父がリハビリ病院を退院したのが3月18日なので、父の老健施設生活はもう1ヶ月半になる。
できるだけ早く出してやりたくて、昨日特別養護老人ホームの申込みをしてきたところだ。
老健施設はスタートから少し不穏なかんじだった。
3月中旬、リハビリ病院から、
「老健施設に空きが出たので3月21日に退院して移ります」
と電話があった。
私は3月末に退職する予定で、飛び飛びに年休を消化していたものの、ちょうどその日は最終勤務日になっていた。
「その日は休めないので付き添えないんです。翌日なら行けますので、1日ズラしてもらえませんか?」
と頼んだが、日程は変えられないと言う。
退院手続きは翌日でかまわないし、荷物の移動等は全部こちらでやります、とのこと。
仕方ないので、了承した。
ところが、3月16日に病院から何回か着信があった。
その日はサトイモの卒園式で、バタバタして電話に出られないでいた。
翌日になってようやく電話に出ると、
「退院日が3月18日になりました」
と言う。
前もって聞いていればその日は休めたかもしれないのに、週末に連絡を受けて翌月曜日では職場の休みの段取りもとれない。
また勝手に日を決められて、ムッとなった。
「月曜日になりますが、いいですか」
と言ってきた男性スタッフに、
「あのね、『いいですか?』って言いましたけど、私がダメです、って答えたら日を変えてくれるんですか?変えられるんですか!?」
「いえ…、それは…、あの…。施設の方の空きが出たので早くなったそうで、こちらでは何とも…」
電話してきただけの、管理職でもないスタッフに噛みついても仕方ないのはわかっていたけど(彼の頼りない喋り方が余計ムカついた)、毎回勝手に日を決められて、それに振り回されることにウンザリしてしまった。
老健施設の日々
当初の移転日の翌日、退院手続きと入所手続きをしに行った。
救急病院からリハビリ病院に移るときも父の服装がめちゃくちゃだったから、今回もそうかもしれないと思っていたが、やはり的中した。
移動中は私服を着ていたが、ズボンから下が尿で汚れたらしい。
汚れた服はポリ袋に突っ込まれて、「ご自宅で洗濯お願いします」とメモが貼られていた。
移転から私が手続きに来るまで数日。
当日付き添っていたなら、すぐ持って帰って洗えたのに。
どうせ父の服はいずれ処分することになるので、思い切って袋ごと廃棄をお願いした。
父の唯一の楽しみであるコーヒーについて尋ねると、病院で許可されていたなら老健施設でも飲むのは可能とのこと。
病院で買わされたトロミ剤について尋ねると、病院に置きっぱなしになっていた。
危ない危ない、ほんとに持ち物は全部持って来てるんだろうか。
トロミ剤を病院から持ってきてもらい、新しいインスタントコーヒーを箱ごと渡した(もちろん箱にはマジックで名前を大きく書いて)。
その後、何回か父に会いに行った。
部屋は間仕切りもなくベッドが並べられただけの大部屋である。
調度品は汚いタンスのみ。
食事は相変わらずミキサー食で、本人は「美味しくない」と文句を言うけれど、ちゃんと口から食べられているようだ。
会話も一応できなくもない。
でも、会話はほとんどが、お金についてである。
「お金持ってきてくれ」
「何に使うん?」
「出かけたときに買いたいもんがあるんや」(そもそも出かけられないのだが。)
「自販機でコーヒー買うても、トロミをつけてもらわへんかったら飲まれへんのやで」
「お金。財産。持ってきてくれ」
「持ってきたげたいけど、ここに置いとかれへんからね。必要な分は後払いでちゃんと払っとくから」
「とにかく持ってきてくれ」
「そういえば、お父さんコーヒーは飲ませてもらっとう?」
「いいや。飲んでへん。どうも盗られとうかんじや」
施設のスタッフに尋ねると、
「コーヒー毎朝お出ししてます。美味しそうに飲まれてますよ。お好きなんですね」
とのことで、父には記憶障害と被害妄想が出ているようだ。
完全に自由を奪われた生活に、だんだん活力が失われている感じがする。