つぶやきの延長線上 second season

映画、アニメーションのこと

2023年 TV・WEBアニメベスト5選

いつも通り順不同です! 今年は5本しか選べませんでした! よいお年を!(越してるけど!) ※前半でカロリー使い切りました。

 

『お兄ちゃんはおしまい!』 #8「まひろとはじめての女子会」

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『おにまい』には予感がある。それはまひろがいつ男に戻ってしまうか、という物語なものや、女性視点で生きてきていない無防備なJCが外を出歩いていると何者かにさらわれるのではないか、はたまた誰かに正体がバレるのではないか。それらは物語に緊張感を生む。ただ、『おにまい』は物語的な緊張感だけに頼っているわけではなく、5話のモブたちからまひろへの視線(スカートで行儀悪くあぐらをかいている/JKがまひろに向ける視線)や、6話のカフェでのワンカット(人が横切るカット,4分26秒)など、誰かしらの視線(や神視点)のカットの驚きによってそれらは担保される。この8話に至っては同級生が遊びにくるということで、まひろ含む同級生と、姉(妹)。まひろ&姉(妹)と同級生、などの様々な視点からのカット割、空間が何層も設定される。またこれによる、画面内レイヤーの豊かさ、カット単位の驚きによって、(運動の)持続される。*1 物語的にも「おもらし」を庇うまひろという成長過程を見ることができる。

「成長過程」と書いたが、JC化していることで本来の姿の彼の成長とはまた違った噛み合わなさ、が面白い。まひろであることで、彼はどんどん「女の子らしさ」(はたまた「人間らしさ」)を手に入れることで本来の自分の姿を忘れていく。この「成長」と「忘却」は同時に進んでいく。本来、成長過程において忘却していくということは普遍的なものでもある。私たちは成長する過程で、小さい頃のできごとを徐々に忘れていく。それは視聴者が本来のまひろの姿(男性)を忘れていくことと似ているようだ。しかし、薄れていった記憶のなかにも確実に出来事は積み重なっている。それらは忘れても私たちの身体に刻み込まれているのだから。運動をし続けろ……。

 

ONE PIECE』 1071話「ルフィの最高地点 到達!〝ギア5〟」

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東映は戦闘シーンをドラゴンボールとどう差別化するか? って課題ずっと抱えているような気がしていた。ワンピースでも光線系の技を繰り出すときに「ポーヒーーー」ってエネルギー弾的な音を使っているから。あまりにも戦闘描写がインフレすると、結局ドラゴンボール化してしまう。今年のワンピースはルフィvsカイドウ、ゾロvsキングでだだっ広い外での戦闘があったのですが(もちろん作画的に素晴らしいし面白いが)、目新しさってのはそこまで多くはなかった。*2 そこにきて1071話は、ヒトヒトの実を覚醒させたルフィがグニャグニャとこれまでにない動きをしてみたり、それに伴ってカイドウもカートゥーンアニメみたいに目が飛び出してみたり、戦闘にバリュエーションが増えている。1071話カロリーハンパないだろうけどブチ上がりました。ちゃんとワンピース見ていてよかった。

 

『逃走中 グレートミッション』 第28話「混乱のラビリンス 裏切りものは誰だ⁉︎」

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『逃走中』をここまで自由にアレンジするって毎回アイディアに唸らされる。だけど、あくまで「ハンターから逃げる」という目的は忘れていないのもいい。28話は仲間の中から裏切り者を炙り出す回なのですが、緊張感のあるスリリングなカットが持続していて最高なんですよねー。毎週楽しみにしていた。今年いちばん楽しく見ていたアニメかも。

 

