ぱんぷるむうす
ヒロコおばちゃんが逝ってしまってから、もう二七日が経った。見送る日は、両日とも体がカチコチに凍るほど寒かったけど、心臓は暖かかった。大勢の家族に囲まれて見送られる叔母を見ていたら、何時も孤独が大好きなのに、ひとの温もりの心地よさにいつしか酔いしれていた。
儀式が一段落して、いとこたちとお別れし、自宅に戻ると泥のように眠った。叶うのなら、そのまま泥のままでずうっといたかった。世界は残酷。次の日、己を見失ってしまった両親に会わなければならなかった。
ヒロコおばちゃんが逝ってしまったことを伝えなければならないと思い、いつ言おうかと考えあぐね機会をみていたが、実家で両親の凄まじい様子を見ていたら、もう何も伝える気にはなれず、それでもやっぱり伝えなければいけないよなと思い、手紙を書こうかとも考えたけれど、自宅に戻って、我にかえると、無性に腹立だしくなってきた。関係のない宅配業者に八つ当たりしたり、どうして、わたしが、わたしだけがこんな思いをしなくてはならないのか、やたらめったら八つ当たりしたくなり、どんどん怒りがおさまらなくなっていった。
いったん怒りがおさまったと思って油断すれば、些細なことでムシャクシャして、子犬のように駆け寄ってきた同僚の無邪気さが鼻につき、酷い罵りを浴びせた。
怒りの火はいつまでたっても消えず、数珠繋ぎのように苛立ちが沸き起こり、職場で怒ってばかりで疲れ切ってしまった。
週末、やっと職場から解放されたとおもった、やれやれと自宅に帰る途中に寄ったコンビニで、しょうもない店員の無礼に遭ってしまい、怒りは暴発した。
一体、なんだってんだ。
甘酸っぱいぱんぷるむうす。
一体、何に怒っているのかだんだんわからくなってきた。
どうにでもなれ、とは思うけれど、どうでもいいとは思えない。
この世界をすべて知っているなんて言うひとほど、
この世界のなにひとつも知ってなんていない
そんなひととは分かり合えることなど永遠にないから
怒ったって無駄だ
すべてが無駄だったんだ
百合の花がふたつ開いた
来週、最後のつぼみ、咲くといいな
銀チョコ
銀チョコ
真夜中の銀チョコ
雪の予報が出ていた真夜中の銀チョコ
東大阪では寒さには馴れたのかと思ったけど、奈良に戻ってきたら寒さに全然馴れてなんかなかった
銀チョコ
百倍の希釈のホットカルピスと食べる真夜中の銀チョコ
罪の意識を倍の倍で感じる組み合わせで食べる真夜中の銀チョコ
叔母ちゃんに会いに行く前と会った後とでは感じる寒さが違った真夜中の銀チョコ
あの日、たくさんお寿司を食べれたのは、
叔母ちゃんがいたからなんやなと漸く気づいた真夜中の銀チョコ
銀チョコだけだと、やっぱりまたお腹が空いてきた
真夜中なのに
雪の予報がまたあしたの朝に出ている
叔母ちゃんが空から降らせたがっているのかな
銀チョコだけだと、お腹が空くよ