「はらいそ」細野晴臣

真面目にレビューを書こうとして、はてなブログにしたら、わたしのタブレットでは動作が遅くて、、、

前に書いてた記事を消しました。
イチからやり直ししたかったので

ここのところ、YMO周辺を聴いていました。
とはいえ、細野晴臣SKETCH SHOWYMOというおかしな順番なんですが

で、レビューを書きたくなりました。ようやく。


細野晴臣「はらいそ」を真面目に書いてたら、一回に3曲のレビューが限界でした。
なので、3曲ずつ3回に分けてのレビューです。

初めてリリースされたのは、1978年。アナログLP。
それからCDでリリースされましたが、一時はなかなか刷れない状態になり、アナログしか持っていないファンが再発を首長く待っていました。
紙ジャケで出たときは音源が細野氏の意向を全面に出したリマスターをしており、それまでの盤とは違う仕上がりになっていて、ファンは泣き笑い。
根強いファンのなかには、アナログ、CD、リマスタ盤の3つを買ってしまった人も多いとか。
私の手元にあるはらいそは、紙ジャケ仕様ではなく、リマスタされてもいない普通のCDです。

はらいそ

はらいそ

はらいそは、細野晴臣トロピカル三部作の最後の作品で、彼はこのアルバムを作成してからYMOを結成しています。
最初に聴いて感じたのは、細野氏は凄まじく耳のいい人なんだな、ということです。
そして、これまたすさまじく色んな音を聞いてきたんだな、ということ。
そうでなくては、作れない曲がつまったアルバムです。

細野氏は、ここまでの音楽生活で、これから何を作ったらいいのか迷い葛藤していたらしく、それがこのアルバムにも反映しています。


細野氏が作ったトロピカル三部作の集大成ともいえそうですが、ファンは、「トロピカルダンディ」「泰安洋行」がベストだともいっていて、軍配が分かれてます。


細野氏自身は、「内省的だった」と語っていますね。


ポップスといっても単なる薄っぺらな表層にとどまらず、もう少し深くまで踏み込んでいるので、かなり聞き応えがあります。
アルバムの最初からファンキーな曲が流れたと思ったら、フォークロック、カリプソ(しかもインド人みたいなボーカル)、沖縄民謡、、と、ジャンルに囚われない幅広い歌が。


これを楽しいと思える人には至極の世界ですが、未知の世界に触れて「こわいわー」と怯える人もいるようです。
自分は前者で聴いてる間はずっと幸せでしたケド。

細野さんのベースやメロディが好きな自分には、たまらない1枚です。


1.東京ラッシュ
一曲目は、ガレージファンクみたいに賑やかでリズミカルで明るいです。
言葉遊びがとても楽しいのですが、リズムがあって、その上に言葉を載せる感じで、韻の踏み方も気持ちいいです。
日本語の発音がこう巧くのるなんて。
でも歌詞カードを見ると、「ええ、なんデスカ、これ」というくらい意味が無いです。
日本語を英語の発音で歌うといいのかな、ガスガスガス〜♪

一曲目からホノルルに行ってみたり、逃げて香港まですっ飛びして、すでに日本から逃げたくなっている細野氏の心境がチラホラしますね。
シンセサイザー坂本龍一、ドラムに林立夫、ピアノに佐藤ひろし氏をお迎え。
細野氏はボーカル、ベース担当。

ここで味わいたいのがベースです。
細野氏のベースのイメージといえば「地味だけど動き回る」といった感じが自分にはあります。
ブラック・ファンクのベースはシンコベーションやラグタイムなどの技法があるけれど、グルーヴを作りながらメロディにのるのは難しいはずです。
細野氏はいつも簡単に弾いていますが、一般の人にはなかなかこのグルーヴは出せません。
速く弾くという技術は練習すれば、わりと身につきやすいのですが、グルーヴはリズム感と耳と練習量のどれも必要なものだと思います。
と、ベースの話しに熱くなってしまいましたが、細野氏のベース(というかリズムセクション)は全作品を通して聞き応えがあります。
YMOで鍵盤ベースしてたときも勿論です。


