FUJIROCK2022 道中プレイリスト解説

はじめに

この記事を読んでいる2022年のフジロックに参加するいつもの皆様へ。今頃車は苗場へ向かっているところでしょうか。それとも全ての日程を終えて帰路の途中でしょうか。私は家庭の事情で参加を断念しましたが、心だけは共に苗場にあろうと決めておりましたので今年も僭越ながら車内BGMとして10曲選びました。車内の話題の一つとして盛り上がりに少しでも寄与できれば幸いです。

プレイリストはApple Music、Spotifyとご用意しておりますので、いつもの皆様もそうでない皆様もお好みのプラットフォームでお楽しみください。

M01 「はじまり」 THE SPELLBOUND / THE SPELLBOUND

2022年の"はじまり"はこちらの昨年のRED MARQUEEでの演奏も記憶に新しいBOOM BOOM SATELLITES中野雅之THE NOVEMBERS林祐介のユニットによるエレクトロサウンドと重厚なバンドサウンドの融合のお手本のような作品から。昨年夏時点では音源が発売されていなかったので今年のプレイリストでの紹介です。なお今年はTHE SPELLBOUNDの出演はありませんがTHE NOVEMBERSが29日(金)の14:20〜ホワイトに出演予定です。

M02 「SOS」 Midnight Grand Orchestra / Overture

2020年の10曲ではにじさんじ*1所属のVTuberへのTAKU INOUE氏による提供楽曲を紹介しましたが、こちらは昨年ソロ名義での作品も発表したイノタク氏が更に活動の幅を広げるべくホロライブ*2所属のVTuber星街すいせいとがっぷり四つとなったユニット・プロジェクトとしての楽曲。ダンスミュージックサウンドを軸としながらストリングスやドラム等の生楽器も贅沢に盛り込まれ、要所要所の聴かせどころではドラムがツインにもなっているという気合の入った一曲。

8月にはバーチャル空間からのオンラインライブも予定されており、新しいエンタメの在り方・楽しみ方の選択肢としても是非チェックして頂きたいところ。この曲以外も"強い"ボーカルとクールなトラックの楽曲ばかりなのでなんとなくVTuberという存在に抵抗がある方も楽しみやすいのでは。

M03 「Here Comes The Fake Jets」 Fake Creators / FAKE EP

もういっちょエレクトロ×生楽器という組合せの楽曲となりますが、今年のフジに登場するアクトからDE DE MOUSEとLITEのコラボレーションユニットの楽曲をご紹介。つい先日リリースされた4曲入りEPから私のイメージするLITE(ポストロック)の要素が最も強かったのでこちらを選びました。残念なことにフジロック2022真のヘッドライナーことトミー富岡の真裏なので皆様きっと観られないのではないかと思いますが個人的に凄く観てみたかったアクトでした…今後どこかで体験できることを祈っております。

M04 「ACTION (with ZAZEN BOYS)」 CHAI / ACTION (with ZAZEN BOYS) - Single

CHAIの楽曲「ACTION」をZAZEN BOYSが大胆にリアレンジした上にお馴染みの向井節全開の歌詞を勝手に付け足してしまったコラボ楽曲。ベースにあるのはゴリゴリのリズム隊と切れ味鋭いギターカッティングというザ・ザゼンボーイズといった雰囲気のトラックと向井秀徳のリリックではありますが、CHAIのボーカルが不思議とマッチして謎の中毒性が生み出されているように感じます。CHAIの4人とサングラスのおじさんが戯れるキュートなMVにも登場する2021年最も良いプリクラ画像も必見。

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M05 「いえない (Glitch Night mix) feat. 堂村璃羽, 301, GeG, 安本彩花」 MAISONdes / いえない (Glitch Night mix) - Single

アーティスト名は"メゾンデ"、と読みます。是非覚えておきましょう。『「どこかにある六畳半アパートの、各部屋の住人の歌」をコンセプトに、楽曲ごとに「歌い手」「作り手」を替えて発表する*3』という音楽プロジェクトだそうです。

「春を告げる」でお馴染みのyamaさんも101号室に入居していますが、紹介するのは変態紳士クラブのGeGらが入居する301号室の楽曲を更に私立恵比寿中学安本彩花がリミックスしたバージョン。かねてからDTMを趣味と公言し自身の生誕イベントの度に自作の楽曲を披露してきた安本女史ですが近年の発表曲はアレンジのクオリティも格段に上がっており、遂に単独でリミックスの案件を勝ち取るまでに成長されました。若年層がターゲットのユニットの見聞を皆で広げつつ、作詞作曲するアイドルは数あれどDTMで自ら編曲してそれなりのクオリティで一曲完パケしちゃうメジャーアイドルってまだまだ隙間があるよね、という話題で盛り上がるための選曲でした。

M06 「Just do like that」 どんぐりず / 4EP2

私の生まれ故郷である群馬県桐生市の音楽カルチャーが今熱い、ような気がします。mabanuaが市内にプライベートスタジオを建てたことがテレ朝系『関ジャム 完全燃SHOW』で取り上げられ私の親戚筋でもにわかに話題になったのですが、いよいよ今年は桐生出身二人組HIP HOPユニットどんぐりずをフジロックに送り込むことに成功。レペゼン桐生として頑張って頂きたく選曲しました。土曜日の深夜にNight Tempo、パソコン音楽クラブと並んでRED MARQUEEのステージに立つ姿は是非見てみたかったです。

M07 「Go Mistake」 xiangyu / はじめての〇〇図鑑

「あれ?水曜日のカンパネラ?」と一瞬でも思った貴方の感覚は流石です。ケンモチヒデフミサウンドプロデューサーに従えたシンガーソングライターxiangyuが日常の些細な瞬間をミクロに切り取り歌い上げるクセになる一曲。彼女を知ったきっかけがドトールの店内で流れていた楽曲「ミラノサンドA」だったのも完全にしてやられた感じがしたので、こちらも合わせて私のしてやられた感を皆様にお裾分けしたいと思います。

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M08 「SUDEにむちゅう」 ヒロスデママ、むちゅう人たち / NHKシャキーン!「目覚めろ」

今年の3月で惜しまれながら終了してしまったEテレの朝の子供向け番組「シャキーン!」で広末涼子扮する"ヒロスデママ"が「素手」で料理・工作・自然などと向き合うコーナーのテーマソング。広末涼子本人も歌唱しており、全体の雰囲気はお聞きの通り"あの曲"のオマージュとなっております。「シャキーン!」で使われている楽曲はこの曲が収録されているアルバムだけでもKoji Nakamura、曽我部恵一怒髪天など我々世代にも馴染みの深いアーティストが参加しており、いつの間にかサブスクでも聴けるようになっていたので是非他の楽曲も聴いてみてはいかがでしょうか。

NHK Sha-keen! Mezamero (Audio Version)

NHK Sha-keen! Mezamero (Audio Version)

  • Various Artists
  • チルドレン・ミュージック
  • ¥1935

music.apple.com

open.spotify.com

M09 「MajiでKoiする5秒前銀杏BOYZ / GOD SAVE THE わーるど - Single

で、そんな"あの曲"が2021年に青春日本代表銀杏BOYZ峯田和伸くんにカバーされていました。「銀河鉄道の夜」とか「BABY BABY」みたいな甘いメロディと峯田の声って凄く相性がいいよね、なんてことを話していたタイミングで偶然流れてきて思わず膝から崩れ落ちてしまいました。ご存知の通り友達以上恋人未満の男子と渋谷でデートして盛り上がる女の子の気持ちを歌った曲ですが、彼が歌うことで田舎の少年が妄想する都会の少女の恋物語という新たな解釈が生まれたような気がしてなりません。

M10 「セカイセイフク」 SUNPRIE / perro

最後はあいみょんのサポートでお馴染みのPOLLYANNAクロサワ君とPOLLYANNA初代ボーカルの深澤希実を擁する若い世代のバンド"サンプリエ"です。君はギターソロなんて聴かない、という話題があったようななかったような昨今ですが、EP全体を通してギターポップはまだまだしぶとく生き続けると思わせてくれた作品。なんだかんだ言っても結局「イントロ!Aメロ!Bメロ!サビ!Aメロ!Bメロ!サビ!ギターソロ!サビ!アウトロ!」で歪んだギターが鳴っているエイトビートを聴けば僕らはいつでも2000年代初頭の気持ちで気持ちよくなれるのです。表題曲の「perro」もオマージュたっぷり(だと思う)でニヤリとする仕上がりなので是非EPまるごと聴いてみてください。

 

以上、今年の10曲でした。フジロックに参加した皆様が無事に全ての行程を楽しみ戻って来られますことを願っております。

*1:VTuberを専門とした芸能事務所。お笑い芸人で例えると松竹芸能

*2:VTuberを専門とした芸能事務所。お笑い芸人で例えると吉本興業

*3:Wikipediaより

2021ライブ10選(後編)

さて前編に引き続きまして後編でございます。

6. 11/8 SYNCHRONICITY'21 Autumn Live@TSUTAYA O-EAST

前日の興奮覚めやらぬまま立て続けに翌日もライブ参加となりました。こういう感覚も随分久しぶりだなと思うなど。そんなこちらは毎年春に渋谷で行われているサーキット形式のフェス「SYNCHRONICITY」のチームによる企画で、ZAZEN BOYS渋さ知らズオーケストラの対バンでございました。

 

