先日、韓国ドラマ『先輩、その口紅塗らないで』を完走しました。
ざっくりしたあらすじ
「先輩」とあるように、年下男子ヒョンスン(演:ロウン)と先輩女子 ソンア(演:ウォン・ジナ)の、化粧品会社を舞台にした社内恋愛物語。
年下男子といってもヒロインに対してどうやら年齢差はたったひとつというだけらしいのですが、そこは縦社会で序列を重んじる韓国、ということなのでしょうか。おまけに先輩女子はとっても優秀な若手社員。
「はい!わかりました!先輩!」といった従順な態度で先輩女子に教えを請う姿は率直にかわいいです。
憧れのしごできウーマンな彼女に素直に従いつつ、仕事を覚えつつ、恋愛感情を募らせていきます。
とはいえ、バリキャリ先輩女子は年下の新入社員男子など別に恋愛対象ではありません。なぜなら、これまた仕事ができる上司・ジェシンチーム長 (演:イ・ヒョヌク)と社内恋愛をしていたからです…。
もう入ってくる余地ないよ年下男子くん!という感じなのですが、なんとなんと、年下男子ヒョンスンくんは、そのイケメン上司ジェシンが先輩女子とは違う、別の綺麗な女性ヒョジュ(演:イ・ジュピン)といるところを目撃、結婚間近であるようなところを知ってしまいます。
しかもこの女性は会社の創業者孫のご令嬢。お兄さんも常務として勤務しています。
ぼ、ぼくの大好きな先輩が!二股されてる?!裏切られてる?!あのチーム長に?!
しかしソンア先輩はそれに気づいている様子もなく、社内でジェシンチーム長と会う前にはリップスティックを塗って、ますます綺麗になった状態で向かうのです。
それに気づいた年下男子くん。
そういうわけで年下男子くんは言うのです、「先輩、その口紅塗らないで!」と。
ここでタイトル回収になります。
…以上がこの恋愛ドラマの一話におけるざっくりしたあらすじであり、大きな枠組みとしてはこの4人を取り囲む恋愛ゴタゴタ物語であると言えます。
感想
正直言って、年下男子×年上女子のカップリングがそもそもあまり好みではないのと、物語展開が王道すぎるあまりに、若干退屈した部分もありました。
むしろ年上上司の陰鬱な感じと生い立ちの方に共感し、仲良しで夫婦円満だと思っていたロウンの次姉夫婦の秘密発覚に今時なテーマを感じるなどし、、主人公カップルの恋模様はわりとどうでもよかったです。
また、演じたロウンに罪はないのですが、どうしても「新入社員なのに社内恋愛して大丈夫?」「正義感があるのはわかったが直属の上司敵に回して大丈夫?」などなど、現実的な思考が邪魔をしてしまい、ヒョンスンくんの挙動にツッコんでしまう部分もありました。汗
もっとも、ロウンもウォン・ジナも双方共に演技力はベストを尽くしているという感じで、
特にウォン・ジナが慟哭するシーンなどは「やっぱり韓国人俳優って泣きの演技が本当にグッとくる…」と印象に残りました。
彼女のキャラクターは、とても頑張り屋さん。プライベートでは母との関係に悩み、社内恋愛に悩み(&楽しみ)、仕事面では皆から期待されバリバリキャリアも積んでいかなくてはならない……。成長に向かって頑張る(けどとっても大変な)現代の女性を詰め込みました!みたいなキャラだといえると思います。
優秀がゆえに海外転勤になるのですが、そのことで年下彼氏と遠距離恋愛になり、うまくいかず、ワークライフバランスが崩れます。傷つきながらも「何が自分の幸せなのか?」と問い続けます。それで、気づくのです。やっぱりロウンが必要だと。そして帰国。5年いるはずだったけど3年で切り上げて…。
個人的に、しごでき女子がこの選択をしたことになんとも示唆的なものを感じられずにはいられませんでした。
この帰国によって恋愛物語としての大団円を成立させつつ、結局、バリキャリウーマンに必要なのはロウン的なケアでありそれが本質、ということも示したのかなぁ、とか。
せっかく期待されて海外転勤したのに、ウォン・ジナの人事査定大丈夫なのかなぁとかとかぼんやり考えてしまいました。←
バリキャリ女子にとって、もはやバリキャリは難しいのでしょう。つまり、優秀だからこそ、いわゆる「バリキャリ」姿勢が必ずしも自分を幸せにしないと気づくことができ、自分軸で生きることの選択をすることができたのではないでしょうか。
さて、ロウンは売り出し中のアイドルだからでしょうか、あまりに素直なキャラというか、グッドボーイすぎる子犬男子という描かれ方をされているように感じました。なんとも「良すぎる」あまりに、やっぱり彼を取り巻く他のキャラの方に目がいき、彼らの印象がつよく残るのでした。(例えば先ほど挙げた彼の次姉夫婦関係など)
もしかすると私が年齢を重ねていったら彼のキャラクターの良さに心撃ち抜かれるのかもしれませんが…。
ロウンとウォンジナのラブシーンもあんまり身が入らなかったな。2人とも演技は自然なのですが、なんかウォンジナの方がちょっと引いてる感じがあったような、気を遣っている感じが出ていたような、そんな感じを受けました。
あとは、常務のジェウンとヒョンスンの姉が恋愛関係になるのですが、そのカップルは物語上終始安心してみていられます。こういった役割分担、視聴者に対する安心材料の配分が韓国ドラマはとても良くできているなと改めて思いました。
「お兄ちゃんが全部悪かった」という魔法
で、完走後。何話か忘れたのですがしばらくたってふと思い出すシーンがありました。
ジェシンじゃなくちゃだめなの!と長年執着していたヒョジュは、それでも彼がもう自分に振り向いてくれないことに気づき絶望。病室(だったかな?)で大泣きします。
そこでヒョジュの兄で、 化粧品会社の創業者孫で常務のジェウンは妹を抱きしめ、「お兄ちゃんが全部悪かった」と言うのです。
このシーン。初めて見た時、「おお…」とジーンとしました。
まぁ確かに、ジェシンはジェウンの友人でもあるので、ヒョジュとジェシンの関係は兄である自分も絡んでいます。とはいえ、「全部悪かった」わけではないのです。でも、ジェウンお兄ちゃんは、完全に堕ちて失意のどん底にいる妹のヒョジュに対して「お兄ちゃんが全部悪かった」と言い、寄り添い、妹の苦しみをも引き受け、自分が責任を負おうとするのです。
ここに韓国人の家族の絆の強さが描かれているように感じ、なんとも新鮮で、同時にグッときました。家族の絆の強さ、というか、年長者の思いやり深さ、というべきでしょうか。一言で言うなら「情」ってやつかな。韓国人は情が深いとか聞きますよね。
そして。ヒョジュは最終話に登場した際には、そんなに性格って変わるもの?と思うくらいには成長しています。回復を遂げたのです。
…なんだか長く書いてしまいましたが、私が言いたいのは「お兄ちゃんが全部悪かった」と言えるってすごくないか?ということです。
そのシーンがそこまで特筆した感じではなくわりと自然に描かれたのもなんだが意外性があり、年下男子と先輩女子の恋愛のゆくえより多く語りたくなってしまったのでした。