読んだ本とかのまとめ(2024年4月)

読んだ本

『隅の風景』:恩田陸の旅行エッセイ、自分には決して持ち得ない感受性を通して旅している気分になれるので良い。

『終りなき夜に生れつく』:アガサ・クリスティー作品、人生で初めて読んだ気がする。いわくつきの土地でヒロインが酷い目にあうお話ということで、『レベッカ』的なゴシックロマンかと思いきや……。

『ムーン・パレス』:主人公の人生の歩み方にセンスが満ち溢れている。自分も人生を一個の芸術作品に仕立て上げていきたい(?)

『鈍色幻視行』:『猿丸幻視行』リスペクトなのかと思ったけどそうでもなさそうだった。古めかしいお屋敷が最後に崩壊して終わる話は名作。 稀覯本をめぐるミステリーといえば『三月は深き紅の淵を』を思い出す。 『三月』とは違って作中作の『夜果つるところ』が実際に書籍として刊行されているということで、そちらを読むのが楽しみ。

『傲慢と善良』:軽いホラー。登場人物たちが人生に対して前向きすぎて引いてしまった。

『九月と七月の姉妹』:今月読んだ中で一番よかったのはこれ。なぜだか奇妙な家が出てくる話が多めな一ヶ月だった。『傲慢と善良』の登場人物のみなさんがこの家庭の様子をみたらブチギレそう。

『赤いモレスキンの女』:まさにおとぎ話。ウエルベックとロブ=グリエが不仲という知見が得られた。

『金沢・酒宴』:句読点を極限まで廃した文体、読みやすくはないが、夢とも現ともつかない本作にはちょうど良いように感じた。成巽閣、行ってみたい。

読んだ本とかのまとめ(2024年3月)

読んだ本

『オリーヴ・キタリッジの生活』:「寿命は短いほうがよい」← 真理すぎる。

『イギリス人の患者』:多文化の交錯、詩的な文章、曖昧な時系列など、小説として好きな要素が詰まっていて非常によかった。

『リプレイ』:タイムリープものの原点に近い作品なのに完成度が高いことに驚き。でも自分がタイムリープするなら記憶と人格はリセットしてほしい。

『信仰』:やはり宗教にハマっていた方が人生の幸福度が高そう。

『猿丸幻視行』:サイエンスホールに行ったときにドヤ顔早口でいろは歌の暗号について語る人になってしまいそう(?)

読んだ本とかのまとめ(2024年2月)

読んだ本

読んだ本とかのまとめ(2024年1月)

読んだ本

アレクサンドリア四重奏』:読み切った感。文化も価値観も交錯する土地と時代を描くとなると、これだけの分量が必要だったのも頷ける。ミステリ・歴史小説・官能小説・幻想文学・詩といった要素がパノラマ島的に披露され、作家の手練を感じた。

『東京日記』:日常のそこかしこに幻想の世界が顔をのぞかせてくる。微熱がある夜に外をそぞろ歩きしているとこういう体験になりそう。たまたま『アレクサンドリア四重奏』に続いて土地が書名に冠されている作品を読んだが、文化の交叉点であるアレクサンドリアと極東の島国の都市だと、まるで様相が異なっていて面白い。

読んだ本とかのまとめ(2023年12月)

読んだ本

『恐怖の報酬日記』:作者の飛行機恐怖症、共感できるところしかなかった。イギリス・アイルランドの紀行文といえば司馬遼太郎の『街道をゆく』を以前読んだが、歴史的背景の解説が多めの司馬遼太郎と風景や情景メインの恩田陸だと、視点も違っていて面白い。

『民藝とは何か』:日本民藝館に行ったので読んだ。やきものの鑑賞にあまりにも疎くて要点を掴めなかったので勉強していきたい……。

『異常【アノマリー】』:あらすじを見てランゴリアーズ的な話かと思ったら全然違った。2021年の世界が舞台になっているので、世界の反応(特に各国首脳)のリアリティ度が高い。現実になってほしいタイプのSF。

『金沢あかり坂』:五木寛之、『戒厳令の夜』しか読んだことなかったので、重量級のゴツめの作品なイメージがあったが、本作は比較的軽め。

アレクサンドリア四重奏』:2023年に読もうと思っていた本ランキング1位。年がかわる前に読まねばと思って読み始めたが、2巻までしか終わらなかった。アレクサンドリアには当然行ったことはないが、多国の文化が入り混じった都市特有の空気を感じられてよかった。登場人物の思考回路はあまり理解できなかったけれど……

読んだ本とかのまとめ(2023年11月)

