大西ブログ

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2023年振り返り

2024年ももう2ヶ月経とうとしているが、2023年の振り返りをまとめた。

仕事

大半の時間を職場で過ごした。全社で「フレキシブルワークスタイル制度」として在宅/出社を選択可能としてるが、出社を選択している。採用面接を中心に緊張感のあるミーティングや面談が多いので出社した方が安心。941さんの記事にもあるように、ありがたくも個室をいただいている。

人事

2022年5月の人事異動(PDF)から、組織・基盤開発本部長と人事部長を兼務し、2023年は一年を通して職を全うした。特に採用に注力し、2023年は23年間のはてなの歴史で最も多くの人を採用した年となった。手応えのある結果が出て本当によかった。
人事部長としての取り組みは以前書いたブログが詳しい。2022年末の記事なので、その後のアップデートもどこかでまとめたい。

採用以外では、働きやすさを向上させる施策をいくつか。

サービスプラットフォーム

「組織・基盤開発本部 プラットフォーム部 サービスプラットフォームチーム」のマネージャーも兼務している。人事部長とこのマネージャーが日常業務に占める割合は高い。サービスプラットフォームは、はてなのサービス基盤の開発・運用をするチームで、アカウントシステムやはてなスターといった基盤システムから、社内のDXまで幅広く活動している。
以下、サービスプラットフォームの2023年の主な仕事。

ポイント終了

はてなポイントシステムの廃止の最後のツメの部分を担当した。ポイント廃止自体は2015年から段階的廃止を進め、足掛け8年に渡るプロジェクトとなった。途中担当者が変わったりもしたが、無事完遂できたのはほっとした。

はてラボ

終わるだけでなく、新しく始める方もいろいろやっていこう、ということで長くはてなの実験的サービス置き場として運用されている「はてラボ」の活性化を目指した。チームとしても新サービスを出したり、ラボそのもののリニューアルもした。

今後は「はてなスタッフだけの開発の場」としてだけではなく、アカウント認証基盤などのオープン化により、「誰もがサービスを作ることができる場所」を目指します。

リニューアルの告知にこのように書いたが、ここは色々な事情もありやや遅れている。今後に期待されたい。

その他、プラットフォーム対応

Twitter API や Google のメール送信ガイドラインや、他社プラットフォームに振り回される一年でもあった。それぞれタイムリーに対応していった。

生活

仕事以外であった大きな出来事を思い出してみる。

顔面神経麻痺

顔の右半分が麻痺して動かないというという顔面神経麻痺に苦しめられた。
2023年1月24日におそらく発症。前日から目が霞むなと思っていたが疲労のせいかと思っていた。朝、歯磨きをしていたらうがいの水がこぼれるということがあったが気にせずにいた。自転車での出社中、右目が風で冷たい、右目がうまく閉じれていないことに気づく。これは顔面麻痺だなと即座にググって病状を確認し、すぐ耳鼻咽喉科を受診。やはり顔面神経麻痺だと診察された。
その後数ヶ月ほぼ毎日通院、治療生活を過ごした。結局完治はせず、顔の右半分はやや動かしづらいが、おそらく他人が見ても気づかない程度にはなったのでよしとする。社内のScrapboxに闘病日記を書いていたので、そのうちブログエントリにまとめたい。

YAPC::Kyoto

2023年3月に実施された、YAPC::Kyoto 2023にキーノート登壇をしてきた。初のキーノートであり、長年考えていたテーマということもあり、たいへん力が入った。ありがたいことに沢山の人に聞いてもらい、好評でよかった。ほめてくれてる感想ブログをよく読み返してる。
発表内容などは、YAPC::Kyoto 2023 に参加し、キーノート喋ってきました裏話 - 大西ブログ に詳しい。

ブログ再開

父さんまたブログを書こうと思うんだ」と仰々しく再開したもののあまり書けていない。2023年に書いた記事は4記事だった。2024年は少なくとも月に1本、合計12本以上を目標とする。

