魔法、もしくはゆきとどいた生活

 まつげパーマが過去一のかかり方で、毎日ちゃおの作画で暮らしている。

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今の私のまつげはめちゃモテ委員長を通り越して姫ギャルパラダイス状態である。

 

 店員さんに「とにかく根本からあげてください」と言った通りの素晴らしい出来である。目頭側のまつげが上まぶたに張り付くことがあるくらいギュンギュンだ(まつ毛が張り付くのはまぶたの形状のせいでもある)。上まぶたにまつげがくっついていると目が重く感じられることも新たな発見であった。

 まつげパーマは閉じたまぶたの上にロッドを置いていろいろ塗ってパーマをかけるため、何も見えない状態が続く。「まつぱされている間に避難しなきゃいけない状況が発生したらと思うと怖い」と友達が言っていたのを思い出し、その状況を想像してちょっとヒヤッとする。深く考えるといけないので気持ちを切り替える。何も見えない状態でしばらくじっとしないといけないのは現代人にとっては苦痛。暇なので店内のBGMの切り替わりのタイミングで時間の経過を測る。2曲めの途中くらいで毎回寝てしまう。起きて薬剤を塗り替えて、またBGM何曲か分を寝て過ごしたら終わり。起きて目を開くとまつげがパチパチになっている。最初から最後まで寝ててもつつがなく進行するに違いない。そんなのって魔法、もしくはゆきとどいた生活だ。まつげパーマ中に死んだとしても施術が終わるまで誰も気づかないだろう。

しているあいだはたのしいし、

 ジェルネイルをオフしてきた。ジェルネイルは素晴らしいが、自力で落とせないことが難点だ。今の爪のミルキーな黄緑色はかなり気に入っていたので落とすのが惜しかった……。

 新しい色にしないのは、きたる友達の結婚式に最高のコンディションの爪にするため。 友達のぴかぴかの晴れ舞台に、私は清潔で素敵な身なりで臨みたい。今ネイルを新しくすると友達の結婚式の頃には中途半端な長さになってしまう。爪の強度も心配だし一旦更地にすることにした。

 ネイルサロンでジェルの部分をギューンと削ってもらって、2ヶ月ぶりに爪にジェルがくっついていない状態になった。「流しのしたの骨」という小説に「ボーイフレンドって素敵よね。いるあいだはたのしいし、いなくなると気持ちいい」という言葉があるが、ジェルネイルも同じだと思った。

「ジェルネイルってしているあいだはたのしいし、オフすると気持ちいい」

 「流しのしたの骨」は6人家族( 父母娘娘娘息子)の三女こと子が主人公の小説だ。私はこの小説がかなり好き。何回も繰り返し読んでいる。人生の一定の期間をカットせずに見せてくれるような物語が好きで、この小説はその点が完璧。こと子が19歳から20歳になるまでをそのまま見せてくれている。

 お茶を飲むためにやかんを火にかけた姉のそよに、こと子が「紅茶?日本茶?」と尋ねる。そよが「日本茶」と答えるとこと子は湯呑みを急須を準備する。素晴らしいシーンだ。もしそよが「紅茶」と言ったらカップティーポットを準備したのだろう。このお家ではお茶の種類に合わせた食器を使っていて、家族のためにそれを準備するのが当たり前の日常なんだなということが短い文章でよく伝わる。このシーンがなくてもストーリーには影響しないが、あると良さが増す。

 ジェルネイルをオフして気持ちがいい私は、紅茶も日本茶も同じコップで飲む。

保湿

 天気のいい午後で、私は風呂から上がって顔と体にいろいろ塗っている。

 暇で誰かと喋りたい。こんな時に都合がよいのは母方の祖母だった。気兼ねなく電話をかけられるし、割と家にいることも多い。祖母は椅子の近くに子機を置いているから割とすぐに電話に出る。「もしもし」とよそゆきの声で言って、私が誰だか分かると普段のトーンに切り替わる。散歩の帰りに暇なときもよく祖母に電話した。外はガヤガヤして聞こえづらかったろうに我慢強く20分も30分も電話に付き合ってくれた(あの頃の私はかけ放題プランユーザーだった)。電話帳に登録されているにも関わらず、私は祖母の電話番号を手で打ってかけていた。祖母の家の電話番号の語呂合わせが好きだった。

 もうあの電話番号にかけても誰も出ないんだと思うと悲しい。おばあちゃん、不死身だったらよかったのにね〜。祖母が不死身ではなかったので、私は誰にも電話をかけなかった。保湿が終わった。

