人生BADハマり

東大卒アスペ傾向Web系エンジニアの人生戦略

『CHASE!』/ 優木せつ菜(CV.楠木ともり)を耳コピしてみた

大分期間が空いてしまいましたが、耳コピ記事第3弾です*1

序:私が耳コピをする理由

※『CHASE!』の話だけ読みたい方はこの節は飛ばしてください。

私が耳コピする理由の6割は「作曲しないで作曲が上手くなりたいから」という大層捻くれた理由です。残り4割は「楽曲をあらゆる角度から鑑賞し尽くしたいから」です。

後者は分かると思うので、前者について述べます。作曲って難しいですよね。やることも知るべきことも無限にあります。イラスト制作なんかもそうだと思いますが、作曲は「素人でもプロが作った作品にしか普段接しない」点が大きく異なると思っています。素人でも頭の中ではプロレベルのサウンドが当たり前になっていて、でも実際作ると当然知識も経験もないのでひどくダサいものが出来上がる。これに耐えることが私は出来ないというか、絶対今の実力で納得行くものが出来ないと分かりきっているのになんで自ら飛び込んで嫌な思いするの? マゾなの? と思っちゃうのです。

7年以上クラシックギター1本で好きな曲をアレンジして投稿することを続けている友人が居るのですが、彼が1年ほど前にDTMを始めて以来、圧倒的な成長スピードでクオリティの高いオリジナル曲を作れるようになっていくのを見てきました。当たり前の話かもしれませんが、 「音楽的素養(音感やアレンジ力、曲の聴き込み量など)がある状態でDTMを始めれば、DTM特有の知識差分(例えば音作りやミキシングなど)を中心に学べば最初から良い曲が書ける」 ということを再認識しました。彼以外にも同じようなケースは見たことがあります。

少なくとも自分は理想の音楽が書けないと分かった状態で作曲するのが苦痛ですし、彼のアレンジ活動にあたる行為を通じて音楽的な地力を上げていく方に楽しみを見出すタイプです。耳コピは音楽を様々な角度から分析することができて面白いですし、SoundQuest音楽理論の解説サイト)をだらだら読むのも好きです。好きなことの方が集中が続くので単純に成長効率が良いです。

そもそも作曲って自分が良いと思うものを音楽というフォーマットに具現化する行為だと思っているので、良いと思うこと、楽しいと思うことをしっかり味わいながら取り組む姿勢が日常的に重要だと考えています。音楽に限らず日常のあらゆる場面で自分の感情がどう揺れ動いているかに敏感になることが創作の礎になるのだと思います。

彼の意見も伺ったところ、結論耳コピやバンドスコアの打ち込みは音楽的地力の底上げに有効そうだという話になりました。もちろんオリジナル曲を作ることでしか得られない力もどうしてもあります(簡単に言うと曲の構成力とか)。ただ耳コピをすることで作曲に必要な要素の大部分をカバーでき、かつ耳コピを楽しいと感じるのであれば、一旦耳コピに傾倒してそこで上げれる地力をある程度まで上げてしまってからオリジナルに挑戦した方が遥かにとっつきやすくなるのではないかと思います。

そういうわけで私の最終目標はオリジナルのアニソンやボカロみたいな曲を書けるようになることですが、今は耳コピ音楽理論の学習が楽しいのでそっちに傾倒しています。

自分でもかなり偏った思考だと思いますし、絶対正しいと言うつもりも毛頭ありません。こういう考えの人も居るのかくらいに思って頂ければと思います。

『CHASE!』基本情報

CHASE! / 優木せつ菜(楠木ともり

作詞:鈴木エレカ・JOE

作曲:鈴木エレカ・JOE

2018年, BPM170, Key of E / Db

youtu.be

選曲理由(アニメネタバレ有)

  • サビの「ミレシドシ」のメロが強烈すぎて頭から離れない。
    • この曲がアニメ1話の冒頭数分で流れるのヤバくないですか?

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あまりの強烈さにふっ飛ばされる筆者

  • アニメ10話で侑がこの曲をピアノで弾くシーンがあるが、3話の時に比べて上達しており、自分の輝ける場所を模索しつつ進んでいく姿が尊い
    • ピアノアレンジでサビ頭のメロを聴くとより泣き感が増す。私は泣いた。

楽曲背景

CVの楠木ともりさんは2018年ガンゲイル・オンラインのレン役で主役に抜擢、EDの『To See the Future』(この曲もめちゃくちゃ良い!)のボーカルも担当。同年虹ヶ咲学園の優木せつ菜役にも選ばれ、今冬アニメ放送中。

2020秋アニメ『魔王学院の不適合者』にもヒロインとして出演と同時にED『ハミダシモノ』(この曲も良いぞ)の歌唱を担当。

『CHASE!』はTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の劇中歌。1話冒頭で流れる他、侑が10話でピアノアレンジを披露している。

本人インタビューで以下のようにコメントしている。

『CHASE!』はせつ菜の葛藤の曲なので、必死さが出ても成り立つし、むしろそのほうがいい

gs.dengeki.com

楽曲解析

Intro〜間奏

Intro→間奏→(ここで転調)→Aメロ。E→Dbへの短3度下転調。

SoundQuestにも解説があるが(要無料会員登録)、IIIをVと見立て直し、V-VImの動きで転調を完了している。

soundquest.jp

間奏後半

E Major → Db Major

A  B G#
IV V III
     (Ab=V)

Aメロ

4つの循環コードを4回繰り返すだけのシンプル構成。

Db Major

Bbm Gb Ebm Ab
VIm IV IIm V

前半後半で楽曲全体が4ビート→8ビートに変化することで進行感が得られる。

Bメロ

Db Major → E Major

Gb Ab Bbm Db
IV V VIm I

Ebm  Fm   A   Gb   Ab
IIm  IIIm VIb IV   V
          (IV) (II) (III)

前半は問題なし。後半が難しい。

ラストが移調先のIIIでサビ頭のVImにP4上で接続するのは分かるが、移調元で出てくるVIbは何??

軽く調べた所Mixolydian音階(ロックでよく用いられる)と関係ありそうな雰囲気。

soundquest.jp

更に VIb に行ったと思ったら IV→V とDbのダイアトニックコードに戻ってくるにも関わらず移調が出来てるのも不思議。 これまた現段階の知識では解釈出来なかったので識者のご意見お待ちしております。勉強せねば。

サビ

E Major

走り出した! 思いは強くするよ
C#m A B E
VIm IV V I

悩んだら 君の手を握ろう
C#m A B E
VIm IV V I

なりたい自分を 我慢しないでいいよ
 A#m7(b5)  A B E
IV#m7(b5) IV V I

夢はいつかほら 輝き出すんだ!
F#m G#m C#m
IIm IIIm VIm
  • 前半はド直球なTonic→Sub dominant→Dominant→Tonicで攻めのコード進行。
  • ポイントは後半頭のIV#m7(b5)→IV。泣き感を出す定番進行(『ラプラスにのって』 等)
    • https://tanuki-guitar.com/ivm7-5-use
    • ルートが半音下がっているだけな点に注目
    • 力強い歌詞に合わせ、直球なdiatonic chordで占められる中でIV#m7(b5)が光る。
  • ラストの「ほら 輝き出すんだ!」はドミナント→マイナートニックに向かうP4上進行(通称強進行。TSDを循環する)で最も力強い。
    • 最後は便宜上IIm→IIIm→VImと「m」付きで表記しているが、実際にはギターはパワーコードを鳴らしているので短長のクオリティは無く、力強さが前面に押し出されている。

耳コピtips

Intro

最後、全体がクレッシェンドして間奏に入る。これはマスタートラックにGainを挿してオートメーションを書く形で実現した。Logicでマスタートラックを表示する方法はメニューバーから「トラック」→「マスタートラックを表示」。

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マスタートラックを表示

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マスタートラックのオートメーション

Aメロ〜Bメロ

ピアノとリードギターはEQで音をsideのみに絞ると顔を出してくるので積極的に活用する。

Aメロ前半のピアノ、delayが掛かっているのか実際に弾いてるのか境界が曖昧。ただよく聞くと部分的にしかdelayかかってなさそうだったので、基本弾いているものとして処理した方が楽と判断。独特の明るい響きはオクターブ奏法。

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ピアノのオクターブ奏法

ドラム、ベースはほぼ楽勝。ドラムはあまりコピペが使えないのと、BD/SDのゴーストノートに注意。ベースも少し聞き取りづらいので、ベースの音域だけEQで拾うようにするとやや楽。コーラスは基本3度上だがたまに外すのがアクセントになっている。

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ドラムのゴーストノート

Aメロ後半〜Bメロの右の歪んだギターは、ベースと音域が被っていてギリ存在が確認できる程度。EQ等でmidを切るとベースがかなり消えてくれることを利用し、残った低音を歪んだギターと仮定して処理したが、正直かなり苦しい。

サビ

Chorus

まさかのめちゃくちゃ苦労パート。EQでmidを削ってもChorusが浮かび上がってこない。普通に聞いた方が聞こえるが厳しい。頑張って聴くしかない。サビは基本下ハモりだが、9-12小節目だけ上でハモっている。3度下、4度下、6度下が入り乱れておりラストはオクターブ下で締め。

