土問題の解決を前提としていた。北方領土問題の解決だが、ロシアもそのことは理解していて領土問題を議論すること自体は完全には否定していなかった。

 ただその際、日本に返還した北方領土に「米軍の基地を置かない」ということを保証してほしいというのがロシアの要求だった。これに日本が応えられるのか、応えられないのか。日本の力量が問われていたが、今回のウクライナ騒動でただ欧米に追従するだけの日本の態度をみて「これでは無理だ」との判断をロシアは下した。同盟関係にある米国が「基地を置く」と要求してきた際、これを突っぱねられない、と見たのだった。

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 憲法9条を持つ日本の立場は絶対的な中立でなければならない。つまり全方位外交だ。これが日本の生きる道であるし飛躍の鍵を握る。欧米にもロシアにも加担しない。

 今回のウクライナの戦争も歴史的な経緯を踏まえれば、どちらが正義か、簡単には決められない。にもかかわらず、またも日本は欧米の尻馬に乗り、ロシアとのパイプを閉ざされた。この状態を一刻も早く脱却するべきだ。

 今、日本がとるべき戦略はロシアのプーチン氏との関係を利用して仲介役を買ってでること。成功すれば世界平和に貢献することができる。ロシアとの関係も一段と強化できる。それは近い将来、日本の力になる。(了)

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ロシアのウクライナ侵攻 原因はNATO側にもある

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物事には裏と表がある。ロシアのウクライナ侵攻もまたそうだ。暴挙だ、狂気だ――。そう騒ぎ立てる前に、ロシアがなぜそう行動したのか、考える必要がある。ロシアにはロシアの正義がある。それを理解することこそ日本の役割であり国際的な立場なのだ。

 「原因をつくった側にも責任がある」。3月13日、参議院議員である鈴木宗男氏が札幌市での講演でこう発言した。ロシアのウクライナ侵攻に関して力による主権侵害や領土拡張は断じて認められないとしながら、ロシアにはロシアの言い分があるというのだ。
 そうだ。問題はここなのだ。ロシアには侵攻せざるを得ない理由がある。原因がある。だからウクライナに侵攻したのだ。そこを理解せず「戦争反対」とまるでロシアが好戦的な国のような報道を繰り返す日本のマスメディアは完全に偏向していると言われても仕方がない。ロシアとて「戦争」には「反対」なのだ。

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●「東方不拡大」の約束を破った
 それにもかかわらずロシアがウクライナ侵攻に踏み切ったのはNATO側が約束違反をする可能性が強まってきたからだ。もともとロシアとNATO北大西洋条約機構)との間では「東方不拡大」との約束があった。冷戦が終結して東西に分かれていたドイツを統一する際、東西陣営間で「NATOは東方に拡大しない」という約束があったのだ。この約束を破った場合、断固たる措置をとる、ロシアはそう警告してきた。2021年12月、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相もボスニア・ヘルツェゴビナ紙のインタビューで、NATOの東方拡大が欧州での紛争につながるリスクがあると明確に指摘している。
 もっともだ。ウクライナNATOに加盟し、NATOのミサイル攻撃システムがロシア国境に近いウクライナ領内に配置されることはロシアの安全保障上受け入れられない。国家としてロシアがきわめて大きなリスクにさらされることになる。


●ゼレンスキー、もとはコメディアン
 ところが、NATOウクライナの大統領ゼレンスキーを籠絡し、NATO加盟に誘導しようとした。再三の警告にもかかわらず。ゼレンスキーもその誘惑に乗った。もともとテレビ俳優、コメディアンという出自もあって、ゼレンスキーは西側文化とつながりが深い。西側資本との関係も強くNATO寄りの人物であることは間違いない。NATO加盟は大統領として公約に掲げていることもあり、時間の問題だった。
 ただ、ここで日本は慎重に行動するべきだ。この問題に積極的に関わるべきではない。先の鈴木氏も「日本には国益の問題として北方領土や平和条約交渉の問題がある。米英と立ち位置が違う」と指摘する。求められもしないのに軽々に欧米に足並みをそろえ、ロシアを挑発する必要はない。背伸びして大国ぶってみてもみっともないだけだ。
 求められるのは一流国としての歴史認識の深さと、真の国際的なバランス感覚だ。NATOともロシアともそれぞれ適切な距離を持ち、節度をもって関わっていく。それが中立国日本としての正しい振る舞い方と言える。(了)

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NATOの尻馬に乗るだけのマスコミはもういらない

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  ロシアは世界の「悪者」――。ロシアのウクライナ侵攻を巡りこうした論調がマスコミを席巻している。「北京五輪が終わるのを見計らったウクライナへの全面侵攻は蛮行という他はなく、国際道義上許されるものではない」。紋切り型のこの論調だが、それは果たして本当か。「世界」って何?「悪者」って誰?

