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偽造マイナンバーカードを使用したSIMスワップについてまとめてみた

2024年4月、偽造されたマイナンバーカードを使用したSIMスワップ事案が発生しました。さらにその後のっとられたSIMを通じて高級腕時計の購入などが行われる被害も発生しています。ここでは関連する情報をまとめます。

SIMのっとられ未遂含め400万円超の被害

  • SIMスワップの被害を報告したのは、東京都議会議員と大阪府八尾市議会議員の二人。愛知県名古屋市内のソフトバンクショップ(八尾市議会議員の事例ではソフトバンク柴田店)で何者かが契約変更(MNPや最新のiPhoneへの機種変更など)を行い、元々の契約者であった二人が所有するスマートフォンでSIMによる通話・通信ができない被害にあった。

  • さらにSIMをのっとられた後、のっとったSIMカードを何者かが使用し、物品購入などに悪用されていた。八尾市議会議員の被害事例では、SIMスワップにあった同日20時までに通信キャリアの利用停止が行われたものの購入が行われる被害は止まらず、翌日には高級腕時計の購入が行われてしまった。他にキャッシュレス決済も行われるなど、未遂分を含めると総額で400万円を超える被害が発生した。*1
都議会議員の被害 2024年4月17日昼頃発生

・約10万円の携帯料金合算払いが行われた。
八尾市議会議員の被害 2024年4月30日15時頃発生

・PayPayに5万円をチャージし名古屋市内のコンビニなどで使用。ソフトバンクカードのオートチャージ機能より約13万円分を使い込み。
・5月1日にはYahoo!ショッピングで東京銀座の時計店(GINZA RASIN ヤフー店)で高級腕時計(225万円相当のロレックス)の購入。腕時計は購入した何者かへ東京の店舗で既に引き渡し済み。
・さらに別の高級腕時計(約95万円)の購入が試みられたが、決済途中で停止された。*2

マイナンバーカードの目視確認で偽造見破れず

  • 契約変更の際の本人確認では偽造マイナンバーカードが使用されていた。SIMスワップに利用されたソフトバンクショップではマイナンバーカードの確認を目視で行っていたが、カードが偽造されていることに気づくことができなかったとみられる。ソフトバンクは運用が不十分とされる店舗が一部存在していたとして、同社社長が決算説明会で今回の事態について陳謝しシステムの改善を行うと発言している。*3
  • 二人の議員が続けて被害を報告した背景について、二人とも議員の活動で公開している情報(氏名、住所、顔写真、携帯電話番号など)が悪用された可能性があると言及。八尾市議会議員がソフトバンクショップへ必要となる情報の確認を行ったところ、機種変更は氏名、生年月日、電話番号と身分証明ができるもの(免許証、マイナンバーカードなど)があれば可能と回答を受けたとしている。*4
偽造マイナンバーカードを使用したSIMスワップの流れ

デジタル庁が偽造の見分け方を配布へ

  • 偽造マイナンバーカードが使用された事案が発生したことを受けて、デジタル大臣やデジタル庁はカード券面には様々な偽造防止技術が使用されているとXに投稿を行っており、その例としてパールインキの特殊印刷とICチップについて説明している。
パールインキ カード券面右上にマイナちゃんはパールインキが用いた特殊印刷がされている。パールインキは紙幣の偽造防止に使用されているもので、傾けることで真珠のような光沢に印刷箇所がうつる。
ICチップ 正規のカードのICチップは、住所氏名などカード券面記載の情報と電子証明書が保存されている。読み取りには4桁のパスワードが必要で一定回数誤るとロックされる。(解除は本人の手続きが必要)加えて不正に読み出しを行おうとした際はICチップ自体が破壊される仕組み(耐タンパー性)が備わっている。これまでに確認されている偽造カードはICチップらしきものが埋め込まれてはいるが、情報は何も入っていないとみられている。

  • 丁寧に確認をすれば目視確認で見分けることができるとして、チェック箇所を説明する文書を発出するとデジタル大臣が言及。加えて、ICチップの読み取りが何より確実な対策であるとして民間の事業者が公開するアプリの利用を推奨(読み取りアプリの公開状況を早急に調査)しつつ、適切なアプリがなければデジタル庁で無償公開するとしている。*5 *6

更新履歴

  • 2024年5月13日 AM 新規作成
  • 2024年5月13日 PM タイトル、文中の「SIMハイジャック」の記載を「SIMスワップ」等に修正。