今年飼って良かった猫2023 に書いたが、猫を2匹飼い始めた。9ヶ月と思えないくらい家に馴染み、大事な家族となった。

受験

昨年度は下の子が高校受験、2023年4月から高校生となった。そして今は上の子の大学受験の真っ最中。良い結果が出ますように。

趣味

LiSA

YAPCの記事に、「たまたま最近 LiSA さんの曲をデビュー当時から順に聴くというマイブームがあって」と書いたが、2023年はこれを継続した。アルバムのリリース順に、「Letters to U」(2011)〜「LEO-NiNE」(2020) の7枚のアルバムをそれぞれ1~2ヶ月聴き続ける、という感じで1年過ごした。Apple Music の Replay'23 がLiSAに染まり、ダントツトップで年間 20,000分以上を捧げていた。
一人のアーティストの10年を追体験するように、アルバムを聴きながら当時のブログやSNSの発言やライブのセトリを眺めたのはなかなか良い体験だった。追体験Webサービスを作りたい。
彼女の成長や生き様に励まされた一年でもあった。感謝申し上げたい。

映画

2023年に映画館で見た映画は15本ほど。自分にしてはまあまあ多かった。
年間ベストは「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」とする。D&Dがもともと好きだったというのもあるが、あまり期待せず見に行ったのも功を奏し、大変満足した。
ベスト3はこんな感じ。

  1. ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
  2. ゴジラ -1.0
  3. 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊

マンガ

あまり新作を追わず、ジャンプ+ と コミックDAYS を中心にWebでマンガを読む一年だった。ジャンプ+で好きな連載は「正反対な君と僕」、コミックDAYSで好きな連載は「げこの酒道」です!
単行本を買ってるマンガは10~15くらいまで減ってしまった。ダンジョン飯完結めでたい。24年は乙嫁語りが出ますように。

アニメ

あまり見れておらず、各クールで1~2本くらい。【推しの子】、スキップとローファー、水星の魔女、無職転生あたりは楽しんだけど、原作物が多い。水星と無職はどっちも今年は2期だし。2024年はもう少しアニメを見たい。

まとめと2024年に向けて

2023年はわりと仕事に明け暮れた1年となった。2024年も同様になりそう。子どもが大学生になるので生活も変化するのだろうな。
顔面神経麻痺で前半はかなり持っていかれたので、健康に気をつけて過ごしたい(と言いつつ新年から骨折したけど)。今年もよろしくお願いします。

入力サウンドデバイスを常にMacのメニューバーに表示する

オーディオへの興味は薄い方で、オンライン会議もMacBook Proの標準マイク・スピーカーで普段生活してます。
ところが、ひょんなことでPodcastにゲスト出演することになり、それなりに良いマイクで収録に臨まねばという気持ちになり、id:chris4403さんにMV7をお借りして試用してみています。お借りしたはいいが、これまで標準マイクだけで過ごしてたので、外付けマイクが正しく使われているか気になり、MeetやZoomの設定や、システム設定でサウンドデバイスが何に設定されているか確認してしまうという忙しない状況に……

これはよくないので改善したい。たとえば、入力デバイスをメニューバーなどに常に表示しておけないか、と試してみたがわりとあっさり実現できましたので手順メモを共有します。

メニューバーのスクリーンショット

使うツールはこの2つ

switchaudio-osx

コマンドラインでサウンドデバイスの表示や選択ができるツール。
github.com

install

$ brew install switchaudio-osx

usage

$ SwitchAudioSource
Please specify audio device.
Usage: /opt/homebrew/Cellar/switchaudio-osx/1.2.2/SwitchAudioSource [-a] [-c] [-t type] [-n] -s device_name | -i device_id | -u device_uid
  -a             : shows all devices
  -c             : shows current device

  -f format      : output format (cli/human/json). Defaults to human.
  -t type        : device type (input/output/system/all).  Defaults to output.
  -m mute        : sets the mute status (mute/unmute/toggle).  For input/output only.
  -n             : cycles the audio device to the next one
  -i device_id   : sets the audio device to the given device by id
  -u device_uid  : sets the audio device to the given device by uid or a substring of the uid
  -s device_name : sets the audio device to the given device by name

