細胞説

教科書における細胞説

高校生物および、中学理科で細胞説が紹介されている。

しかし、細胞説についての記述はせいぜい

  • フックが"細胞"を発見した
  • シュライデン、シュワンが植物と動物について細胞説を提唱した
  • フィルヒョーが「細胞は細胞から生じると主張した」

という程度のことが紹介されているだけであり、細胞説が提唱された当時、どのような意義を持っていたのかということにはあまり触れられていない。

 

細胞説の意義

細胞説についてかなり授業に使いやすい形でまとめている書籍に、

 

生物と細胞―細胞説をめぐる科学と認識  宮地 祐司 1999

https://www.amazon.co.jp/dp/4773501456

がある。

 

要約すると、細胞説の意義は(上記の書籍 p126)

  • 当時、生物は細胞だけでなく「球体、繊維、管など」から成り立ち、細胞は構成要素の1つに過ぎないと考えられていたが、生物の基本単位は細胞であると示したこと
  • 当時、動物と植物は全く異なるものであると考えられていたが、どちらも細胞でできているという共通点を持っていることを示したこと

のようである。(見落とし、書き落とし、勘違いご指摘ください)

 

そのため、生物について考えるときに、細胞説以前には「細胞に関しての理論」、「繊維に関しての理論」・・・と多岐にわたる観点で議論をしなければならなかったものが

、細胞についての理論に1本化できた。

 

 

 

フタバスズキリュウ もうひとつの物語

理科の授業などで生徒と観察を行っていると。「先生、これは新種じゃないですか?」というようなことを言う生徒がいないでしょうか。

 

もちろん、新種であることはまずないのですが、そんなときによく「新種というものは、見つけることももちろん大変だが、新種であると証明するために今まで報告されている生物と比較することが大変なんだ」ということを話します。

 

この  
フタバスズキリュウ もうひとつの物語  2018 佐藤 たまき

 

は、そんなやり取りをしたあとに読むと新種の記載の大変さ、地層に関する先人が積み上げたデータの重要さ、などが伝わる良書です。データは多くないですが、1968年に発掘されたフタバスズキリュウが、2006年になってようやく新属新種として記載された紆余曲折がわかるのではないでしょうか。

ブログの方針(はじめに)

このブログでやりたいこと

現在、理科教育(主に自分の専門の生物(と地学))について以下のような不満と疑問を持っています。当ブログではこれらの問題を少しでも解決して自分が授業に臨むために調べた書籍を紹介したり、自分の考えを示したいと思います。これらにより、新たな文献を教えていただいたり、自分の知識が至らないところを知ることができればと思います。

 

 

不満点や疑問点

①2018年現在、理科教育の界隈では言語活動であるとか、アクティブラーニング、バカロレアなどと言われています。しかし、どうしてもそうした活動が表面的な「おままごと」と感じられます。

 

②中学理科(地学と生物)や高校生物を教えていると、知識や知見、学説は紹介されていても、それが科学史においてどのような意義を持っていたのか、棄却された説はどのようなものでどのような実験で決着がついたのかといったことがあまり紹介されていません。しかし、これらの知識がなく、単に細胞説の話を聞いても、何がすごいのかイマイチピンとこないのではないでしょうか。

 

③教科書に記述されている内容に出典がありません。論文を見ると教科書よりもはるかに複雑な実験系を組んでいることがわかったり、当時何が論争になっていたのかがわかったりするので、本当は出典を示してほしく思います。

 

  

 

 

堅苦しくなりましたが、多分ゆるゆるとした記事が増えていくと思います。堪忍してつかあさい。(←ほらもう緩み始めた)