先行はZAZEN BOYS。先日観たばかりで期間もそれほど空いていないということで、まったく同じセットリストということも覚悟していたのですが一曲目から【SUGER MAN】と曲目を変えてきて大興奮。"全人口の80%以上がHENTAI"のキラーフレーズはやはりアガる。またこの日聴いた【破裂音の朝】はリリース以降数多く披露されていてもう何度も聴いていたのですが特別素晴らしかったような気がしました。何がどうという説明は出来ないのですが、今までで一番刺さりましたね。

 

そして後攻は配信ライブで何度か観たことはあったものの生で観るのは初めての渋さ知らズ。いやもう終始圧巻というか、言葉では説明できない謎の大きなエネルギーが常に変化しながら蠢いているような、そんなライブでした。かなりの人数がオンステージしているのに各パートの音はしっかり聴き取れて上下2本のギターはしっかり左右にパンまで振られており、ステージ上だけでなくPAチームの手練っぷりも凄かったです。

アンコールで披露された【ひこーき】の演奏が始まると上手に設置されたダンサーが登る脚立にこっそりのっそりと向井秀徳が登ってきて湧き上がる会場。そしてそのままゲストボーカルとして参加したのですが、歌メロがはっきりした曲はやはり向井秀徳のピッチの正確さが際立つなあと感じました。

 

どちらも大変緊張感のある演奏という共通点はありつつ、緻密に計算されたバンドアンサンブルを繰り出すザゼンに対し、コンダクター不破大輔氏の指揮によって常に自在に変化し続ける渋さという両極端な二組を続けて観られたというのは大変貴重なライブだったなあと思ったのでした。

 

 

7. 12/8 King Crimson@Bunkamura オーチャードホール

遂に観てしまった。「ツアー形式での公演は最後になるだろう」とインタビューで名言されているKing Crimsonの日本公演最終日。

 

開幕早々食らってしまったのがトリプルドラムの超絶技巧アンサンブル。ダブルドラムでもよくあるフレーズを複数人で叩き分けるアプローチだけでなく、一人が叩き始めたフレーズと寸分違わず同じフレーズを二人三人と重ねていく手法も取っており、音の厚みと視覚的な面白さが相まって"トリプルドラム編成であること"の説得力が凄かったです。9つの太鼓とシンバルを生音で同時に鳴らすには9本の腕と足が必要という、ただそれだけのこと。

もちろんドラム以外の演奏も桁違いの演奏力。ボーカルのメロディの下ハモをギターで奏でていたり、ギター2本に混じっても違和感のない歪んだギターのような攻撃的な音色のサックスがソロを取っていたり、渾然一体の演奏とはまさにこういうことなんじゃないかなあと思ったのでした。

 

とにかく全編を通して見逃せない展開であったのですが、やはり個人的なハイライトだったのは1幕ラストの【21st Century Schizoid Man】。ヒリヒリするほど乱高下する展開とラストの畳み掛け、そして演奏終了とともに高く放り投げられた6本のドラムスティックを見て本当に自然にスタンディングオベーションをしてしまいました。もちろん会場も総立ち。これが最後の来日公演になってしまうとしたら本当に残念でならない、心からそう思う素晴らしい公演でした。

 

 

8. 12/21 君島大空 (合奏形態)@USEN STUDIO COAST

吉澤嘉代子や中村佳穂のバンドメンバーとしても活躍するSSW、君島大空の「合奏形態」と呼ばれるバンドを従えての公演。来年1月に閉館が決まっている新木場のSTUDIO COASTで開催されるということもあり、コーストに別れを告げる目的のためにも早々にチケットを確保して臨みました。

 

女性ボーカルのような伸びやかな歌声は【火傷に雨】のような音源よりもハードな音像となった合奏形態の演奏に乗っかっても決して埋もれることはなく、むしろそのギャップで際立つばかり。かと思えばアコギ一本で弾き語った【向こう髪】では超絶高速カッティング&アルペジオを繰り出し、"ギタリスト君島大空"をこれでもかと見せつけられました。正直上手すぎて軽く引いた。

また演奏以外にもステージ上のランプの造形や雲の切れ間から光が射し込んでいるような客席を照らすムービングライトの演出も素晴らしく印象的でした。君島大空という音楽家の存在が世の中に見つかって、この才能が存分に際立つ演出が可能な大きな会場でライブができるようになって本当に良かったなあ、と思ったのでした。

 

 

9. 12/26 馬喰町バンド@くまから洞

私の中ではシャキーン!!とエレ片の音楽でおなじみの馬喰町バンドがレンタル古民家スペースでボーカルマイクすら使わない(ほぼ)完全生音*1のアコースティック編成でのスペシャルなライブを開催するということで、なんだか面白そうじゃないのと観に行ってきましたが、予想通り大変面白く愉快なライブでございました。

 

前述の通りPAなしのアコースティックな編成でしたが、木造建築ゆえに「良く鳴る」と本人たちも言っていた通り建物自体が天然のアンプになっていたようです。ボーカルの武氏は終始声やギターの聞こえを気にしてらっしゃいましたが、コントラバスの音に埋もれることもなくすべての音が素晴らしいバランスで聞こえたのは本当にびっくりしました。「人力サラウンド」と言いながらギターを抱えて自ら客席の間を練り歩き歌うという演出はこの形式ならではですし、距離でボリュームが変わっていくという経験も斬新でした。

 

 

10. 12/28 私立恵比寿中学@東京ガーデンシアター

突然ですがdaisuke氏(@DIECEK)による「私立恵比寿中学、激動の2018-2021年を振り返る」を引用してここまでの私立恵比寿中学をおさらいしておきましょう。

○2018年
12/24 星名美怜 リハーサル中にステージから転落。
→頭を強く打ったため、パフォーマンスにも影響があり、
動きを制限するため「お立ち台」制度が設けられる。
○2019年 結成10周年イヤー
3/13 5thアルバム「MUSiC」リリース
6/22 初の主催フェスを横浜赤レンガ倉庫にて開催
8/4 結成10周年。RIJFレイクステージ出演。
9/20- 秋ツアースタート
10/18 安本彩花 活動休止 ※秋ツアーは続行
12/18 6thアルバム「playlist」リリース 
※リード曲「ジャンプ」は、センターの安本彩花不在のままMVも制作し、その後のイベントでも残された5人で歌唱
○2020年
3/23 安本彩花 活動再開
→春ツアーでステージ復帰の予定が、コロナの影響で全公演中止
4月 舞台「ボクコネ」全公演中止
6/21「ONLINE YATSUI FESTIVAL! 2020」出演
星名美怜もフルパフォーマンスに戻り、実に1年半振りの完全6人編成で無観客配信ライブ。
このステージの最後に披露された完全版「ジャンプ」を観て、泣かないファンはいなかったでしょう。
↓↓↓(ここから2021年追記)
9/19-20 ワンマンライブ「ちゅうおん」開催
10/29 安本彩花 悪性リンパ腫の治療のため活動休止
○2021年
1/1 新メンバーオーディション開催発表
5/5 新メンバー3人加入
7/16 安本彩花 活動再開。THE FIRST TAKEで6人体制での「なないろ」公開。190万回再生。
7/26以降、メンバー5名が新型コロナウイルスに感染
8/29 @JAM EXPOで9人体制初の有観客ライブ(と思いきや、メンバー1名体調不良で欠席)

その後について更に付け加えると、

9/13 柏木ひなた 休養のため「ちゅうおん」後から芸能活動の一時休止を発表

9/25-26 ワンマンライブ「ちゅうおん」開催。遂に9人体制で初の有観客パフォーマンス。

10/18 中山莉子 扁桃腺肥大の摘出手術のため活動休止を発表

11/16 中山莉子 扁桃腺摘出手術を終え退院を報告

11/29 柏木ひなた 年末のワンマンライブ「大学芸会」での復帰を発表

といった、いつまで続くんだこの激動は…*2という流れを経つつ、見事2021年を締めくくるこのライブでは柏木の復帰も決定しフルメンバーでのパフォーマンスとなりました。しかしこう並べて見るとしれっと扁桃腺摘出手術で休んでサクッと戻ってきた中山莉子が微笑ましく見えてきますね。

 

長々と書きましたがそんな3年間の流れがありつつこの日を迎えたということで、歌のみの「ちゅうおん」とはまた違う、ダンス込みのフルメンバーフルパワーの私立恵比寿中学がようやく観られるという感慨が冒頭から押し寄せてしまい1曲目の【イヤフォン・ライオット】の時点で私の涙腺の堤防は限界に。続いて4月の公演でも触れた【Family Complex】が新メンバー3人用の新しい歌詞も付け加えられた新バージョンで披露されたところで2曲目にして私の涙腺はあっさりと決壊してしまったのでした。さてはオメーこの曲好きすぎるな?

