【書籍紹介】2018年の個人的3冊
ご訪問ありがとうございます。
2018年も明日で終わってしまいますね。皆さんにとって、どんな1年だったでしょうか?
個人的には、本を読む時間を去年までより多く確保した1年だったと思います。
さて、「読めよ薬剤師」プロジェクトとして、今年発売されたオススメ書籍3冊を紹介する企画という事でございます。1年間、たくさんの本との出会いがありましたが、その中から3冊を選んでご紹介したいと思います。それぞれの分野が得意な先生方もいらっしゃると思いますが、個人的に出会えてよかったと思っている3冊です。
予想ですが、3冊中2冊は他の薬剤師さんと被るのではないかと予想しています。
☆誰も教えてくれなかった実践薬歴
ソクラテス先生こと山本雄一郎先生の著書「誰も教えてくれなかった実践薬歴」です。こちらは持っていらっしゃる薬剤師さんも多いのではないでしょうか?個人的に発売されるずっと前から楽しみにしていた1冊です。
私自身、言われてみれば入社してから薬歴の書き方をしっかり教わったことは無く、内容はほぼ自己流になっていました。SOAPのOとAがごちゃごちゃしたりしていました。この本を読んでから、視界が晴れたような感じがしましたし、服薬指導の時の頭の使い方も変わったように思います。読み進めるにつれ、個人的にも店舗の中でも課題や反省点がいくつか見つけられました。
この本には、実際に現場で役立つ知識や情報源も豊富に盛り込まれています。勉強意欲を高めてくれるような仕掛けもしてありました。個人的には「薬識」という視点が得られたことも大きく、服薬指導で早速活用しています。
https://www.jiho.co.jp/shop/list/detail/tabid/272/pdid/51155/Default.aspx
☆つまずきから学ぶ漢方薬
こちらも購入されている薬剤師さんが多いかもしれませんが、岩田健太郎先生の著書「つまずきから学ぶ漢方薬」です。この本に出会うまで漢方薬はどうも苦手意識が強くて、暗記勝負みたいな漢方薬アレルギーのような状態でした。
この本は、漢方薬に割り振られている番号(葛根湯なら①)順に1つ1つ解説してあります。漢方薬が、構成生薬から1つ1つ丁寧に説明されていて、個人的に非常に分かりやすかったです。漢方薬を深くというよりは、勉強の第一歩といった感じでしょうか。
また、様々なエピソードやダジャレも散りばめてあって、読んでいて苦痛に感じませんでした。この本のおかげで、漢方薬へのハードルは下がったと思っています。
http://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=2449
岩田先生の著書「99.9%が誤用の抗生物質」も良かったです。
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334037598
☆3ステップで推論する副作用のみかた・考え方
3冊目は、川口崇先生、岸田直樹先生の著書「3ステップで推論する副作用のみかた・考え方」です。
現場で患者さんや医師などから「この症状は薬の副作用かな?」と聞かれたときに、どのように考え、アプローチすればいいのか?といった内容が、具体的な症例も用いながら解説されています。
起こっている症状が副作用なのかどうかの見極めは、非常に難しいと思います。患者さんや医師などから副作用かどうか聞かれたときに、添付文書を見て「副作用」の項目に記載があれば「添付文書上は記載があります」や「副作用の可能性は否定できませんね」と回答するパターンはよく見かける感じがします。でも、これって求められている回答ではないと思うんです。
本書のタイトルにも付けられている「3ステップ」というのが、①被疑薬が原因であるもっともらしさを検討する、②被疑薬以外が原因であるもっともらしさを検討する、③総合的に判断しアクションする(不確かさも大切にしながら) の3つです。
副作用が疑わしい症例に出会ったとき、確かに「薬が原因である」という考えしか見えなくなって、「その他の要因が原因となっている可能性は無いか?」が見え辛くなる傾向はあると思います。被疑薬以外に原因となりうる要因は無いかを考える必要があります。想像力を働かせ、いかに情報を集めるかが重要となってきます。このためには、広い視野や知識の引き出しが必要だと思います。
全く知らなかった情報や調剤薬局では経験する事のない状況も多く、1度読んだだけで全てを理解する事は難しかったです。自分の知識不足を再認識させてくれるような1冊でした。こちらは時間をかけて、じっくり考えながら読み直したいと思います。
https://www.jiho.co.jp/shop/list/detail/tabid/272/pdid/51100/Default.aspx
2018年はこのような専門書のみならず、ビジネス書も結構読みましたし、小説も時々読みました。普段マンガは一切読まないのですが、病院薬剤師が主人公となっている「アンサングシンデレラ」は読みました。
http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784199805325
個人的には、櫻部由美子さん著の小説「フェルメールの街」も面白かったです。来年は大阪にフェルメール展がやってくるので、楽しみにしている所です。
http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=5892
3冊と言いつつ6冊紹介してしまいました(;^ω^)
さて、皆さんの今年のオススメの3冊はどんな本だったでしょうか?
