3月
第一週
次男に陽性反応が出たのを皮切りに、家族が次々と時差で新型ウィルスにやられていった。家庭内クラスターが起きた訳だが、家の中での感染防止対策は…限界があった。
狭いマンション住まいで、まず感染者を完全に隔離することが不可能であった。
予備の部屋が足らないばかりか、
ある部屋へ行きたければ、隔離の部屋を通らねばならない、なんていう造りである。
かつて我が家を蹂躙していったウィルス、
インフルエンザやロタウィルスと同じく、対抗する前に
ささやかに願わくは
「罹るなら罹っておくれ。しかし時差なく同時に!」
第二週
nの自宅療養期間が終わった。
二月下旬から家に篭っていたので、季節が進んでいたことに気づかなかった。
春コートを羽織い、買い出しに出た。
眩しい日差しにめまいがし、厳しさの和らいだ春風にうきうきし、人様の庭の梅に心奪われ、花粉に涙した。
春が来ているなと全身で感じた。
三週間隔離からの外出だったので、今年は
光も風も花粉も、強烈でした。
第三週
結婚記念日を失念した。その日が終わる夜に、仕事中の旦那さんにLINEした。
「もしや今日は結婚記念日じゃなかろうか?」
「俺は先週までは覚えていたけど。」
…何の恩赦とマウンティングでしょうか。
…↑何の開き直りなのでしょうか。
第四週
子供たちは春休みに入った。
仕事は進まない。第1週目と同じである。
ただ家族全員が元気なのは、幸せで喜ばしい。
国旗カラーは水色と黄色
家にうっすーい生地の黄色いスカーフがある。
長女の習い事の発表会で買い、使ったのはその一度きりである。
ニュースを見て事態を知った二月下旬、
水色のスカーフを購入した。これまたうっすーいポリエステル100%の生地のもの。
これで水色と黄色が揃った。
一早い事態の収束と平和を願い
二色のスカーフを一本にまとめて、通勤用のリュックに結んでいる。
出社日のとある日。
地元のコンビニでレジ待ちをしていたら、背中に強烈な視線を感じた。長身の男性が、nのリュックのスカーフを凝視していた。
平和へのささやかなアピールは、今日も続ける。
違いが分からない大人2/2
中学校におけるホワイトデーの対応も、厳しく取り締まっているのだろうか。
長女に尋ねてみた。
「バレンタインデーの時のように、ホワイトデーも学校へチョコを持ってきたら即没収なの?」
「ぜんぜん…。先生何も言ってなかったよ。」
…
ホワイトデーは完全ノーマークで、バレンタインデーはフル武装らしい。
どちらも勉学に関係のないものを持ってきそうな日、ではないか…
お土産とチョコ、没収の基準が分からない。
やっぱり、違いが分かりません!
違いが分からない大人1/2
一ヶ月前の2月14日。
長女の中学校では、担任の先生が前々から生徒に釘を刺していた。
「普段から皆さんには伝えていますが
勉学に関係のないものは、学校へ持ってきてはいけませんよ。
14日にバレンタインのチョコを持って来ないように。見つけたら即没収しますので。」
そして14日当日の朝、
長女の前の席の子が、机の横にラブリーな紙袋を下げていた。
中には、きれいにラッピングされた袋とリボンが見えた。
その子曰く「今日の放課後、部活が始まる前に渡すんだ。昨日の夜遅くまでかかったんだよぉ。」
長女「大事なチョコ、どこか別の所にしまった方ががいいんじゃない?」
案の定
一時間目で先生に見つかり、没収されてしまったそうな。
昼休みにその子は職員室へ呼び出され、午後の授業が始まる少し前に
手ぶらで教室へ戻ってきた。
その子も長女も、一旦は没収するけど後で返してくれるだろう、と思っていた。
しかし実際は、けっこう厳しい取り締まり方だったようだ。
長女は、今日学校であった出来事の中で
解せないポイントを見つけたらしい。
「ねぇママ。
二学期の初めに、夏休みの旅行のお土産なんかを学校にこっそり持ってきて、
好きな友達や先輩にあげたりするけどさ、
お土産も、よく考えたら勉学に関係ないものだよね?でも没収されたためしがない。
なんで旅行のお土産はOKで、バレンタインのチョコはダメなの??」
…
大人の事情と立場が分かる歳になったnですが、お土産とチョコの違いが
分かりません。
守られに いく2/2
今回の発熱でnは数日使いものにならなくなった訳ですが
旦那さんは、家事も育児もそこそこできるということが分かった。
ソファーの上に子どもパジャマが脱ぎ捨てたままだったり、
靴下の片一方が廊下の真ん中に落ちていたり、
日没後なのにカーテンを閉めてなかったり…
には目をつぶろう。
nが普段やっている主要な家事ルーティーンを、適切な時間内に全てこなしていた。
結婚し子供を持ってから十年以上が経った。
気付かぬうちに、旦那さんは家庭力スキルをアップさせていたようだった。
子ども達に小言が多くなるのは、メインで家庭を回す人の、あるある現象でして。
普段は穏やかな旦那さんの、少しイラついた子ども達への諸注意を聞きながら、
「ほほう。私はいつもこんな様子で子ども達に接している、と映るんだな。」と気づく。
旦那さんの家庭力が、この十数年でけっこう高まっていたのに
普段はあまりその力を発揮していない。
なぜなのか。
握力の例で挙げたように、
女性側の「守られにいく姿勢」が足りてないことが、関係しているからではないか…?