ということなので、こんなコマンドで利用中のマイクデバイスを表示できます。

$ SwitchAudioSource -c -t input
Shure MV7

うむ、バッチリ。

xbar

メニューバーに何でも置けるツール。プラグインを任意のスクリプトで書けるので自由度が高い。

Put anything in your macOS menu bar

Mac のメニューバーで PR の状況を把握する - maiyama log この記事を参考にしました。

plugin


メニューバーから Open plugin folder でプラグインを格納するディレクトリを開ける。
自分の環境では、/Users/onishi/Library/Application Support/xbar/pluginsでした。ここにプラグインのスクリプトを置けば自動でロードしてくれる。
プラグインの書き方のドキュメントはこちら https://github.com/matryer/xbar-plugins/blob/main/CONTRIBUTING.md

{name}.{time}.{ext}

  • name - The name of the file
  • time - The refresh rate (see below)
  • ext - The file extension

簡単!ということで、10秒ごとにサウンドデバイスを調べるスクリプトを用意します。

sound.10s.sh

#!/usr/bin/env bash

/opt/homebrew/bin/SwitchAudioSource -c -t input

このファイルを先程のプラグインディレクトリに置く。

できました!

社のSlackの分報で「こういうことしたい」と呟いたら id:cockscomb が xbar について書かれた id:maiyama4 のブログを教えてくれたので、やりたいと思ってものの10分でできました!同僚に感謝!

今年飼って良かった猫2023

キャンペーン「買ってよかった2023」とは無関係です!買ってないので。

きっかけ

妻と上の子が猫を飼いたいと長年言っていたが、僕と下の子は動物が苦手なので反対していたが、今年ついに諦めることにした。子らも高校生になり手がかからなくなって寂しい気持ちがあったりとか、長年抵抗してきたが新しいことにチャレンジしてみるのもいいんじゃないかと思ったこともある。

譲渡会

しかしペットショップで高級な猫をお迎えするのにも抵抗があり、保護猫の譲渡会で保護猫を預かろうということにした。元同僚の id:chira_rhythm55 にいろいろ情報を聞いたりして、地域の譲渡会に参加して、結果としては2回目に参加した譲渡会で決めた。

保護猫譲渡会で出会ったときの写真


写真に写っている通り、2匹いる。4匹兄弟で保護されて先に2匹は譲渡先が決まったそうである。「兄弟仲がとてもよいので、できれば2匹で預かって欲しい」と保護主さんが言う。人生で初めて哺乳類のペットを飼おうとしているのに、いきなり多頭なのか。
保護主さんは続けて「兄弟で飼うと二匹で遊んでくれるし、おすすめですよ」と。本当か。
まあとにかくトライアルをすることに決めた。体の大きな方がオス、小さい方がメス。

トライアル

ゴールデンウィーク中に譲渡会があり、ケージなど最低限の準備をし、GW明けにお迎えした。まずはトライアルということで2週間ほど飼ってみて、家に馴染んでくれるかお試し期間を持てる。

家に来てすぐ

保護猫なので、正確な月齢はわからないが、おそらく去年の9月頃に生まれたとのこと。我が家に来た時が7ヶ月くらい。これを書いている現在では1歳3ヶ月くらいか。
7ヶ月は仔猫というには大きいが成猫の手前ということで、成長を見られたのもよかった。

ずっとのおうち

結局一ヶ月くらいトライアル期間を経て、正式譲渡となった。正式譲渡となることをこの業界では「ずっとのおうち」というらしい。せっかく来たので長生きしてほしい。

廊下に寝そべる
よくじゃれあっている

脱走防止柵

家猫は外に出さないらしい。脱走すると捜索困難になるようなので、玄関に脱走防止柵を設置した。玄関すぐに階段があるため、既製品が合わず、DIYすることになった。
設計図を書き、ホムセンで角材丸材を購入、カットまではお店にお願いし、家で週末2回ほど使って自作した。木工の経験はないが案外上手にできたと思う。

