奈倉まゆみの描きつづり

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兼通と青常の話

今日は宇治拾遺物語巻十一(一)青常の事

 

まだ、平安装束の描き方がわからなくて調べていた頃に、記事を教えてもらったのを思い出しました。改めて読むと、あの頃にはわからなかったことがいろいろわかって、私もほんの少し成長したなと思います。

 

さて、今回の話は、村上天皇の御世、痩せてのっぽで青白くて「青常」と呼ばれ、からかわれる男がまず出てきます。

 

青常、本名は源邦正。重明親王の子で、醍醐天皇の孫にあたります。

さらに、重明親王村上天皇の兄ですので、青常こと源邦正は、村上天皇の甥でもあるのです。

 

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今上帝の甥を殿上人たちは「青常」とからかったのですから、当然怒ります。甥ということもありましたが、人としても情けないと思われたのでしょう。

 

興味深いと思ったのは、冠から垂れている纓というものなのですが、青常は後頭部が出ているので、背中につかなかったそう。つまり、通常はつくわけですね。

これが、平安末期の強装束になると、よく見るバネみたいな纓になります。

 

 

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話が逸れました。

 

それから、村上天皇に叱られた殿上人たちは、邦正をもう青常と呼ばない。うっかり呼んでしまったら、罰として、皆に酒や果物を振る舞うという決まりを作りました。

 

ところが、藤原兼通はうっかり「青常」と言ってしまいます。

 

兼道は罰ゲームを果たすことになりました。しかし、ただ皆に馳走する彼ではありません。

 

兼通は、香を薫き込めてよい香りをさせ、ニコニコしながら現れました。

 

直衣の裾からは砧打ちしてツヤツヤの青い袙をはみ出させ、青い指貫を穿いて現れました。これだけでなかなか派手ですね。しかも光るように美しい貴公子。

 

青常と比べると同じ青でも・・・・

 

さらに随身には青い狩衣に袴を着せ、青い物をいろいろ持って来させます。

 

青い折敷(角盆)の上に青磁の皿、それにこくは(さるもも)という青い果物

竹の枝に山鳩(緑色)を四、五羽

青磁の瓶に酒を入れて、青い薄紙で封をしたもの

 

青磁も緑がかってますし、この持ってきた物からすると、青とは緑のことでもあったかもしれませんね。

 

青づくしで、これには集まった人々のみならず、前回怒っていた村上天皇まで大笑い。

 

こうして怒る人がいなくなってしまったので、青常はからかわれ続けたのでした。

 

 

 

兼通のひょうきんさより、簡単には転ばない負けず嫌いなとこの方が出ているような。

 

憎い弟藤原兼家に関白の座を譲りたくない、それだけのために、重病の体を推して、いとこの藤原頼忠を関白にするという最期の人事を執行したという、執念のように。

 

ちなみに、青常の女兄弟は、兼通の息子朝光の妻室になっています。

素直に結婚を祝福できたのでしょうかね。

 

参考

角川ソフィア文庫宇治拾遺物語」中島悦次校注

綺陽装束研究所青色あれこれ

www.kariginu.jp