『眩(くらら)』(朝井まかて/新潮社) ― 光と影の美しさ
ご無沙汰しています、扇町みつるです。
『眩(くらら)』(朝井まかて/新潮社)読了
2017年にNHKで放送されたドラマで見て原作を読んでみたいと思っていた一冊。
映像で表現されていた見事な色彩が小説の世界ではどのように表現されているのだろう。文章から美しい色彩や江戸の景色を感じることが出来るのだろうかと思っていましたが、感じることが出来ました。
一度ドラマを見てるから…と言ってしまえばそうかもしれませんが、実はドラマの内容の記憶はほとんど残っていなくて善次郎を誰が演じたか、これを書くのに調べるまで忘れていたほどでした。
なので、ドラマの映像の記憶と重ねながらではなく、文章から受け取った映像が脳内に再生されました。
美しかった。火事の緋色、夕暮れの紺青、カナリアの黄色、揚羽蝶の黒…。様々な色、そして江戸の街の景色、季節、絵に書く被写体の女性の色気、瑞々しさ、光と影。
目に見えるものはもちろん、お栄のさまざまな気持ちに至るまでこんなに事細かに文章から感じ取れたのは、読書を得意とするわけではない私としては珍しいです。
素晴らしかったです。
三流の玄人・一流の素人
それと、これはドラマでもそのまま使われていた北斎のセリフなんですが、
「だが、たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ」
私は何か作品を生み出してそれで稼いでるというわけではありませんが、とても響きました。
また、映像も見返してみようと思います。
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『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川文庫) ― 複雑に絡み合うご縁の糸
こんばんは、扇町みつるです。
ここのところ『中原の虹』(浅田次郎/講談社文庫)を読んでいたのですが、3巻にきてちょっと疲れたので、休憩といってはなんですが『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川文庫)を読みました。
好物の”時空を超える”モノ
私は、時空を超えたり死者と会えたりといったストーリーが結構好きです。
たとえば「世にも奇妙な物語」のラストのちょっとほろっと泣けるタイプのストーリーが好きで、今回何を読もうかと考えたときに、ファンタジー要素のあるものにしよう、でもバリバリのSFを…というほどではない。
そこで、演劇集団キャラメルボックスの上演作品の原作小説を調べてみました。それで見つけたのが『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川文庫)です。
2〜3日くらいで読もうと思って読み始めたら…。
これは止まらないやつや〜!
結局ノンストップで読み続け、てっぺん超えた真夜中に読了しました。
それぞれの人生、過去と未来
本書は、ナミヤ雑貨店、そして丸光園という場所を中心に繰り広げられる物語です。同じ時に一堂に会するのではなく、おおよそ40年くらいの幅の中で邂逅しています。
私は一気に読んだのでそれぞれの人物相関を正確に把握した訳ではなく、読了後に劇場版のサイトの人物相関図を確認しました。
結構複雑なので、しっかり把握したい方は、時間をかけてじっくり読むのをおすすめします。
登場人物はそれぞれ人生の困難に立ち向かい、迷い、ナミヤ雑貨店にたどり着いて相談の手紙を書きます。
その手紙が時空を超えて…。
手紙のやり取りを経て、相談の答えを読んで考え、悩み、答えを出し、それぞれの道を選び歩き始めます。
それから何十年か経ち、相談をした人々が再びナミヤ雑貨店へ。
本書は5章で構成されているのですが、それぞれ独立した話になってはいるけど、各章が複雑に絡み合っています。
読み進めていくうちに、「あーっ!これがこの人か!」と気づいていくのが気持ちいいですね。
劇場版はまだ未見なのでぜひこちらも見てみたいです。
それにしても、これだけ複雑なつながりを描くのに、どうやってプロットを立てているのだろう。と思いました。それともプロットは立てずにいきなり書く天才肌なのだろうか…。
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