意味のある単純さが神々しい

単純であるということは神聖であるということと繋がっている。普遍的であると言い換えてもいい。

複雑なものに神聖さがないということを言いたいわけではないが、単純さをつきつめた先に一種の極致がある。その極致を神聖と呼ぶことができる。

そんな神聖さが、御滝図のれんにはある。

 

御滝図のれんは染色家の芹沢銈介による作品だ。

こののれんでモチーフにされている那智の滝は、熊野信仰の御神体であるそうだ。

熊野信仰

 

藍色の背景の中を真っ白な滝が流れ落ちていく。のれんなので、背景の藍は布地だ。布のはためきや、繊維の角度によって、藍色にも濃淡が含まれている。それが背景の藍にさらなる深みを与える。

その深い藍の中を、白い滝が流れている。

 

滝のデザインはというと、単純な中にも写実性を残し、数本の線のみで滝のしぶきや水が流れる様子が表現されている。

この作品はのれんだから、日常生活で使った時、目線よりすこし上の高さに滝口が来るようになっている。だから、最初に滝口に目が行き、そこから鑑賞者にとっての胸・腹の高さまで視線を落としていくという順序が目線の動きとして予想されると思う。

目線の動きと滝が落ちていく様子がシンクロし、滝が実際に流れているかのようなリアリティを感じる。

 

たくさんの意味を含んだ藍色、うすい藍色、白の三色を単純な構図に落とし込むことで、一つ一つの複雑さをすんなり受け入れられるものにしている。

単純だが奥深い。そんなデザインの構造が、滝が流れる自然な感動を引き起こすことを可能にしている。

宗教的なモチーフで作品を作ったのだからある種当たり前のことかもしれないが、何も知らずにこの作品を見ても神聖さに圧倒されてしまう。そんな力を秘めた作品だと感じた。

 

 

意味を孕んだ単純さが神々しい。

こののれんを見た時の衝撃がものすごくて、思わずブログを書いてしまった。

 

静岡市立芹沢�_介美術館-芹沢�_介について