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サビコーラス

Gt

サビは概ねパワーコードか? と思ったが、聞き取りやすいトップノートを拾っていくと3rdが含まれているところがある。結局ラスト以外は全部3和音で拾った。ラストは明確にパワーコードで、暗さがなく力強さが印象に残る。(試しに3rdを入れると明確に違うのが分かる。)

Bs

Gtの低域がぶつかってて聞き取りがムズい。Gtに動かれたら死ぬ。サビ8小節目は聞き取れないので4小節目をコピった。

Pad

シンプルな音なのになかなか近い音源が見つからず、ちょろっと誤魔化した。

Intro / Outro

イントロのラスト〜間奏やアウトロでは、ピアノに4分のdelayがかかっている。

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ピアノのdelay

反省点

  • サビのPadの音を誤魔化した。Logicのプリセットを聴き込む会を設けましょう。
  • Introのクレッシェンドする部分でFXが鳴っているが拾わなかった。シンセを学ぶなりFXの探し方を学ぶなりしましょう。
  • ギターの奏法を勉強しようと思って5億年経過した。奏法を学んだ上でそれらが実現出来る音源を買うと良いかもしれない。
  • 前回の『お勉強しといてよ』耳コピに28時間掛かりましたが、今回はこのblogの下書きメモ的なものを書きながら18.3時間に収めることが出来ました。これはかなり進歩! 最終的には5-6時間で作れるようになりたい。

感想

耳コピを通じてこの曲がめちゃくちゃ好きになりました。

葛藤を抱えながらもまっすぐ進もうとするせつ菜ちゃんの力強さを感じさせられるボーカルやサウンドにすっかり惚れてしまいました。ライブで聴きてえ!!!

ちなみに虹ヶ咲学園の推しは璃奈ちゃんボードです。

*1:厳密には11月に『リテラチュア』のサビ〜アウトロだけ耳コピしていたのですが、クオリティに納得が行かなかったのでワンコーラスの耳コピは諦めました

ファッションメンヘラITエンジニアの人生戦略

先日『ITエンジニアのための「人生戦略」の教科書』という本を読みました。自称ファッションメンヘラITエンジニアの私としては共感する部分もありつつ過半は「これは私には適用出来そうにない」という感想を抱きました。それを踏まえて、それなら私のような人間はどんな人生戦略を練ればよいのかについて、この本の感想文を書きがてら考えてみようと思います。

最初に軽く私の状況を説明しておくと、典型的な東大卒アスペルガー疑いです*1。自律神経失調気味で、8時間x5日のフルタイム労働を(残業は数十分程度に過ぎませんが)常にギリギリでこなしているような状況です。8時間睡眠でも熟眠感がなく、2年前から過敏性腸症候群らしき症状があります。低気圧が来ると決まって頭痛に襲われ、最近は週末頭痛も時折起こるようになりました。心療内科に月1で通い、全身の緊張を軽減するためごく軽めの薬を2年近く服用しています。

世の中の自己啓発書は健常者を前提に書かれている

まず最初にはっきりと断っておきたい点として、世の中の自己啓発書は読者が健常者であることを前提に書かれている ということを言っておきたいと思います。

例えばホリエモン。氏の著作は数冊読むとどれも同じようなことが書いてあることが分かるのですが、要は「自分の好きなことに熱中しろ」ということを一貫して主張しています。しかし私のような幼少期から「長男&小学受験&神童扱い」と他己評価漬けで生きてきた人間には今更自分のやりたいことなんて分かりません。自分で自分を愛するということを幼少期に学ぶ機会を逸してしまい、周りから褒められることでしか承認欲求を満たすことが出来ないのです。そもそもメンタルに根深い問題があるので、いくらホリエモンの本を読んだところで「なるほど、健常者はそうなんだな」という理解が得られるに過ぎません。

また、今回取り上げる本書でも、著者は比較的ブラック寄りな考え方が見え隠れします。

私は、死ぬほど仕事をしても実際に死ぬことはほとんどないだろうと思っている。 (p.58)

これは私のような8時間フルタイム労働ですらやっとの思いでこなしているような人間には到底現実的ではありません。というかこれ、完全に一昔前のワタミやんけ。ITエンジニア向けの本なんだからもう少しロジカルなものを期待していたのに残念です。

別にビジネスで成功したいと思ってない

本書では一貫して「ITエンジニアがビジネス的に成功するには」という問題に対する著者なりの現実的かつ具体的なアプローチが語られています。ところがそもそも私は別にビジネスで成功したいと思っていません。 私は趣味を充実させていくための生活の基盤として仕事をしているというのが8割で、仕事自体を目的と捉えて人生を充実させる成分は2割程度と捉えています。そもそも仕事で成功することだけが人生戦略じゃないですよね。

もちろん仕事は精一杯、本来の実力以上の力で向き合っており(でないとチームで求められる水準に達せないので)、その代償として土日に大量の睡眠を必要とするような状況になっているほどです。その中でも趣味を充実させたいので、限られた体力と時間を何とか工面して生活しています。

本書における成功モデルは4ステップに分かれています。最初は本業+受託開発の副業に始まり、最終的には自分のサービスだけで食べていけるようにするというものです。まずこの第1ステップである「副業」というのがもう無理です。そもそも8時間×5日で精一杯なのに、それに加えて責任ある仕事を増やすなんてとても考えられません。

それに下請けは個人的に良い思い出がありません。大昔アルバイトで下請けをやっていた時期がありましたが、自分が良さを感じられないアプリやサービスを作るのは決して面白くありませんし、プロジェクトが炎上してトラブルになったりと非常に厳しい世界でした。当時の経験から自分が納得したサービスを作るために自社サービスの会社に就職して満足しているので、今となっては貴重な経験だったと思います。

そういうわけなので、私は内容的にも体力的にも副業で受託開発は避けたく、せいぜい技術書を読んで自己研鑽するのが関の山です。逆に言うと技術書を読むのは有効であり、かつ必須と考えています。これが私の人生戦略その①です。

人生戦略① 技術書を読み、最高の効率で技術力を向上させる

私の場合、副業をこなす体力はありませんし、その体力があるなら趣味に振り向けたいと考えています。ですが一方で新卒4年目を迎え未だに技術力が足りないことを日々痛感しています。この3年間、全く自己研鑽をしてこなかったわけではありませんが、周囲の新卒が学生時代からバリバリやってきている中、私はあまり本格的な・最先端のプログラミングの経験もなく入社しており、入社時から差がついているにもかかわらず、その差を埋めようとする(業務時間外の)努力は正直なところ十分でなかったというのが自己評価です。

ですが私は腐っても東大卒。資格取得が趣味でもあります。勉強することには並大抵の人よりは慣れているという自負があります。仕事というアウトプットを前提とする勉強にシフトすることを意識する必要はあるものの、技術書を読んで学習するという形をとることで、プログラミングをある程度自分の得意分野に持ち込むことが出来る可能性があります。

ビジネスで成功するとかしないとか以前に、今いる会社で価値発揮出来ることが大前提です。でなければ食べていけませんし、趣味もおぼつきません。なので私はその最低ラインを確保し、安心かつ安定して稼げるようになるために勉強をする必要があります。ただし求めるラインは独立開業を目指す人と比べれば高くありません。日々の仕事を問題なくこなせれば良いので、せいぜい転職市場で年収600万程度の値がつくレベルになれればそれ以上を目指す必要は全く無いと考えています。

今の部署で言えば、PHP, Rails, Python, Go言語で問題なくコードが書けて、Kubernetesの運用管理の基本が出来る程度で十分です。あとはテスト駆動開発やら見積もり手法やらスクラムやらを必要に応じてかじっておけば良いでしょう。恐らく技術書を20冊も咀嚼出来れば、あとは仕事を続ける中で十分身につけることが可能と考えています。確かに私は体力に自信がありませんが、それでも昨年度実績で趣味の通訳案内士の勉強に年間200時間以上費やすことが出来ました。それを全て技術書を読む時間に充てれば、1年から1年半もあれば学ぶべき内容はひととおりマスター出来るでしょう。

人生戦略② 「遊びの時代」に備え、自己実現に向けて趣味に取り組む

私の考えでは――もとい、願望を多分に含むのですが――今後AIが市場に浸透するにつれ、定型業務がどんどん人の手から奪われていった結果、新たなビジネスを創造することや、イラスト制作等のクリエイティブな仕事しか人間には残されなくなってくると思っています。非常に高度で誰でも出来る仕事ではありませんから、当然仕事にあぶれる人が増えます。となると治安維持のためにベーシックインカム導入が必要になる。

最終的に仕事は「数ある自己実現の手段の一つ」に成り下がる可能性があると考えています。そんなAI時代には仕事が出来る・出来ないというのは人生の充実度を示す尺度としての力をだんだん失っていくのではないでしょうか。もっと広い視野で自己実現の手段を見つけておくことが重要で、絵を描くとか走るとか音ゲーするとか、何でもいいので熱中できることを見つけることが人生の質を大きく左右する、そんな「遊びの時代」が到来するように思います。

孫さんはじめ多くの著名人が「人間の仕事は無くなっていく」と言及していますし*2、シンギュラリティを待たずとも、既に世の中には専ら資本主義の歯車を回すためだけに存在する仕事が溢れています。昨今の情勢からリモートワークが定着しつつありますが、それをきっかけに奇しくも「実は要らなかった仕事」が浮き彫りになっているように感じます。その意味ではコロナは文明の進歩を5年10年早めてしまったかもしれません。