●ロシアは悪者?
 あまりに皮相的ではないか。「北大西洋条約機構NATO)は正義の味方」、「ロシアは悪者」といった論調があまりに多い。しかも一流と呼ばれる日本のメディアにだ。例えば2月28日の日本経済新聞の記事はこうだ。「中国はロシアがウクライナに全面侵攻し、世界の『悪者』になると知っていたら、習氏はロシアとの連帯をここまで格上げしなかったはずだ」。
 記事の内容は、ロシアがウクライナに侵攻し「世界の『悪者』」となったことで、ロシアと仲良くしていた中国にそのつけが回ってくる(はず)、というもの。中国はロシアがウクライナに侵攻することを予想できなかった。そこには「油断」があったというわけだ。
 これほど一方的で幼稚な記事があるものだろうか。ロシアにはウクライナに侵攻せざるを得ない理由があることを理解せず、単に「侵攻」「悪者」と決めつる。しかも、それを中国が「うっかり油断」して見過ごした、などということがあるだろうか。あるはずがない。
 中国は数年後には米国を抜き、世界でナンバーワンの経済大国に躍り出ることを正式に表明している国だ。つぶさに世界の情勢を見続け、冷徹に分析している。甘くはない。油断してロシアのウクライナ侵攻を見落としたなどというバカな話はない。ロシアがウクライナに侵攻しても自国にはデメリットがないと判断したから静観しているだけなのだ。米紙ニューヨーク・タイムズが報道するように、米政権は過去約3カ月にわたり、中国側と6回接触して、ロシアの侵攻準備を示す極秘情報を伝えた。それでも動かなかったのは、動かないほうが得策だとの判断があるからだ。
 日本のメディアの場合、海外の情報はほぼ通信社任せ。AP、ロイター……すべて欧米メディアだ。そういったメディアが湯水のように流してくる「横」書きの文章を「縦」書きにリライトするだけ。要はNATO側の言い分を垂れ流しているだけだ。

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●ロシアには侵攻せざるを得ない事情がある
 今回のロシアのウクライナ侵攻にしても、ロシアがウクライナに侵攻せざるを得ない理由がある。地政学上、どうしても譲れないのだ。そもそもここをNATO側は編入しようとしたために、プーチンは動いた。東ドイツをはじめポーランドルーマニアなど冷戦時代に東側、つまりロシア側だった国々を引きはがしてNATO編入させてきた経緯がある。ロシアとしてはこれ以上、譲れないのだ。
 ロシアにはロシアの事情がある。動くだけの理由がある。そこに追い込んだNATO側の非もあるのだ。
 そこを見もせずにヒステリックにNATOの尻馬に乗り※騒ぎ立てる日本のマスコミ。あまりにも恥ずかしい。もう少し幅広い視野と深い洞察力がなければ言論機関とは呼べない。(了)

※【尻馬(しりうま)に乗る】…分別もなく他人の言動に同調して、軽はずみなことをする。人のあとについて、調子に乗ってそのまねをする。〈goo辞書より〉

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中国の食糧ストック、世界の半分超 何が始まるのか

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 中国が世界の食糧を買い占め始めている。主要穀物の世界の在庫量のうち中国が買い占めた分は半分以上。中国の人口は世界全体の2割だが、その2割の人口の国が世界中の穀物を買い占め、ストックしている。いったい何が始まろうとしているのか。「一粒の米に泣く」――。時代は緊迫してきた。

 急性食料不安という言葉がある。紛争や異常気象などの理由から命や生活を守るため、食料の緊急支援を必要とする状態に陥ったことを指す言葉だが、この急性食料不安に直面している人の数が急増している。「食料危機対策グローバルネットワーク」の報告書によると2020年に急性食料不安に陥った人々の数はコロナ禍も加わり、少なくとも1億5500万人。過去最大の規模だ。

◎中国の在庫量、過去10年で20ポイント上昇

 こうした食料に困る状況は今後、益々深刻になる。そう中国は見ている。米農務省の推計データによると、2022年前半(穀物年度、期末)の世界の在庫量に占める中国の割合はトウモロコシが69%、コメは60%、小麦は51%に達する見通しだ。いずれも過去10年間で20ポイント程度の上昇で、中国が急激に穀物を買い占めてきたことは明かだ。

 いったいこのことは何を意味するのか。中国の国家主席である習近平は常々、「食糧安全は国家の重要事項だ」と強調してきた。つまり食糧を国の安全保障上の重要事項と捉えているわけだ。その守りを固めているということは国の守りを固めていることであり、台湾問題などを含め明確に有事を想定していると判断していい。

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◎日本の自給率37%

 中国の動きに対して日本はあまりに無防備だ。TPP(環太平洋パートナーシップ)だ、グローバル化だと無節操に国を開き、農業をないがしろにしてきた日本の自給率は先進国のなかでも屈指の低さ。農林水産省の発表によれば2020年度の日本の食料自給率は37%(カロリーベースによる試算)で63%を輸入に頼っているのが現実だ。過去最低を記録した2018年と同水準で仮に有事となった場合、太刀打ちできない。

