ゲーム批評祭応募】「ふしぎの城のヘレン」

 

これはゲーム批評祭という素敵な企画に応募させて頂いたものになります。

 

arcadia11.hatenablog.com

 

残念ながら選ばれることはなかったものの、このまま死蔵するのも勿体ないと思い投稿いたします。

ご笑覧ください。

 

 

 

私はRPGが嫌いだ


何も考えず「たたかう」を連打するだけの雑魚戦が

じりじりとアイテムやMPを減らされる雑魚戦が

道中半強制的にやらざるを得ない雑魚戦が

結局レベルでゴリ押すだけの雑魚戦が


大 嫌 い だ


兎にも角にも雑魚戦が大嫌いなのだ

それ故にRPGをとことん忌避してきた

そんな私がたまたま気になって手に取り、戦闘の面白さにドハマりして徹夜でプレイしてしまったRPGが「ふしぎの城のヘレン」である。

 このゲームはRPGでありながら、その独特な戦闘システムにより、敵の行動パターンを覚え、隙を突くというさながらアクションゲームのような要素があり、敵ごとに最適なパターンを構築し無傷で切り抜けるということが可能となっている。
 また戦略を練るのに必要な情報は全て画面に表示されており、クリティカルなどの運要素も隠しパラメーターもないため、不慮の事故で死ぬこともなく、一度パターンを構築してしまえば最初は苦戦した敵も慣れればサクサク進めるようになる。
 なので、歯ごたえのある戦闘が楽しめる一方、ダンジョン探索で何度も遭遇する敵はサクッと倒せてストレスになりにくく、シンボルエンカウントなため戦闘そのものを避けることもできるという素晴らしい調整となっている。
 敵の種類も豊富で、次々と現れる敵を観察し、対策を考え実行し、それがうまくかみ合った時はもう快感である。
 この敵はどんな行動をとってくるんだろう?次はどんな敵が待ち構えているんだろう?と終始ワクワクが止まらなかった。
 また探索を進めると、どんどん武器も増え戦闘における選択肢も増えていくので、武器の探索、そしてその組み合わせを考えることもとても楽しかった。
 敵の強さも、雑魚はほどよく強く、ボスはちゃんと対策を練らないと勝てないというバランスなのも素晴らしかった。
 そしてこちらが強くなるのと同時に敵もどんどん強くなり、パターンも豊富になり賢くもなるうえ、一つの選択ミスが手痛いダメージとなるため、レベルを上げてとりあえずこれをやっとけばどうとでもなる、というように攻略パターンがマンネリ化するということがなく、戦闘に飽きるということがなかった。
 デスペナルティは中間地点まで戻されるということ以外は特になく、逆に死ぬごとにHPがアップするアイテムをもらえるので気軽に死んで覚えるということができたのも大きい。
 またSEやBGMも秀逸で、特に行動を決定してからカウントダウンが始まり攻撃するまでの一連の、「ピコーン!、カタカタカタカタカタ、ザシュッ!」という音がとても気持ちよく、これがまた戦闘の気持ち良さに貢献しているのだ。(わかりにくくて申し訳ない…)

 RPGの戦闘で楽しいと感じたことはこのゲームが初めてで、一度始めたらクリアするまで一直線で、止め時が見つからなかった。
 
 そしてこのゲームの面白さは戦闘だけでなくストーリーにもある。
 最初はOPも何もなく、ただ「北の遺跡には絶対近づいてはいけないよ」とダチョウ俱楽部式の指示を出され、何が何だかよくわからないままダンジョンを進んでいく。
 主人公は最初は文字が読めないせいで看板も読めず、落ちている本も読めず、また会話でもしゃべらないせいで、この世界が何なのか、主人公が何者なのか、全く何もわからない。
 最初は戦闘が面白くて、探索するごとに武器が増えるのが楽しくて、訳も分からずただただ進むだけだった。
 それが進んでいくごとに徐々に世界のこと、主人公のことが明らかになり世界観にぐいぐいと引き込まれ、しまいには戦闘の面白さとストーリーの面白さの相乗効果で止め時が見つからなくなってしまう。
 ストーリーは非常に王道で、登場人物は皆魅力的で、終盤の展開は非常に熱く、きっと終わる頃にはこの世界が好きになっているはずだ。
 洞窟物語をご存知の方ならば、それをリスペクトした感じのストーリーとなっている、と言えば多少は伝わるだろうか。
 ストーリーの魅力についても色々と語りたいのだが、全てがネタバレになってしまうので、是非とも詳しいことは実際にプレイして確かめてほしい。