こうした思想のもとに生きているので、仕事を減らすための仕事か、「遊びの時代」を盛り上げる労働しかしたくないと常日頃から思っています。

キャリアで成功する以外の自己実現についてもっと語られるべきではないでしょうか? まもなくAIに取って代わられBIの時代がやってくる。そうなったら人生における自己実現の手段は一気に広がる。その時に備えて趣味に没頭する能力を身に着けておくのが真の生存戦略ではないかと思うのです。

とはいえすぐにそんな時代に0→1で切り替わるわけではありません。過渡期はしばらく続くでしょう。私はそんなに強気になれないので、食べていくことの心配をしながらではじっくり趣味に取り組むことは出来ないと思っています。「脱サラして趣味に生きる!」とかはちょっと無理です。なので私は仕事をしながら趣味を並行しています*3

今はまだ仕事のスキルが未熟なのでエネルギーの大半を仕事に回さねばなりませんし、独学でスキルアップも必要だと考えていますが、ある程度スキルを貯金したら徐々に仕事に割いていた体力を趣味に回せるようになってくると思います。そのため短期目線ではいかに早く技術力をつけるかが勝負だと考えています。

総括

本書は以前から読みたい本としてAmazonウィッシュリストにも入れておいたのですが、最近見てみたらkindle unlimitedに入っていたので早速一気読みしました。内容は正直自分にとっては直接参考になるものではありませんでしたが、順当にITエンジニアがビジネスにおいて成功するための現実的かつ具体的なステップを説明している本としては稀有な存在であり、読む価値のある一冊だと思います。私自身も「こういう考えの人も居るんだな」と一歩離れた場所から眺めつつ、では自分はどうすればいい? と再考するきっかけに出来たので悪くない時間の使い方でした。そして技術書読書強化期間の1冊目を飾る本にもなりました(これが技術書かというと微妙なところではありますが)。

冒頭でも述べた通り、巷の自己啓発書は健常者向けに書かれています。健常者でない人はその自覚をもち、「一般的な自己啓発書の内容は自分にそのまま当てはめられるとは限らない」という事実に気づくことが重要です。でないと「俺は自己啓発書を読むだけで満足して終わるダメな奴なんだ」となってしまいます。貴方に必要なのは客観視であり、人によっては精神科や心療内科に通うことです。

巷にはこれだけ自己啓発本が氾濫しているのに、体力がないとか、発達障害を抱えている人の生存戦略について書かれた本があまりにも無さすぎると感じています。大人の発達障害うつ病に対して社会が寛容になりつつある昨今、そろそろそういった流れが来ても良いんじゃないかと思っていますが、如何でしょうか。

*1:アスペルガー症候群の真実…東大など高学歴な人に多い説は本当か?専門家が解説 https://biz-journal.jp/2017/03/post_18344.html

*2:https://business.nikkei.com/atcl/report/15/252773/030600034/

*3:前半で「熱中できることが分からない」と言っておきながらこいつは何を言っているんだと思われるかもしれませんが、すごく雑に言ってしまえば「どれも大してやる気ないけど、一番マシだと感じること」をやっているに過ぎません。この辺りの話は今回の本筋ではないのでこれ以上は割愛します

『お勉強しといてよ』を耳コピしてみた

前回の記事に引き続き、耳コピ第2弾です。

nearnoah.hatenablog.com

今回はずとまよさんの『お勉強しといてよ』を耳コピしてみました。

www.youtube.com

耳コピしながら感じたこの曲の魅力や苦戦したところ等を書きます。

今回もほぼLogicのみで完結しており、ボーカルにSynthesizer Vの闇音レンリ、そして期間限定で無料配布されていたiZotopeOzone Elementsをマスタリングに使いました。

今回の目標

  • 作業時間をワンコーラス20時間以内に抑える(前回は40時間)
  • ボーカルはちゃんとボカロか何かに歌ってもらう(前回はピアノのみ)

パート別感想

ボーカル

めっちゃリズムむっず!!! 特にAメロ。これカラオケで歌うのめちゃくちゃムズいと思う。「想像力が無限大・魅力的なので」の部分ヤバい。全体的に長めの歌詞を曲に載せるために若干無理して圧縮してないか?w と感じる箇所が多いものの、それがまた独特のリズムを生み出している感じもしますね。

当初初音ミクの音源を購入しようと思ったのですが、想像以上にお値段がしたので諦めました。初音ミク音源は現在ボカロ4が最新版なのですが、ボカロ4のエディタはもう中古でしか売っておらず、公式ですと4万円ほど出してボカロ5用エディタ(音源4種つき、ボカロ4音源にも対応)とミクさんの音源を買うしかなさそうということが判明しました。

今回は無料で使えるSynthesizer VというVOCALOIDに似たソフトを使ってみました。最終的には今回歌ってもらった闇音レンリちゃんの音源の方がこの曲には合ってたなと思いますし、Synthesizer Vのエディタも直感的で無声音の調整程度である程度それっぽく歌ってくれてとても楽でした。結果オーライ。

ちなみにSynthesizer V Studioというのがあるのですが、Basic Editionが何度クリックしてもDL出来ないと思ったら7/30リリースでした(深夜で頭回ってなくて英語が読めてませんでした)。Fandomを読んで旧バージョンをDLしてきましょう。

基本的な使い方はFandomを読めば大体分かります。Logic側ではボーカルやコーラスをパート毎に1つのリージョンにまとめてMIDIで書き出し、Synthesizer Vで読み込みます。マルチトラックにも対応しています。

synthesizer-v.fandom.com

というわけで今回は闇音レンリちゃんに歌っていただきました! ありがとうございます!

いずれは噂のAIきりたんも試してみたいですね。

コーラス

サビ頭「ファンキーな直感で」のところ、MSのMainを削るとオク下で男のような声で歌ってるのが聴こえるんですが何かエフェクト足してるんでしょうかね? 一応ここのためだけに1つパート増やして対応しました。

アウトロをよく聴くと、割とはっきりと左で「ベーベーベッベッベー」ってコーラス入ってるのがなんか面白い。

ベース

元々スラップベースはハウスミュージックと並んで最も享楽的な*1音楽の構成要素だと思ってましたが、今回打ち込んでて改めてその良さに気付かされました。

初めてスラップベースをそれと認識したのは多分大昔にプレーしていた『ぱるメロ♪』でだったと思います。『ぱるメロ♪』も『パカパカパッション』もやり込むだけで勝手に編曲の基礎が身につく神ゲーなので是非プレーしましょう。Win10でプレー出来るか分かんないけど。

www.palmelo.jp

スラップベースがえっちなのは分かっていましたが、奏法も打ち込み技法も全然分からなかったので適当にググって動画を参考にしました。実際に演奏している動画も一応見ておくことで頓珍漢な打ち込みを防ぐことが出来るかなと思います。最低限のスラップベースの打ち込みノウハウはみんな大好きSleepfreaksを見ておけば押さえられると思います。

www.youtube.com

『お勉強しといてよ』のベースは盛り上がるにつれてスラップに切り替わるのが印象的ですね。サビに向かってシンコペ度合いが増していくのもお約束ですが楽しい。

Aメロ後半から入ってくるベンベン(C C Eb Cの繰り返し)がギターかベースか分からなかったのですが、音域的にはどちらもあり得るのでLogicのプリセットから最も音が近いと感じたpicked bassを採用しました。音作りはよう分からんので再現度はさほど追求せず軽めで。

ドラム

何より打ち込みと生ドラムの2つを混ぜてるのが特徴的ですよね。

リズムマシンは初めて使ったので何も分からんって感じでした。ひたすら色んな音源を聴いて近いものを採用しました。

生ドラムに関しては「叩いてみた」動画も少し参考にさせていただきました。とはいえこちらも原曲を完全再現しているわけではないようです。動画として観る分には楽しい。

www.youtube.com

ピアノ

この曲は中音域に位置するピアノとストリングスがぶつかり合って耳コピ難易度を上げています。特に盛り上がるB2〜サビの耳コピ難易度は非常に高い。他のパートを先に耳コピし、消去法で攻めることにしました。最終的にはMSのMainを切るとそれなりに聞こえたのと、最後は己のバイブスを信じることに。

アウトロもめちゃくちゃオシャレなんですが耳コピは地獄! でもかっこいいから頑張る。最後のキメはI△7っぽいですね。普通Iには7th付けないと思ってました。おしゃ。

最後の最後にはみ出たピアノが高音でぶっ壊れた和音を出してますが、こんなの絶対音感でもなきゃ正確に聞き取れるわけね〜〜〜って感じなのでそれっぽくやってみました。

ギター

ロックギターは30分とかからず瞬殺。ほぼほぼ同一の繰り返しが3回。

Bメロ前半で左右に振ってるクリーンギターはどうやって録ってるんでしょうか? 教えてエロい人。とりあえず左右で別々に耳コピしてみました。右はHPFかける程度で聞き取れましたが、左は低音で聞き取りづらく、左のイヤーカップだけ耳に当ててようやく聴こえました。ちなみに一連の耳コピ作業にはAudio-TechnicaのATH-M40xを使っています。もはやこれ無しに耳コピは不可能。