『陰の実力者になりたくて! 1st season』 #20「魔人降臨」

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2期もよかったですが、やっぱり1期のわかりやすさみたいなところが好き。市街戦のカット割が最高なんですよね。ワンピのゾロ戦のチャンバラもよかったけど、このくらいの強さ(シャドウが手を抜いているから)での斬り合いってアニメになるとちょうどいい。カットの持続がある。特に8分50秒過ぎで相手を川に蹴り落としてから、民衆(と馬)の間でベアトリスとの斬り合いをして→画面外へ出てカットを割ってミディアムショットで斬り合いという繋ぎ。9分09秒手前で馬車が左右画面外へ中から外へ移動する(運動の持続)、カット割って(手前で人がしゃべる)奥でベアトリスとシャドウが斬り合っている。画面が停滞することなく、繋がっているという当たり前の快感! これがアクションアニメ!

 

BLEACH 千年血戦篇』 #26「BLACK」

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修多羅千手丸の卍解! 娑闥迦羅骸刺絡辻!!

 

おまけ

あと、一度見て再見していなかったりしたけどよかったのは、以下の通り。2024はもっとアニメ見たいね。

 

HIGH CARD

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

スキップとローファーツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

山田くんとLv999の恋をする

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-

呪術廻戦

 

 

*1:特に2人が皿洗いしているシーンが好きです。

*2:ただ、ゾロvsキングの室内での戦闘はよかったし、サンジvsクイーンのサンジの高速移動と蹴り連打は最高。また、ビックマムとキッド・ローのコンビネーションは最高でした。

2023年映画ベスト10

恒例の新作映画ベスト10です。例によってあんまり見れていませんが、10本は選べたので。おまけで最後に旧作ベスト書いてます。よいお年を!

 

  1. ステロイド・シティ
  2. ファースト・カウ
  3. グリッドマン ユニバース
  4. アルマゲドン・タイム ある日々の肖像
  5. ノック 終末の訪問者
  6. ショーイング・アップ
  7. 春画先生
  8. 忌怪島
  9. EO
  10. 禁じられた遊び

 

『アステロイド・シティ』 ウェス・アンダーソン

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劇内のお話でもこの世界には風が吹いているし、振動も伝わってくる。イカれた子供が家から飛び降りたり、原発実験が近くで行われている。みんなが宇宙船を目撃すること=同じ方向を向くことに感動する。それなのに本来劇内に登場するはずだった亡き妻(設定)とは、ビル越しにひとりで再会する。ここにグッとくる。このあまりにも複雑に入り込んだフィクション構造は狂人の世界。突然始まる調子外れの暴力もいつも通りのウェス・アンダーソン。ここ最近でいちばん面白かった。

 

『ファースト・カウ』 ケリー・ライカート

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まるで古典映画を見ているような犯罪シーン。緻密な演出によって作られた緊張感がやばかった。今年で一番ハラハラドキドキした新作映画。

 

グリッドマン ユニバース』 雨宮哲

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学園祭準備していたところから2人でアイスを買いにいくシーンで月を2回も映すあたり、完全に告白シーン前兆モードだった。最後のワンシーン見てたら照れちゃうよね。めちゃくちゃよかった。

 

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』 ジェームズ・グレイ

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そこいらの映画なら墓場のシーンで数カット使って、埋葬しているところまで繋げていきそうなものだけど、わずか2カットで終わらしている。また、犯罪シーンでは友人が捕まる一部始終を主人公が目撃しているというカットだけで見せている。ふつうなら捕まるシーンで盛り上げそうなものが、遠景ショットだけで語る慎ましさ。主人公やその周りの人たち以外はほとんどアップショットを避けている。ずっとカットが心地いいが、特にPC盗んで〜という犯罪シーンものすごい緊張感があってよかった。

 

『ショーイング・アップ』 ケリー・ライカート

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ミシェル・ウィリアムズのしかめっ面が最高! 住んでいるアパートの給湯器が壊れて2週間は入れない。しかも大家に文句言っても「個展があるから」と断られてしまう。「私だって個展があるのに!」速く作品を作ろうとしても猫がエサをせがんでくるし、エサは切らしているので買いにいかなければならない。なぜか自分の猫が殺しかけた鳩を大家が拾ってきて、治療を手伝いした挙句に預からなければならない。兄弟は狂人化していて、なぜか巨大な穴を掘っているし、隣の大家は個展を成功させて大盛り上がりで「やかましい!!」 神経質な人間が悪意はないけど意地悪されたら? という発狂モノ映画。