 中国は台湾を本気で取りに来ている。尖閣諸島も同様だ。一方で日本は依然として米国頼み。いざ有事となった場合、どうなるのか。国民の食いぶちさえ確保できていない日本の現状を考えれば勝負はもうついている。国が危うい。(了)

中小企業は富士を支える裾野だ

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これほどの暴論があるだろうか。

 今の菅義偉政権の中小企業政策のことだ。現在の中小企業の数を2060年までに半分以下の160万社にまで減らすことが議論されているという。人事権をちらつかせ霞が関の官僚たちを操縦、この政策をまかり通す腹づもりだが、現実に動き出せば日本の物作りの根幹を支えてきた土台をたたき割ることになる。
 いったい仕掛け人は誰なのか。デービッド・アトキンソンという英国人だ。現在、国宝や重要文化財の修復などを手掛ける小西美術工芸社の社長を務める。この人物が菅政権のブレーンとなりこの中小企業淘汰政策を推し進めようとしている。

 

■正体はゴールドマン・サックス
 日本の伝統を守り抜く仕事をする会社のトップがなぜ、と思われるかもしれない。実はこの人物、もともとゴールドマン・サックス証券のアナリストである。1990年代に日本の銀行が抱える不良債権についてレポートを発表した経緯があり、これが小泉政権構造改革を引き寄せた。今度は「日本の中小企業が不良債権そのものだ」というわけだ。

 アトキンソン氏によれば日本の経済成長率が1%にとどまるのは賃金の上昇率が低いため。企業が年率5%程度の賃金アップを行えば、GDP(国内総生産)の半分を占める消費が刺激され日本経済は上向くはずだと主張する。その際、足かせとなるのが日本の中小企業で、経営体力が脆弱な中小企業は思い切った賃上げができず、そのせいで経済が目詰まりを起こしているというのだ。中小企業を整理、淘汰していけば日本経済は再び活力を取り戻すというが、それは本当なのだろうか。

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■規模が小さい、それがどうした
 確かに日本に中小企業は多い。日本の場合、全事業者数の99.7%が中小企業であり、全従業員数の68.8%が中小企業だ。世界で戦うトヨタ自動車パナソニックなど大企業の下に無数の中小企業が連なっている。それはさながら富士に広大な裾野が広がるのに似ている。
 アトキンソン氏はこれが悪いという。規模が小さいということは効率が悪いということ。なのに日本政府は経済を停滞させている元凶の中小企業を税制面などで優遇し、本来淘汰されるべきところを無理に延命させているという。
 しかし、考えてみて欲しい。規模が小さいということがなぜそのまま効率の悪さにつながるのか。極めて粗雑な議論だ。中小企業でありながら宇宙ロケットや原子力発電関連の特許を持つ企業はいくらでもあるし、そういった中小企業が持つ技術がなければできない部品は山のようにある。社員数人の中小企業だからこそ自由な発想でユニークな議論が生まれ、それが新しい技術開発につながっていくことだって多い。それなのに「小さいこと=悪」とはあまりにも稚拙な発想だ。
 そもそも日本にはそれほど中小企業が多いわけではない。アトキンソン氏は英国の出身だが、2020年時点で日本の中小企業の数が350万社であるのに対して、英国は598万社。人口比で見ても英国の方が中小企業の割合が多い。
 問題は創造性と独創性だ。その企業が大きいか小さいかではなく、どらくらいその企業がつくる製品やサービスに創造性や独創性があるのか、これが大切だ。世界で1つしかない製品であれば為替や関税の壁を乗り越え、世界中にその製品は行き渡っていく。日本の企業にはそうした製品をつくる力があるし、それこそが日本企業が生き残る道なのである。

 中小企業をつぶす算段をしている暇があるくらいなら、日本の企業に独創性を持たせる土壌づくりをどうするのか、それを考えるべきである。富士山は広大な裾野があるからこそ美しい。(了)

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菅さん、宰相の資格はありません

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 ミスには2通りある。許されるミスと許されないミスだ。8月6日、菅義偉首相が犯したミスは後者、決して許されないミスである。原爆死没者慰霊式・平和祈念式の挨拶で「我が国は核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要です」という一文を読み飛ばした。しかも原爆が投下された広島で、である。日本国の宰相として「失格」の烙印(らくいん)を押されても仕方がない。

 