ストリングス

ストリングスの打ち込み自体慣れてないのに楽器単位でバラすのは心が折れるのと時間的制約もあったので順当にストリングス音源を使いました。 ↓の動画を参考に、とりあえずボイシング広げておけば何とかなりそうという気持ちでやりました。実際音の高さの間隔を広げるだけで豊かさが全然違います。基本2オクターブに広げて重ねました。

www.youtube.com

ピアノと同様、MSのMainを切ると聞こえやすかったです。

Logicでストリングスを打ち込む際はアーティキュレーションが重要でした。staccatoにしないと細かい動きのあるフレーズがアタックが弱すぎて聴こえません。長い音はlegatoにしてしっかり使い分けました。

総評

曲について

めちゃめちゃ良い曲だなと改めて感じました(小並感)。自分が耳コピしたいと思うだけのことはある。

スラップベースはエロいわ、ピアノはオシャだわ、ストリングスは重厚だわ、キメで入る打ち込みのリズムマシンもスパイスになっているわ、必要十分なパート・音符で構成されているのを耳コピしていて実感しました。

今回はボーカルも歌わせることで歌詞にも意識を向けることが出来ました。歌いまわしがなかなか高度で、歌詞自体にも言葉遊びが盛り込まれており多角的に楽しめる曲だと再認識した次第です。初っ端から「質のいい病み感情」という表現が既に分かりみに溢れてます。思わず書き留めずにはおれない病み感情、ある。

反省点

当初の目標ですが、

  • △ 作業時間は完パケまで28時間(8時間オーバー)
  • ○ ボーカルはSynthesizer Vを使ってちゃんと歌わせることが出来ました

作業時間は目標未達ですが前回よりは遥かに短時間で済ませることが出来ました。作業時間は社会人の限られた時間・体力の中で趣味として継続していくにあたり馬鹿にしてはならない指標だと考えています。あまりに1曲に時間を掛けてしまうと途中で気力が尽きてしまうのは前回身を持って知りました。

ボーカルも本当はもう少し調教について調べてこだわれるポイントはあったと思いますが、限られた時間の中では最大効率で良いものが作れたと思います。

ところでギターとベースは奏法やエフェクターが多すぎて勉強しないと二進も三進もいきません。まあギターやベースをやっている知り合いに聞くのが一番手っ取り早いんですが……。

余談

とりあえず2曲書けたので、今年下半期の目標を公言して自らを追い込んで締めくくりとします。

  • 月1ペースで耳コピorアレンジor自作曲を作成&公開する
  • 週1冊ペースで技術書を読む(但し以下の期間を除く)
  • 通訳案内士2次試験に合格する(6週間学習に充てる)

次はどの曲にしようかな!!

*1:私はしばしば「えっちな」と表現します。ハウスは18禁。

防振りの劇中歌『Good Night』を耳コピしてみた

『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』(通称『防振り』)のアニメを観ていたら劇中歌の『Good Night』に一目惚れならぬ一聴惚れしてしまったので、N年ぶりに耳コピをしました。

Twitterランドのたくさんの方にお世話になりながら完成させました。 本記事は得られた知見のまとめです。DTM脱入門くらいの人に役立つかも。

最初に総括

  • 今回はラテン系のそこまで聞き慣れていないジャンルだったこともあり、テクいドラム中心に打ち込みにかなり難儀しました
    • 最初から難しいのは承知で、曲愛だけで何とか乗りきるつもりだったものの、途中から若干だれてきて結局40時間ほど掛かってしまった
    • 長い目でやっていくなら、もっと簡単な曲をテンポ良く耳コピしていった方が地力上げの効率は良いかも
  • ギターなど基本的なパートの打ち込み技法も正直あやふやなので、手持ちの本などでざっとさらうと良さそう
    • Logicの基本操作の復習も行うことで作業スピードの底上げを図りたい
  • 私の音楽理論レベルは下記の程度ですが、高度にテクい曲でなければまあ何とかなるっぽいです
    • Diatonic Chordの基本的な運用(Dominant Motionなど)は分かる
    • コードの対応スケールやメロのTension or Avoidは考えれば分かる
    • セカンダリドミナントや裏コードの概念をググって思い出す
    • 楽曲中にIII7が出現した時にメロから対応するスケールを苦労しながら同定した(Harmonic minor P5 below か Alteredで悩んだ)
  • 理論の知識や音感が足りないと思ってましたが、むしろ楽器の同定、打ち込み方、音の作り方(音源・エフェクト)の方が遙かに地力が足りていないことが分かりました。全体的に音がダサい。音源弄るの慣れてない
    • せいぜいベロシティ弄ってヒューマナイズかけて、パート毎にオートメーションでボリューム弄ったくらい
    • 音源は勘で適宜少しだけ弄った程度

コード解析アプリの活用

「最短で耳コピを完了する」という観点ではここに時間を割きすぎるのは賢明ではないと思いますが、私はどうしてもコードを解明したかったので注力いました。コード解析アプリは2つ試しましたが、ヤマハのChord Trackerが(主に7thの有無を正確に判定出来ているっぽい点において)比較的優秀でした。

jp.yamaha.com

もちろん完璧ではないので、ある程度自分で修正は必要です。そういう意味で「Diatonic Chordって何?」ってレベルだと流石にキツいです。ただ最終的には頭で考えず音色を実際に確認することもまた大事です。鳴らすと一発で違うって分かることもあるので。概してコード解析アプリは「それに依存する」のは危険で、あくまで音感の無い人が作業スピードを短縮する・答え合わせ用に使うのが良いのかなと思います。

とりあえずワンコーラス解析した上で誤りを検討・修正し、一通り納得がいったところでやっと打ち込みに入りました。理論を思い出すのもN年ぶりだったので、ここまでで多分5〜6時間くらい使ってます。

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コード解析の様子

特に今回の題材の『Good Night』はこれでもかと繰り返されるF#sus4やF#(key of Aのとき、マイナー「ではなく」メジャーのVI)がおしゃれな明るさを演出するのに大きな役割を果たしていると感じました。またサビ前のC#7(III7)の上でフルートがE(#9)を鳴らしておりスケール的には恐らくAlteredかなと思うのですが、これまたこの曲を強く印象づける要素になっています。全体としてはIV-V-IIIm-VImの定番進行やIV-V-VIの繰り返しを基調としつつ、Aメロ後半に差し込まれるBbdim7やBメロのサビ直前に一瞬入るIII7(こちらはHarmonic minor P5 below)が曲を引き締めるスパイスになっています。

ベースのEQと低速再生(Varispeed)

EQで再生帯域を80〜1kHz程度に絞りました。倍音を聞け、というフォロワーさんの意見に従い上限は比較的上に設定しました。

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bass耳コピ用EQ

多くの楽器が入り乱れてくると聞き分けが困難になりますが、Logicには再生速度を変更するVarispeedという機能があり、目立った音質劣化なく半分のBPMまで下げることが出来ます。これが無いとベースに限らず細かいフレーズの耳コピは相当に至難です。

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Varispeedを有効にする方法(1)

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Varispeedを有効にする方法(2)

ベースは音が低すぎて正確な音程が聴き取りにくいこともあります。打ち込んだ譜面をオクターブ上げて(Option + Shift + ↑)聴くと誤りに気付きやすくなります。これも地味に知っておくと便利。

一通り出来たら予め解析しておいたコード進行と照らし合わせ、誤りがないか確認しました。

ボーカル抽出

特にコーラスは音が小さく、「どうせ基本は3度下でしょ?」と思いつつも一応確認したい気持ちがありました。幸いiTunes Storeでカラオケ音源が販売されていたので、これを使ってボーカル抽出を行いました。 残念なことにMac OSX Catalinaに対応したAudacityが未リリースだったので、Logic上で作業しました。

1) Vo.入りとVo.無しの音源をピッタリ合わせる

  • 合わせる→拡大→合わせる→拡大……を繰り返して最大倍率まで拡大した所まで調整出来ればズレを解消できます。

2) Vo.無し音源の位相を反転させる

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位相反転でボーカル抽出

  • プラグインでUtility→Gainを選択し、『Phase Invert』のL, RともにONにするだけです。

3) 2つの音源の音量を一致させる

これで波形が打ち消し合い、差分としてのボーカルのみが抽出されます。

もちろん最近はカラオケ音源が無くてもボーカル抽出するツールが出回っていますが、やはりカラオケ音源を位相反転する方法の方が綺麗に抜けると思います(比較はしてないので知らん)。

パーカス

『Good Night』はドラムがややテクニカルでコピペがあまり通用しません。まずLPFを掛けてバスドラの位置を把握し、次にHPFを掛けて金物を、最後にタムやスネア用のEQプリセットをベースに音を判別しやすい位置にピークを持って来つつ皮物を地道に耳コピしていきました。 ラテン系の曲なのでボンゴやシェーカーが鳴っているのですが、シェーカーはCabasaなど似た音がラテンパーカッションには幾つか存在するようなので、正確にこの楽器だ! と同定するのは諦め、名前にこだわらず音色が似ている音源を使うことにしました。この辺りは妥協ポイントです。

M/SのMainを切る

非常に小さい音で鳴っているギターを素で聴き取るのは至難の業です。そんな時はEQでMain/SideのうちMainの音を切ってしまうと、隠れていた音が顔を出す場合があります(出さない場合もあるのでその時は諦めました)。

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M/SのMainを切って聴き取りやすくする

今後やること

理論よりも打ち込み技法や楽器、音源の弄り方、プラグインの使い方、DAWの作業効率化について知るのが重要そうだということが分かってきました。手元にあるこの辺りの本で基礎を固め直すと次回作以降の質・スピードともに向上しそうな気がします。