読んだ本
  • 高階秀爾『20世紀美術』
  • 古野まほろ『背徳のぐるりよざ セーラー服と黙示録』
  • 恩田陸『終りなき夜に生れつく』
  • 『彼女。 百合小説アンソロジー
  • 米澤穂信『本と鍵の季節』
  • 柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』
  • 倉方俊輔『東京レトロ建築さんぽ 増補改訂版』
  • エドガー・カバナス、エヴァ・イルーズ『ハッピークラシー 「幸せ」願望に支配される日常』
  • ジョージ・ドーズ・グリーン『ケイヴマン』
  • 永山則夫無知の涙
  • 穂村弘『にょっ記』

『走馬灯のセトリは考えておいて』:「ぶちギレ金剛」というワードが普通に出てきてびっくりした.表題の「走馬灯のセトリは考えておいて」が印象的.バーチャルアイドルが死後復活できる技術が現実に存在したら,倫理的に割り切れない気持ちになりつつ喜んで受け入れてしまいそう.

『東京レトロ建築さんぽ 増補改訂版』:庭園美術館カトリック神田教会に行ったので,他のレトロ建築も見てみたくなった.増補改訂を待つ間に取り壊されたのか,「現存せず」になっている建物もそこそこある.恩田陸の『スキマワラシ』に出てきた高輪消防署二本榎出張所も紹介されていた.いつか行ってみたい.

『ハッピークラシー』:Google日本語入力だと何度入力しても「ハッピー暮らしー」になってしまう.新自由主義思想に毒された幸福追求に踊らされるよりも社会正義にしっかり取り組むべきという著者の意見,それはそうなんだろうけど社会全体の共感は得られなさそうなのが悲しい.

無知の涙』:東京都写真美術館で上映されていた『略称・連続射殺魔』を見て気になった.自分の罪を自覚している死刑囚の思想,世間の束縛を離れた自由さがあって面白い.社会へのルサンチマンや承認欲,他責思考が滲み出る文章を見ると,殺人者の人生も紙一重だよなと思う.日めくりカレンダーにして部屋に飾っておきたい(自戒を込めて).

『にょっ記』:梟書茶房に行ったときに買った.期せずして日記っぽい形式の本を続けて読むことになった.奇しくも『にょっ記』の中で週間マーダーケースブックを読んでる話が出てきていたので,意外と影響を受けているのかもしれない(?)

読んだ本とかのまとめ(2023年10月)

読んだ本
  • 恩田陸『なんとかしなくちゃ。 青雲編』
  • 佐藤究『爆発物処理班の遭遇したスピン』
  • 藍銅ツバメ『鯉姫婚姻譚』
  • エリザベス・ボウエン『ボウエン幻想短篇集』
  • 中村圭志『宗教図像学入門』
  • 柏木麻里『もっと知りたいやきもの』
  • 宇野碧『レペゼン母』
  • 原田マハ・高橋瑞木『現代アートをたのしむ』
  • 吉岡乾『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』
  • 中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』
  • アネ・カトリーネ・ボーマン『余生と厭世』
  • 佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』

『なんとかしなくちゃ』:面白かった。恩田陸の作品、傍から見るとちょっと変わっているけど筋は通っているキャラクターがたまに出てくる(『ドミノ』の田上優子とか『錆びた太陽』の財護徳子とか)。とはいえそういうタイプの人物が主人公になって、人格形成の様子が語られていくのは珍しい気がする。地の文のクセの強さや、一代記の序盤で一区切りがつけられているあたり、酒見賢一リスペクトを感じる。

『爆発物処理班の遭遇したスピン』:SF短編集だと思ったら重めのSFホラーだった。

『鯉姫婚姻譚』:孫一郎によって語られる御伽噺が不穏な空気を漂わせつつも、孫一郎とおたつのキャラクター性のおかげか、終始平和で穏やかな雰囲気。自宅の庭に人魚が住んでいてほしい人生であった。

『ボウエン幻想短篇集』:今月は期せずして怪異風味の本ばかりになっていた……。本作はゴーストストーリー多めという触書ではあったが、実際のところ幽霊が源泉の恐怖より、人生におけるささやかな恐怖が描かれている感じ。

『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』:不満や悩みを抱えつつも研究生活を続けられる動機の強さが羨ましい.

『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』:面白いとは思ったが,そもそもそこまでギチギチに時間を詰め込んでまで仕事するくらいならさっさと死んだ方がマシでは……?

『余生と厭世』:定年間際くらいになったら仕事や人生への向き合い方もまた変わってくるのかもしれない.そんなに長生きはしたくないが.

『喜べ、幸いなる魂よ』:やはり出家が人生のすべてを解決する.