 最初にプレイしたのはもう何年も前だが、あの時の興奮は今でも忘れられない。
 そしてこの原稿を書くために再度プレイしたが、その面白さは全く色褪せず、ただの思い出補正ではなく、本物の面白さだったのだと改めて思い知らされた。

 とまあこのゲームの魅力は大体こんなところなのだが、せっかくなのでこのゲーム最大の特徴であり魅力でもある戦闘システムについてもっと語りたいと思う。

 このゲームの戦闘システムは、ざっくりと説明するならば、FFのATBをステータスなどの要素を限りなくシンプルにし、簡便にしたシステム、とでもいうのだろうか。
 FFのATBはゲージが溜まる速度はキャラの素早さなどに依存し、いつ行動できるようになるかというのはゲージで表示されているのでざっくりとでしか分からない。また敵のステータスが分からないのでどの攻撃がどれほど効果があるかというのも攻撃してみるまで分からない。
 対してこのゲームの場合は、まず敵味方共にHP以外のステータスが存在せず、能力は全て武器に依存しており、攻撃力や防御力、いつ行動できるようになるかというウェイトは武器ごとに固定されている。
 そして画面には常にお互いがどんな行動をするのか、そしてその攻撃力、防御力、行動までの残りの値が表示されているので、自分の行動の結果がどうなるのかというのが事前に予測でき、行動を起こす前にこれらの数値を参考に戦略を練り行動をとるのが重要となる。
 ただ、敵のHPだけはゲージでざっくりとでしか表示されていないので、これで倒せる!と思ったらミリ残り手痛いしっぺ返しを食らう、なんてことも多々あり、パターンを確立するまでは慎重に行動しないとならない。
 行動までにかかる時間、ウェイトは双方減る速度は同じで、違うのは行動ごとの数値の大小であり、他のゲームで言う素早さというのは、このゲームではウェイトが少ないということになる。
 また、敵味方ともに仲間が存在せず、戦闘は常に1対1のタイマン勝負となるので、攻撃、回復、防御すべて一人で行わなければならない。
 そして戦闘に勝利すると経験値が手に入るのだが、主人公はレベルアップせず、得た経験値を武器に割り振ることで攻撃力や防御力が上がったり、魔法の詠唱時間が短縮されることで間接的に主人公を強化していくことになる。
 主人公のステータスアップはHPの増加のみで、その方法は、ダンジョンに点在する壺を割りアイテムを見つけるか、ボスを撃破したときに経験値の取得と同時に増加するか、死んで戻された時にもらえる好物のハンバーグを食べるか、の3種類のみである。
 このあたりのステータスアップの説明があまり詳しくゲーム内でされてないので注意されたし。

 ダメージの計算式は「攻撃-防御=ダメージ」と非常にシンプルなうえ、属性や相性といった要素もないので、リスクとリターンの計算が容易に行えるのも戦略の練りやすさにつながっている。
 特に私は属性や状態異常が膨大だと思考停止してしまうので、このシンプルさは非常にありがたかった。

 戦闘画面で表示される情報は大体こんな感じになっている。


主人公  HP■■■■■■28
「ロングボウ」
攻撃力10 防御力2 行動まで5

 

スライム HP■■■■
「体当たり」
攻撃力14 防御力4 行動まで12


 このような場合、こちらが攻撃すると6のダメージを与え、敵が行動するまではまだ7カウント残っている、という状況となる。
 欲張って連続で2回攻撃しようとすると、2回目の攻撃が当たる前に敵の攻撃が当たり、12の手痛いダメージを食らううえに下手したら倒しきれないということになる。
 そこで攻撃をするか防御をするか、そしてどの武器を使うべきか、というような選択をする必要が生まれる。
 こうしたことを繰り返して戦闘を行い、敵に有効な手段を模索しつつ進んでいくことになる。
 また最初は単調だった敵の攻撃が、ダンジョンを進んでいくごとに行動の種類が増え、こちらの攻撃を的確に防いできたり回復をしたりと様々な手段を使う敵が出てくるようになるので、こちらもその行動に合わせた適切な選択が重要になってくるのだ。