 

『ノック 終末の訪問者』 M・ナイト・シャマラン

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闇雲に集められたものたちだからプロフェッショナルではなく、ぎこちない手つきの襲撃だから映画がわちゃわちゃして面白くなる。それとバーでの即物的な暴力の気持ちよさ。ニュース映像のフェイクっぽさもよかった。『ハドソン川の奇跡』や『回路』を連想した。『オールド』から飛躍的に面白くなった気がする。シャマラン2ndステージみたいな。

 

春画先生』 塩田明彦

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たまたま目撃してしまった春画に心囚われる……みたいな話は好きだが、カット単位でいちばんびっくりしたのは柄本佑のブーメランパンツ(青)!*1

 

『忌怪島』 清水崇

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みんなで心霊ビデオを鑑賞する感覚。やっぱり細田守が『竜そば』で心霊ビデオをやったのは誰よりも一足早いよねって感じた。もちろん、ベタに心霊ビデオだったりこう言ったホラー映画がやるのはわかるが、それを清水崇が打ち返してきたのが素朴に嬉しい。島シリーズ続いて欲しい。

 

『EO』 イエジー・スコリモフスキー

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これもカットに驚きがあった映画の一つ。いきなりロバがダム(か、何か水が滝のように流れているところ)で水が轟音鳴らしているところに素朴に立っているカット。あまりにも面白すぎた。フーリガンが襲撃に来るシーンで室内からのカットを避けて、外にあるカメラで室内から放り出された椅子がガラスを割って飛び出してくるシーン、さすがだと思う。それとユペールが出てくるといきなり映画の強度が増すよね。ほとんどギャグ映画だと思う。

 

禁じられた遊び』 中田秀夫

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リビング・デッド!! ひさびさの『ダーク・グラス』で帰ってきたアルジェントを選ぼうか、これまた久々に呪いのビデオに帰ってきた中村義洋と選ぶか、かなり迷ったが、なぜか緊急時に森に逃げたり(謎のオマージュ/アルジェントの新作も森が出てきていた)、最終的に子供を○○流れにするの、ほんまに東映これ大丈夫なん?ってほどの覇気の入り方で選ぶしかなかった。

 

 

旧作ベスト

  1. 港祭りに来た男 (マキノ雅弘/1961)
  2. 雨にぬれた鋪道 (ロバート・アルトマン/1969)
  3. ブレーキ・ダウン (ジョナサン・モストウ/1997)
  4. ハナ子さん (マキノ雅弘/1943)
  5. トルトゥ島の遭難者たち (ジャック・ロジエ/1976)
  6. 悪の階段 (鈴木英夫/1965)
  7. 資金源強盗 (深作欣二/1975)
  8. 私の血に流れる血
  9. ナイトビジター (ラズロ・ベネディク/1970)
  10. 帰らざる河 (オットー・プレミンジャー/1954)
  11. フォー・クリスマス (セス・ゴードン/2008)
  12. パペット・マスター (ソニー・ラグーナ、トミー・ウィクランド/2018)
  13. 猛獣大脱走 (フロンコ・E・プロスペリ/1983)
  14. ザ・ゲート (ディボー・タカクス/1987)
  15. 川沿いのホテル (ホン・サンス/2018)

 

ろくに映画見れてないから層がうっすいですが……。トップ5くらいは全部横並びくらいかもしれないと思いつつ、マキノ、アルトマンが抜きん出ている気もするが、ジョナサン・モストウほんとに面白いんだよね。セス・ゴードンは思わぬ拾い物だった。

 