2019年も、多くの本との出会いがありますように。それでは良いお年を。
【立てよ薬剤師プロジェクト】私はなぜブログを書くのか
ご訪問ありがとうございます。
皆さんは「薬剤師のブログ」って聞いて頭に浮かぶものありますでしょうか?有名薬剤師さんが書かれているブログも多くありますし、最近はブロガー薬剤師も増えて来ているように思います。私もよく薬剤師のブログは読ませて頂いていますが、それぞれ色が違って、どれも大変勉強になっています。読んだブログから仕入れた情報を自分でも調べ、現場で活用する事もあります。
今回は、私がブログを書いている目的やきっかけ、自分の記事の書き方や注意していることをまとめてみました。薬剤師の同時多発的ブログ発信(立てよ薬剤師プロジェクト)へ参加のお声掛け頂いたので、ブロガー薬剤師の1人として僭越ながら少しだけ書かせて頂きます。
【私がブログを書いている目的】
さて、まずは私がブログを書いている目的についてまとめてみようと思います。
いくつかありますが、1番の目的は自分の読んだ論文の備忘録として活用することです。ある程度遡って頂けるとわかると思いますが、私のブログは、ほぼ医学論文の要約記事です。広く国民向けと言うよりは、自分自身も含めた薬剤師向けに情報発信しています。時々、業務中に生じた疑問について調べると、自分の過去に書いたブログ記事が出て来てラッキーと思う事があります。←前に調べた事自体を忘れていることが良くあります(´・ω・`)
2つ目の目的は、自分は飽きっぽい性格で、何事も継続がなかなか出来ない所があります。論文を読んでブログにアップすれば、誰かに見張ってもらえている気持ちになります。これ、結構自分の中では大事なことだと思っています。飽きっぽくて何事も続かない自分にとっては、継続して勉強していくためにブログはいい方法だと思っています。
また、ブログを始めた当初は意図していなかったことですが、ワークショップに参加して出会った薬剤師さんに、「あなたのブログを参考にしてブログを始めました」などとお声がけ頂く事が時々あります。ブログを続けていてよかったと思いますし、自分のモチベーションも上がります。こんなブログでも、どなたかの役に立っているのかなと嬉しく思います。もっと薬剤師ブロガーの輪が広がればいいと思います。
【私がブログを始めたきっかけ】
続きまして、私がブログを書き始めたきっかけをまとめてみます。
私がブログ記事を初めて投稿したのは2016年5月5日のことでした。その当時から、医学論文を読んでブログまとめていらっしゃる薬剤師の先生方がいらっしゃいました。私はそれまで、その先生方のブログ読んで、医学論文の読み方や解釈の仕方を勉強させて頂いていました。「カッコいい薬剤師さん達だなぁ」と思っていました。
その先生方への憧れもあって、私は2016年の12月までにはブログを始めることを、その年の1月に立てた目標の1つにしていました。あれは2016年4月の事だったでしょうか。その当時から、ブログも読ませて頂いていた薬剤師さんに「ブログ書かないんですか?」とTwitterで声をかけて頂きました。このひと言がきっかけとなり、1か月後の5月から自分でも医学論文の要約ブログを、見よう見まねで書き始めたのでした。この時、背中を押して下さった先生には大変感謝しています。
【ブログを書く上で注意している事】
ここからは、私がブログを書く上で気を付けている事を書いてみます。
まず1点目は最も注意している事ですが、決して個人情報を漏らさないようにするという事です。私が書いている記事の中には、日ごろの現場で出会った症例をきっかけにして調べたものをまとめた記事が結構あります。しかし、ここで決して該当患者さんの詳細な情報などの個人情報を漏らさないようにしています。
2点目ですが、著作権の問題がある(詳しい事はよく分かっていないですが)ように思うので、論文に出てきた表や図をそのままコピー&ペーストしないようにしています。どうしても表を入れたい場合は、自分で表を作って入れるようにしています(面倒くさいのでほとんどやったことないです)。
