マルグリッド・デュラス+ジャン=リュック・ゴダール著『ディアローグ デュラス/ゴダール全対話』

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ゴダールがデュラスに向かって「ええっ、ビール!」と絶句する瞬間の真摯な滑稽さ……。「同じコインの表と裏」だというこの二人の対話は、かろうじて存在しているかも知れない映画やサルトルをめぐるやりとりはいうに及ばず、キスについてさえ真摯にしてかつ滑稽である。この真摯で滑稽な言葉のやりとりを読まずにおく理由など、存在するはずもない。

『モアナ 南海の歓喜 サウンド版』

二股に別れた白い木の幹の画面で始まるこの傑作で、フラハティは、荷物を背負う天秤、動物を捕るための罠、喉を潤す液体、海亀を調理する薪として、木の幹と生活との美しい関係をじっと見つめる。

『きみの鳥はうたえる』

窮屈そうな二段ベッドで柄本佑としなやかに愛を交わした石橋静河が、Tシャツをまとって真っ赤なトマトを頬ばっていると、いきなり同居人の染谷将太が姿を見せ、初めましてと鄭重な挨拶を送る。この美しい瞬間に成立するあぶなっかしいトリオの行方から、誰も目が離せまい。上映時間があと七分半短ければ、真の傑作となっただろう。