「オタキスム」の時代 ―非オタクによる「オタク」の時代―

 始めまして。右も左もわからない者ですが、どうぞよろしくお願いします。

 また、この文章はあくまでもオタクによってオタクの主観で書かれた文章です。

ご承知の上、お読みいただければ幸いです。

 

 映画『君の名は。』が大ヒットしました。このヒットは、これからのオタクを大きく変えるものかもしれない。そんな風に思って、これからの「オタク」を考えるために、自分のメモ書きのように書いた文章です。もし一人でもこの文章を読んでくださる方が、また、共感してくださる方がいらっしゃれば嬉しく思います。 

 

オタクは国家である

 まず、唐突かもしれませんが、Twitterや日常会話でオタクを宗教に例えるのを聞きますが私はその例えが的を射たものとは思えません。おそらく、「布教」といった用語からの連想なのでしょうが、実はもっと的確な表現があるように思うのです。

 それは、「国家」です。つまり、オタクとは「オタク」という国旗を掲げた国民なのです。何を言い出すのかと思った方も多いでしょうが、あくまでも比喩ですので、国家といっても、オタクが統治する領土があるわけでも、オタクを代表する主権者がいるわけでもありません。しかし、そこに所属する人々のアイデンティティの源になっていること、共通の「言語」(これについては後述します)を用いるという点でよく似ていると思います。

 

オタクのアイデンティティとは

 まず、ここで言うアイデンティティとはどういうことでしょうか。アイデンティティ(identity)は広辞苑では「人格における存在証明または同一性。ある人が一個の人格として時間的・空間的に一貫的に存在している認識をもち、それが他者や共同体からも認められていること。自己同一性。同一性。」と説明されています。なにやら小難しいですが、ここでは、自己紹介を求められたときにまず言うような、さらに、これがあるから私が私でありうるんだと思えるような個性、と解釈しておけば良いと思います。

 これから書くことはある程度偏見を含んでいて、特に現在においては必ずしもそうでないことは承知で言うのですが、オタクというのは「負け組」(=非リア充)の作りあげた文化です。少なくとも、中森明夫氏が「オタク」という言葉を提唱したときはそうだったのです。特別拠り所のなかった(特に日本人は一神教的宗教観に疎いこともあり)人々はオタク系コンテンツへの「知識量」、それがインターネットの普及で特別な意味を持たなくなってからは「作品への愛」(例えば、「コンテンツへの投資額」∋“円盤”の購入)で「オタクである自分」を同一化してきました。こういうと大げさに聞こえるので、「オタクキャラとしてふるまってきた」と言い換えた方が良いかもしれません。

 

オタクの「言語」とは

 次に、オタクに共通する「言語」についてです。「言語」というのもやはりあくまでも比喩なので、言語(日本語、英語など)とはひとまず分けて考えてください。

 とりあえず、言語について考えてみましょう。いま、あなたの目の前にリンゴがあるとします。友人にそのことをメールで伝えるにはどうすれば良いでしょうか。別に難しいことではありません。ただ、「私の目の前にリンゴがあります」とさえ打てば良いのです。そうすればあなたの友人は、あなたの目の前に、赤くて、皮をむくと白い、甘い果実があることが想像できるでしょう。おそらく、オレンジ色で皮を手でむくと房が入っていて甘酸っぱい果実だとは思わないでしょう。しかし、友人がアメリカ人だとしたらどうでしょうか。彼は日本語が分かりません。また、彼のPCはもしかすると、日本語を表示できないかもしれません。そんな彼に「Watashinomenomaeniringogaarimasu」と打ってメールを送って、彼は赤い果実を想像できるでしょうか。

 これをオタクの「言語」で考えるとどうでしょうか。「大きな目、低めの頭身、カラフルな髪、丸っこい指先」これらからオタクは“萌え”を読み取ることができます。しかし、オタクでない人(=この「言語」が通じない人)からすれば、「目が大きく、高校生なのに小学生のような体型をしていて、外国人なのかあるいは染めているのか奇抜な色の髪を持ち、よく見れば爪がない。人ならざる存在。」そんな風に読み取るかもしれません。つまり、オタク的な「言語」=記号を解読できる人間がオタクだということです。これらについての説明は『絵師100人展04』(産経新聞社2014)の應矢泰紀氏による解説にわかりやすく記されています。

 

『私は現代絵師の作品においての特定のルール、いわゆる「お約束」のことを“美少女プロトコル”と呼んでいる。美少女プロトコルを知ることにより、メッセージ性を脳内補完することで完成させられた作品であることを知る。それを知らずして、現代絵師の作品は語れない。』

 『絵師100人展04』(産経新聞社2014)より引用

 

 この文中で應矢氏は例としてツインテール=妹属性。三つ編み=田舎者、内気。さらには、ツインの短髪・前髪が尖っている・赤髪・釣り目=性格にか弱さと強気の二面性のある“ツンデレ”、他にも「乳袋(Chichibukuro)」などを例に挙げています。先のことは、應矢氏の言葉を借りれば、“美少女プロトコル”を理解できる=オタクと言い換えられそうです。

 

(続く)