「唯一の戦争被爆国」を「忘れた」
 いったい何をするために菅氏はわざわざ広島に赴いたのだろうか。挨拶は肝心の「唯一の戦争被爆国」という一文を飛ばしたため全く意味が通じなかった。そんな挨拶をしておきながら直後の記者会見で述べたのはたった一言、「お詫び申し上げる」だけである。それで済む話ではない。日本国の宰相としての自覚が全くない。とりわけこの日は朝から緊張感に満ち満ちていなければならなかったはずだ。なのにあまりに軽い。
 今から76年前の1945年8月6日、晴れた日だったという。午前8時15分、米軍機は広島市上空から「リトルボーイ」を投下、広島市は火の海と化した。人類史上、初めての原爆の投下である。人口35万人の広島市の市民のうち9万~16万6000人が被爆から2~4カ月で死亡した。当時の国や軍部の幹部が暴走、決して行ってならない戦いに突入した結果として招いた悲惨な結末だったが、犠牲になった市民の霊に対し、為政者である菅氏は心から哀悼の念を表し、この国を再興していく決意を述べるべき立場にあった。

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 ■日本が果たすべき責務がある
 それなのに「忘れた」。どういうことだ。許されるべきことではない。この務めを果たさずして何が日本国の宰相だ。
このことが示しているのは、単に菅氏が集中力を欠き、歴史認識が極めて甘い人間だというだけではない。意識の欠如だ。唯一の被爆国としての意識と自覚がない。被爆国の宰相としてどう振る舞い、どう国の舵を切っていくのか、その意識がないのだ。
 一般の何の罪もない市民が暮らす街にある日突然、核兵器という無差別殺人兵器を落とされたのである。これほど惨いことがあるだろうか。体験したのは世界で唯一、日本だけである。ならば日本にしかできない主張があるはずだ。戦争の悲惨さを世界に示し、決して戦争を起こさない、戦争を放棄する、憲法9条を掲げるのはそのためだ、こう宣言しなければならない。そのことこそ世界のためになる。その責務を果たしてこそ日本国も世界から尊敬される国となる。
それなのに菅首相はその責務を果たすことを忘れた。これは重い。
「菅さん、あなたに日本国の宰相の資格はありません」 (了)f:id:mitsu369:20210807062112j:image

尖閣諸島危うし 中国が牙を向いた

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 第32回夏季オリンピック東京大会が7月23日夜、開幕した。新型コロナウイルス禍で多くの犠牲を払いながら強行された東京五輪。日本の国民の関心は8月8日までここに集中することになる。しかし、日本はもはや商業的意味しか持たない虚飾の祭典に浮かれてはいられない。紛争の危機はもうすぐそこに来ている。台湾問題。そう中国の侵略だ。


習近平「台湾統一は任務」
「台湾問題の解決と祖国の完全統一の実現は中国共産党の揺るぎない歴史的任務」。7月1日、北京の天安門広場で開いた党創建100年の式典で習近平共産党総書記(国家主席)は台湾の「統一」をなし遂げる決意を明確に宣言した。「いかなる台湾独立のたくらみも断固として粉砕する必要がある」とし、一歩も引かない姿勢を明らかにしたのである。
急速な経済成長をなし遂げ、米国を追い抜き世界1が視野に入りつつある強国としての自信がみなぎる国家主席の発言だが、ここまであからさまになると日本も安閑とはしていられない。断固とした態度をとる必要がある。なぜなら、仮に中国が習近平の言葉通り、台湾統一をなし遂げれば「台湾に付属する島」との理由で尖閣諸島の領有権も一緒に蹂躙してくることは確実だからだ。これは日本の国防、そして経済成長を考えた時に決して許してはならないことである。
もちろんそこは日本政府も分かっていて麻生太郎副総理兼財務省が「中国が台湾に侵攻した場合、安全保障関連法が定める『存立危機事態』と認定して、限定的な集団的自衛権を行使することもある」との認識を示し、応戦してはいる。だが実はこれでは何の牽制にもなっていない。集団的自衛権という結局、米国の威を借りながらの牽制は「米国抜きでは日本は何もできません」と言っているのと同じだからだ。かえって中国に甘く見られ、逆効果というものだ。 

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●「台湾独立?」米国は知らぬ顔
しかも決定的なのはその後のカート・キャンベル国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官の言葉だ。キャンベル氏は「台湾の独立を支持しない」と発言したのである。つまり台湾は中国の領土であるという中国側の主張を認めた格好であり、それはすなわち尖閣諸島の中国の占有を事実上、認めたことにもなるのである。

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尖閣諸島で石油、掘るべし
こうなると日本は形無しである。いくら集団的自衛権を振りかざしてみても、米国は助けてはくれない。あてにしていた虎が早々に白旗をあげてしまったのだ。もうキツネはその威をかることはできない。あとは獅子に踏みにじられるだけのことである。米国は決して助けてはくれない。
尖閣諸島は資源の宝庫である。日本は譲ってはならない。ここを譲ってしまえば日本の国力は大きく損なわれる。防衛上も、問題だ。尖閣諸島をとられれば、いずれ沖縄が危機にさらされる。いくら摩擦があったとしても断固として守り抜かなければならない。
まずはすかさず日本は動くことだ。尖閣諸島で石油を掘ること。掘ればでてくることはすでに調査済みである。分かっている。だから中国も躍起になってのだ。尖閣諸島で石油を堀り、既成事実をつくり日本の領土であることを証明するのだ。こうなれば中国も簡単には手出しはできない。尖閣諸島の開発は、最大の防衛なのである。   (了)f:id:mitsu369:20210724123952p:image