 

また、メンバーがそれぞれフィーチャーされる幕間のダンスシーケンスや、平沢進のレーザーハーブを思わせる冒頭のレーザー演出が印象的だった【EBINOMICS】、加入当時のメンバーの映像が流れつつ加入順にメンバーがオンステージする【スターダストライト】など演出面でも新しい試みを多数取り入れており、まさにここ数年の総決算といった内容。ちゅうおんで観たとき以上に新メンバー3人が成長してしっかりとライブ演出に付いていっており、最早"新メンバー"として括る必要はないのではとも感じました。

 

そしてアンコールからはまさかの生バンド登場というこれまた斬新で贅沢な演出。しかも久々の制服風新衣装で初期曲の【えびぞりダイアモンド!!】を披露したのも公演サブタイトルの"Reboot"を意識してのものだったのでしょうか。最後の最後には最新楽曲【Anytime, Anywhere】で大団円。折に触れて言っている気がしますが、最新曲でそのバンドやアーティストの最新形を見せて終わるライブはそもそもの心意気からして最高なんです。すなわち2021年の締め括りにふさわしい最高のライブだったということです。

 

 

ということで2回に分けて2021年に参加したライブの振返りをお送りしました。2022年も引き続き予断を許さない状況がまだまだ続きそうですが、自分にできることを精一杯やりつつ、ライブの参加に限らず様々な形で音楽を楽しむ方法をこれからも模索していこうと思います。

*1:ヘビフォンと呼ばれるガムランを参考にしたというビブラフォンのような自作楽器の音をループさせるためのマイクとアンプのみ。

*2:年末に星名美怜が体調不良により大晦日のももいろ紅白歌合戦と関内デビルの年越し特番を飛ばすというオチがついてしまったのはご愛嬌。

2021ライブ10選(前編)

2018年以来となる参加ライブ振返りエントリです。2020年の暮れ頃、新型コロナの影響が少し落ち着きの気配を見せつつあったお陰で滑り込みで何本かライブを見ることができ、来年こそはこの遅れを取り戻すぞと息巻いていたものの御存知の通り年末年始あたりから再びコロナの勢力は増すことになり、2021年も思うようなライブ参加ペースとは行きませんでした。とはいえなんとかちょうど10本*1の公演に現地参加出来たので当時の記憶をどうにか掘り起こしながらその10本をご紹介します。

1. 4/30 私立恵比寿中学@パシフィコ横浜国立大ホール

本来であれば2月に開催される予定であったものが諸々の影響で4月末に延期されたものであり、東京都では直前に緊急事態宣言が発令されたこともあって開催地が横浜でなかったらおそらく有観客での開催はされていなかったこの公演。*2依然として厳しい情勢ではあったものの、6人体制の私立恵比寿中学の実質ラスト公演を見届けるべく、強い気持ちで参加しました。

 

内容は数曲ごとに各メンバーがフィーチャーされるような選曲がブロック毎に続くセットリスト。2階席中央から見下ろすような座席だったため、メンバーの複雑なフォーメーションチェンジを含む振り付けがこれまで観たどの公演よりも良く見え、かなり早い段階で涙腺が緩みつつあったのですが、最終ブロックでは病気療養中であった安本彩花の映像もスクリーンに映し出された結成からの10年を総括する楽曲"HISTORY"から、岡崎体育によって練り上げられた6人の名前が歌詞に織り込まれつつアイドルとして舞台に立ち続けることの強い決意を歌った名刺代わりの一曲"Family Complex"へと雪崩込む流れで完全に私の涙の堤防は決壊してしまったのでした。みんな…本当に頑張ってる…。

 

 

2. 9/25 私立恵比寿中学@秩父ミューズパーク

再び私立恵比寿中学ですが、こちらは2017年から毎回参加している生バンドによる生演奏かつ、声援禁止・サイリウム禁止・着席のみというエビ中の「歌心」を聴かせるコンセプトの公演。なお先の横浜公演の直後には予てからのオーディションで選考されていた新メンバーが加入し9人体制となっており、安本彩花復帰後初のフルメンバーでの公演ということもあってこれまでの"ちゅうおん"*3ともまた違う緊張感が漂っていたというか、勝手にそんな雰囲気を感じていたような気がします。

 

しかしいざ蓋を開けてみればそこにあったのは良い意味でこれまでとなんら変わらない"ちゅうおん"の姿。恒例となった各メンバーソロでのカバー曲コーナーはメドレー形式となり、よりテンポよく公演が進んだのも、夜冷え込む秋の秩父で非常に楽しく公演を観られた要因だったように思います。また新メンバー3人がわずか半年で歌唱力を底上げしてきたのも非常に印象的でした。そして何より個人的にはこの公演の後しばらくの休養期間に入ると発表していた柏木ひなたによる鋭い眼光が光る"大人はわかってくれない"とKing Gnu"白日"のカバーがあまりにも素晴らしく、しばらくあの眼が頭から離れなかったです。

 

 

3. 10/11 ライブナタリー×SHINJUKU LOFT KABUKI-CHO 20TH ANNIVERSARY『地下室の喧騒』@LIQUIDROOM

2020年3月から2020年6月へ、そして2020年6月から2021年10月へと2度の延期を経て遂に開催された新宿LOFTの20周年記念イベント。コロナ対策ガイドラインに従う形で会場がLIQUIDROOMに変更となったものの、個人的には実に1年半ぶりというライブハウス公演に緊張と不安が巻き起こる開演前。

 

先行はZAZEN BOYS。切れ味鋭い武道の演舞のようなアンサンブルが根底にあるのは言わずもがなとして、今回の共演相手が卓球ということを意識してなのかKraftwerkのカバー【Computer Love】を織り交ぜたり*4、先のナンバーガールとの対バンでも披露していた昭和歌謡アイドルのような振る舞いが垣間見えるチャーミングな【はあとぶれいく】だったりとリピーターも楽しめる内容でございました。

しかしやはりなんと言っても印象的だったのは久しくライブで披露されていなかった【半透明少女関係】でございましょう。あのリフが前触れ無く始まった時は歓声が上げられない環境に歯軋りをしつつも、ライブでお馴染みのアレンジである祭囃子パートで向井の掛け声に身振り手振りで応える聴衆の姿に演奏と同じくらい心を揺さぶられました。

 

そして後攻の石野卓球に関してはド頭の出音からとんでもなくデカい音がスピーカーから出てきて思わず笑っちゃったりしましたが、決して耳障りなものでなく体全体を使って音を感じることがこんなにも幸せなことなのかと改めて感じた約1時間。

またここ2年ほどでDJ機材の使い方を少し覚えたこともあって、以前フジロックで観たときよりも手元で何をやっているのかをイメージしながら観られたのもまた前と違った楽しみ方が出来て良かったなと思ったのと同時に、終始楽しそうにプレイするDJはやっぱり観てるこっちも笑顔になるよねと大変勉強になったのでした。

 

 

4. 10/31 おーたけ@じぇーむず @割烹DISCO大蔵

高円寺の街全体で行われるその名もズバリ「高円寺フェス」の一環として割烹DISCO大蔵の店内で行われた一寸先闇バンドのフロントマンおーたけ@じぇーむずさんの弾き語りライブ。今年の5月頃にtvkの番組にゲスト出演されていたのをきっかけに一寸先闇バンドを知りその後良く音源を聴いていたのですが、目の前で披露されたアコギ一本の弾き語りとは思えない力強いパフォーマンス(と、瓶ビールをステージドリンクにする豪快さ)に完全に虜になってしまいました。というか私だけでなくあの場にいたDJ陣は男女問わずみんな目がハートになってた気がするよね。

 

当日は何故かサザン関連の楽曲しかスピンしないDJに囲まれるという地獄のようなタイムテーブル*5でさぞやり辛かろうと思っておりましたが、サウンドチェックの流れで小気味良いアコギのカッティングを鳴らしながら【LOVEマシーン】や【夏色】といった我々世代を釣り上げるヒット曲のカバーメドレーでしっかりと場を温めてから自らの楽曲を披露していくという導入は歴戦をくぐり抜けてきたライブパフォーマーという感じで天晴。

名刺代わりの【一寸先闇】から始まり、DJ居酒屋という場所柄非常に盛り上がった【テキーラ】やダイナミクス溢れる演奏とボーカルが印象的な【日記】、当時リリース前だった新曲【知らんがな】などの楽曲を経て最後の楽曲はもちろん【高円寺、純情】で大団円。文句なし。皆様も彼女のライブを見た際は是非「おーたけ@じぇーむず良かった」と感想をつぶやきましょう。

 

 

5. 11/7 TSINGTAO COLLECTION 11th Anniversary@下北沢BASEMENT BAR

界隈における共通の知人多き名イベンターであるチンタオこと青島将司氏の主催するDJありライブありのイベント、『TSINGTAO COLLECTION』の11周年かつ自らの30歳を祝うスペシャルな回。普段から高円寺で飲み語り合っている友人K.KAZUMA氏・APO氏両名が"ロックが流れる"*6クルーとしてDJ出演するということで遊びに行ったのですが、3組のバンドがとにかくどれも素晴らしいアクトでございました。

 

バンドアクトのトップバッターを努めたのはLAIKA DAY DREAMのVo/GtであるKazutoshi Lee氏。美しいメロディに少し憂いのある綺麗なボーカルが乗るというまさに美メロな楽曲達。それでいて少しトリッキーなコード感のある伴奏は弾き語り形式なのにバンドでの演奏が浮かんできて一言であらわすならまさに「俺のツボ」って感じでした。当たり前のように演奏後即物販でCDを購入。

その後転換DJを挟んでのサンサーラブコールズは冒頭はフードを頬張りつつ客席端の方で観ていたものの、初っ端からフロアと呼応しまくる激しいパフォーマンスに居ても立っても居られず気がつけばフロア中央で爆踊りしている爆踊り太郎ことロックが流れるクルーに混じって私も爆踊り。

 