 

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*1:この前のシーンで女と佑がヤっているけど、全然顔が視認できないのがすごいと思う。多分、演出の一環でそうしている。だからこそ佑の青いパンツに驚かされるってのもある。

2022年新作TV・WEBアニメ10選

今年は10本選べました!といっても年はあけておりますが。

 

BLEACH 千年血戦篇 #6「THE FIRE」

このアニメほとんど曇り空というか、どこか不穏な雰囲気を演出していたのですが、山爺の卍解で水分が蒸発してしまって、少しの間、晴れ間が見えるんですよね。この曇り/晴れがとても気持ちがよかった。

 

デリシャスパーティ♡プリキュア 第26話「ここねのやくそく!ピーマン大王への挑戦」

田豊のギャグ回。ピーマン=苦い、といったイメージ。小さい子たちが見るこの時間帯に作られたアニメとしてもピカイチの挿話。ピーマン料理カフェなんてあるんか? と思ったが、わりと野菜ソムリエがやっている野菜中心のカフェみたいのはあるらしい。

 

その着せ替え人形は恋をする 第8話「逆光、オススメです」

廃墟/海の暗さと明るさの対比が見事な挿話だった。手に持ったものをカラスに向かって投げるカットの心地よさ。贅沢な時間がアニメーションに宿っていて最高でした。

 

陰の実力者になりたくて! #5「アイ・アム……」

「かつて核に挑んだ男がいた。男は肉体を鍛え精神を鍛え技を鍛えた。だが、それでも届かぬ高嶺があった。しかし、僕は諦めるわけにはいかなかった。だから修行を重ねた果て、ひとつ答えに辿り着いた。核で蒸発しないためにも自分が核になればいい。真の最強をその身に刻め。これぞ我が最強。アイ・アム……アトミック」

 

ONE PIECE 1015話「麦わらのルフィ 海賊王になる男」

作画的な快楽はもちろんのこと、ドラマ的な側面からもテレビアニメ最高傑作のひとつとして数えられる挿話じゃないでしょうか。ワノ国編およびワンピースの歴史が積み上がって、この時間が生まれているんだなという素朴な感動があった。

 

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ- すてっぷ4「DIYって、どこでも・いごこち・よくなるよ」

20分20秒あたりから始まるカットが印象的ですが、冒頭から始まる窓越しのカットから息を呑むほどいい。このお話の紫色のイメージが物語を引っ張っていており、そうと思えばあのような自転車のカットをいれてしまう大胆さ。今年一番びびったカットかも。

 

BIRDIE WING - Golf Girls' Story - 第7話「葵色の弾丸」

ギャグセン高いゴルフアニメ!詳しくは以下エントリーで書いたので割愛します。

paranoid3333333.hatenablog.com

 

平家物語 第十話「壇ノ浦」

壇ノ浦

「絵コンテ・演出:山代風我」覚えておきたい名前として刻まれた挿話だったんじゃないでしょうか。アクションつなぎもよかったですし、効果的な花のカット。そして、充実した運動アニメといった感じでグッときました。

 

ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第78話「地獄からの生還者」

リメイク版『ダイの大冒険』大満足なアニメでした。基本的にジャンプアニメ的というか、強いやつを倒したらまた窮地に立たされる展開がやけに多い。そして、ここでまさかのヒムの再登場です。オリハルコンという重く硬い身体を活かした重みのあるアクション、そこに軽やかさも加わった一連の動きが気持ちよくてランクイン。その他には洞窟に潜っていく63話「聖なる継承」でのマァムのアクションがよかったですね。

 

ヒーラー・ガール 12話「私たち、C級ヒーラーガールです!」

どうせなら2クールくらいで見たくなったヒーラーガールからは、最終話の12話を選出。玲美が髪を切るといった物語的なできごとが、「私たち」=3人1組にかかってくるのがとても気持ちのいい演出でよかった。OPアニメーションもよかった。