ただほど高いものはない。自分の国は自分で守れ 

 日本が戦後、経済成長を遂げられたのは戦争を放棄し、防衛面ですべて米国に依存することができたから。日本の経済人は決まってそういう。それは本当なのだろうか。例えば在日米軍の駐留経費を見てみると日本の負担割合はほぼほぼ9割。決して安くはない。このお金を本当に日本に必要な防衛のために振り向けることができたなら日本はもっと毅然とした独立国家になるはずだ。

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●言葉だけ綺麗な思いやり 
思いやり予算」という言葉を聞いたことのある人も多いだろう。米軍が日本に駐留してくれている、その御礼として①基地従業員の給与や手当②光熱費③施設整備費などのほか、米軍関係者の福利費までも日本が「思いやり」として負担しているのだ。米国から武器を購入する費用とは全く別に、単に在日米軍基地を日本に置くために必要なランニングコストを日本が負担しているわけだ。
 思いやりといえば言葉は綺麗だ。しかし実態は異なる。負担が始まったのは1978年度分からだが、当時、米国の財政が悪化していたこともあり、日本に「安保ただ乗りは許さない」と圧力をかけながら米国側から押しつけてきたものだ。最後は当時の防衛庁長官だった金丸信氏が米国への「思いやりがあってもいい」と発言、日本側から負担を申し出た形にはしたものの実態は全く違う。
 だいたい「思いやり」というにしては度が過ぎている。防衛省が公表した2015年度の日本の負担割合は86%。総額が2210億円だったから、このうちの1910億円を日本が負担しているのだ。日本を守ってもらっている代償とはいうものの、米軍の給与、光熱費、福利厚生費の9割方を日本が持っているのだ。2004年に米国防総省が発表した国別の負担割合によると日本が74.5%、韓国は40%、ドイツが32.6%だったことからしても日本の負担は度が過ぎている。

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尖閣諸島海域での中国の行動、米国は黙認
 それでも本当に米軍が日本の主権を最後まで守ってくれる気があればいい。その気がないのが問題なのだ。在日米軍は日本を守るために駐留しているわけではない。そこを理解しなければならない。国際政治は冷徹だ。米国は自国にとって有益だから日本に在日米軍を置いているに過ぎない。米国からみて極東エリアの防波堤、とりわけ中国に対する牽制のため日本に米軍を駐留させておく必要があるから、置いているだけの話である。日本がありがたがって「思いやり」と言いながらお金を払い続ける必要など本当はどこにもない。
 米国が日本を本気で守る気がないのは尖閣諸島での中国の振る舞いを野放しにしていることでも分かる。中国海警局の船は沖縄県尖閣諸島の接続水域や領海内の航海内で繰り返し、2021年6月4日時点で過去最長の112日連続で、進入してきた。もし米国が日本の主権を守る気なら行動を起こしているはずだが、何のアクションもない。
日本も米国が動かない以上、動くわけにもいない。「遺憾の意」を表明するだけ。こうなると中国はやりたい放題だ。中国は「自国の領海をパトロールしているのだから当然」という立場だから日本が具体的な行動を起こさない以上、「日本は実質的に黙認している」と理解する。当然だ。
お金も出している。米国はなんとかしてくれるはず。それはもはや日本の思い込みと希望にしか過ぎない。何も動いてはくれない米国にこれ以上、貴重なお金を巻き上げ続けられるのはもうご免だ。戦後は終わった。本当に終わった。日本は1国。ただ一人、戦争は放棄しつつ、守るべき主権は自分で守る――。誰にも依存せず立ち上がるべき時なのだ。(了)

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残されるのは国民だ。日本郵政、豪トールの事業を売却

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 いったい何だったのか。日本郵政が6200億円を投じ買収したオーストラリアの国際物流会社、トールホールディングスの一部事業を780万豪ドル(約7億円)で売却するという。これにより日本郵政は2021年3月期の連結決算で674億円もの特別損失の計上を余儀なくされる計画だ。残された事業の大半も有望とはいえず「実質価値はゼロ」。こんなことが許されていいのか。説明して欲しいところだが、決断した責任者はもうこの世にはいない。取り残されたのは国民だ。

 