動物園に行った

 この前上野動物園に行った。桜のシーズンで上野自体はめちゃくちゃ混んでいたが、動物園自体は許せる人口密度だった。

 上野といえばパンダ!勇んでパンダのスペースに向かう。すごい行列だ。これは赤ちゃんパンダ2頭を見るための列だという。70分待ち。さすがスター選手。赤ちゃんパンダの列に並んでいたら園内を一周できなさそうな時間帯だったためしぶしぶ諦める。少し先に進むと大人パンダのゾーンに着いた。大人パンダはそこまで並ばなくてもいいらしい。来たからには絶対パンダを見たかったので助かった。大人パンダのオスの方、リーリーを見ることが出来た。最初はやぐらみたいなところでお餅のように寝ていたリーリーだったが、起き上がったあとは人からよく見えるへりのあたりをずっとウロウロしていた。

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リーリーが歩くと人がウォーと沸き立つ。それを分かっているかのようにリーリーは何往復もへりを歩いていた。これが人気者として生きるってことなんだなと感じ入った。

 リーリーはずっと見ていられるくらいエキサイティングだったが、同じくらいリーリーを見ている人の会話を漏れ聞くのも楽しかった。後ろにいた女子二人組が「 パンダにとっての笹って人間でいうとどのくらいのご飯なんだろうね〜」「肉とか?」「肉は言いすぎじゃない?」という会話をしていた。私も肉は言いすぎだろうと思った。他にも動物博士キッズによる豆知識などを漏れ聞くことが出来た。ふ〜んと思ったけど、なんて言ってたか忘れた。私も友人に「パンダのうんこっていい匂いらしいよ」という豆知識を披露した(藤岡みなみの「パンダのうんこはいい匂い」という本に書いてあった)。

 パンダ以外にもいろいろ見たが、私がパンダの次に見たいと思っていたオカピは残念ながらその日はいなかった。先日博物館の哺乳類展(これも上野)でめちゃくちゃでかいオカピの剥製を見てからずっと気になっていたのだ。めちゃくちゃでかいオカピの剥製は、ミストの最後の方に出てくる森を通り過ぎる謎の生き物を思い出させる。あれには怖いを通り越して畏敬の念を感じた。でかい生き物は神聖だ。ただ、今調べたらオカピはそんなにデカくなさそう。じゃあ私が見たやつは一体なに?急に怖!

夢日記

 1週間ぶりに日記を書いた。日記を書けなかったいうことも一つの日々の記録だなあと思った。

 最近は疲れている。疲れていると夢をたくさん見る。

 昨日の夜は三体の夢を見た。

 三体については流行っているめっちゃ面白いSFということしか知らない。だから昨日の夢で見たのは私のイメージの中の三体だ。広い施設に大勢の若者たちが閉じ込められて、3つの派閥で争いあうストーリーだった。三巴だから三体、安直だ。各派閥にはリーダーがおり、リーダーだけが超能力を持っていた。あるリーダー(この派閥だけ女のリーダーだった)は皮膚がメッキで覆われたように金色だったのでよく目立った。この女は皮膚が金色なことでカリスマ統治をしていた。施設の中を金色の皮膚を持つ女が進む。その後ろに金色皮膚女派閥に属する者たちが100人くらいぞろぞろ着いていく。

 シーンが切り替わり、金色皮膚女と他の派閥のリーダーが睨み合いになった。他の派閥のリーダーが金色皮膚女に水をピシャッとかけると、女の皮膚は水をかけられたところだけベージュに変わった。「こいつの能力は偽物だ!」糾弾されても女は全く反応しない。ただ目を閉じで水を滴らせていた(ちなみにその後、女の皮膚はすぐに金色に戻った。)。私はその諍いを遠くから見ていた。

 ストーリー仕立ての壮大な夢を見るとき、私は中心にいないことが多い。中心にいないから争いに巻き込まれない。いつも争いを矢が当たらないところから見ている。夢の中でも私はビビリだ。

 偽三体が完結する前に起きた。女の皮膚の色が変わるシーンは良かったな〜と思って忘れないうちにメモを取る。メモを取っているうちにちょっと目が冴えて来たので、本当の三体のストーリーを検索する。夢で見たのと全く違う。