バンドアクトラストのMississippi Khaki Hairは始まる前からバンドメンバーもDJの曲で爆踊り。演奏が始まれば当たり前のようにステージもフロアも皆で爆踊り。気づけば増える爆踊り太郎たち。なんだこれ。楽しい。楽しいよ。まだ声は出せないけど、友達と一緒に体を動かしながら全力で観る、いや参加するライブがこんなに楽しかったなんて。徐々に開催されるイベントの数が増えつつある中、デカイ音で演奏される音楽を聴きながら体を動かし友達と笑い合うことの素晴らしさを改めて感じてピースがカチッとハマった気がした夜でした。

 

 

やっと半分…流石に長くなりすぎてしまったので後編へ続く!

r29ruki.hatenadiary.org

*1:2020年は無念の9本でフィニッシュ。

*2:翌週のZepp Tokyoでの昼夜2公演は直前で無観客有料配信のみに変更された。

*3:本公演のタイトル"エビ中 秋声と螻蛄と音楽の輝き 題して『ちゅうおん』2021"のこと。

*4:これ以前のイベントでも披露していたらしい。でもあくまで照準はこの公演だったのでは。

*5:サザンを愛する大蔵の店長から以前より「10/31にサザン流しまくるイベント企画しようと思うので是非お願いします!」と言われて予定していたものの、そのイベント自体が高円寺フェスのコンテンツに組み込まれていると知ったのはなんとわずか5日ほど前。

*6:2コーラス以上必須、フルがけ推奨の「かっこいいロックをかけきる」がコンセプトのロックDJパーティー。明大前のCafe Bar LIVREにて月イチのペースで絶賛開催中!

FUJIROCK2021 道中プレイリスト解説

はじめに

去年の無念を晴らすべく今年こそ苗場へ向かう。が、取り巻く状況の変化に三日間のキャンプ参加は断念し、直近の状況を様子見しながら土曜日一日だけ参加しよう、と考えている内に土曜一日券の売り切れアナウンスを呆然と眺めた私達。今年はそもそも全員揃って一台の車で行く計画ではなかったけれども、苗場に向けた、あるいは苗場からの帰路、その車内で本来ならみんな揃って聴くはずだったプレイリスト2021年版の解説です。

 

r29rukiの「2021FUJIROCK」をApple Musicで

 

M01 「ばいばーい」 aiko / どうしたって伝えられないから

今年発売されたaikoの最新アルバムの1曲目を飾る一曲ですが、これは体よくJ-POPの皮を被った呪詛です。aikoの失恋・悲愛を歌った曲は数あれど、キャリアを積んだ上で未だにこんな生々しく裏切ったかつて燃えるほど愛した相手への恨みを歌い上げられるものなのか。仮に実話だとしてももちろん怖いし、フィクションでもこんな歌詞が書けるaikoが本当に恐ろしい。私は初聴時あまりの衝撃でこの曲の途中で再生を止めてしばらくアルバムを聴くことができなかったとか。

M02 「炎」 真心ブラザーズ / Cheer

続いては真心ブラザーズの昨年発表された最新アルバムのリード曲をご紹介。こちらも長いキャリアを経てまだまだキャッチーな曲を作れるベテランの底力を感じる一曲です。ギターソロで終わるという展開も素晴らしい。こちらは1カメ1カットの踊ってみた風のMVも良いので是非。微妙にちょっと前のトレンドを取り入れてる感じがいかにもベテランという雰囲気で微笑ましいです。

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M03 「渚のラプソディー」 婦人倶楽部 / フジンカラー

カメラ=万年筆の佐藤望氏が佐渡ヶ島在住のご婦人をボーカルに据えて佐渡の風景を歌い上げるというコンセプトのユニット。リリースは2016年と少し前ですが新潟への道中ということでのセレクト。婦人倶楽部と言いながら(恐らく)佐藤望氏がリードボーカルを取ってるこの曲を選んだのは単純に私の好きな曲ということで。ひたすら佐渡の名産・景色を歌い上げるだけの歌詞も面白い。

M04 「走れ正直者」 中塚武とvideobrother / 走れ正直者 - Single

カバー枠その1。五輪開会式の音楽も一部担当したことでも話題になった中塚武氏によるちびまる子ちゃんのEDでお馴染みの西城秀樹の名曲。高速スカのアレンジで爽快感は抜群です。ジュリーのTOKIOのカバーとカップリングされ7inchでリリースされていた曲ですがサブスクでも聞けるのでTOKIOの方も是非。

M05 「氷の世界」 H ZETTRIO / SPEED MUSIC ソクドノオンガク vol.2

カバー枠その2。これまではフェスやサーキットのライブが新しい音楽との主な出会いの場であり、在宅での音楽digが正直得意ではない私には昨今の状況は大変辛いものではあったのですが、その中でtvkの番組を良く見るようになり番組内やCMで紹介される曲が新たな音楽との出会いになっていたような気がします。そんな中特に耳に残ったのが「ソクドノオンガク」という番組でH ZETTRIOがカバーした井上陽水氏のこの曲。最早Aメロだけでは原曲がなんなのか判別が非常に困難なほどですが3ピースインストバンドの表現力恐るべしといったアレンジは白眉。フジ本番にも出演するし、ということで選曲。

M06 「Cats & Dogs (feat. カネコアヤノ)」 KID FRESINO / 20,Stop it.

HIPHOP以外なら何でも聴くよ」と答えることでお馴染みの私でしたが、流石に昨今の流れでHIPHOPも多少聴いたりするように。そんな中フレシノくんは声も綺麗でキャラクターも愛され感満載ですごく聴きやすいなあという印象があります。こちらも今年のフジ出演するしということと、カネコアヤノも別日だけど出演するしコラボ曲聴いてみたいんですよねーという話を車内でしたかったなという意図で選曲。結局フジでのコラボはなかったなー、と思ったらCOASTでツーマン決まりましたね。

M07 「ODDTAXI」 スカートとPUNPEE / ODDTAXI ORIGINAL SOUNDTRACK

そんなHIPHOP的な流れからもう一曲、こちらはスカートとPUNPEEのコラボ。これは楽曲もそうですがアニメODDTAXIがすごく面白かったのであまりアニメ作品に積極的にアンテナを張ってないであろうと思われる同乗者達におすすめしたい気持ちで。ということでまだODDTAXI見てないそこのあなたはAmazon Prime Videoで全話見られるので今すぐ見てください。どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわいのにちじょうほのぼのアニメで楽しいですよ。あと見終わって面白かったなと思ったら忘れずにYoutubeのオーディオドラマも聞いてくださいね。

【アニメ本編】

Amazon.co.jp: オッドタクシーを観る | Prime Video

【こっちはオーディオドラマ(本編視聴後の視聴を推奨)】

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M08 「ミライサーカス」 nuance / mirai circus - EP

今年のアイドル枠。tvkの番組(というかCM)で聴いて耳に残ったシリーズでもあります。「横浜の商店街を盛り上げるアイドル」というコンセプトで集められた特異な出自のアイドルでありながらライブでは生バンドをしたがえ、しかもその編成はツインベースツインドラムという謎の気合が入りまくり。果たして第二のオサカナちゃんになることは出来るのか。他にもフックのあるアレンジが施された楽曲多数で注目してます。

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M09 「コハルヒ」 RAY / Yellow

今年のアイドル枠その2。・・・・・・・・・(ドッツトーキョー)のスタッフがドッツ解散後の新たなプロジェクトとして立ち上げたグループで、この曲は今年リリースされた新曲ですがど真ん中のドリームポップで狙ってるおじさんの層が明確で非常に良いです。昨年配信ライブを観た時には生歌に課題があるなあと感じたけど、顔出しNGだったり「生体デバイスを通してアイドルの心拍数を感じられます」みたいな尖ったアプローチしてたドッツよりちゃんとアイドルしてる(チェキ会とかちゃんとやってる)のでこちらも是非頑張ってほしいです。

M10 「Something Comforting」 Porter Robinson / Nurture

ラストはEDM界の寵児であり日本のオタク文化大好き君としても知られるPorter Robinsonの昨年リリースされた新譜から私の一番好きな楽曲を。そしてポーターと言えば昨年・今年と2回に渡ってコロナ禍で開催されたバーチャルフェス・Secret Skyがめちゃくちゃ良かった。オーガナイザーとしての取り組みももちろん、トリを飾った本人のVJと渾然一体となったパフォーマンスは本当に一見の価値有りなので、まだ観ていない方は下記リンクから是非ご覧になってください。

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ちなみに今年のフジ配信を観ながらも感じたことですが、DJ・アイドルに限らずロックミュージシャンのライブも最早視覚も含めてオーディエンスをロックする時代になったのだなあと強く思ったりもしました。機材のハイスペック化やインフラの発達もあるし、今まで通りのコール・アンド・レスポンスのような盛り上がり方がやり辛い状況がどこまで続くかわからない現状、今後ますます配信含めたライブパフォーマンスにおける視覚映像効果の占める役割が強くなっていくんじゃないかと考えています。

 

そんなこんなで以上が今年の10曲です。お付き合いいただきありがとうございました。

 

さいごに

なかなか筆が乗らずにプレイリストを公開してから時間が経ってしまいましたが、改めて解説を書いてみるとMV良いねライブ良かったねみたいな曲を多数入れていたので解説がないとなんのこっちゃな選曲だったなあと思ったので書けてよかったです。(まあ、車内であれこれと話しながら聴けるのが一番ではあるのですが。。。)