●簿価は1000億円、負債は2000億円 
 今回、日本郵政が売却するのはトールの豪州とニュージーランド国内の企業向け物流や宅配部門。長い間、赤字が続いていた事業で、ついに耐えきれず損を覚悟でファンドに売却する。売却は6月中に完了する予定だ。これで赤字の垂れ流しはいったん止まるが、トールの経営再建にメドがついているわけではない。売却後のトールの簿価は1000億円。これに対して抱える負債は2000億円。こんなものをなんで6000億円を超える大枚をはたいて買ったのか。気の沙汰とは思えない。
 振り返ってみれば、失敗は最初から見えていた。買収当時、その狙いについて日本郵政側は「国内市場が先細りするなか、海外で新たな収益源を確保する」と説明したが、「日本がダメだから外でやってみる」式のグローバル展開など成功するはずはない。トールの何が魅力なのか、日本郵政とどう連携させていくのか、具体的戦略を何も語ることもなく「民営化の象徴が何か欲しい」といったアリバイ的な買収であることは誰の目にも明かだった。実際に買ってみると中身はスカスカ。重複部門も多く2017年3月期には4000億円超の減損処理を迫られ、2007年の民営化後、初の最終赤字に転落した。

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●決めた西室氏、もういない 
 2015年2月、買収を決めたのは東芝出身の西室泰三氏(当時社長)ら数人の幹部で、経営会議に諮ることもなかった。肝心の西室氏は2016年に体調不良を理由に社長を辞任、2017年には81歳で死去した。日本経済団体連合会副会長を務めたほか、戦後70年談話作成に向け、安倍晋三首相が設けた諮問機関の座長も務めたほどの大物経済人ではあったが、トール買収の決断した罪は重い。
 やはりこうなると郵政民営化は改めて間違いだったという他はない。こうした無謀な投資の失敗のツケは結局、最後は国民につけ回される。経営が厳しいとなるとすぐに「効率化だ」との声があがり「地方でのサービスは過剰だ」となる。山あいの一軒家まで郵便物を届ける必要はあるのか、そんな議論が沸き起こってくる。
 都市部であっても地方であっても、手紙は届けられなければならない。国民は等しくこうしたサービスを受ける権利がある。そのサービスを維持するためにも、海外で今回のトールのような博打式の投資はやってはならなかったのだ。
日本郵政にはまだ政府出資が6割残る。これをそのまま残すべきだ。グリップを効かせ、今回のトールのような愚行を繰り返さないよう監視を強めるべきである。日本郵政は国富である。それを改めて思い起こすべきである。(了)

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五輪どころじゃない 聖火リレーの裏で核爆発の危機

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 東京五輪聖火リレーが3月25日、スタートを切った。

 大会は4カ月後。約1万人がトーチをつなぐ。しかしこの日、もう1つの大きな事件が発生した。福島第1原発の「核燃料デブリ」の取り出し開始時期を「1年程度の先送りする」と東京電力が発表したのだ。「復興五輪」開催に向け大きく動き出したその同じ日、廃炉プランは大きく後退した。安倍政権が繰り返し世界に発信した「原発は完全にアンダーコントロール」という言葉は全くの噓だったのだ。

 その事実が奇しくも聖火リレースタートの日に白日の下にさらされることになった。


東日本大震災の危機再び
 被曝(ひばく)の可能性がある国でオリンピック――。

 最初から無理だったのである。「完全にアンダーコントロール」などと力んでみても日本は「核燃料デブリ」に触ることすら、実質的にはできない。そんな状態の国で、そもそもオリンピックができるはずはない。

 新型コロナウイルスのおかげで、海外からの観戦客受け入れ断念に追い込まれたのは、世界に迷惑をかけなくて済む分、むしろ日本にとって幸運だったのかもしれない。
 実は福島原発東日本大震災後も度々、ひやりとする危機に見舞われている。その最たるものが2021年2月13日の大型地震だ。この日、23時08分、福島県沖の深さ55キロメートルのところを震源マグニチュード7.3の地震が発生、宮城県福島県震度6強の揺れに見舞われた。そしてその直後、再び日本崩壊を連想させる深刻な事故が発生したのだ。

 その事故とは水位の低下だ。福島第1原発で1号機と3号機の格納容器の水位が数10センチ下がったのだという。マスコミは沈黙する。しかし、これは見過ごすことができない極めて重要な出来事だ。原子力規制委員会は「注水は継続していて安全上の問題は現状ない」との見解を発表したが本当か。噓だ。福島第1原発が極めて深刻な状態にあるのだ。
 簡単なことだ。水位が下がったということの意味は入る水の量よりも出て行く水の量が多いということ。つまり13日の地震で格納容器にもともと入っていた亀裂が広がったということは間違いない。たまたまそれは対処できる範囲だったが、次ぎもそうなるか、保証の限りではない。

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福島原発プラント、日々劣化
10年前の東日本大震災福島原発は決定的なダメージを受けた。いつ崩壊してもおかしくない状態にある。その後も地震の揺れが加わり、建物を揺さぶり続ける。劣化は進む。しかし、保守・メンテナンスは全くない。そんな状態で、仮にまた震度6クラスの地震が来たら……。亀裂はまた広がる。今度はそれだけで済まない可能性は高い。デブリの取り出しはまだ着手すらしていない。東電が発表した通り本当に1年後にスタートさせられるのか、極めて怪しい。
 そうこうしているうちに広がった亀裂から残ったデブリが溶け落ち、再臨界、そして爆発。日本は壊滅する。そんなシナリオだってありうる。その瞬間は明日かもしれない。オリンピック期間中にそれが起こらないと誰が言えよう。
 日本は危ない。オリンピックどころではないのである。(了)

