スタジオコロリドが送る、Netflix独占配信のアニメ映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』。
山形県に暮らす普通の男子高校生、八ッ瀬柊(やつせひいらぎ)が、額に角が生えた鬼の少女ツムギと出会ったことから始まる不思議な旅。
ボーイミーツガールであり、ロードムービーでもあるこのアニメ作品を観た感想を書いていきたいと思います!
(ネタバレありのレビューです)
『好きでも嫌いなあまのじゃく』
2024年 日本作品 英題:My Oni Girl
上映時間 112分
推奨年齢 13歳以上
監督 :柴山智隆
脚本 :柿原優子、柴山智隆
音楽 :窪田ミナ
制作 :スタジオコロリド
目次
あらすじ
山形県に暮らす高校1年生である八ッ瀬柊(やつせひいらぎ)は、人から頼まれたら断れない性格。
真夏に季節外れの雪が降ったある日、柊は人間の世界に母親を捜しに来た鬼の少女ツムギと出会う。
柊と違い積極的な性格であるツムギは、柊を道連れにし、自分の母親がいるという日枝神社を目指し旅立つ。
2人の不思議な旅が始まる。
登場人物
八ッ瀬 柊(やつせひいらぎ)
声:小野賢章
本作の主人公。
山形県に暮らす高校1年生。
頼まれたら断れない性格。
高圧的な父親との軋轢がある。
ツムギ
声:富田美憂
人間の世界に母親を捜しに来た、鬼の少女。
柊とは対照的に明るく積極的な性格。
美味しいものを食べたときに「うまし!」と言うのが口ぐせ。
作品の舞台
この『好きでも嫌いなあまのじゃく』の舞台となるのは、米沢市を中心とした山形県。
山形県米沢市といえば、三大和牛の一つである米沢牛で有名なところですね。
冒頭からすぐにわかりますが、背景はかなりリアルに描きこまれています。
感想
印象的なオープニング
眼鏡をかけた真面目そうな少年が、雪に埋もれているシーンから始まる印象的なオープニング。
この作品『好きでも嫌いなあまのじゃく』のテーマの一つが「雪」であることを示唆しているようです。
そして目を覚ました少年が、後ろから歩いてきた鬼の少女と目を合わせたところで現実に戻ります。
キャラのセリフが訛ってないのは残念!
この『好きでも嫌いなあまのじゃく』、舞台は山形県ながらキャラクターのセリフは完全に標準語、『響け!ユーフォニアム』と同じパターンです。
まあいろいろ事情があるのでしょうが、個人的には『サマータイムレンダ』のように方言があるほうが田舎の空気感がよく出ていてお気に入りです。
鬼にしてはかなり常識があるヒロイン「ツムギ」
バス代が見つからず、困っていたツムギを助け、自分の家に連れ帰る柊。
ツムギは髪の色こそ青っぽい個性的な感じですが、柊の家族と食事するシーンでは意外とコミュ力があり、柊の母親に髪をとかしてもらったあとは「ありがとうございます」としっかりお礼を言うなど、鬼にしてはかなり常識がある印象です。
つまり「鬼」らしい奇妙さや破天荒さはこの時点ではまったく感じない設定で、この設定がこれからどう物語に影響してくるのかが気になります。
本心を隠す人間の体から出てくる「小鬼」
主人公柊のように、本当は嫌なのに頼まれたら断れない人間の背中から出てくる、小さな綿のような、煙のような白い物体、それが「小鬼(こおに)」。
柊の体からはたくさんの小鬼が出てきて、ツムギは「小鬼がたくさん出てくる人間は、いずれ鬼になる」という発言をします。
この小鬼が、本作『好きでも嫌いなあまのじゃく』のテーマの一つとなりそうです。
敵か味方か?物語をかきまわす存在「ユキノカミ」
物語の序盤から登場する、柊とツムギに襲いかかる謎の存在、「ユキノカミ」。
東洋の龍のような半透明の青い細長い体に、ヘンテコなお面を被っているような怪物です。
お面の下に口があるので、なんとなく『千と千尋の神隠し』のカオナシに似た感じです。
この「ユキノカミ」は物語中何度も登場し、柊たちに襲い掛かり物語をかき回す、この『好きでも嫌いなあまのじゃく』の鍵となる存在のようです。
前半は主人公2人が旅の中で様々な人々と出会う、ロードムービー的展開
前半は主人公柊とヒロインツムギが、ツムギの母親を捜しに日枝神社を目指す旅の途中で、様々な人と出会い、そして別れていく、ロードムービー的展開が続き、鬼が登場するというファンタジーながら、その旅は空想世界をさまよう、というものではなく、実際の山形県を旅する、とても現実的な旅となっています。
後半は鬼たちの集落、陰の卿(なばりのさと)が舞台に
前半の現実的な旅とは打って変わって、後半は鬼になってしまった柊がたどり着く、陰の卿(なばりのさと)が物語の舞台になります。
この陰の卿は1年中雪が降っている縦構造の集落で、本部のようなところにあるホワイドボードにフロアマップが貼ってあるのですが、それによるとこの集落はB2F~6Fのフロアで構成されており、デパートのフロアマップのようなトイレマークや車いすマーク、非常口マークがあるのが面白いです。
こんな寒いところに暮らしている鬼たちは特に人間と比べて寒さに強いわけではないらしく、人間と同じようにコートを着たり、マフラーをしているのも面白いところです。
この『好きでも嫌いなあまのじゃく』の鬼たちは、『鬼滅の刃』の鬼のように特別戦闘能力が高い、ということもないらしく、角が生えていること以外は、人間と変わらない存在のようです。
良かったところ
ヒロイン、ツムギのビジュアルが良い
鬼の少女であるヒロインのツムギ。
彼女の性格は特別魅力的だとは思いませんでしたが、ビジュアルは本当に素晴らしい。
水色からピンクへのグラデーションカラーの髪。
ピンクの角。
青い服にピンクのストッキング。
統一感のあるキャラクターデザインで、完璧に魅力的なビジュアルのヒロインでした。
エンディングで2人が出会った人々のその後が描かれる
前半の旅で主人公2人が出会った人々のその後が、エンドロールで少し描かれるのはすごく良い演出だと思いました。
エピローグの演出がとても良い
ここはネタバレしませんが、最初のエンドロールが終わった後、エピローグとして柊とツムギの会話があるのですが、ここの演出がとてもいいです。
物語の終わりであり、2人の始まりなんだな~という感じがします。
気になったところ
ワクワク感の演出が弱い
終盤、これまで自分の気持ちに素直になれなかった主人公柊が、初めて好きになった女の子を助けるために、自分の気持ちに素直になってツムギの元へ駆けつけようとするシーン。
ここは最高レベルにワクワク感を演出するべきシーンなのに、スノーモービルの発進が「のろのろ~」という感じで、ちょっとズコーッでした。
たしかにリアルではそういう発進ですが、アニメーションなのだから、そこはリアルな演出ではダメでしょう、と思ってしまった。
主人公柊の高まる気持ちを表現するような発進でなければならないはず。
巨匠と比較して申し訳ないが、宮崎駿なら絶対にそういう演出にするはず。
まとめ:傑作とは言えないが、2時間しっかり楽しめる良作アニメ映画
Netflixで独占配信されているこのアニメ映画、めちゃくちゃ面白い、誰もが観るべき傑作!とは言えませんが、2時間しっかり楽しめる良作でした。
ボーイミーツガールであり、ロードムービーでもあり、そして若い2人の成長物語でもあるこの作品、Netflixに加入しているならば、鑑賞してみてはいかがでしょうか。
サントラ
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