今年も機会を与えて頂き、ケツも叩いてくれたdaisuke氏(@DIECEK)、ありがとうございました。氏のプレイリスト及び膨大な解説ももちろんあるので是非みなさんも聴いてみてください。(私の選曲もマージされたようなのでこっちだけで良いかも笑)

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さいごのさいごに。指名されてブログの記事を書くというこの感覚、往年のミュージックバトンを思い出したよ。おじさん並の感想だね。

「エビ中 秋麗と轡虫と音楽のこだま 題して『ちゅうおん』2020」がとても良かった話

読まなくてもいい前書き

2020年9月19日、「エビ中 秋麗と轡虫と音楽のこだま 題して『ちゅうおん』2020」の夜の部に参加して、およそ200日ぶりにライブを観ることができた。 

アイドルグループ・私立恵比寿中学による『ちゅうおん』と銘打たれた秩父の野外ステージで過去にも二度行われたこのライブは、「エビ中の楽曲の良さを改めて味わう」というテーマのもとに「着席指定・コール禁止・サイリウムなどの光り物禁止」というルールの中開催される、図らずも今の状況で開催できるとしたらこれしかないという形式のライブである。

しかも演奏はホーンセクションやストリングス等も加えたフルバンドセット。毎回楽曲のアレンジの違いや生演奏ならではの自由なパフォーマンスを観られるのが特色で、過去の公演が素晴らしかったこともあり開催が決まってから非常に楽しみにしていたし、それこそ久々のライブ参加ということで今回のライブに対するハードルがあり得ないほどめちゃくちゃに上がっていた。上がっていたのに、軽々とそこを超えるものを見せられたというか、今しか感じられないような感情を強く感じたので、何年ぶりだ?というテンションでいわゆるひとつのライブレポを書いてみようと思うのです。

ライブスタート〜前半

ライブはバンドメンバーが少しずつオンステージしながら、

ドラム&パーカッション→ギター&キーボード→ベース→ストリングス&ブラス→コーラス

と、徐々に音を重ねていくように演奏が始まる。この時点でエビ中メンバーがまだオンステージしていないのにベースの音が重なって来たあたりから涙腺が緩み始めていることに気がつく。「俺は、今、バンドの生演奏を、客席で聴いているんだ」という事実を噛み締めて、胸が熱くなっていた。

 

そしてメンバーがステージに立ち、満を持してTHE BOOMのカバー"風になりたい"でライブがスタートちゅうおんの一曲目は毎回カバー曲を全員で披露しており、今年も例に漏れずカバーからの開幕。冒頭のドラムとパーカスのフレーズからこの曲なんじゃないかなと思っていたので思わずニヤリ。

天国じゃなくても 楽園じゃなくても

あなたに会えた幸せ感じて 風になりたい

リリースから20年以上経っている誰もが知っている超有名曲。なのにこんなにも 「今日」のために存在していたかのように聞こえるのは、ただ有名なだけじゃない「名曲」の証。

何ひとついいこと なかったこの町に

涙降らす雲を つきぬけてみたい

図らずも当日は小雨が交じる厚い雲がかかる空模様。それすらも演出の一部に感じてしまう粋な選曲に並々ならぬ"チーム・私立恵比寿中学"の気合を感じた。

 

そして2曲目は安本彩花センター(?)曲の"君のままで"。そう、このライブはエビ中として久々の有観客でのライブであることと同時に、昨年の秋ツアーの途中から体調不良により無期限の活動停止期間に入っていた彼女が、復帰後初めてエビ中ファミリー(私立恵比寿中学のファンの呼称)*1を前にしてパフォーマンスをするライブでもあるのだ。*2そんなライブのエビ中楽曲一曲目であのギターのリフと彩ちゃんのフェイクが聞こえて来て、俺は胸がいっぱいになったけど、みんなは?

 

そのままのアッパーなテンションでオープンハイハットのカウントから"自由へ道連れ"。カバー曲ではあるものの、ご存知の通り椎名林檎トリビュート盤に収録されている楽曲でこれまでも何度もライブで披露され定番曲になりつつある一曲。だがしかし、今日は昨年末のバンド編成でのライブともまた違う同期一切なしの完全生演奏!コーラスを従えているとやはり演出の幅も広がりますなあ。Dメロのひなたパートの裏でスネアのフレーズに合わせてエアドラムをしていた私の推しであるところのぽーこと小林歌穂さんが尊かったです。(小並感)

 

そんなぽーちゃんがメインの"SHAKE! SHAKE!"ではファンキーな演奏に合わせて客席も大きなクラップや大きく手を振りステージ上のメンバーのパフォーマンスに応える。半年ちょっと前だったら当たり前だった、そんな何気ないこの光景の中に今自分がいる事実とその有難さに突然こみ上げてくるものがあって、アップテンポだし泣くような曲じゃないのにボロボロと涙を流してしまった。配信形式のライブも新しいエンターテインメントの形としてもちろん有効だけど、絶対にそれが元来のライブにとって代わるものになり得ることはないのだろうと改めて強く感じた一曲。

 

そんな両目がボロボロの状態を引きずったまま"誘惑したいや""感情電車"というたむらぱん名曲乱れ打ちコーナーに入ってしまったものだからこの辺りの記憶があまりないのはご愛嬌。そうだ、"感情電車"のDメロ終わりの「その空」がここに来てまた一段と伸びやかになっていて心に響いたよぽーちゃん。

 

と、ここでようやくメンバーは用意された椅子に着席し、しっとりとしたアレンジに変貌した最新楽曲"23回目のサマーナイト(ちゅうおん ver.)"を披露。先行で公開されたこの曲のMVがメンバーとの疑似デートが楽しめてしまうという内容だったこともあり、曲や歌詞が全く入ってこないと全オタクが頭を抱えていたことでお馴染みでしたが、改めて聴くとめちゃくちゃ美しいメロディですねこれ。

ライブ中盤ソロパート

さてここからはちゅうおん恒例のメンバーソロでのカバー曲披露のコーナー。まずは真山りかによるOfficial髭男dismの"ノーダウト"。ヒゲダンの高めのボーカルと低音がしっかり出る真山のボーカルが上手いことマッチしてて違和感なにそれおいしいの?って感じでした。キーもあまり変えてないのかな。

 

続いて俺たちの革命ガール星名美怜によるSuperflyの"タマシイレボリューション"。なんてチャレンジングな選曲…!と思いながらもしっかり歌い上げていて、エビ中全体の歌唱力の底上げは美怜ちゃんの成長とともにあるのだろうな、としみじみしておりました。この曲もクラップが楽しかった!

 

続くエビ中ボーカル番長柏木ひなたによるiriの"wonderland"。R&Bシンガーとして十分通用するのではと思うほどの力強さとリズム感でもはや「天晴」の一言。このテイストの楽曲を生バンドで聴けるのもまるでBillboardに来ているような贅沢さで、完全に引き込まれてしまいました。あとiriさんって、エビ中の最新アルバムに収録されてる"I'll be here"を提供された方なのね。

 

ソロコーナーも折り返し、安本彩花はきのこ帝国の"金木犀の夜"をカバー。きのこ帝国がアイドルにカバーされるような時代になったか…としみじみすると共に、少し鼻にかかるような彩ちゃんの声質により佐藤千亜妃とはまた違う切なさを感じておりました。秋の夜の野外で聴くというシチュエーションも相まってソロコーナーの中でも凄く印象に残った一曲。

 

そしていよいよ私の推しであるところの小林歌穂のターンが来たわけですが、選曲は中島みゆき"糸"今更あえて"糸"なのか!と思わんでもなかったけど、真紅のドレッシーなお衣装で優しく微笑みながらステージ上を練り歩くご様子に大御所感を感じずにはいられず、すわここはNHKホールかと思うばかり。しかしメンバーの中でも無二の声のキャラクターを持つ彼女ゆえ、低音域をさらに太く操れるようになってしまったらそれこそ中島みゆきばりに恐ろしいボーカリストになってしまうのでは…。

 

ソロコーナーラストは、メンバー随一のロックスター性を持つ(と私が勝手に言っている)中山莉子による、奥田民生"愛のために"!他のメンバーと比較してしまうとどうしてもボーカルの安定感はもう一つという感じなのだけど、表情筋を全力で使って歌を歌う彼女は毎回必ず僕らオーディエンスの心に何かを問答無用でぶっ刺してくれる。今回もステージ上をピョンピョンと跳ね回る可愛さを見せながら、ギラついた目で「僕ごのみのワールドオブワールド」を作り上げてしまった。ロックスター・リコナカヤマ最高。*3

ライブ後半

ソロコーナーも終わり"紅の詩"*4でライブも後半戦に突入。この曲はやっぱり生バンドの演奏が映えるし、さっきのロックスターの話じゃないけどラスサビのりったんパート

何故に返事をクレナイ?