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金があるやつが決める

 

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金があるやつが決める――。森会長の辞任で見えた五輪の正体

いったい誰が主役なのか。東京五輪パラリンピック組織委員会森喜朗会長の辞任劇はこの問題を浮き彫りにした。女性を蔑視する発言に世論の激しい批判も「どこ吹く風」、続投を決め込んだ森氏だったが、トヨタ自動車など企業が反対を表明すると態度を一変、あっさり辞任を決めた。五輪の主役は国民ではない。企業なのだ。金があるものがものを言う。そんな祭典、まっぴらだ。


トヨタに「右にならえ」 
 「トヨタが何を大事にしているかを世の中に正しく理解してもらうためには、ここで沈黙してはいけないと判断した」。「トヨタが大切にしてきた価値観とは異なり、誠に遺憾だ」――。2月10日のトヨタ自動車の決算会見。その席上で長田准執行役員が代読した豊田章男の声明が政府関係者に伝わると、大きな波紋を呼んだ。
  なぜなら日本の企業が政治に対してここまで「もの申す」のは極めて異例なことだからだ。この「異例な」行動は連鎖を呼び、エネルギー会社のENEOSホールディングスもトヨタに続いた。「当社グループの行動基準に定めている人権尊重の観点からも極めて遺憾で残念」と表明、この後は雪崩を打ったように次々と有力企業が森会長の発言に懸念を表明し、「森氏辞任」の空気がつくられていった。
 さて、ここで問題となった森氏の発言とは。それは「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」というもの。確かに女性を蔑んだもので、一国の宰相を務めた人物の発言としては著しく品性を欠くことは疑う余地もない。五輪というスポーツ界最大のイベントを運営する組織のトップに座る人物としてふさわしくないのは当然で、辞任は当然だろう。
 しかし、問題は森氏のやめ方だ。もともと森氏はやめる気は全くなかった。当初の腹づもりでは4日の会見で形だけの謝罪をし、それでさっさと幕を引く計画だった。計画通り会見では「不適切な表現で深く反省している。撤回しおわびしたい」と言明、合わせて「辞任の考えはない」とし、これですべてが終わるはずだった。国際オリンピック委員会(IOC)も森氏の記者会見後、「この問題は決着したと考えている」と森氏を援護射撃、すべては森氏と日本オリンピック委員会JOC)のシナリオ通りに進んだのだった。
 ところが、ここでトヨタが動いた。「トヨタの価値観」を突きつけ森氏を辞任に追い込んだのだ。もちろんトヨタの行動自体、何の問題もない。当然だ。女性蔑視を許さない態度は称賛に値する。それをとやかくいうつもりはない。海外生産比率が約半分のトヨタにとって海外でも森批判が高まっていることに対応せざるを得なかっただろう。

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東京五輪に過去最高のお金 
 ただ、世論があれほど非難してもびくともしなかったのに、なぜトヨタが一声あげた瞬間に、森氏辞任が実現してしまうのか。ここが問題だ。東京五輪はいったい誰の祭典なのか。
 突き詰めてしまえば要するにお金なのだ。東京五輪には過去最高額のお金が集まったのだが、その最大の立役者がトヨタ。だからトヨタの意向がものを言うのだ。
 五輪のスポンサーには4カテゴリーあり、1つは最上位の「ワールドワイドオリンピックパートナー(TOPスポンサー)」。コカコーラなど世界企業がこのTOPスポンサーに名を連ねるており、トヨタもこのTOPスポンサーのうちの1社なのだ。仮にトヨタに抜けられれば、東京五輪は成り立たない。だからトヨタの一声は大きいのだ。
 しかし、どうもこの辞任劇、一般庶民には腑に落ちない。しっくりこない。庶民の声は届かないのに、トヨタの一声は一晩で事態を動かす。例え一国の元宰相の首であっても簡単に飛ばしてしまう。それでいいのか。要するに五輪は、庶民とは全く関係のないところで、企業主導で動かされているのだ。これが五輪の正体だ。
 ならば商業ベースでやればいい。正々堂々、金もうけのためのスポーツイベントとして儲けたい企業だけがやればいい。国民の血税を使う必要はない。ボランティアだって不要だ。企業の金だけで人を雇い回していけばいい。それならばいくらトヨタが大きな顔をしたってかまわない。
 今回の森氏辞任はこの点を明らかにした。五輪は金にまみれている。金を持っているものがモノを申せる。動かせるのだ。これでは国も国民も無理に関わる必要はない。やりたい人だけでやればいい。五輪はもはや、そんなスポーツイベントで十分なのだ。(了)