 また、戦闘中にできる事は戦うのみで、逃げることもアイテムを使うこともできない。
 そもそも武器以外に所持できるアイテムが存在しないのだ。 
 一応ギブアップもあるが戦闘不能扱いなので死ぬのと変わらない。
 なので戦闘が始まればどちらかが倒れるまで終えることができず、攻撃も防御も回復もすべて武器でウェイト値を消費して行わなければならない。
 戦闘時以外の回復手段は、ダンジョンに点在する癒しの泉を訪れるか、回復魔法を使うことで行えるが、回復魔法は戦闘以外で使うとレベルが下がるというデメリットがあるし、癒しの泉まで戻るのはいささか面倒なので、やはりいかに戦闘終了時にHPが減っていない状況を作るのかが大切になってくる。
 そしてこのウェイトを調整し敵の攻撃をしのぎ攻撃を加え、いかに有利な状況を作るかというのが非常に楽しいのだ。
 またその戦略の根幹をなす武器は多種多様で、その組み合わせを考えるのもまた楽しい。

 武器は沢山あるが、大別して「弓」「盾」「剣」「魔法」の4種類があり、それぞれ役割が異なる。
「弓」はウェイトが少なく素早い攻撃が可能だが攻守ともに低め。
「盾」は攻撃はできないが防御力が高い。
「剣」はその中間で攻守ともに優れたバランスタイプ。
「魔法」はウェイトが長い上に防御力皆無で無防備だが、敵の防御力を無視した強大な攻撃ができたり回復が行える。
と、それぞれ一長一短の特徴があり、これらを組み合わせて敵を倒していくことになる。

例えば、
剣をぶんぶん振り回してくる敵に対しては、盾で防御しつつ隙を突いたり
防御を固めてくる敵には防御無視の魔法をたたきこんだり
強大な魔法を使ってくる敵には素早い連続攻撃で手早く処理したり
攻撃も防御も高い大振りの攻撃には、被弾を見越して回復魔法を準備したり

と言った感じでそれぞれの武器を使い分け戦略を練るのがこのゲームの最大の醍醐味なのだ。

 また武器種ごとにも様々なバリエーションがあり、剣だけでも、素早い攻撃ができるが攻守ともにやや低めの「ミスリルソード」や、遅い、硬い、強いの「ブロードソード」などがあり、それぞれに得手不得手があので、同じ武器種でも敵に合わせて武器を変える必要がある。
 そして武器はダンジョンに隠されており、分かりやすい場所にあるものから分かりにくい物まで様々で、これを探すのもこのゲームの醍醐味となっている。
 ただ、武器の所持上限は8個となっており、持ちきれず捨てた武器は、途中から行けるようになる武器庫に自動的に送られるようになっているのだが、この武器の取捨選択がまた悩ましく、楽しくもあるのだ。

 と、ここまで色々説明し絶賛してきたが、決して欠点がないわけではない。
 武器庫に行くのが少々手間で武器の入れ替えが面倒であるとか、武器の隠し方がかなりいやらしいものがあり、武器コンプを目指すとかなり彷徨うことになるとか、やや産廃気味の武器があるとか、レベルアップの方式が武器への経験値の割り振りによって行うということがゲーム中で説明されないせいで気付きにくいとか…

 ただ、そんな欠点をかき消す程に面白くて仕方がない!

 プレイ時間はだいたい3~4時間ほど。アイテムコンプを目指して彷徨ったり、オマケダンジョンを攻略しても7~8時間もあればクリアできるかと。
 ちなみに「ふしぎの城のヘレン」は元々はVIPRPG紅白2011という企画に投稿された、RPGツクール2000製のフリーゲームなのだが、2014年にPLYISMで、2016年にSteamにてダンジョンやアイテムなどを追加した有料版が200円で発売されているので、プレイをされるならばそちらをプレイすることをおすすめする。
PLAYISM版Steam版も差異はないようなのでお好きなほうをどうぞ。
(フリー版の方はなにぶん古いゲームなせいでダウンロードページのリンクが切れてたりとかして色々面倒ですし…)

そんなさっくり遊べて非常に充実感を得られる魅力に溢れた傑作RPG「ふしぎの城のヘレン」、是非ともプレイしていただきたい!

 

「ふしぎの城のヘレン」

PC

フリー版     2011年12月23日
PLAYISM 200\ 2014年8月22日
Steam 198\ 2016年3月18日

作者:さつ
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