油断して知らない歌で泣きそーうだ

が今日もギラギラしていて最高でした。そして立て続けに生バンドでは初めて?となる"バタフライエフェクト"で畳み掛ける。

 

アッパーな曲が続いて盛り上がるものの、ソロコーナー途中あたりから強くなってきた雨に濡れて少し体が冷えてきたので曲の合間に上着を着ようと鞄を探っていたところで、静かなアコギのアルペジオから"スターダストライト"が始まってしまったせいで完全に固まって上着を着るタイミングを失ってしまった。*5

いつだって僕ら手の鳴る方へ進んでいくから

この瞬間 どうか永遠に! 色褪せないで

9人編成時代の全編3人ずつのユニゾンが印象的だったこの曲が、スローなアレンジに乗せて一人ひとりがソロパートを取り丁寧に歌い上げられていく。星空をイメージした照明で作られたこの空間に、かつて「不安定な歌唱力」と自嘲していた彼女たちはもういない。まさしく「どうか永遠に」と思わずにいられなかったこの曲は間違いなくこの日のハイライト。

 

そんな雰囲気をそのまま引き継ぐように、生バンド編成のライブではお馴染みになったアコースティックなアレンジでの"まっすぐ"が始まる。個人的には原曲のアレンジが好きということもあって、原曲アレンジを生バンドで聴ける日は来ないのか…と少し肩を落としていたところ、2番からはフルバンドで原曲に近いアレンジ*6になって「そりそりそりそり!!!!」と脳内になにかが分泌されてたのを感じた。やはり"まっすぐ"は滋養強壮に効く。

 

「残り3曲、目と耳と心で忘れられないライブにしましょう!」という真山のMCを合図に聞き慣れないファンキーなカッティングのギターリフが始まり、あれこんな曲あったっけ?と混乱しているとその正体は"踊るロクデナシ"*7。初回の町田*8といい、前回のEBINOMICSといい、ちゅうおんで演奏されるメンバー紹介のソロ回しを挟む曲にハズレ無しの法則。着席しながら脳内では完全に爆踊りだったぜ。

 

そんな会場の熱量を少し落ち着かせるようなピアノの調べを挟んで、3声コーラスが美しい"星の数え方"がまさかのボサノバ調アレンジで披露。他のリアレンジとは逆の「重厚でシリアスなバラードが明るくポップになる」アプローチはなんとも新鮮。アレンジが軽くなったのでここまで引っ張らず前半で披露しても良かったのではと思ったりしつつも、なんだかんだ日が暮れてから演奏するべき曲だしなあと納得。

 

そしていよいよラストの一曲。安本復帰したし"HISTORY"か"ジャンプ"披露で大団円か?いやいやまさかの"オメカシ・フィーバー"で振り切って終わりか?とぐるぐる頭を巡らせる自分を笑い飛ばすかのように始まったのはまさかの"23回目のサマーナイト"おかわり。(笑)

アップテンポで歌詞の言葉数も多い曲なので、ちゅうおんでやるならしっとりしたアレンジにして前半あたりに配置かなと予想していたのが的中したせいでこの曲が来ることを全く予想していなかったことに加えて、"ちゅうおん ver."では言わなかった原曲通りのセリフパート「もう、この後どうするの!?」を彩ちゃんがくしゃくしゃの笑顔で言った瞬間に再び私の涙腺の堤防は無事為すすべもなく崩壊しました。マジでこの後どうすんだと頭を抱えたファミリーは俺だけじゃないはず。

「同じ曲2回やるなら他の曲演ってほしかった」などということは1秒たりとも思わず、この明るいアレンジで、メンバー同士で顔を見合わせながら笑顔で歌って踊る彼女たちを見て、周りから響くファミリーの手拍子に包まれて、ぐちゃぐちゃに泣きながら笑う幸せを噛み締めて、2020年のちゅうおんは幕を閉じたのでした。

 

 

「当たり前」が「当たり前」でなくなってしまって、とかく心がヒリつきがちなこの頃、やっぱり自分にとって「音楽」だったり「ライブ」というものがこんなにも心を豊かにしてくれるものだと改めて強く感じることができたライブだった。何が正解なのかなんてまだ誰もわからなくて、誰もが何かに必要以上に怯えて、結果何かを責めてしまうこともある状況で、「当たり前」を少しでも取り戻すために全力で取り組んでくれたスタッフ・関係者には本当に本当に感謝しかありません。皆さん本当にお疲れさまでした、ありがとうございます。

 

…それにしてもこんなに余韻に浸る程のライブを観た感じって久しぶりで、案の定熱量のままにレポートを書いたらご覧の有様になっちまいました。*9ということでここまで読んで頂いた皆様も本当にお疲れさまでした。それでは今日はこの辺で、ご機嫌よう。

*1:無論、この表記はナタリーリスペクト

*2:ライブパフォーマンスへの復帰は6月に配信イベントとして行われたやついいちろう主催の『ONLINE YATSUI FESTIVAL』

*3:彼女の歌うフジファブリックの"線香花火"が聴いてみたいけど、フジは一昨年"若者のすべて"をカバーしているので、次はエレカシの"俺たちの明日"かゴイステ"BABY BABY"あたり如何でしょうかキネオさん?

*4:そういえば全部同期なしで演奏してたけどこの曲の冒頭の笑い声だけはSEだったような。せっかくだしそこも生で笑って欲しかったなあ。

*5:ついでに冒頭でギターの演奏がちょっとだけつまづいて更にちょっとだけ緊張感が走った

*6:ややテンポダウンしてAメロのドラムのフレーズが少し間引かれてた

*7:当時現役高校生がエビ中に楽曲提供ということで話題となり、Mega Shinnosukeの名が一気に広まる要因になった楽曲

*8:買い物しようと町田へ

*9:ここまで約5500字

FUJIROCK2020 道中プレイリスト解説

はじめに

この催しを毎年の恒例行事として行っていたDIECEK氏(@DIECEK)からの薦めがあり、フジロックの行き帰りの車内で聴くプレイリストを選び始めてからもう5年目になるらしい。DIECEK氏が選ぶ膨大なプレイリストの中に、私のセレクトを5曲ないしは10曲織り交ぜてもらうというのが基本的なルールとなっております。

今年は色々と特殊な年になってしまったけど、それを逆手にいつもの内輪だけのノリからちょっとだけオープンにしてAppleMusicでプレイリストを公開したので、ついでに選曲意図みたいなものを簡単に解説してみようかな、ということで例のごとく長文必至ですがしばし自己満足にお付き合いください。

 

r29rukiの「2020FUJIROCK」をApple Musicで

 

M01 「2020」 Kaede / 今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。

今年の選曲を始めるにあたってまず頭に浮かんだ曲。昨年末リリースされたNegicco・Kaedeのソロアルバムに収録されているTRICERATOPSのカバーナンバー。Kaedeは結構鼻にかかった感じの特徴的な声ではあるけど、カバーであることを感じさせない調和されたアレンジは白眉。(もともとNegicco和田唱はじめ男性バンドマンから多数曲提供受けているという前提もあるかもしれないけど)

M02 「Media」 Newspeak / July

全編英語詞ではあるけど歴とした日本のバンド。初めて彼らを見たのは一昨年くらいの中野区役所前の無料フェスだったと思うけど、ガツガツしていない綺麗な顔立ちのボーカルがいわゆる邦ロックバンドっぽくないアレンジにがっつり英詞を乗せて歌う様が個人的に結構なインパクトだった記憶。

当時はこの曲が収録されてるEPくらいしかなかったと思うけど、近年は毎年フルアルバムも出して各種メディアへの露出も増えてきているので是非近いうちにフジで見てみたいなという願いで選曲。中でもこの曲は中盤のリズムが変化するところがカサビアン的なイキフンを感じてとても好きなのです。

M03 「ロマンティカ」 Kaco / ノルカソルカ - EP

サブスクが主流になりつつある中でもあまり食指が動いていなかったものの、ついに昨年夏以降AppleMusicを導入。その中のニューリリース枠で知ったKacoさんというシンガーソングライター。単純にもうこれはボーカルの声質とピアノとストリングスのアレンジが好みだというその点に尽きます。この1年で知ったシンガーの曲では一番聞いた一枚かもしれない。

M04 「A-RA-SHI : Reborn」 嵐 / A-RA-SHI : Reborn - Single

多分今年色んな意味で割を食った人たちなんじゃないでしょうか。過去シングル曲のリアレンジ企画の第一弾ということですが、4つ打ちながらも原曲よりもかなりおシャレな感じになっていて、20年選手としての落ち着きみたいなもの垣間見える仕上がり。これもまた2020年ということと、やっぱりみんななんだかんだいって嵐好きだよね?ということで選出。

M05 「グリッター (feat. 小田朋美)」 connie / VOICES - EP

Negiccoのプロデュースで知られるconnie氏が楽曲ごとに異なるボーカリストをフィーチャーするというコンセプトの元にまとめられたアルバムの一曲目を飾る楽曲。CRCK/LCKSの小田朋美がCRCK/LCKSでは絶対やらないであろうキラキラした4つ打ちのトラックに乗せてあの少しアンニュイな歌声を披露しているのは必聴。

余談だけどこのアルバムのラストを飾る楽曲のボーカルはアイカツ!歌唱担当の「るか」こと遠藤瑠香。アイカツ!おじさんとしても名を馳せた(?)connie氏の曲を本家が歌うといった胸熱展開。

M06 「恋、いちばんめ」 ukka / 恋、いちばんめ - Single

私立恵比寿中学の妹分"桜エビ〜ず"として知られた彼女らの改名してから初のシングル。作詞:MICO/ヤマモトショウ、作曲:ヤマモトショウという最早実質ふぇのたすですこれSMAPでよく聞くようなニュージャックっぽいリズムとかブラスセクションの使い方とか、やっぱりこれよね、というポップな仕上がりはまさに実家のような安心感。痒いところに手が届く、でお馴染みのスターダストプロモーション芸能三部(とはもう言わないか)のA&Rの手腕を今後のukkaでも期待。

M07 「時間だよ」 RYUTist / ファルセット

Negiccoに続く新潟ご当地アイドルRYUTistの最新アルバムからの一曲。アイドルらしからぬ実験的な音像のこの曲はあのKan Sanoプロデュース。当初このプレイリストの選曲に悩んだ私がこのアルバムを1枚丸々選ぼうとした程バラエティに富んだ楽曲が収録されているので未聴の方は是非どうぞ。蓮沼執太発沖井礼二・北川勝利経由パソコン音楽クラブ行き。

M08 「君は薔薇より美しい鈴木雅之 / DISCOVER JAPAN Ⅲ ~the voice with manners~

若干今更感ありますが、先日出演させてもらったオンラインのDJイベントで友人が流していてガツーーーーンやられたーーーーーとなった一曲。元曲も歌唱者についても説明不要。まだ聴いたことないなら今すぐ聴いて。それだけ。

M09 「アンチグラビティ・ガール」 月ノ美兎SMASH The PAINT!!