玄関

猫のいる生活

中学生の頃、友達の家で飼っている犬に噛まれてから、動物に苦手意識があった。家で猫と生活するようになってもしばらくは噛まれないかとドキドキしながら過ごしていたが、幸い我が家に来た猫たちは噛まないし引っ掻かないし、抱っこにも慣れている子たちだった。
猫を飼っている同僚の話を聞くと、抱っこさせてくれない猫や壁やソファを引っ掻く猫もいるようで、良い子に来てもらえて保護主さんに感謝しかない。

猫のいる生活に慣れてきて、最近は会社に行く前に猫で暖を取ったり、寝室のドアを10cmほど開けていると深夜に猫が遊びに来たりするようになった。人間の子は高校生になって、子育てというよりは共同生活という感じになったが、またちょっと手のかかる子が増えたようでちょっと子育てを思い出して懐かしい気持ちになったりもしている。

プレステとアケコンと猫

動物を飼うの、事前には面倒そうに思っていたが、トイレは保護主さんがしつけてくれたのか、猫用トイレでキレイに済ませてくれるし、エサもドライフードが餌皿から切れてたら追加するくらいで思ったより手がかからない。家や服が猫の毛だらけになるが、そこは諦めて慣れた。

名前

保護主さんが付けた名前もあるのだが、トライアルから正式譲渡になる際に我が家での名前を改めてつけることにした。そうするのが一般的なようだ。
オスメスの2頭ということと、たまたまティアキンの発売日に我が家に来たので、僕は「ゼルダ」「リンク」という名前を提案したが家人からは一蹴された。次に上の子が「ムギとタビはどう?お父さんの好きなビールからムギ、お母さんの好きな旅行からタビ」という提案。
こんな可愛いことを言ってくれることってある?夫婦で落涙し、一瞬で猫たちの名前が決まった。

ムギとタビ
仲良し

家に可愛い家族が増えたのが今年の大きな出来事でした。以上、今年飼って良かった猫2023でした。来年も良いお年を〜

ショートカット.app で遊ぶ

これは はてなエンジニア Advent Calendar 2023 の 20 日目の記事です。
昨日は id:tokizuoh さんによる『小粒な Tips の共有をしていきたい: 2023年にメモした iOS アプリ開発 Tips 3選 - カルボナーラ街道』でした。Tipsいいですね!ちょっとしたTips、オフィスで仕事してると隣の人の操作を見て覚えたりしてましたが、リモートワークが進んできましたので、ウェブで知見共有するのがいいですね。

エンジニアアドベントカレンダーに参加してみたものの、最近は人事部長の仕事がメインであまりコードを書いてないので小ネタで済ませます。

気軽に電卓を開きたい!!

私は普段、Magic Keyboard(テンキー付き)を使ってます。TouchID が使いたいので Magic Keyboard にしたのと、デスクも大きいしなんか便利かな?と思ってテンキー付きにしました。
テンキー使うかなーと思ったのですが、あると結構便利で、スプレッドシートで数値を入力するときとか、意外と"計算機.app"もよく立ち上げて使ってます。あってよかった。

で、写真を見てもらうとわかるんですが、テンキー付キーボードにするとファンクションキーがF19までついてきて、これも使いたくなってくるんですよね。とりあえず F19 を押したら電卓が起動すると便利では?と思いついて設定してみました。

以前なら Automator を使ってサービスに登録して…みたいな手順を踏んだものですが、(参考:はてなブックマーク Chrome アプリ を Macのアプリケーションに登録する)令和のAutomatorこと"ショートカット.app"を使って設定すると簡単です。macOS Monterey から搭載されてますね。


はい、できました。ショートカット、Scratch みたいなビジュアルプログラミングで色々な処理を定義できて便利です。『詳細』からショートカットキーも設定できるので、Automator を使うよりも圧倒的に楽ですね!