3点目ですが、薬について「○○するべきだ」などと言い切らないようにしています。自分の視野を狭めてしまわないようにするためです。「様々な視点から考える」という所は意識しています。
人間の眼は見えるものにとらわれてしまい、その明るく透明な背景に想像力が届く事はない。(福岡伸一:「生物と無生物のあいだ」講談社現代新書 p31より)
【私のブログの書き方】
私のブログ記事は、まずWordで作り、それを、はてなブログにコピー&ペーストするという方法で書いています。書き始めた頃は、直接はてなブログに書いていました。しかし、原因はわかりませんが投稿する際に書き上がった記事が消えてしまう事が何回かありました。その為、まずはWordで書いてから投稿するようにしています。万が一消えても、バックアップがされているようにしています。
また、予めWordで論文の研究デザイン(ランダム化比較試験、観察研究、メタ分析)ごとに、医学論文を読むときのチェックリストを作っています。実際の記事を書く時は、論文を読みながらそのチェックリストを埋めていくだけでほとんど完成するようになっています。
【まとめ】
私がブログを書いている目的や方法は、以上のような感じです。冒頭にも書きました通り、今回は「立てよ薬剤師プロジェクト」の記事の1つとして書かせて頂きました。他の先生方のブログを書かれている目的や方法、そして誰に向けた情報発信をされているのかは、私とは違うものだと思います。是非ほかの先生方のブログも読んでいただきたいと思います(今回は30名近い薬剤師が一斉に記事をアップされていると思います)。Twitterでは「#立てよ薬剤師」で探して頂ければいいと思います。そちらの方が、私の記事より何倍も参考になると思います(‘ω’)ノ
まだブログを書いていないけど書いてみたいなと思っている皆さま、ぜひ、一緒にブログを書いて薬剤師の業界を盛り上げていきませんか?そのきっかけの1つになれば幸いです。そして、世の中からデマ情報を追放し、質の高い情報がGoogle検索結果の上位を占拠する日が来るように。
最後に、私がブログを始める上で、大きく影響を受けた憧れの薬剤師ブロガーの1人に、ニンジャ先生がいらっしゃいました。先生との出会いが無ければ、私がブログを始める事は無かったかもしれません。そんなニンジャ先生は、我々薬剤師に次のようなお言葉を残して下さいました。
「薬剤師の未来に幸あれ」
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
COPDの患者に対する吸入3剤併用 vs 2剤併用
ご訪問ありがとうございます。
今回は、COPD患者に対する3剤併用療法 vs 2剤併用療法の論文です。
グラクソスミスクラインのホームページには、次のようなページがありました。
https://jp.gsk.com/jp/media/press-releases/2018/20180521_trelegy-us-expansion/
3剤の合剤エリプタ製剤が、そのうち国内でも発売されそうな感じがします。
そんなわけで、論文です。アブストラクトしか読めませんが・・・。
参考文献 Once-Daily Single-Inhaler Triple versus Dual Therapy in Patients with COPD.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29668352
PMID:29668352
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:COPD患者10355名
E:3剤併用(フルチカゾン100㎍+ウメクリジニウム62.5㎍+ビランテロール25㎍)
C:①2剤併用(フルチカゾン100㎍+ビランテロール25㎍)
②2剤併用(ウメクリジニウム100㎍+ビランンテロール25㎍)
O:(Primary) 1年間当たりのCOPD症状の中等度~重度の増悪
※それぞれはエリプタ吸入で1日1回使用
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
均等に割り付けられているか
ITT解析を行われているか?
