みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

おれの徒然〈15〉「フレットレスベース、到着」篇

 

 きょうの13時、おれは午睡していた。呼び鈴が鳴って起きると、こいつが届いていたわけだ。人生で2度めのベース購入。まえは10年くらいまえに買って、すぐに売ってしまったのだけれど、今回はそうじゃない。本気でやるために買った。

 

 

 今回はフレットレスということで、そのメリットやデメリットも調べた。それでこれを注文。ほんとうなら近所のバッカス堂で安く買うつもりだったものの、「5月再入荷予定」が待ちきれず、わざわざ割高なのを大分のショップから買った。

 

 

 早くも残金が底をつく勢いで買ってしまった。きのう発送、きょう到着。長旅、ごくろう三三七七拍子。

 

 

 さっそくチューニングをして、ギターアンプで鳴らした。夕方まで一緒に遊んだ。来月にはナットとサドルを交換したい。弦もブラックナイロンにする。ピックや、ストラットも必要だ。アンプやエフェクターはまだ当分いいとおもってる。

 

 残金¥22也。しばらくはこいつにかかりきりだろう。目標はじぶんの曲にベースを入れることだ。いまはとりあえず、ピックでJoy Divisionを弾いている。ちなみにこいつの到着とおなじころに変なメールが届いていたので、転載する。

Koga Dai <hi9hdeltorabrown@gmail.com> 11 May 2024
Customer ID: OX346072791

こんにちは、

とても早くお支払いいただきありがとうございます。迅速な対応に感謝いたします。

ご注文は確認され、発送の準備が整いました。すぐに追跡情報が記載された別のメールが届きます。

それまでの間、ご参考までに領収書のコピーを添付いたしますので、ご確認ください。

ご質問がございましたら、当社のフレンドリーなサポートチームがいつでもお手伝いいたします。このメールに返信するだけです

改めて感謝いたします。お買い物をお楽しみください。

〈以下添付のPDF〉

 なにかの詐欺だとおもうのだが、いまいち手口がわからない。メールに返信するのはマズイと考えてスルーしたが、検索しても同一のメール事案は確認できなかった。おなじようなメールがあったひとは気をつけて欲しい。

my dreams was shot off

だれかが階段を上り切って、

此処にたどり着くという幻想を

たずさえていままでおれは待っていたんだ

だのにだれも来やしない

日暮れの街を見下ろすような丘で、

おれはおれの語りにケチをつけている

きのう、西村玄考という京都の詩人がやって来た

おれの歌誌を3部買ってくれた

かれは社会的使命感からか、世界情勢について語ろうとする

でも、おれには興味がそそらない

どっかの戦争も、どっかの虐殺も、おれにはどうだっていい

ひとはほっとけば殺し合いをしたがる

おれにはなにもいえない

だれかがいったように、おれは他人に関心がない

てめえのことでかかりきりだった

きょうは食糧の買いだしで、

卵と乾燥わかめを撰んだ

詩にも虚構にもおれは我慢できない

たぶん『猫──あるいはイギリスの夏』がおれの最期の詩になるだろう

二流の詩人として、それなりに愉しめた

じぶんの本に満足している

あとは短歌を片づけるだけだ

夏にだす最期の詩集はもう書き上げてしまった

あしたの無事が見えすぎる1日

手紙は来ない

メールもない

Bacchusのフレットレスベースを予約したのだが、

それがいつ入荷するのかもわからない

とにかく新しいことがしたい

そして撃破された夢の骸を下水に流して、

きみの長い脚をただ上ってしまいたいんだよ。


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猫──あるいはイギリスの夏

 

 レイモンド・チャンドラーの猫はタケというなまえだったのだが、
 来訪するアメリカ人たちの発音によってタキとゆがめられ、
 図らずも、bambooからwater fallへと変身を遂げた
 われわれはなにかを誤解すること、
 おもいちがうことによって、
 世界というものの真に近づくのである

 イギリスの夏は遠い
 手のひらが熱くなる午後の港
 たったいま交わした約束がでたらめだったと
 吐きすてることもできないいまま客船を見送る

 どこにもトポスを持てない、
 われわれの世代
 悲しい一撃を求める孤独の果てで
 われわれはきみをもういちど抱きしめたい
 われわれは猫のなまえのように変容するなにかでしかないのだから。

 

 

おれの徒然〈14〉「祭り囃子」篇

神戸文学館

横尾忠則現代美術館

 

