トーン・コントロール

グループ・ニヒトさん。「まず、ヨイショは声のトーンが大事です。ヨイショのトーンを操ることを『トーン・コントロール』といいます。トーン・コントロールの基本は、相手の調子・テンション・気分に合わせることです。つまり、相手が上機嫌であれば、楽しい調子でヨイショ。落ち込んでいれば、落ち込んだ気分でヨイショ。ただし、トーン・コントロールは嘘くささがないことが大事になります。相手の興味を引き、ヨイショに引き込む為のテクニックを専門用語で『フィル・イン』といいます。①相手のプラスを素直に指摘するフレーズを言う。②不完全なフレーズ、わざと舌足らずな言い方で相手の興味を引きます。③わかりにくい喩えフレーズを言う。④目立つジェスチャーをする。⑤事実と反するフレーズを言う。⑤ポジティブな勘違いをする」ヨイショ。

ヨイショの基本三原則

グループ・ニヒトさん。「ヨイショは、次の三つの要素がそろったときに、もっとも効果的だと言われています。①ほめる、②へりくだる、③好意・思いやりを示す。これを専門家の間では、『ヨイショの基本三原則』と呼んでいます。ヨイショとは、『相手の気分をよくし、好意を勝ち取るための技術』です。技術さえあれば、心の中でどんなによこしまなことを考えていようが、ヨイショは成立するのです。当然、『なにを』ヨイショするのかが大事になります。ヨイショをするときは、できるだけ的確で具体的な事柄を対象にするようにしましょう。『Yスポット』は、理論上次の三種類に分けることができます。①相手の自覚しているプラスの要素、②相手の自覚していないプラスの要素、③相手の自覚しているマイナスの要素」すごい。かなわない。お上手ですな。

夜目・遠目・傘の内

池谷裕二さん。「チアリーダー効果は次のように説明されています。群像を眺める時、脳は自動的にその平均的な傾向を割りだします。脳は自然と顔についても集合写真の全体の傾向から、『平均顔』を割りだすのです。ここで大切な事は、平均的な顔はクセがなく魅力的に映るという事実です。コンピューターグラフィックスを用いて顔画像を合成する時、より多くの顔を合算するほど魅力度が高まります。だから、『集団の平均顔の点数が、個人の実点の平均顔よりも高くなる』のです、チアリーダー効果は単純な現象のようで、意外と奥深い脳の高次な計算結果なのです。人の魅力を高める効果が知られているのが『隠蔽』です。例えば女性が美しく見える条件として『夜目・遠目・傘の内』という言葉が有名です。脳は隠蔽されている部分を理想像で補うのです」成程。

チアリーダー効果

池谷裕二さん。「活躍したプロ野球選手のインタビューを見たけれど、期待したほどのイケメンでなかった。人気アイドルグループの中心人物がソロ活動したのに一向にうだつがあがらない。合コンで知り合った人とデートしたらがっかりした。そんな話をよく聞きます。これは気のせいではなく、古くから知られた現象です。共通しているのは『人は個人でいるより、集団でいるほうが魅力的に映る』という点です。この現象は、2008年に放映されたアメリカの人気コメディ、『ママと恋に落ちるまで』の1シーンにちなんで、『チアリーダー効果』と名づけられ、専門家の間でも定着しています。この意味する所は、『チアガールは一見華やかに見えるが、改めて個々のメンバーを眺めてみると……』ということのようです。4枚の写真を並べれば効果があるそうです」集団。

脳内モルヒネ

池谷裕二さん。「オピオイドは別名『脳内モルヒネ』です。強烈な快感を引き起こします。放尿が爽快感と恍惚感を伴う理由はここにあります。登山やマラソンは、身体が人工的な危機に曝されている疑似的状況です。時にこの危機感がクセになる常習者がいるのも、やはりオピオイド系の作用です。スポーツの心地よさは、大抵恍惚への耽溺そのものです。外敵に襲われた動物もおそらく同じです。無痛と同時に恍惚を伴っている可能性があります。結局は逃げられず捕食者に食べられてしまう時、意識明瞭なまま身体が食いちぎられていきます。しかし私たちが想像する程には、苦しんでいないと考えられています。武士道では、体の正面に受けた『向こう傷』は名誉の傷で、『後ろ傷』は恥の傷です。敵に正対する雄姿は、恍惚の極到に浸る自己陶酔なのかもしれません」陶酔。

ピンチの恍惚

池谷裕二さん。「脳は痛みを消すための専用回路を備えています。緊張状態になるとこの回路が作動し、痛みを感じなくなるのです。痛みは身体の異常や組織のダメージを知らせるシグナルです。不快感を惹起し、気力を低下させ、活動量を減少させます。これは早く回復するために体力を温存する『休養』の指令としても役立ちます。しかし、痛みを克服しなくてはさらに命に関わる深刻な事態に陥るという危機的状況では、痛みに悶えているだけでは問題です。そこで脳が発達させた回路が、痛覚除去の神経回路『オピオイド系』です。一時的に痛覚を無効化することで、迫る危機を回避する確率を高めるわけです。たとえば、放尿や排便、性行為では、組織が極端な摩擦を受けるため、本来ならば激痛が走るはずです。しかしオピオイド系がこれを緩和するのです」オピオイド

過去を振り返れば短い

池谷裕二さん。「考慮すべきポイントは、時間を現時点から過去方向に見るか、未来方向に見るかの差です。未来の時間軸は、過去の時間軸とは尺度が違うのです。小学校の卒業式の答辞で『振り返ればあっという間の6年間でした』という文言は常套句です。つまり、どの年齢でも、過去を振り返れば『短い』と感じるのです。理由は、過去の出来事を忘れているからです。時間は矢のように過ぎ去ったわけでなく、単に『充実した時間が過ぎたこと』を忘れてしまっただけのことです。『忘却』は脳機能の中でも、不思議な現象です。忘却は経年劣化とは異なり、脳が行う積極的なプロセスです。脳内で自動に作動しますから、意識では制御できません。忘れようと努力したところで、忘れられません」だんだん早くなるような。私を忘れないで、憎んでも、覚えてて。