→アブストクトには記載なし
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率に関する記載が見当たらない
追跡期間
→平均52週間
結果
中等度~重度の症状増悪
3剤併用群:0.91回/年
2剤併用(フルチカゾン+ビランテロール):1.07回/年
2剤併用(ウメクリジニウム+ビランテロール):1.21回/年
3剤併用 vs フルチカゾン+ビランテロール
RR=0.85(95%CI:0.80~0.90)p<0.001
3剤併用 vs ウメクリジニウム+ビランテロール
RR=0.75(95%CI:0.70~0.81)p<0.001
重度の症状増悪による入院
3剤併用群:0.13回/年
2剤併用(ウメクリジニウム+ビランテロール):0.19回/年
3剤併用 vs ウメクリジニウム+ビランテロール
RR=0.66(95%CI:0.56~0.78)p<0.001
肺炎
3剤併用 vs ウメクリジニウム+ビランテロール
HR=1.53(95%CI:1.22~1.92) p<0.001
感想
アブストラクトしか読めないため詳細が分からないが、中等度~重度の症状増悪は3剤併用療法の方が2剤併用療法よりも有意に少なくなるという結果。重度の症状増悪による入院も3剤併用療法の方が少なくなる。
ただ、有意差はついているがそもそもの症状の増悪は3剤併用群で0.91回/年、フルチカゾン+ビランテロール群で1.07回/年、ウメクリジニウム+ビランテロール群で1.21回ということなので、劇的な差ではないようにも感じる。全体としてはこのような結果だが、重症患者だけに絞ってみると、もう少し大きな差が生じるとかあるのだろうか。サブ解析の結果も見てみたい。
また、肺炎に関しては3剤併用群の方がウメクリジニウム+ビランテロール群より多いという結果となっている。こちらも、アブストラクトでは絶対数が分からないので、具体的にどの程度の影響の大きさなのか判断しかねるが。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
ではこれから、日本薬剤師会学術大会参加のため、金沢へ出発します!