   *

 きのう、横尾忠則現代美術館にて『ワーイ★Y字路』展を観に行った。バスでQBチーズの本社前に降りて、まずは神戸文学館にいく。建物は知っていたが、なまえは知らなかった。ご当地の詩人・歌人のコーナーがあったから、職員に献本を打診した。神戸市在住で、2冊くらいならOKらしかった。夏にでる詩集と歌集を送ろう。それからすぐにでて美術館へ。庭で弦楽をやっていた。

   *

 HC割引で、¥150払い、絵を観る。「Y字路」シリーズはずっと好きだった。先に4階にあがって、そっから下っていく構成だった。スマホを絵にかざすひとがまばらだったから、撮影は少し気が引けた。それでも終わって絵葉書まで買った。帰りは徒歩。

この作品がいちばんよかった。

生田川の恋人たち

   *

 夜になって三浦果実氏とトーク番組を収録。ちぐはぐさは残ったし、消化不良で物足りなさも感じた。次回からはゲストを呼んだほうがいい。明らかに両者ともどもネタ切れだった。具合がわるいコンデンサ・マイクをオーディオインターフェイスに直刺し。ノイズがなくなった。問題なのはマイクプリアンプだ。真空管を換えるか。とにかく修理の方法を知らねばならない。ダイエーでウィルキンソンの辛口ジンジャーエールを発見。もうどこの店にもなかったやつだ。パッケージがダサくなったが、2本買った。そして冷蔵庫にしばらく監禁。

   *

 きょうはなかなか起きられなかった。三度寝して昼餉。すると祭り囃子が聞えて来る。子供たちが神輿とともにやって来て、向かいの高級養老院に集まった。おれは慌てて、ダイナマイクでお囃子を録音した。神輿はあとにも2台来た。それも録音。しかし途中の篠笛はマイクの性能で、ちゃんと録れなかった。いつか、なにかにサンプリングしようとマイクをまわした。終わって第1回めの『missing person's redio』を聴く。やはりいろいろと甘かった。おれは表現についてもっと話がしたいし、あるいは人生の馬鹿らしさについて嘴を黄色くしたいとおもってしまう。そんなおれをきみは責めたりはしないよな?

   *

 

全Y字路

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横尾忠則 Y字路

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祭り囃子

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海についての断章

 

    *

 
 かなしみの歌を唄えり群衆の声あらずまた顔あらず


 疾走する貨物列車の嘶きが馬のようだね/蜆を洗う


 口腔にうずく虫歯か いつの日のメモ帖やぶる焦燥の果て


 むしろまだ生きてゐたのか青虫の最期のひとつ弾く指先


 わるぢえの働くままに石を積む やさしき鬼の現るるまで


 映像詩人暗殺されし窓ふかく霧にまぎれし光りがひとつ


 意味をもてバーボンわりぬ叢雨の降りおり窓に遠のきながら


 ぶたくさが背中にゆれる またゆれる 踊り方など知らないおれら


 ずぶずぶと泥の道ゆく男すら神の化身に見える真夜中


 屋根を飛ぶ春の残滓を追いかける鳥もおらずやきょうは晴天


 秋を待つ処女のあなたが交差するセンター街の人混みなか


 鮭色のグロスをぬりぬ乙女らのなんと水水しき姦淫

  
 あきらめていいのだ われに残された積み木の家に灯をともすのみ


 死語あらば灰語もありぬ辞書ひとつ燃えつつわれの未来を拒む


 大丈夫、大丈夫だといってゐる駅アナウンスがハウってゐます


 かつどんの冷めたい真夏鶏卵をつつきながらもため息やまず


 つかのまの嵐来たりて煮魚の眼もうらがえる土曜の正午


 間食のベビーチーズよ忘れたきおもいでばかり盛る週末


 かえすがえすも波は波 手のひらに熱きものありし七月


 暗き窓一瞬光る魚たちのまなざし濁るみずいろの家


 火をかかぐ裸のリナよ燃えつきて貨物信仰いまに高鳴れ


 エーテルのような匂いだ 意識とは永久という語の誤解に過ぎず


 挑む犬 陽炎ばかり昇るなかわれと対峙すけものの瞳


 児童劇上演まぢか子供らの星と繋がる神話を知らぬ


 海渡る無名のひとよ神すらも道具たり得る世界を覘く


   *