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スマートシティは『新首都』で開け

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 地下鉄の駅が浮いている――。信じられるだろうか。東京23区内の地下鉄の駅のうち、いくつかの駅舎がプカンと水の中に浮かんでいるのだ。もともと沖積平野(ちゅうせきへいや)を埋め立て開発した東京の地盤は相当程度、ぬかるんでいる。そこに無理に地下鉄の駅を建設、アンカーやオモリをつけて何とか地中にとどめているのが実態なのだ。もはや東京は限界。スマートシティをつくるなら、新首都でつくれ。

 

●都市の高度情報化で経済復活
 9月14日。新政権が発足する。最大の関心はアフターコロナ。戦後最悪の状況にまで落ち込んだ経済をどう立て直すのか、新政権はその答えを求められることになる。答えの1つとして想定されるのがスマートシティの構築だ。AI(人工知能)やITC、5Gなど最先端の情報技術を駆使して、東京を生産性の高い都市につくり変えようという戦略で、ここに来て急激に大きなうねりとなりつつある。これは半分、正解、そして半分は間違っている。
 新型コロナウイルスの感染拡大で企業はリモートワークの導入を余儀なくされた。そのおかげで、人は情報通信の環境さえ整っていれば、どこでもいつでも仕事ができることを確認できた。新しい働き方の時代だ。確かに我々は、これに合わせて街を変えていかなければならない。その造り替えに成功、街のスマートシティ化を実現することができれば、日本は再び経済大国として世界で存在感を示すことができるだろう。
 ただ、問題は場所だ。お金を投じるべき対象は東京ではない。東京には、もはや開発する土地がない。スペースがない。新しい開発に耐えられる体力が残っていない。東京駅も上野駅も放置しておくと駅舎が、増え続ける地下水の浮力に耐えきれず、浮かび上がってしまうところまで来ている。東京駅の駅舎は1本あたり100トンの浮力に耐えられるアンカーを130本、地盤に打ち込むことで対応し、上野駅はプラットホームの下に3万トンのオモリを置き、地下水の浮力に対抗させている。そんな状態のところにいくらお金を注いでも開発効率は極めて悪い。

 日本はもともと遷都の国だ。例えば710年に平城京に都が移り、その後794年に平安京に遷都するまでの奈良時代だけを見ても都は6回動いている。日本は時代が切り替わるタイミングで、遷都を行ってきたのだ。災害に備えたリスク管理という意味だけではなく、新しい時代を迎え入れるタイミングで新しい時代の器をつくってきた。今がその時である。新政権はこれを政策として掲げるべきだ。
 国際都市、東京に存続の意味がなくなったと言っているわけではない。経済都市として東京はそのまま発展させ機能させていけばいい。商都だ。そして首都としての機能は切り出し、岩盤が強固な場所に移し、新しい首都を形成する。

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●移転効果300兆円
 そもそも首都移転は国会で決議済みである。1990年に衆参両院で「国会等の移転に関する決議」を議決し、「首都機能移転を検討する」という基本方針はすでに決まっている。移転先候補地についても「栃木・福島地域」「岐阜・愛知地域」、移転先候補地となる可能性がある地域として「三重・畿央地域」と選定作業も進んでおり、世論の盛り上がりとは裏腹に水面下で準備は着実に整いつつある。
 海外でも遷都の例は決して珍しくはない。米国のワシントンとニューヨーク、カナダのオタワとトロント、オーストラリアのキャンベラとシドニーなど首都と最大都市が異なる国は多い。ドイツもベルリン・ボン法によりベルリンとボンに分けて行政機関を設置している。ベルリンとボンは直線で約450キロメートル、鉄道・高速道路では600キロメートルの距離だが、連邦議会はベルリンに完全に移転、連邦政府の省庁についても、中核部分をベルリンに移転させている。隣国の韓国もまた遷都を実施している。
 遷都はそれ自体が巨大な公共工事であり経済を活性化させる。ただ、それだけはない。最も大きいのは首都移転に伴う経済波及効果だ。仮に56万人の都市形成を実現させたとすると、直接の経済効果だけに限定して試算したとしても民間と公的部門の合計で32兆円。今後のITやAIの波及効果も含めて考えると全体では200兆円から300兆円にも達するという。これは三菱総合研究所の試算だ。首都機能分散を進めたマレーシアの事例などを参考に算出しているものだが、実際にマレーシアは1991年に情報化構想「マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)」と銘打ち、新行政都市「プトラジャヤ」を建設、2015年の経済成長率は4.9%、2017年まで4~6%の高い成長をとげた。それをもとにしている。
コロナは確かに負担である。人々の心も荒廃しつつある。しかし、同時にチャンスでもある。小手先ではなく、思い切った抜本的な改革のチャンスなのだ。最優先すべき課題が首都移転。本気で考えるべき時である。(了)

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