「だれも教えてくれなかった実践薬歴」を読んでみた
2018年9月3日。じほう社から、「だれも教えてくれなかった実践薬歴」が発売となりました。
実は、この本が出るというお話をかなり前(確か、1年ほど前の講習会で)聞いていたので心待ちにしていました。普段は書店で実物を見て購入する派なのですが、珍しくAmazonで注文しました。
私が購入した理由ですが、第一に「自分の薬歴に自信があまりない」という点でした。タイトルにもなっている通り、「誰も教えてくれなかった」わけです。私は薬学部6年制の1期生なのですが、大学で薬歴の書き方についての授業はほとんど無かったと記憶しています(授業を聞いていなかった可能性も??)。
店舗に配属されてからも、その当時の上長に確認はしましたが、割と自分の思った通りのやり方で書いていました。でも、ちゃんと書けているかと問われれば、自信をもって「はい!」とは言えない感じでした。
もう一つの購入理由が、日経DIのコラム(薬局にソクラテスがやってきた)や実践薬学を読んでいて、著者のソクラテス先生こと山本雄一郎先生はどういう思考法をもってお仕事されているのだろう??という所を知りたかったんです。
そんなわけで、届いたその日から早速読み始めました。
あまり詳しい内容はネタバレになるので書きませんが、読み進めていくうちに個人的に勘違いしていた部分や、店舗での改善点などたくさん浮き彫りになりました。薬歴を十分に活用しきれていなかったんだなと。
今までずっと勘違いしていて、SOAPの「O」に書くはずの事を「A」に書いていたようです。なんだか薬歴がしっくりこないことがあったのも、うまく活用しきれていなかったのも、この辺に原因があったのかなぁと。これまで薬歴に関してはだれも指摘してくれなかったですし、他店舗のヘルプにでも入らない限り、自店以外の薬歴を目にすることもありません。この本に出合わなければ、これからもずっとそうだったかもしれません。
そして、実践薬歴という名前ですが、薬歴の書き方マニュアルのようなものではありません。薬歴から服薬指導の際の思考法まで学べますし、日々の業務で使えそうな情報源やエッセンスがちりばめられています。よくありそうな症例を基に解説して下さっているので、納得しながら読み進められます。読み進めているうちに何度も「はっ!」としました。
個人的には、chap.2「SOAP形式の薬歴がうまく書けない理由」の、4「いつも同じ処方なので薬歴に書くことがありません」の部分は特に勉強になりました。
私には、これまでに出会った本の中で、特に仕事に対する考え方を変えてくれた本が2冊あります。
①二代目薬剤師が薬局を滅ぼす 近藤剛弘 先生 著
②「DO処方、特変ナシ」から脱却せよ 川添哲嗣 先生 著
「だれも教えてくれなかった実践薬歴」はこれらの2冊と並び、私の仕事に対する考え方に大きく影響していくと思います。得た知識や視点、考え方は使わなければ意味がないと思うので、この本への出会いに感謝しつつ、現場でも出来る所から改善していこうと思います。
まだ読んで1週間ほどですが、すでに薬歴の書き方を意識して改善していこうとしていますし、そこを意識することで服薬指導にも変化が見られているように思います。読んで納得したら、即実践ですね。使わなきゃ意味がない。
もっと早く、この本に出会えていれば・・・。もし、来年の新入社員にオススメ書籍を聞かれたら、間違いなく「実践薬歴」は紹介すると思います。学習意欲を刺激する仕掛けもしてありますし、この本を読んで実践していくことで仕事が楽しくなると思います。多くの薬剤師のこれからの仕事を変える1冊になるのではないでしょうか?
アルツハイマー型認知症に対する抑肝散
ご訪問ありがとうございます。
今回は、アルツハイマー型認知症に対する抑肝散の効果を調べたRCTの論文です。
参考文献 Randomized double-blind placebo-controlled multicenter trial of Yokukansan for neuropsychiatric symptoms in Alzheimer's disease.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26711658
PMID:26711658
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
E:抑肝散7.5g/日(75名)
C:プラセボ(70名)
O:(Primary) NPI-Q(Neuropsychiatric Inventory Brief Questionnaire Form)の4週間の変化
(Secondary)NPI-Qの12週間の変化、NPI-Qの各項目の変化、MMSE(Mini-Mental-State Examination)の合計スコアの変化
※NPI-Q:質問紙形式で、認知症患者の BPSD の頻度と重症度および介護者の負担度を数量化することができる神経心理検査。
ランダム化されているか?
・A total of 145 patients with AD were randomized.→ランダム化されている
盲検化されているか?
→二重盲検されている
アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカムと考えた
サンプルサイズ
ITT解析を行われているか?
脱落率は結果を覆すほどあるか?
結果
4週後のNPI-Qの変化
Four-week changes in NPI-Q total scores did not differ significantly between the treatment and placebo groups.→抑肝散群とプラセボ群で有意差無し
12週後のNPI-Qの変化、NPI-Qの各項目の変化、MMSEの変化
Four-week changes in NPI-Q total scores did not differ significantly between the treatment and placebo groups. NPI-Q subcategory scores or total Mini-Mental-State Examination scores.