バンダイナムコスタジオ所属のトラックメイカー、現トイズファクトリー所属で最近はDAOKO×スチャダラパーのアレンジとかボーカルディレクションなどでブイブイ言わしているTAKU INOUE氏プロデュースによる人気VTuberによる歌唱の一曲。イノタクさんと言えばアイマス関連のクラブミュージック寄りの楽曲でお馴染みですが、バンドサウンド的なアプローチも非常に素晴らしくまさに私の「性癖に刺さる」一曲。

イントロはじめ各所で印象的なドラムのかき回しはNUMBER GIRLOMOIDE IN MY HEAD」を彷彿とさせることと、BPMとキーがぴったりということもあってかこの曲のリリース後はオタクイベントで「透明少女」が流れまくったとかいないとか。

M10 「花束」 サンボマスター / 花束 - Single

すみませんこの曲だけは完全にインチキです。とはいえ先日のYoutubeでのフジロック配信プログラムの中のサンボマスターの撮り下ろしライブがあまりにも素晴らしく、そこで最後に演奏された「君を信じてる」「あなたが花束」というシンプルなテーマを歌い上げるこの曲を選ばないことは出来なかった。熱心にリリースを追うということは正直ないのですが、野外フェスで時間さえ合えばやっぱり見たいサンボマスター、来年フジ開催されて出演ってなったらもう絶対見ちゃうよね。そんで泣いちゃうよね。

 

以上が今年の10曲。お付き合いいただきありがとうございました。

最後にかのDIECEK氏のプレイリストと解説文も添えておきますのでこちらもお楽しみください。

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ニコチルワンマンライブ〜Nico×2. Children 10th Anniversary Live 2019 "10力と欲求 Against All GUARANTEE"〜 終演に寄せて。

終わってしまった。

 

何が終わってしまったのかといえば、ここ最近僕がやかましいほどにTwitterで宣伝していた「Nico×2 Children 10th Anniversary Live 2019 "10力と欲求 Against All GUARANTEE"」、すなわちニコニコ動画でのミスチル歌ってみた演奏してみた動画の第一人者であるニコチルさんの活動10周年を記念したワンマンライブが終わってしまったのだ。

 

このタイミングでしたためておかないと、もう二度とこういう話をする機会はないと思うので、多分、きっと、ものすごく長文になると思うけれども、余計なことばかり言うかもしれないけれども、それでもいわゆるひとつの"自分語り"を思いつくままにやってみようかな、と思う。

 

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思い起こせばあれは遡ることちょうど20年前(!)、1999年のこと。「なにか有名人のファンになりたい!!」というなんとも漫然とした突然の衝動に芽生えた少年時代の僕は、家族でカラオケに行くと父親と一緒によく歌っていたMr.Childrenのファンになろうと決意したのである。今思い返すと我ながらまったく不思議な経緯であり、普通は「何度も繰り返し聞くほどあの曲好きだ」「テレビで見てすごくかっこいいと思った」のような、そういうエピソードがあるものなのだけど、何故か「この人達のファンになるんだ」という想いがまず先行した結果、めでたく僕はMr.Childrenのファンとなったのだった。

 

そうして僕は当時隆盛を誇っていたレンタルCDショップで借りてきた流行の曲たちをダビングしたカセットテープの中から、Mr.Childrenの曲だけを選りすぐって更に別の自分だけのカセットテープにダビングして聴いていた。そんな最中に出会ってしまったのが、1999年発表のMr.Childrenのアルバム"Discovery"…ではなく、そのアルバムを引っ下げて全国42公演を回ったライブツアーを収めたライブ・アルバム、"1/42"だった。

 

とにかく衝撃的だった。"名もなき詩"、"花 -mement mori-"、"Innocent World"をはじめとするエヴァーグリーンな誰もが知る名曲たちと、当時すでに7年を超えるキャリアの中で幾度となく披露されライブで定番となった"ラヴ・コネクション"や"Dance Dance Dance"のような曲、そして実験的な要素も多分に含まれながらも違和感なくスッと体の中に入ってくるポップ性を持ち合わせた最新アルバム"Discovery" の曲たちが、生々しいライブ演奏と、白眉としか表現しようのないエクスクルーシブなアレンジで次々と両耳の中に叩き込まれていった。

 

そうは言ってもまだまだ想像力の足りない未熟な少年時代の自分にとっては、どこかふんわりとした存在であったMr.Children。ところが、翌年に発表された"口笛"のプロモーションビデオを見た僕の頭の中はもうこれ以外のことは考えられなくなってしまった。

 

「この髭面の人のドラム、めっちゃ格好いい…」

 

こうしてその後しばらく、この刹那の想いになにもかもを支配されることになってしまったのだった。

 

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そして当時といえば都心部以外にも続々とインフラが整備され、群馬の端っこの更に端っこに位置する我が故郷にも"インターネット”というものが市民権を得始めようとしている時代でもあった。幸いにも我が家はダイヤルアップの時代からワールドワイドウェブの世界に足を伸ばしていたこともあり、父親の助けを借りながらインターネットでMr.Childrenをことをもっと知ろうと思ったのは当然の結果だったように思う。

 

そうして今となっては最早死語となってしまった"ネットサーフィン”を繰り返していたのだけど、思い返せば数々のミスチルファンサイトを巡り過ぎた結果、いつでもどこでも繰り返されている仲良しクラブのような雰囲気に少し食傷気味になってしまった僕は、あまりにも極端すぎる2つの個人ファンサイトに多くの時間を費やすことになった。

 

"もし僕らの言葉が音楽であったなら"、通称"もしぼく"は、エッジの効いた(効きすぎた)管理人である東雲氏によって運営されていた酸いも甘いも劇薬もすべて含んだMr.Childrenへの愛情表現に富んだファンサイトだった。Mr.Childrenのいわゆる"桜井和寿一強問題"に強く疑問を投げかけつつ※1も愛のあるメンバー弄りの数々と、"侍魂"や"一流ホームページ"のようなテキストサイト全盛の当時、そのエッセンスを取り入れた"ファンサイトなのに管理人の日常を綴った文章が面白い"という点に惹かれ、高校受験を控えていたというのに僕はチャットや掲示板に「ドラムのJENが好きだ」という己のアイデンティティ武装して"りゅーき※2"というHNを使って入り浸り始めたのだった。

※1:このスタイルの先駆者は自分の知る限り"ミスターチルド連邦"だったと思う。ギターの田原さんが未だに一部のファンに"皇帝"と呼称されている所以。ただし愛の強いファンの前でその呼称で発言することはタブー。

※2:記憶にある限りこの名を名乗り始めたのは2001年の秋もしくは冬頃。仮面ライダー龍騎の製作発表が2002年1月なので、自分の方がライダーより先にこの名を名乗ったことは当時から現在にかけてことあるごとに言い続けている。

 

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時を同じくした頃もしくはその少し前、これまた別のベクトルでエッジの効いたサイト、"Toolbox"とも出会った。そのコンセプトは単純明快、メンバーの使っている"楽器"をひたすら紹介するというサイトだった。

 

MONGOL800が"インディーズ"という言葉を大衆に知らしめ、BUMP OF CHICKENが"天体観測"で爆発的ブレイクを果たし、同級生のヤンキー達がこぞってSNAIL RAMPをコピーして女子からモテようとしていた2001年当時、りゅーき少年の「バンドやりたい(あわよくば女子にモテたい)欲」もとい「なんでも良いから楽器が欲しい(最終的には女子にモテたい)欲」は言わば有頂天に達していたこともあり、サイトに載せられている楽器の数々の写真と、数多くの考察が含まれたコラム達を毎日ディスプレイが焼き切れるほど舐め回すように見ては、楽器を買い与えられなければ女子にもモテない鬱々とした己の日常を慰めながら過ごしていたのだった。

 

…まさかこのサイトの管理人であるたいら氏が、その後の自分の人生における最重要人物の一人になるとは、いちROM※3であった当時の僕は当たり前のように知る由もなかった。

※3:"Read Only Member"すなわち閲覧するだけで書き込みをしない人のこと。半年ROMるのがネチケットですぞ。フォカヌポゥ

 