もっと踏み込んだ話をすると、プロの楽曲制作工程を解説つきで見られたら最高だと思っています。

で、DTMに関してはまさにドンピシャな講座が既に出ています。流石に少しお値段が張るので、もう数曲耳コピ出来てDTMモチベが高い状態をある程度の期間維持していたら購入してみても良いかなと思っています。

www.piko-piko.jp

冒頭で「簡単目の曲をこなした方が学習効率は良いかも」と書いておいてアレですが、それ以上に数十時間耳コピに捧げてもいいと思えるくらい好きな曲を耳コピすることが大事だとも思っています。ただ私が好きな曲はどれも耳コピには難儀しそうなので、頑張って慣れていくしかないかもと半ば諦めています。

退屈凌ぎに丁度良いだろうと思って始めた耳コピですが、退屈凌ぎどころが無限に時間が吸われて大変なことになりかけました。技術書を読むのと2足のわらじをいい感じにやっていきたいと思います(今のところ技術書の方は完全に停滞していますが……)。

やりたいことが見つからないなら「退屈」と向き合ってみては

要旨

  • 仕事で繁忙期をサバイブしたら案外楽しく、刺激に飢え退屈している自分を発見した
  • 「やりたいことが見つからない」のは、「見つけなきゃ幸せになれない」と焦っているからではないか
  • 退屈している自分と向き合い、いかに退屈を凌ぐかを真剣に考え抜くことがやりたいことを見つける鍵になりうる

前置き

さて社会人4年目に突入し1ヶ月が過ぎました。4月下旬にプロジェクトの締切を抱えていたので、3周年の感慨に浸る間もないままこの時期になってしまいました。

弊社は自社サービスの運営が主なので、普段は良くも悪くも納期にシビアではなかったりします。クオリティが未達ならリリース日を延ばそうという判断になることが多いです。ところが今回締め切りがきっちり決まっているプロジェクトに私の記憶では初めて従事することになり、1ヶ月半ほど仕事のことばかり頭にある状態が続きました。

キャリア的にとても濃密な経験が出来たことは言うまでもありませんが、人生観というと若干大げさですがそちらにも価値観の変化をもたらしてくれました。入社3年目に突入した時も同じような話題でblogを書きましたが、その続きのようなものです(この記事を読んでいなくても本記事は読めます)。

nearnoah.hatenablog.com

「どうせ家帰ってもやること無いし……」

弊社はエンタメを扱う会社ということもあり、仕事をしながら趣味でコミケに出展したり、休日にイラストや自作曲を作っている人も珍しくありません。一方私は技術力もまだまだ未熟な上創作もほとんどやっておらず、仕事も趣味も(少なくとも主観的には)パッとしない状態が続いていることにコンプレックスを抱いていました。

私はアスペルガー傾向ということもあってか「全か無か思考」をしがちです。「趣味が充実していなければ幸せになれない」「ただ生存するためだけに仕事をするのは無意味だ」と思っている節がありました。どうにか趣味を充実させようと色々手を出してはいましたが、そこまでハマれるものは未だに見つかっていません。

さて仕事が繁忙期に入ると普段しない残業を珍しくするようになり、ほとんど誰も居ないオフィスで22時や23時、時には日付が変わる辺りまで働いてから帰ることもありました。今書いたように「趣味が充実してないと意味ない」という考えではこんな状況到底耐えられるものではないはずです。ところが私の感想は真逆でした。

「どうせ家帰ってもやること無いし、仕事してた方が楽しくね?」

そんな言葉が自然と脳内にちらついたのです。そして気づきました。

「自分はやりたいことが無くて心底退屈していたんだな」と。

どうせ家に帰ってもやりたいことなんて無い。少なくとも仕事は「退屈凌ぎ」には格好のネタだったのです。

「退屈を凌ぐ」という自分軸で問題を再定義する

繁忙期を通じて、「何者にもなれない」「個としてのブランディングを確立できていない」というコンプレックスを抱えると同時に、どうしようもなく退屈している自分がいることを発見しました。

誤解を恐れず言えば、自分がこれだけ仕事をしていたのって暇だからだったんです。忙しいという感覚がない。実際この1ヶ月半「忙しい」と呟いたことは記憶の限りでは皆無です。

仕事が落ち着いて今回感じたことを反芻した結果、「ハマれるものがないと幸せになれない」という命題の根底を構成する考えとして、「周りは皆趣味を充実させているよ」「趣味を充実させなければ幸せになれないよ」といった、脳内で勝手に作り出された同調圧力のようなものがあることに気づきました。これでは他人基準で幸福を定義してしまっています。そこから解放されて、単純に「私は心底退屈している」「退屈な日々を少しでもマシにしたい」という自己完結した・自分軸なモチベーションにすり替えるというライフハックを覚えました。

やるべきことは今までと変わりません。「今やれることの中で一番暇つぶしになりそうなこと」を探してやっていけばいい。ただその根底にあるモチベーションが「周りは自分のやりたいことをやって幸せになっているが私はそうではない」という他人軸から「とにかくこの退屈を凌ぎたい」という自分軸に変わることで、より素の自分を解放し、興味のアンテナの感度を高めることが出来るのではないかと思います。

だから最近は「いかに退屈を凌ぐか」ばかり考えてます。

「いかに退屈を凌ぐか」を常日頃から考えるの、他人依存的な生き方に比べればすごく自分本位で健全だと思うのです。「退屈だ」「何か面白いことないの?」という発想は義務感がない。自分が退屈でも誰も困りませんからね。

今後の展望

新卒入社から3年経った今思うこととしては、まだまだ技術的に未熟な一方で、いつまでも「淡々と目の前のタスクをこなして技術力を上げていこう」と言っていても幸福度は上げられないということ。自らやりたい仕事、今必要だと思う仕事を提言し主体的にキャリアパスを描いていくことで、より「退屈を凌げる」ワークスタイルを自らの手で確立していく必要性を強く感じています。

プライベートの時間の使い方も再考しました。三度の飯を忘れて没頭出来るようなことはそんなすぐには見つかりませんが、暇潰しにはなり得るレベルのやりたいことは幾らでも挙げられます。アニメ鑑賞、技術書を読む、世界史・地理・数学・語学学習、DTM、ランニング……。ただどれが最も退屈凌ぎになるかと考えた時に、暫定解としては「速攻で大きなフィードバックが返ってくること」がポイントになると思いました。具体的には技術書を読むのが良いと考えています。というのも技術書を読む→技術レベルの底上げになる→仕事が出来るようになる→社会に与えられるインパクトが大きくなって楽しいからです。

確かに語学なども楽しいですが、すぐに何かの役に立ったり社会に大きなインパクトを残せるかというとそうではありません*1。またフィードバックの早さで言えば音ゲーなどのゲームが筆頭候補に上がりますが、正直音ゲーは今かなりモチベーションがダウンしており、今年も2月以降はほぼプレーしていません。一時期はBMS発狂皆伝も目指そうかな?と思っていたのですが、それをやったところで結局社会に与えられるインパクトとしては弱くて以前ほど魅力を感じなくなってしまいました*2。自分の今の価値観では、社会にインパクトを与えることが最も楽しさを左右するファクターのようです。

もちろん一つのことにドハマり出来るほどの状態でもないので、実際は技術書を読みつつアニメも観たり、投資に関するYouTubeや本をチェックしたり、DTM関連の本を読んだり、健康維持も兼ねて走ったり、たまたま何かハマれるものが見つかれば臨時でそれをやったりと、柔軟にポートフォリオを変えていく感じのイメージでいます。特に最近はリモートワークで家に居る時間が圧倒的に増えたので、部屋の掃除や椅子の新調など環境構築にハマっています。

そんなわけで社会人4年目は「退屈」と向き合うことをテーマにやっていこうと思うのでした。

*1:そういう仕事に就くのが目標なら話は別ですが

*2:目指している人を批判する意図で書いているのではありません

通訳案内士科目免除のためにセンター日本史Bと現代社会を受けた

昨年8月の通訳案内士試験にて日本歴史と一般常識の2科目で不合格を頂戴し、来年リベンジする代わりにセンター試験で規定の点数を取ると免除出来る制度を利用することにしました。

9年ぶりに令和最初で最後のセンター試験を受験し、現役時代に利用しなかった日本史B現代社会に挑み、それぞれ71点と93点(自己採点調べ)を獲得、何とか規定点数をクリアし2次面接への切符を(恐らく)手にするまでの道筋をまとめます。

受験動機

通訳案内士受験記の繰り返しになりますが、まず通訳案内士の受験動機は「日本史、地理、英会話を勉強したく、資格取得を目標にして学習のペースメーカーにするため」でした。その結果日本歴史と一般常識で不合格となり、来年再受験する際の科目免除にセンター試験の点数が使えるため、今回センターを受験しました。

こう書くと一見本末転倒感がありますが、通訳案内士試験にせよセンター試験にせよ日本史を学べることに変わりはありませんし、何ならぶっちゃけてしまうと通訳案内士の日本歴史科目よりもセンター日本史Bの方が日本史のあらゆる分野を偏りなく学べます。

通訳案内士の試験は難易度や出題傾向が不安定な上、合格しても翌年までしか科目免除になりません。通訳案内士試験に最終的に合格するという観点から見ても、センター日本史Bで60点を取り5年間日本歴史を免除してもらう方がコスパに優れていると思います(センターの方が免除期間が長いというのも変な話ですけどね)。