→12週間後のNPI-Q、NPI-Qの各項目、MMSEいずれも抑肝散群とプラセボ群で有意差無し
※サブグループ
・a subgroup with fewer than 20 points on the Mini-Mental-State Examination at baseline showed a greater decrease in "agitation/aggression" score in the YKS group than in the placebo group (P = 0.007).
→ベースラインのMMSEが20点未満だった患者では、興奮/攻撃のスコアが抑肝散群でプラセボ群に比べ有意に減少(改善)
有害事象
・No serious adverse effects were observed during the study.
→重篤な有害事象は起きなかった
感想
アブストラクトしか読めずに詳細は不明。ベースラインのMMSEの値が気になる所。アルツハイマー型認知症患者で、興奮や攻撃性のある患者には使ってみるのもありかもしれない。
ただ、興奮や攻撃性のある患者が、1日3回の抑肝散をきっちり飲んでくれるのかというところもあるかもしれない。
興奮や攻撃性のない患者に対しては、あまり効果が期待できないのかもしれない。フルテキスト読めず詳細が分からないので、他の論文も探して読んでみようと思う。
最近、苦手克服のために少しずつ漢方薬の勉強を始めました。岩田健太郎先生の、「つまずきから学ぶ漢方薬」は個人的に勉強しやすい1冊かなと感じています。自分が超初心者なので、「困難は分割せよ」で、丁寧な説明がされているこの本は読みやすいです。
http://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=2449
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
虚血性脳卒中・TIA後のピオグリタゾン
ご訪問ありがとうございます。
今回は、虚血性脳卒中・TIA後のピオグリタゾンに関する論文です。
参考文献 Pioglitazone after Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26886418
PMID:26886418
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:虚血性脳卒中またはTIA既往あり、糖尿病ではないがインスリン抵抗性のある(HOMA-IR>3.0)40歳以上の患者3876名
E:ピオグリタゾン45mg/日
C:プラセボ
O:(Primary) 致死的・非致死的脳卒中と心筋梗塞の複合エンドポイント
※除外基準
→糖尿病(空腹時血糖≧126mg/dl、HbA1c≧7.0%)、NYHA分類クラス3~4、NYHA分類クラス2で駆出率低下が見られる心不全、活動性の肝疾患、アラニンアミノトランスフェラーゼが基準値上限の2.5倍以上、ヘモグロビン<8.5g/dl、中等度~重度の圧痕性浮腫、14日以内の頸動脈血行再建術、エストロゲン含有避妊薬使用、経口グルココルチコイド使用、心不全既往、膀胱癌既往、膀胱癌リスクを増加させる状況
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→3136名(パワー90%、α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→lost-to-follow-upは2.6%(追跡率=97.4%)
追跡期間
→中央値4.8年
結果
【ベースライン】
平均年齢:ピオグリタゾン群:63.5±10.6歳 プラセボ群:63.5±10.7歳
HbA1c:ピオグリタゾン群:5.8±0.4 プラセボ群:5.8±0.4
【アウトカム】
致死的・非致死的脳卒中と心筋梗塞の複合エンドポイント(Primary outcome)
ピオグリタゾン群:175/1939件(9.0%)vs プラセボ群:228/1937件(11.8%)
HR=0.76(95%CI:0.62~0.93) p=0.007 NNT=37
ピオグリタゾン群:127/1939件(6.5%)vs プラセボ群:154/1937件(8.0%)
HR=0.82(95%CI:0.61~1.10) p=0.19
ピオグリタゾン群:96/1939件(5.0%)vs プラセボ群:128/1937件(6.6%)
HR=0.75(95%CI:0.52~1.07) p=0.11
【安全性】
膀胱癌
ピオグリタゾン群:12/1939件(0.6%)vs プラセボ群:8/1937件(0.4%)
p=0.37
骨折
ピオグリタゾン群:133/1939件(6.9%)vs プラセボ群:94/1937件(4.9%)
p=0.008 NNH=50
ピオグリタゾン群:29/1939件(1.5%)vs プラセボ群:32/1937件(1.7%)