これで電卓を開きたくなったらF19を押すとたちどころに立ち上がります。ものすごく素朴なんですが意外と便利で重宝しています。調子に乗って、F13〜18にもよく使うアプリをとりあえず登録してみたりしました。

その他のレシピ

ショートカットには『ギャラリー』が用意されていて、たくさんのプリセットレシピがあります。これらを使ってみたり、中を覗いてみることで、なんとなく使い方もわかるようになっていて便利ですね!

幾つか遊びで作ったレシピを紹介します。

画面を分割


とりあえずよく使う2大アプリで画面を2分割します。仕事モードに入るときにポチッと。

クリップボードの曲を再生


クリップボード(コピーバッファ)に曲のタイトルが入ってたら、その曲をミュージックから検索し、再生します。
インターネットしていて何か曲の記事を読んでると聴きたくなることありますよね。そんなときに即座に再生できます(ライブラリにあれば)。完全一致じゃないといけないので精度はイマイチ。改善の余地がありますね。

アクティビティモニタをスクショ


なんかMacが重いぞって思った瞬間スクショが取れます。

終わりに

いかがでしたか?全然実用的じゃない例ばっかでしたね。みなさんも面白ショートカットを作って教えてください!
ところで、"ショートカット" という名前どうなんでしょうね。検索エンジンを使って情報を得ようとしても、ショートカットキーの記事ばっかり出てきます…

明日のアドベントカレンダーは、id:utgwkk さんです!

父さんまたブログを書こうと思うんだ

長く更新していないブログを再開するのは、行きつけだったが足が遠のいてしまった飲み屋の暖簾を久しぶりにくぐるような気まずさがある。聞かれてもいないのに「最近仕事が忙しくてね…」なんて言い訳をしてみたり。

この記事はそういった類のものである。言い訳と自分語りが苦手な人はここで引き返してください。

TwitterがXになり、ポストTwitterサービスも盛り上がっている。いくつかそれらのサービスにアカウントを作ってみたものの続かず。SNSもいいけど、やっぱりブログを書こう、自分の折々の気持ちをちゃんと書き残そうと改めて思ったのであった。

近年、ブログもSNSも全然更新しなくなってしまった。
なぜブログを更新をしなくなったかを振り返り、過去を乗り越えて、またブログを書いていこうというセルフリハビリテーションのためにこの記事を書いている。

2018年8月30日

話は5年ほど遡る。2018年の私は非常に胃を痛くしていた。2011年にはてなブログを立ち上げたときから、いつかはなさねばならないと思っていた、はてなダイアリーを閉じるという宣言をするのだ。

ユーザーの皆さんからの反響も大きかろうと覚悟をしつつ、それをどのように伝えるかは悩ましい事柄であった。信頼のおける同僚に編集を手伝ってもらいながら、どういう内容をどういう語り口で伝えるかは試行錯誤の末に最後はえいやと投稿した。

この記事には沢山の反響が寄せられた。かなり悪い想像もしていたが、その悪い想像に比べたらずっと温かい反応だった。それでも、惜しむ声や悲しむ声、たまに怒りの声もあった。

この記事への反応に限らず、いろいろな場面でお叱りを受けることも多くなった。十分覚悟していたとはいえ、別の文脈で油断していたところに不意に出くわすと、思わぬダメージになったりもした。覚悟も準備もどれだけしても、し足りないことがある。

一方で、記事の反響が大きかったことにやや興奮もしていたその日、Facebookにこんな投稿をした。

今日は1000ブクマ集め、TwitterトレンドとYahooニューストップを飾り、たくさんの実績を解除できました

この投稿には、たくさんの労いや励ましの言葉をもらった。直前に胃が痛かっただけに承認の言葉は天に昇る心地がして有り難かった。恥ずかしながら言うが、この投稿へのコメントはその後心が折れそうな時に何度も読み返して励みとさせてもらった。