ちなみに一般常識はセンター現代社会80点で代替出来るのですが、こちらの内容は政治経済が中心となっており、まずまず興味ある内容だった&元々ある程度知っていたのでサクッと受けてしまおうくらいの気持ちでした。

目標点数と難易度

科目免除には日本史B60点、現代社会80点が必要です。

日本史Bは平均点が65点前後ですので、平均点すら取れなくても良いと聞くと随分楽そうだなというのが当初の所感でした。日本史をきちんと学ぶというのが本来の目的ですから、目標も高く当初は9割に設定していました。

しかし当初予定していたテキストと問題集を3周ずつ終わらせて過去問を解いてみると、なんと70点。事故ったら最悪6割取れない可能性も見えてきて焦りました。センター日本史は決して簡単ではない*1というのが今の所感です。

ただ冷静に勉強時間を眺めてみると、テキストと問題集を3周ずつしたとは言え、70時間強しか掛かっていません。流石にそれでセンター9割取れるほど高校日本史は簡単な科目ではない、そりゃそうだ、という感じですね。

現代社会は無対策で受ける人も多く、ヌルゲーなためか東大受験でも選択出来ないくらいなので、短時間で攻略出来ると踏んでいました。合格体験記等色々読みましたが30-50時間もかければ十分そうという目算です。ただ8割取らないといけないので事故が怖いところ。その点は慎重に進め、高い完成度を目指しました。

学習方法

通訳案内士受験期の後日譚にも書いた通り、日本史はセンター用のテキストと問題集を1冊ずつ、現代社会はテキスト&問題集で1冊になっているものを買ってきて各々3周ずつ回しました。直前期には間違えた問題を更に復習しつつ、日本史はテキストを一部読み返しました。あとは一応過去問を買ってきて、日本史Bは2回分、現代社会は1回分だけ解きました。

日本史

以下のテキストと問題集(一問一答)を使いました。

みんなのセンター教科書 日本史B[改訂版]

みんなのセンター教科書 日本史B[改訂版]

手順は以下の通りですが、要はそれぞれ3周+α回しただけです。

  • テキスト1・2周目を並行
    • 前日読んだ部分を翌日読み直すことで記憶の定着を図った
  • テキスト3周目と一問一答1・2周目を並行
    • テキストを1時代分読んだらその時代の問題を1周
    • 翌日に一問一答の2周目を解くことで記憶の定着を図った
  • 一問一答3周目
    • 流れがあやふやな部分は適宜テキストに立ち返った
  • 過去問演習(2回分)、テキスト4周目(途中まで)

一問一答は過去20年分のセンター過去問の各肢をバラして一問一答形式にしたもので、これを全部解けるようにすれば9割が狙えるというコンセプトのものです。

テキストと一問一答を3周回した後、満を持して過去問を解いたところ、2019年の問題で70点、2018年で67点しか取ることが出来ませんでした。原因を考えましたが、日本史という科目は流れを理解した上での暗記が重要であり、一問一答では知識が点の形状でしかインプット出来ず、それらをテキストを何度も読み返すことで線で結んでいく必要があったと認識しています。一応テキストを3周読んではいたのですが、流れを理解するにはまだまだ読み込みが足りなかったようです(実際、3周読み終えた時点でも流れがあやふやな箇所は非常に多かった)。

この「流れを把握する」のが重要という科目の性質に気づいたのが試験の1週間前とかだったので、そこから慌ててテキストの4周目を読み始めました。試験直前はプライベートの予定も多く4週目は1/3程度しか読めなかったのですが、それだけでも今まで点にしかなっていなかった知識がある程度線で繋がっていく感覚が得られました。この調子で5周6周と読んだり、別のテキスト(山川の教科書とか)を読んだり、たまに問題集や過去問でアウトプットを挟んでいくことが出来ていれば、もう少し9割に近づくことが出来たのではないかと思います。一言で言ってしまえば勉強不足です。

現代社

アマゾンの評価も上々のこちらのテキスト&問題集1冊(+過去問)で勝負しました。

正直現代社会に関してはそんなに言及することがありません。「この本をやれば8割は取れる」というAmazonのレビュー通りです。

現代社会の出題範囲はざっくり言うと政経(+一部倫理)を簡単にしたものです。私は中高時代に政経を1度学び、その頃の記憶が奇跡的に残っていて、何故かコンドラチェフの波を覚えていたり需要供給曲線については何も見ずにホワイトボードで完璧に説明出来る程度の理解は最初からありました。試しに無勉で2019年の過去問を解いたところ67点取れたので、細かい知識をささっと拾えばまず問題ないだろうという所感でした。

上記の参考書を2周して改めて過去問を解いたところ93点と余裕の結果だったので、正直3周目をやらず日本史の学習に時間を回した方が良いのではとも思いましたが、結局3周目も読みました。それでもトータル勉強時間はたったの34時間で、本番も93点取れました。

過去に宅建行政書士の勉強をしたことがあるため憲法民法の基礎知識を持っていたこと等も影響してか9割を超えることが出来ましたが、そういった問題が解けず数問落としたとしても80点前半には届きますので、結局この1冊をやれ。以上。という感じです。

結果と感想

日本史は当初の目標である9割には遠く及ばず、本番では71点という結果に終わりました。ただ最低限の目標である60点を突破出来たこと、何なら7割に乗せることも出来たこと、当初進めようと思っていた学習計画自体は完遂出来たこと、日本史の奥深さをそれなりに知ることが出来たことから満足度高く終えることができました。

現代社会はニュースや時事を理解する上での基本となる事項を捕捉することが出来、本番も93点と結果もしっかり残せたので、こちらもかなり満足度の高い受験生活が出来たと思っています。

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センター学習時間

通訳案内士試験の時はお盆期間を含む約50日で100時間の学習時間でしたが、今回も年末年始休暇を含む約50日で100時間の学習時間となりました。本腰を入れ始めた11月末以前から少しずつ日本史のテキストは読んでいたので、その時間も含めると通訳案内士の時以上に学習していたことになります。内訳としては日本史が約77時間、現代社会が約34時間の計111時間でした。

ただほぼ同じ勉強時間でも、やはりセンターは圧倒的に対策がしやすかったです。通訳案内士試験の記事を読んでいただいた方はお分かりかと思いますが、あちらは試験傾向の把握や学習法の試行錯誤に非常に苦労しました。本記事に比べて通訳案内士試験の記事の方が圧倒的に長いことからもお分かりかと思います。詰まるところセンターは「この本3周したらここまで行けました」くらいしか書くことが無いですからね。

今後

免除規定が変わらないことが前提ですが、これで晴れて来年度の通訳案内士の1次試験は全科目免除となりました。やったね!

12月の2次面接ですが、英語はRLWの実力に対してSpeakingの実力が全く追いついていない状況なので、そこを根本的に持ち上げつつ、通訳案内士特有の知識やノウハウを仕入れ問題形式に慣れていく訓練が必要になってきそうです。

日本史はもっと勉強すればもっと楽しくなりそうな気がしています。早速今日もオリラジのあっちゃんの日本史動画を観て「そういう見方もあったか!」と膝を打ちました。今後も雑に吸収して理解を深めていきたいですね。

今のところ今年はセンターと通訳案内士の他に資格を受ける予定はありませんが、また気が変わったら何かやっているかもしれません。特に10月のネットワークスペシャリストは昨年3点差で落ちてしまったので若干ながら再受験を検討しています。

また3月中旬にフルマラソンを申し込んでしまったので、今から対策してもsub3は流石に厳しいと思いますがやれるところまで足掻いてみようかなと思っています。更に昨年盛大に挫折した音ゲー(BMS)上手くなるぞプロジェクトも9月下旬から再始動しているので引き続きやっていきます(この前冥のブインブイン4本目で皆伝落ちました)。

引き続き健康に無理のない範囲で色々やっていきたいです。

*1:ただ一度しっかり勉強してしまえば9割は安定させられるようです。今回はそこまで辿り着けませんでしたが

通訳案内士一次試験を受けた

受けました。2ヶ月間にわたる受験生活は、最初から受験当日まで波乱万丈の日々で大いに楽しむことができました*1。その足跡をまとめます。

ちなみに自己採点の結果としては地理と実務が合格、歴史と一般常識が不合格になりそうです。

受験動機

前提知識として、通訳案内士の試験科目は下記の通りです。

  • 1次試験:「外国語(英語)」「日本地理」「日本歴史」「一般常識」「通訳案内の実務」の5科目
  • 2次試験:外国語(英語)を使った面接

私は特に通訳案内士の仕事をしたいわけではなく、あくまで「地理」「歴史」「英会話」の学習のマイルストーンとしての活用を考えていました。具体的には以下。

  • 理系だけど地理や歴史を勉強したい。
    • 「ある程度教養ある日本人の残り半分が見ている世界」を垣間見たい。
    • 最終的にはセンター地理Bと日本史Bで85〜90点取れるくらいの理解をしたい。
    • その足がかりとして通訳案内士の地理と歴史が使えそう。
  • TOEIC(LR)満点、英検1級取ってるけど英会話に全く自信がないのでどうにかしたい。
    • 通訳案内士の2次試験が目標にちょうど良さそう。