はじめてのジェルネイル

 1ヶ月くらい前に人生初めてのジェルネイルをした。

 これが大正解でびっくり。爪がかわいいだけで桁違いに嬉しい。まだ知らない嬉しいことってあるんだ!と思った。マグネットネイルというやつをしたので、指の角度を変えるとキラキラや色味が変わって面白い。おばあちゃん家にあった万華鏡をを思い出す。暇な時はず〜〜〜っと自分の手を見ている。時間が経ってもまったく見飽きない。私は赤ちゃんみたいなぷくぷくの指と手なのがコンプレックスだが、ネイルをするとお姉さんの手っぽく錯覚するので自分に自信が持てる感じもする。

 これまでジェルネイルに対していまいちピンと来ず、みんなやってるけど私はいいかな〜と思っていた。だが、1ヶ月前に友達と遊んだときに、友達の爪があまりにかわいくて急にやってみたくなった。友達の爪は初代プリキュアのほのかちゃん(白い服の方)みたいなめちゃくちゃラブリーな仕様になっていた。自分の爪にほのかちゃんが宿ってるのめっちゃ上がるじゃん!と思った。思い立ったが吉日、すぐ予約して友達と遊んだ次の日に近所のネイルサロンでやってもらった。

 本当に大正解!こりゃみんなやるわな!めちゃくちゃかわいいもんな!

 弊害としては、ジェルネイルをしている期間は自分で爪を切れないので、爪が伸びて来てコンタクトを取るのが大変になってしまったこと。一回取るのを失敗すると、目側が本能的に開かれるのを拒否するから前より時間がかかるようになってしまった。みんなどうやってんだろう。なんか専用の道具とかあるのかな?

 1ヶ月経って頃合いかなと思ったので今日またアップデートしてきた!今回は白っぽい黄緑色のワンカラーにした。ファイヤーキングのコップの色のイメージです!かわいい〜〜〜!

 

【感想】抱擁、あるいはライスに塩を

 小さいころ魔女の宅急便を見る時はキキとジジが話せなくなる前の所でビデオを止めていた。相棒と急に話せなくなるのが辛すぎて見ていられなかった。万物は流転するという真理を受け入れられなかった。私は変化が嫌いな子供だった。

 「抱擁、あるいはライスに塩を」は上下巻からなる(文庫版)江國香織の小説で、大きなお屋敷に住む柳島家をめぐるサーガだ。

 上巻で柳島家がどんなお家なのかが分かる。普通とは違うけど面白い一族だ。お金があって、教養があって、愛がある。家族全員がお家のルールを守っている。奇妙だけど高貴だ。上巻の柳島家はみんな元気で、夏のように栄えている。ずっとこれが続いて欲しい。お父様はシャキッとしていて、菊乃や百合は若いまま、子供たちは子供のまま。

 ところが栄華は永遠には続かない。下巻になると柳島一族にも秋が来る。お家にいる人数がだんだん減り、一族に影がさす。

 この本を買った大学生のころ、私は変化が嫌いなままだった。柳島家が盤石に見えた上巻は好きだったが、だんだん一族がほどけていく下巻は読み進めるのが辛かった。最初に読んだ時は光一の彼女の涼子が嫌いだった。一族のルールを乱すな!と思っていた。涼子は外から来て光一を無理やり屋敷の外に連れ出す空気の読めない女だと思っていた。今回読み直して、涼子に対する「何よこの女」感が前より少ないことに驚いた。涼子が光一をかっさらって行ったことは、なんかもう仕方ないと思える。

 避けられないことは避けられないと知ったからかもしれない。変わるまでは怖いけど「なんとかなれーッ」と突破するしかない。そして意外となんとかなる。魔女の宅急便を執拗に前半だけ見ていた女の子も大人になった。私はもう物語を最後まで見届けられる。

 あと、この本は下巻についている解説がべらぼうに面白い。こんなにしっくり来る解説にはなかなか当たらない。こういう風に物語を解釈して文章に起こせるというのは素晴らしい才能だと思う。江國香織はスター性がすごくて、読むと彼女に憧れてしまう。だから解説に寄稿する人の文章が江國香織っぽくなってしまう(ように見える)ことも多い。一方で「抱擁、あるいはライスに塩を」下巻の解説は、江國香織の文章の魅力と一定の距離を保ちながら書かれており、もはや柳島家のノンフィクションを読んでいるような気になる(物語の中では柳島家をそれぞれの登場人物の目で見ていて、解説ではそれを第三者の自分の目で再確認している感じ?本文→解説で、一人称から三人称になるからそう感じでいるのか?)。この本のタイトルの意味するところを紐解く文章は丁寧な証明のように美しい。

 解説を書いたのは、野崎歓(のざきかん)という人。フランス文学者らしい。この人に読書感想文を教わりたい。