たいへん有り難かったのと同時にこの時、「SNSは麻薬」という言葉が頭に浮かんだのだった。

エンジニア文脈で「キャッシュは麻薬」というフレーズがあるが、同じノリだ。インターネットの荒野で風雨に晒されることに慣れていたつもりだったが、実際に晒されている最中に不意に出くわしたオアシスで飲んだ水は随分と心に染み渡った。甘美な味は、それに慣れると危険だという警鐘を心のなかで小さく鳴らした。この甘い水を飲んでいていいのか。慣れてしまうともう戻れないのではないか。

2018年10月4日

終了の告知から5ヶ月の間に、ダイアリーのブログへの統合へと方針を定め、「ブログ統合プロジェクト」と名付けた。そして書いたのがこの記事。ダイアリーに書かれた記事をなるべく損なわずにインターネットに残したいということと、それを著者が将来にわたって編集やあるいは削除できる権利を保有できる状態を保持するのがベストだと考えた。

この決断にもたくさんの励ましと、そして批判もいただいた。多くの方にはさっき書いた意図を理解いただいたと思うが、やはり強制的な措置であるし、強引さの自覚もあった。
この頃、不意にもらう批判に慣れると同時に、自分からなにか積極的に発信していこうという気持ちになれなくなってもいた。

2019年1月29日

さらに時は流れ、ダイアリーのブログへの統合は粛々と進んでいった。この日、まだいくらかのサブシステムが動いているものの、「日記を書く」という機能を閉じたその瞬間は今も記憶に残っている。

オフィスでいつも通りの軽い口調で機能クローズのデプロイを指示し、何事もなかったように業務を終えた翌日に、Facebookに投稿しようとしてテキストエリアに書いたまま、投稿ボタンをついに押せなかった文章がこちら。

はてなダイアリーを終えてブログに統合すると発表し、粛々と準備を進めている。
昨日はついに更新機能を停止し、新しい記事というものが生まれなくなった。
後継サービスのはてなブログはダイアリーを遥かに上回るアクティブユーザーで盛り上がっている。
それでも、ダイアリーを止めることは自分で自分の子の首を絞めるような罪悪感に駆られ、SNSでの発言もあの日を境に激減し、昨夜は悲しい気持ちで夜中にエンジニアの作業を見守った。我ながらチキンで情けない。せいぜい今はこの気持ちを大事にして、統合後にやってよかったと思える世界を実現したい。

これをテキストエリアに書きながら、投下したらまたいいねが沢山つくかな、と思う自分がいた。今、まさに麻薬に手を染めようとしているなと思ってしまって、投稿をやめ封印して今に至った。

投稿できなかったのだからそのまま忘れ去ればいいのに、下書きを残して今このように開陳しているのは我ながら自己愛や開示欲が強くて赤面する。

2023年11月

唐突に現在に戻る。結局、このブログに2018年から本日まで、4記事しか書いていない。

会社役員になったり立場が変わって話せることが減ったこともある。でも、折々に書きたいことはあり下書きも溜まってきた。この記事も何年も前に書き始めた下書きを掘り起こして今書いている。

先日、YAPC::Kyoto 2023 に登壇し、自分の内面について話す機会を持った。この記事はあの登壇と同様に、自分の中で長年溜まった澱や膿なのだ。それを吐き出すことで、止まっていたものをまた動かしたいと思っている。

最後に

そんなこんなで、ブログを長く止めてしまい、また書こうとしている。

父の名前をググってこのブログを見つけた私の子どもたちは、何年も更新されてなくがっかりしているだろう。君らが生まれた日のことをブログに書いていたけど、君らの成長をあまり綴れなかったのは興味を無くしていたからではない。

上の子は来春から進学して一人暮らしをしたいと言っている。成長を驚き喜ぶと同時に、塾や学校の送迎中にぽつりと話すようなコミュニケーションすらなくなってしまうのは寂しくもある。今後は別の方法で、父の様子を知ってもらいたい、一方的にでも。

書かなかった言い訳はもう十分書いたし、これから父さんまたブログを書こうと思うんだ。