数年前から受験は考えていたのですが、何だかんだで今年までずれ込みました。決め手はTLのフォロワーさんから誕生日に送られてきた過去問題集です*2。これを頂いていなければ本当に受けてなかった可能性が高いです。ありがたい話。

ちなみに過去問題集で十分な年数を扱っている書籍は私の知る限りこれしかありません。受験者全員マストバイです。もちろん年度は最新のものを使いましょう。

全国通訳案内士試験 実務・地理・歴史・一般常識過去問題集 ’19年度版

全国通訳案内士試験 実務・地理・歴史・一般常識過去問題集 ’19年度版

最大の壁は1次試験

通訳案内士最大の壁は1次試験です。科目数も多く、また地理と歴史の範囲が膨大だ(というか実質決まってない)からです。それに2次試験は(昨年は合格率がガクッと下がったりましたがそれまでは)60%以上という高い合格率で長年推移してきており、十分な対策をしていればそれほど恐れることはない数値だと思います*3

これは学習を始めてから知ったことなのですが、通訳案内士の邦文科目(地理・歴史・一般常識)は昔から難問奇問のオンパレードと言われ続けており、非常に対策が取りにくいものとなっています*4。「この本さえ仕上げれば受かる」とか「過去問を完璧にすれば受かる」といった単純なものではなく、出題傾向もコロコロ変わるため、何をどう勉強していいやら分かりません。

最初の一歩:過去問を解いてみる (3h)

何はともあれ過去問を解いてみましょう。ちなみに私は先述の通り理系で、

  • 地理:高校では未習。中学受験は国語算数で乗り切ったので社会は壊滅的。
  • 日本史:高1でそこそこ真面目に学習した。受験では未使用(倫理選択)。

です。以下結果。

年度 地理 歴史 一般常識 実務
H30 46/100 43/100 28/50 43/50(合格)

合格点は地理・歴史が70点、一般常識と実務が30点です。 実務だけ無勉で通りましたが、一般常識は惜しくも2点足りず、地理と歴史は掠りもしない点数という結果になりました。

この時点での感想。

  • 地理:地理Bというより中学入試の地理を強化した感じ。 日本地理の暗記ゲー。
  • 歴史:日本史Bっぽいが、やはり寺社仏閣や文化財に関する問題が多い。
  • 一般常識:観光白書の数字とかは覚えれば確実に点取れそう。あとは常識力とテキストで対策すれば合格点は乗りそう。
  • 実務:簡単。常識と文章読解で取れる。これだけ見るとノー勉で良さそう。

とにかく地理と歴史を優先的に進める必要がありそうだ、という認識で学習をスタートさせました。

テキストを2回読む (10h×2)

邦文対策を謳った本は何冊か出ているので、何はともあれまずはそれを読んで試験の全体像を掴んでいきます。大体この3冊のどれかになると思います。どれが良いかは正直分かりません。私は地理パートが図が豊富で覚えやすそうだったので黄色い本を選びましたが、昨年出たばかりということもあり恐らく少数派でしょう。

全国通訳案内士試験「地理・歴史・一般常識・実務」直前対策 ([テキスト])

全国通訳案内士試験「地理・歴史・一般常識・実務」直前対策 ([テキスト])

全国通訳案内士試験[地理・歴史・一般常識]合格テキスト&問題集

全国通訳案内士試験[地理・歴史・一般常識]合格テキスト&問題集

とりあえず2周し全体像を概観しました。日本史は一応高1の頃に学習していたこともあって何となく覚えていました。地理はひたすら各都道府県の名所やお祭りが羅列されていて、最初はなかなか頭に入ってきませんでしたが、とりあえず何度か読んで慣れさせることから始めました。

過去問(残り4年分)を解く (12h)

テキストを2周した後、今後の学習方針を立てるために残りの過去問を一気に解きました。その結果がこちら*5。括弧()内はおおよその合格点で、合格点を突破したものは赤で表示しています。

なお合格点は問題の難易度により毎年調整されます。各回の合格点がまとまっているサイトが無くて悲しいのでまとめておきました*6

年度 地理 歴史 一般常識
H26 60 (50前半) 56 (50半ば) 62 (50)
H27 29 (45) 61 (60) 57 (50)
H28 34 (60) 72 (70) 63 (50)
H29 36 (60) 71 (70) 63 (60)

分かったこと:

  • 歴史と一般常識はいける。テキストの内容を詰めればより安定して合格できそう。
  • 地理は全然ダメ。 今後は地理の対策を中心に据えることが確定。

テキストの地理パートを読みながら白地図にまとめる (5h)

とりあえずテキストの範囲だけでもしっかり定着させようと思い、考えた結果、巻末にあるまとめ小冊子の地図にテキストで取り上げられている観光スポットを書き込んでいくことを思いつきました。これはこれで割と頭に知識が定着している感覚があって良かったです。

しかし過去問と照らし合わせてみますと、圧倒的に知識量が足りないことが発覚しました。テキストの内容だけでは過去問で合格点が取れないのです。過去問ですら合格点が取れないのに本番で点が取れるわけがありません。私には次の一手が必要でした。

旅行業務取扱管理者の観光資源問題集を解く (40h)

地理をやると言っても難しいのです。過去の受験者のblogやハロー通訳アカデミーさんのblogを見ますと大抵この辺りの本が出てきます。

しかし自称資格ハンターの私としては、問題集が欲しかったのです。資料集に書き込んだりマーカーで線を引いたりして繰り返し読んでも、自分がその知識を覚えられたという確証が得られず不安なのです。

そこで目をつけたのが、旅行業務取扱管理者試験の問題集でした。これは本記事最大の目玉と言っても過言ではありません。

旅行業務取扱管理者試験というのは、ざっくり言うと旅行代理店などで勤務する方が必要とする資格です。その試験の科目の1つに観光資源が出題されるのですが、それ専用の問題集がユーキャンから発売されているわけです。

この本は都道府県別の観光地が一問一答形式でまとめられており、都道府県ごとに地図で観光資源の位置を確認しながら解き進めることで確実に観光名所の知識を仕入れることができます。まさに私が求めていた本でした。

気になるのは「旅取と通訳案内士ってちゃんと範囲かぶってるの?」という点かと思います。結論から言うとこれ1冊で地理だけでなく歴史の過去問の点数も軒並み上がりました。そして本番の地理でも無事合格安全圏である70点を取れましたケアレスミスが多かったので、理論値としては80点前後は狙えました)。もうこの本からむちゃくちゃ出たので笑いが止まりませんでした*7。まあ今年は基本問題多かったみたいですけどね。

ただこの本、ひたすら暗記が続くので非常にしんどいです。いや別にこの本じゃなくても多分しんどいんでしょうけど。でも私は中学受験でろくに社会を勉強している暇がなくて*8日本地理を知らないのがコンプレックスだったので、それがある程度解消出来たのは貴重な収穫です。

テキスト3周目を読む (10h)

試験日まで残り2週間かそこらという所で、長い間地理沼に漬かっていたので、そろそろ歴史や一般常識の勘を取り戻さなくてはということで3周目を読みました。

過去問(H26-29)2周目を解く (12h)

40時間におよぶ地理の特訓を経て、1ヶ月ぶりに過去問の2周目を解きました。点数の推移を掲載します。ただ申し訳ないのですが肝心の地理は厳密な点数を出しておらず2周目の点数が書けません🙇少なくとも全ての回で合格点は余裕で突破していたと記憶しています。元々20-30点台だったことを考えれば目覚ましい進歩です。

年度 歴史 一般常識
H26 56→76 62→80
H27 61→68 57→77
H28 72→96 63→82
H29 71→83 63→73

というわけで地理の特訓の成果が歴史や一般常識にも反映されました。とりわけH28の歴史の伸びは目覚ましいです。通訳案内士は科目をまたがって似たような問題が出ることがよくあるので、このような相乗効果が見られることがあります。

ハロー通訳アカデミーさんの資料を読む (8h)

試験は情報戦でもあります。通訳案内士の最新情報はまずここを見れば間違いありません。

試験は難化している

特に近年の重要な傾向として通訳案内士が業務独占資格では無くなったという点があります。元々通訳案内士資格を持っていないと報酬を得て通訳案内業をしてはならなかったのですが、国のインバウンド政策によって訪日観光客数が鰻登りな状況で人手が足りなくなってしまいました。なので無資格者でも報酬を得て通訳案内業を行うことが許される法改正がなされたのです。

となると通訳案内士の資格の意義を再検討する必要があります。これまでは免許の性格が強かったわけですが、今後はどちらかというと優れた案内士に対してお墨付きを与える側面を強くしていこうという方針になったようです。考えてみれば当然ですよね。というわけで残念ながら試験は現在進行形で難化しています。具体的には

  • 地理と歴史の合格基準点が60点から70点に引き上がった
  • 平均点が低い場合合格点を下げていたが、それが無くなりつつある

といったことが起こっています。めちゃくちゃ辛いですね。

切腹資料』を読む

こちらのサイトで公開されている『切腹資料』なるものはおすすめです。これ読んで受からなかったら中の人が切腹するという覚悟で書いているから『切腹資料』らしいです。特に私が使っていた黄色いテキストには実務科目の対策がほぼ皆無だったので、こちらの資料だけざっくり目を通して本番に望みましたが、39点と申し分ない点数が取れました。

過去問(H30)の2周目を解く (3h)

試験2日前、少々ギリギリではありますが、いよいよ去年の問題の2周目を模試代わりに解きました。

年度 地理 歴史 一般常識 実務
H30 46→91 43→62 28→44 43→50

地理は快挙! この1ヶ月の勉強が報われた! 泣きかけました。

が! まさかの歴史で初めての合格点割れ! 試験2日前にこれは厳しい……!