p=0.70
4.5kg以上の体重増加
ピオグリタゾン群:1013/1939件(52.2%)vs プラセボ群:653/1937件(33.7%)
p<0.001
13.6kg以上の体重増加
ピオグリタゾン群:221/1939件(11.4%)vs プラセボ群:88/1937件(4.5%)
p<0.001
浮腫
ピオグリタゾン群:691/1939件(35.6%)vs プラセボ群:483/1937件(24.9%)
p<0.001
感想
Primary outcomeである致死的・非致死的脳卒中と心筋梗塞の複合エンドポイントは、ピオグリタゾン群でHR=0.76(95%CI:0.62~0.93)と、プラセボ群との比較で有意に減らす事が出来たという結果。ただし、脳卒中単独やACSでは有意差無しとなっている。
本研究で用いられているピオグリタゾンの用量は45mg/日と、国内で用いられる上限量となっている。この点は実臨床で活用する上で注意が必要かと思う。
副作用については、骨折や体重増加、浮腫などがプラセボより多くなるという結果。浮腫は時々お見掛けするが、思いのほか頻度は高めなのだと感じた。
心不全は2群間で差が無いが、心不全既往のある患者は除外されており、また症例数が少ないためこのような結果になっているのかもしれない。
浮腫のメカニズムは、ラットなどの細胞実験レベルだが、このような感じだそうです。
http://dm-rg.net/news/2011/05/010962.html
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
PPIは認知機能に影響ありますか?
ご訪問ありがとうございます。
参考文献 Association of Proton Pump Inhibitors With Risk of Dementia:
A Pharmacoepidemiological Claims Data Analysis.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26882076
PMID:26882076
研究デザイン:前向きコホート研究
論文のPECO
P:ベースラインで認知症ではない75歳以上の73679名
E:定期的なPPIあり→2950名
C:PPI無し→70729名
O:認知症
※PPI:オメプラゾール、pantoprazole、ランソプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾール
研究対象集団の代表性
→ドイツの健康保険データが用いられており問題無し
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
→年齢、性別、ポリファーマシー(PPIを除いて5剤以上)、うつ病、脳卒中、虚血性心疾患、糖尿病
追跡期間
18か月
結果
【ベースライン】
年齢 E群:83.8±5.4歳 C群:83.0±5.6歳
【認知症】
・全体
HR=1.44 (95%CI:1.36~1.52) p<0.001
・男性
HR=1.52 (95%CI:1.33~1.74) p<0.001
・女性
HR=1.42 (95%CI:1.33~1.51) p<0.001
・75~79歳
HR=1.69 (95%CI:1.49~1.92) p<0.001
・80~84歳
HR=1.49 (95%CI:1.35~1.66) p<0.001
・85歳以上
HR=1.32 (95%CI:1.22~1.43) p<0.001
感想
PPI服用で認知症が増えるという結果である。交絡因子の調整が十分行われているか疑問。年齢が若いほど、影響は大きいという傾向が見られる。
一方で、PPIは認知機能に影響を与えないという以下のような報告もある。
参考文献:Proton Pump Inhibitor Use and Dementia Risk: Prospective Population-Based Study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29134629
PMID:29134629
コホート研究であり、今回の研究だけで、PPIと認知症に関連があるとは言い切れないと思う。関連論文は他にもありそうなので、探して読んでみようと思う。
動物実験レベルだが、PPIで脳内βアミロイドタンパクが増えると言われているのは初めて知った(PPIswere observedto enhanceβ-amyloid (Aβ) levels in the brains of mice by affecting the enzymes β- and γ-secretase)。あくまでマウスのお話ではあるが・・・。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。