世界はますますつながりあって、しっかりと熟していく。

世界はますますつながりあって、しっかりと熟していく。

熟せば熟すほど、身のまわりにはしくみはわからないけど便利なものが増えていって、いつしか今度は便利かどうかもわからないけど必要なものに囲まれる。

それが必要なのかどうか、なんて考えるのはめんどうだ。たまに考えて、やっぱりめんどうで。たまに考えて、やっぱりめんどうで。

人はつながろうとする。0.02mmまでちかづいていける。ちかづけばめんどうがふえる。それでも人はつながろうとする。

0.02mmまで。それだけでめんどうは少し減る。

ロマンチックシモネタ。

自分というものが他人と違うものであること。

自分というものが他人と違うものであること。

自分の考えがオリジナルであるとか自分が他人とどんな差異があるとかそういうレイヤーなどでなく、もっと本質的な意味で違うものであることに気がついたら。

やっと自分を発見し、耕し、大切に育てた自分が自分でありつづけるためにどう或るべきか。

そこまで行ったふたりが初めて必要になるもの。0.02m。

自分もひとつの特異点微分不可能な。

ロマンチックシモネタ。

100kmは思っていたよりも遠いものだった。

100kmは思っていたよりも遠いものだった。

まさか自分が遠距離恋愛などというものを経験することになろうとは思ってもいなかった。もしかすると人生で唯一の遠距離恋愛になるのかも。それを経験して知ったことは、冬の新幹線のホームはとても寒いということだった。

開けたばかりのブラックコーヒーの、缶から立ちのぼる湯気に鼻を寄せて女は言った。“この香りは好きなんだけどね”

缶コーヒーは、見送ったあとにはもう冷めていた。それを一息に流し込んで、ひとり階段を下る。ポケットに冷えた指先をつっこんで

上手にあたためたり、冷ましたりしないと100kmもの距離はあやつれない。それが上手になったからといって、何が変わるというわけではないのだろうけれど。

もし、どうしてもあたためたくなったら、距離を近づければいい。0.02mm。そうすれば指先までぽかぽかしてくる。一度そこまであたためてから、またゆっくりと冷ませばいい。

0.02mm。まるでサーモスタットのような。
 
 
ロマンチックシモネタ。
 

“なんでオンナは化粧するか知ってる?”

“なんでオンナは化粧するか知ってる?”
女は言った。
“オトコは解釈したがるからよ。人は他人に本質を規定されて自分を矮小化されるのが一番イヤなの。”

それはたしかにそうだ。男は思った。女は続けた。

“でも、いくら言っても止められないの。だから化粧なんてして本質から目を逸らさせるの。しかたがないから外見を解釈させるのよ

男はそれを聞いて暫く考えているようだった。そして徐ろに呟いた
「解釈しない、なんてことが可能なのかなぁ」


女はすぐにそれに答えた。

“今はまだ無理、だと思う。そして、それを言葉で説明することは、私にはできない。どうしても知りたいなら…”

そう言いながら枕元に置いた鞄から、小さな箱を取り出した。

“知りたいなら…私はただ受け容れることならできるわ。解釈なんて不粋なことはしない。ただ受け容れるだけ。それ、見てみたい?”

0.02mm。そこまで近づかないと見えないことが世界にはある。そしてそこは目では見えない本質が剥き出しになった世界。

男は言った。
「見てしっかり学べ、ってことか」

女は言った。

“ほら。また解釈しようとしてる”

0.02mm。解釈の不要な世界の、門番が検札するチケット。

ロマンチックシモネタ。

例えば、あの人をずっと好きでいられるのだろうかという問い。

例えば、あの人をずっと好きでいられるのだろうかという問い。

答えの出ない問題に絡まる夜、ひとり静かに少しずつ解いてみる。どんな問題であってもそれを理解するための作法というものは在って、必要なのはそこへかけられる時間だったり。

誰かを好きであるとはどういうことか。そもそも何故、好きな人とそうでない人、はたまた何故好きなときとそうでないときというのがあるのか。

結局のところ、人を好きである状態とは、その人と居るときの自分が好きであるのかもしれない。
それならば、なるだけその人を好きな状態を保ちたい。多面体である人間の、なかでも好きな一面を大事にとっておきたい。守りたい

それには0.02mmの薄い膜が必要。0.02mmで守る、ココロとカラダと、私はあの人が好きてあるというこの瞬間。


0.02mmはつなぐのです。

ロマンチックシモネタ。

あのときはそれがうれしかったのです。

あのときはそれがうれしかったのです。

わたくしをどくせんしたいのだ、とおっしゃいました。そして強く“きすまあく”をつけたのでした。わたくし、初めてだったものですから、思ったよりも痛いものだと思いましたが、それ以上にこんなわたくしをこれほどに愛してくださっているのだと、とくに我慢する意識も持たないままそれを受け容れたのでした。

今思うとあれはなんだったのでしょう。

あのときはどくせんしたい、ということばにやっと居場所を見出した思いがしました。ところが今ではわたくし、じぶんの居場所などというものが、それがそこにありつづけるということが、そうぞうしただけでもう胸苦しくなってしまうのです。

わたくしの居場所は今はここにある。けれど、明日もここにあるかどうかはわからないし、わかりたくもない。明日のわたくしを閉じ込めないために。0.02mm。

明日のわたくしが、今日と同じようにわたくしのものであるために。0.02mm。

ロマンチックシモネタ。

人生とは旅であり、旅とは人生である。

人生とは旅であり、旅とは人生である。

僕も旅をしている。探しものの旅。まだ見つからない。もしかしたら見つからないかもしれない。なにかの拍子に見つかるかもしれない。

僕は探している。これまでも、これからも。

女子に嫌われないシモネタはどこに。

ロマンチックシモネタ。