敗因ですが、一般にもこの年は難化したと言われています。ただ個人的には観光資源(日本地理)の知識ではなく純粋な日本史Bっぽい内容が多く出題されたため太刀打ち出来ない感覚でした。

とはいえ今更日本史Bの実力を上げる時間も気力もありません。今までやってきたことを信じて、復習だけしてあとは祈るのみでした。

当日

英語が免除だったので試験はお昼過ぎからです。前々日にクラブで遊んだ後無駄に3時まで起きていて生活リズム破綻者になっていましたが、ちゃんと試験に間に合う時間には起きられました。ただ受験生活の終盤は夏バテと勉強⇔休憩のメリハリづけに失敗してしまい、体調は慢性的に悪かったです。

一発目は本命の地理。先述の通り、旅取の問題集からバンバン出ました。ニヤニヤしました。その場でざっくり自己採点して77点だったので何とか受かりそうだと安心しました。ただ後で正確に自己採点したところミスが見つかり70ジャストになりました。おおこわい。何はともあれ繰り返しますが旅取の問題集はマジでおすすめです。私はこの本のお陰で地理に合格できました(多分)。

歴史は昨年以上に意味不明でした。特に後半は自身を持ってマークできた問題がほぼ無く、この時点で一次突破は無理だと悟りました。しかしおみくじの運が良く自己採点は67と大健闘しました。でもどうせ点数調整入らないんでしょ?

一般常識ですがこれがまた難しい。特に後半が初見トピックだらけで終盤6問連続で落としました。出題が予想されていた観光白書からの問題も細かい内容が目立ち、自己採点は22と今回一番のやらかしでした。まさかここで足元を掬われるとは……。

実務は想定通り難化しましたが流石に落ちるほどではありませんでした。

Twitter等で観測する限りですと、やはり圧倒的に歴史が難しい、こんなの解けるかボケ、といった声で溢れかえっていました。案外一般常識に文句を言っている人は見かけなかったのですが、テキスト+切腹資料では到底太刀打ち出来なかったのですが何故なんでしょうね??

年度 地理 歴史 一般常識 実務
H31 70 67 22 41

お気持ち

8月に入ってから急に熱くなり、夏バテや体調不良で思うように学習が進まない日もありました。帰省中も親戚との会話もそこそこに地理の暗記をするなどとんだ親不孝者でありました。だんだん頭が慢性的に疲れてきて、寝ても頭の疲れが取れず、日本語のテキストを読んでいても全然頭に入ってこなくて困り果てたこともありました。大学受験のセンター受験後〜二次試験までの期間もこんな感じだったなあと8年前を思い出したりもしました。

試験の5日ほど前からは、正直勉強疲れで感情が死んでいました。もう本当にがむしゃらにやって、夏バテも相まってメンタルが不安定になっていました。早く終わってくれという感情すらもあったか分かりません。でも試験当日にTwitterのフォロワー諸氏から応援のリプを頂戴したので、あとちょっとだけ頑張って実力を出し切ろうという気持ちだけはありました。

結果は恐らく全科目合格とは行かなそうです。正直悔しい。試験前夜の枕元では、自己採点して全科目合格基準点をクリアし、その足で二次試験対策本を買ってTwitterにアップするところまで想像していたんです。残念ながらその願いは叶いませんでした。

でもこうしてこの2ヶ月を振り返りますと、つらいことも多かったんですが、楽しかったと思います。こんなボロボロになって試験受けて、少なくとも今年入ってから一番「「「生きてる」」」って感じがしてます。 やはり私にはこういうマイルドな自傷行為が向いてるのかもしれませんね。

今後どうするか

一般常識は不合格でほぼ確定、歴史も恐らく点数調整は入らず不合格となると思っています。

今後も難化傾向が続き、かつどうしても合格したいのであれば、正直なところどちらもセンター試験免除を使った方が確実だと思っています。特に歴史に関しては去年や今年のような問題で着実に点数を取るには結局日本史Bを真面目に勉強しないと厳しいと思うので、結局やることは同じなんですよね。なので来年1月のセンターに向けて日本史Bを勉強するのはアリです。まだ出願も間に合いますし。

日本史はアリなんですが、一般常識が免除になるところの現代社会は正直モチベがありません。冒頭にも書いたように自分は日本史と地理がやりたくてこの試験を受けているので、現代社会までやるとなると本当に資格を取るための勉強という性格が一気に強くなってしまいます。それはあまり本意ではありません。それに現代社会と日本史の対策を短期間で同時に行うのは正直しんどいです。日本史Bに関してはどうせやるなら85点以上取れるくらいには勉強したいのですが、通訳案内士合格を優先するなら日本史Bは60点の勉強に抑えて現代社会で80点取るような勉強をしないといけません。そこまでしたいと思えるかどうかというところですね。

あるいは一般常識はこの本を使うのも手ですけどね。流石に一般常識に関しては現代社会免除よりもこれで勝負する方が楽かなあ。これで受かるのかは知らないけど。

全国通訳案内士試験「一般常識」直前対策問題集2019年度版 ([テキスト])

全国通訳案内士試験「一般常識」直前対策問題集2019年度版 ([テキスト])

問題は日本史が落ちているかどうかですね。こればかりは11月上旬に合否が出るまで分かりません。なのでセンターを現代社会と日本史B選択で一旦出願しておき、落ち着いたら現代社会の勉強をするかどうか考え、歴史の合否が出たら改めて日本史Bもやるか考えるって感じになると思います。今はとりあえず疲れたのでしばらく遊んでいようと思います。

まとめ

社会人になってから2年4ヶ月経ちますが、プライベート面では過去一番頑張れた2ヶ月だったのではないかと思います。つらい思い出も多いですが、生きているという実感を得たいがためにまたこういうチャレンジを渇望することになる気がしています。

それではまた次の資格試験でお会いしましょう。

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通訳案内士学習時間

後日譚 (8/23追記)

色々考えた末、センター日本史B現代社会を受けようかなと思っております。来年の通訳案内士は一次全科目免除にして、二次試験の一発勝負で行ければと思います。

日本史B

冒頭で述べた通り、通訳案内士は日本史を学ぶ足がかりにするつもりで受けた部分があります。今回仮に点数調整が入って日本史が合格していたとしても、いつかはセンター(あるいは来年度以降の共通テスト)の日本史Bで90点前後取れるくらいまで日本史への理解を深めたいと思っていました。

……じゃあもう今年度それやっちゃえば良くない? ってなりました。そうすれば落ちてても来年(制度が変わらなければ)通訳案内士日本歴史の免除にも使えますし。

というわけで早速センター対策本を買ってきました。大体この手のセンター対策本を繰り返し読んで過去問演習を積めば8-9割は狙えるようです。

みんなのセンター教科書 日本史B[改訂版]

みんなのセンター教科書 日本史B[改訂版]

更に盤石にするならこの辺りですかね。一応検討してます。

センター日本史B一問一答 完全版 (東進ブックス 大学受験 高速マスター)

センター日本史B一問一答 完全版 (東進ブックス 大学受験 高速マスター)

現代社

当初は興味ないなーと思ってたのですが、よくよく出題分野を見てみますとほとんどが政経、少し倫理が混ざっている感じです。むしろ政経も学習したいと思っていたので肩慣らしにちょうど良さそうです。時事問題に弱いのもコンプレックスなのでこの機会に学習できるとなお良いですね。倫理に関しては受験で使ったので軽く復習すれば何とかなるでしょう。というわけで受験に前向きになれました。

現代社会はこの本を4周ほどすれば8割は超えられるそうなので、60-70hもあればいけるのでは? と思っています。一応政経は中3の頃にそこそこ真面目に1周しているので、その頃の知識が残っていれば更に楽になるかもしれません。

センター試験現代社会集中講義 三訂版 (大学受験super lecture公民)

センター試験現代社会集中講義 三訂版 (大学受験super lecture公民)

*1:疲れたのでしばらく何もやりたくない

*2:ファよちゃんありがとう

*3:とは言え難関の1次試験を突破してきた猛者の中での60%と考えると迂闊に簡単とも言えません

*4:そういった意味で、当初の目的である地理B・日本史Bの学習の足がかりにするネタとしては不適切だったかもしれません

*5:実務科目はH30に新設されたためH29以前はありません

*6:https://www.cel-eigo.com/exam/guide_2018Repo.html に記載のH27-28の大まかな数値、https://www.truejapanschool.jp/post170228/ に記載のH29の数値、https://www.truejapanschool.jp/post180906/ に記載のH30の情報を参考にしています。H26に関してはネット上にソースを見つけられなかったので、代わりに https://blog.goo.ne.jp/esdic/e/aeb93f55657cb6109de46265d4195cb9の予想点を掲載しています

*7:というか、私が通訳案内士の作問担当者なら間違いなく旅取の問題を参考にすると思うんですよね。試験の趣旨としてはほぼ同じですし

*8:小6の秋に急遽帰国が決まり、学習期間が3-4ヶ月しか取れなかったので、国語と算数で殴りました