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カムチャッカの若者が

きりんの夢を見ているとき

メキシコの娘は

朝もやの中でバスを待っている

ニューヨークの少女が

ほほえみながら寝がえりをうつとき

ローマの少年は

柱頭を染める朝陽にウインクする

谷川俊太郎さんの、この詩を知った時、私は中学生だった。そして、学校が嫌いで、家が嫌いで仕方がなかった。

当たり前だけれど、地球上には、私の知らない世界が沢山ある。

この詩は、私に出口がある事を教えてくれた。

ひとりぽっちの中学生が泣いている間、世界には戦争があり、死があり、そして生が有るのだ。

それは単純な現実だった。知っていたはずなのに、その力強さにはっとした。

この詩に出会った時の気持ちを、私はいつも持っていたい。

旅をするように生きたい、と願う。

今私がこうしている間、砂漠のラクダたちは何をしているだろうか。薄暗闇の中、新たな旅人を乗せて、出発したところかもしれない。