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高校に進学した僕は、今は亡きOrvilのレスポールモデルのギターを中古で手に入れた。自宅で少年ジャンプと着られなくなったユニクロのパーカーを積み上げては絵筆で叩いて練習していたドラムから、練習スタジオ常設の本物のドラムセットにランクアップしたりもした。こうなってくると最早次のステップはただ一つ。「バンド組みたい(そしてやっぱり女子にモテたい)」である。

 

そんな時にまた別のミスチルファンサイトで出会った友人と、かなり具体的な形でバンドを組もうじゃないかという計画が持ち上がる。共通のバンドが好きという点は、バンドのコンセプトを決める上でものすごくスムーズに事が運んだ。いわゆる"J-POP"のど真ん中をやってろうというバンドだ。

 

そんな大層な理想を掲げて動き出そうとしたのは良いものの、世間は先にも挙げた(かなり乱暴に括ってしまうけど)インディーズバンドブーム。ライブハウスで演奏しようと調べるにも、ポップな歌モノバンドが出られそうなイベントなんてそうそうありゃあしない。果たしてそのコンセプトに近しいバンドというのは一体全体どのように活動しているんだろうか?そう考えて調べた結果、辿り着いたのは"NO NAME BAND"という埼玉の北浦和を中心に活動している"ポップ・ロック・バンド"を標榜するバンドだった。当時サイトで視聴できたアルバムの曲を何曲も聞き込み、友人とライブするならこんな構成がいいよねとか、もしアルバム作れるなら一曲目はインスト入れてみたいよねとか、大層大それた夢を語ったりもした。

 

こうして指針となるバンドの作品や活動の雰囲気を参考とし、2006年に大学へ進学した僕は後にドラマーとして自分自身のオリジナルバンドを始めることになるのだけれど、それはまたちょっとだけ別のお話。

 

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とまあこのようにしてMr.Childrenのファンとなり、Mr.Childrenの音楽に惚れ込み、インターネットの世界で"りゅーき"という名を名乗るようになり、Mr.Childrenの機材についての見聞を深め、己のバンド活動を始めた訳だったけど、ひょんなことからMr.Childrenのドラム担当JENこと鈴木英哉氏の使用機材をまとめたブログ「ジェン通」を始めることになった。

 

うーん、まあ、変に濁さなくてもみんな知ってるしいいか。使用機材をまとめる、もとい、JENの魅力を数多の人々にお伝えするというコンセプトで当時ネットで知り合った子と一緒に「ジェン通」を始めた。あくまで自分は"機材関連の記事担当"という位置づけだった。

 

そんなこんなで、かの"Toolbox"よろしく、でも正直ドラム機材の知識もそれほどままならないままがむしゃらにGoogle画像検索を駆使するなどしてなんとかブログを更新していた。そんな折、2011年のMr.Childrenのツアー"SENSE"最終日のさいたまスーパーアリーナ公演の直前に「僕も同じ日に観に行くので良かったら終演後に飲みながらお話しませんか?」という趣旨のメッセージをなんと本家本元の"Toolbox"管理人、たいら氏から受け取り、二つ返事でその誘いに乗っかった僕は、終演後のけやきひろばにある銀座ライオンでたいらさんとの初めての邂逅を果たした。ついでに今や色々と足を向けて寝られない"Toolbox"常連の重鎮であるミナミさんとも邂逅を果たし、僕にとって初めての"ミスチル機材クラスタオフ会"を満喫したのだった。

 

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こうして初めての出会いからほどなくして、次に見る予定のライブが偶然にも同じだったという縁もあり、あれよあれよとたいらさんとは意気投合し、夏に始まったやはりMr.Childrenのスタジアムツアー"SENSE -in the field-"の横浜公演会場でもまた会おうということになる。そこでたいらさんから紹介されたのが、改めて言うまでもなくニコニコ動画で大活躍しているニコチルさんであった。

 

学生時代の暇な時間はほぼニコニコ動画を見ながら過ごしていた※4僕が彼の存在を知らないはずはなく、歌唱のクオリティだけではなくシーケンス含め演奏もすべて一人でやってのけるスーパーマンとの出会いに舞い上がった僕は、人見知りフルスロットルでとにかく握手をしてもらうことで精一杯だったように記憶している。

 

※4:"ミスチルギター弾いてみたシリーズ"動画のうp主であるサラリーマン氏とコラボした"箒星"の動画はギターフレーズの目コピをする目的もあり本当にディスプレイが焼き切れるほど何度も繰り返し見ていた

 

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そして1年ほど経過し、就職をきっかけに上京してようやく新しい生活にも慣れつつあったある日、ニコチルさんから「ニコチルのワンマンライブを開催するので良かったら遊びに来ませんか」というありがたい誘いをいただく。もちろん断る訳もなく、勇んで会場に駆けつけた僕だったが、会場でとんでもないものを見てしまった。というか、会場の看板にはこんな文字が書かれていた。

 

「NO NAME BAND ワンマンライブ 〜自咲自演 Vol.2〜」

 

???

 

こんなことってあるのか。頭の整理が追いつかなかった。高校時代にネットでたまたま見つけたバンドのボーカルが、実は最近知り合った人だったなんて。オリジナル曲、カバー曲を織り交ぜたライブは一瞬も飽きることなく楽しめたけど、それ以上にその日の感想はその"事実"に支配されて曲のことをあれこれ言っている場合ではなかった。

 

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そんなこともあったりして一方的にリスペクト感が増し増しになりながら、再びライブ後に一緒にご飯を食べたり、スタジオに入って遊んだり、思い切ってNO NAME BAND主催の企画ライブに直談判して無理矢理出演させてもらったり、挙句の果てに"ニコニコ超会議"に一緒に出させてもらったりして親交を深めたニコチルさんから、今年の2月にこんなメッセージが。

 

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一度のみならず二度も共演の機会を頂けるなんてありがたい!とわずか2分後に二つ返事を返す僕。

 

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そして告げられる衝撃のコンセプトに思わず小岩井よつばと化した僕。

 

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ライブハウスでの演奏から遠ざかって久しく、挙げ句2年以上人前でドラムを叩くことすらもなかったのになぜ二つ返事をしてしまったのか。声をかけてくれたニコチルさんには申し訳ないけど丁寧に説明すればきっと向こうも汲んでくれて断ることも出来たのではないか。ほんの少しそんな想いがよぎったこともあったけど、それ以上にまたニコチルさんと一緒に"思う存分"Mr.Childrenの曲を演奏できるという最高のご褒美を前にしてもう後には退けないと覚悟を決め、いざメンバーとの初顔合わせ。

 

f:id:r29ruki:20191216190515p:plain >ギター担当はサラリーマンくんです。

 

f:id:r29ruki:20191216190636p:plain >お前は何を言っているんだ

 


何なのこれ。歴代プリキュア大集合的な?なぎさちゃん登場で親世代大号泣とかそういう奴?泣くぞ?本気で泣くぞ?あからさまにキャプションで伏線を張っておいたけど僕ってばあなた方のコラボ動画本気で死ぬほど見てたんですよ???

 

などということは思っていても一ミリも顔に出さないよ。大人だから。大人だし紳士だし淑女でもあるのであくまでシャンゼリゼ通りで優雅にアフタヌーンティーを嗜むパリジェンヌのごとく「よろしゅうあそばせですわ」と挨拶を交わしたのだけど、その後のたった2時間のスタジオ練習でボロ雑巾のようになった僕を見るニコチルさんの笑顔はちょっとだけ引きつっていたような気がする。

 

なんて冗談5割増しくらいで書いてみたけど、限りなく事実に近いことは間違いなくて、本当に当日20曲もの曲を演奏できるのか※5、当日までの出来次第では何曲か削ることも視野に入れないといけないのでは、という話をしたりしつつも、結果は皆さん御存知の通り(ハプニングありつつも)アンコール含めてぴったり20曲を演奏しきることができたのでした。

※5:早い段階で本当に候補が20曲出揃って死ぬかと思った。

 

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ということで異常なまでに長い前フリを経てようやく昨日というか一連の振返りですが、とにかく今回まず声をかけてもらったということそのものが、自分の好きなものをとにかく好きだと懲りずに叫び続け、何かしらの発信やら活動をしてきたことのご褒美だったのだと思っています。

 

その根底にはまず何かを本気で好きになること、そして好きになったものを突き詰めようとすること。誰もが毎日好きなことだけやって生きていける訳ではない日常の中で、そういったことの繰り返しの延長で人との縁が増えて、その中から面白い何かの渦のようなものが生まれて、さらにそれを巻き起こす中心に入って行くことが出来る、そんな素晴らしいことってなかなかないんじゃあないかなと思うわけです。

 

"出会いの数だけ別れは増える それでも希望に胸は震える"

 

メンバーの中で一番経験の浅い僕でしたが、ニコチルさんはじめメンバー皆の温かいフォローでなんとかここまでやれたような気がします。そしてこの日を楽しみにライブハウスにお越しいただいた皆さん。半ば無理矢理僕に連れて来られた皆さん。会場スタッフの皆さん。最後に、このクソ長い文章を飽きもせずに最後まで読んでくださった暇で暇でしょうがないそこのあなた。本当にありがとうございました。

 

そしてそして改めてニコチルさん活動10周年おめでとうございます。僕の個人的な10年以上の怨念のような思いが演奏にちょっとでも乗っかって伝わっていれば幸いです。

 

2019.12.16 りゅーき(最近は専らりゅーきち)