2.四面道歌
ギターに鈴木茂をお迎え。
この時代のフォークロックを感じます。
歌詞はワビサビが。

朝になったらぼくは行くよ 西のドアから
蓮の花咲く天竺へ 神に会いに
花も嵐も踏み越え ぼくは行ってくるよ
悲しい言葉を振り切り ぼくは行ってくるよ

一曲目で旅立ちたがっていた細野氏ですが、二曲目ではもうここでは「いってくるよ」。
止めてもどうにも無駄な感じです。
それにしても、蓮の花、天竺、火の鳥、、と、仏教関連の言葉が多いですね。
当時を振り返り、細野氏は仏教を意識した曲だて書いていて納得。
しみじみとした音階での「いってくるよ」は、どこか寂しげで引き止めてほしそうでもあります。
「邪魔だよ そこどけ 悪魔めそこどけ」
仏教的に解釈するなら、悪魔は自分自身の煩悩かもしれません。

この歌はトリビュートでキセルが歌ってますが、彼らお得意のダブ・アンビエントに仕上がっていて、でも四面道歌の持つ空気を壊しておらず「上手いな」と感心しました。

興味があれば是非。


3.ジャパニーズ・ルンバ
これはカバーです。
いきなりインド人が「チョトアノネ」と歌っていると思ったら、ティーブかまやつさんがボーカル(ムッシュかまやつ氏のお兄さんです)。
かまやつさんの発音やブレスの入れ方が独特で、インド人に聞こえてしまう逸品。
あまりに怪しいので、私はこの歌を聴くとどうしても「仕事明けのフィリピーナが化粧も落とさず笑顔で丁寧に歌ってる」姿をイメェジしてしまいます。
タイトル通りのルンバ(カリプソぽくもある)の明るい曲調に、なんだか妙に辿々しい日本語の切なさのミスマッチぶりがお見事です。
この曲に限ったことではないけれど、細野氏が創る作品にはこういった絶妙なアンマッチさが散りばめられている。
ルンバという有機的なリズムに、無機的なボーカルをのせるのは足し算するといいのだろうけど、有機的な声をのせてしまうと受け手はチャンネルを合わせる接点が無くなってしまい、呆然としてしまう。

この独特の質感が、普通のポップスに慣れた人に「危険」を感じさせるのでしょうね。

こういう曲を素直に受け入れられるのは、子供かな。
音に固定観念のない子供は、楽しみ方が上手だな。


ルンバといえば細野氏のお得意。
シュールだけど、意味を深読みしなくていい、楽しい曲になってます。
これは動画を探せなかった。
原曲はハワイのヒット曲だからすぐに見つかるけど、細野氏のものと全く違う明るくて健康的な空気があって。
細野氏のどんよりインド人朝日とともにおやすみフィリピーナ風味は、はらいそでお楽しみいただくしかないですね。

今回はココマデ。


次はモアベタよー、ではなくて、安里屋ユンタからのレビューです。

[muzic][細野晴臣]細野晴臣「はらいそ」2

さて、細野晴臣のはらいそレビュー二回目です。
一回目のレビューからかなり経ちましたが、その間に泰安洋行やらYMOやら聴いてました。
泰安洋行ははらいそより密度が高いな。そして、実はバラバラに感じたはらいそは、泰安洋行より整理され計算されてる感があります。
その理由は細野さんのインタビュー本「THE ENDLESS TALKING」に書いてあり、納得してしまいました。
トロピカル三部作だから暑いのは半ば当たり前だけれど、はらいそは泰安洋行に比べると少々正気。。。というか、作品と創作者の距離がほどよく保たれてる。
どちらが優れてるとか駄目だとかではなくて、作品中の空気感がやはり違うよね。



安里屋ユンタ
安里屋ユンタは、カバーされる沖縄民謡としては定番なんじゃないかな。
坂本龍一もアルバム「Beauty」でカバーしています。
カバーは細野さんが先ですが。
教授の解釈だとボッサよりで憂いを帯びますが、細野さんのカバーは聴きやすい沖縄民謡ですね。
合いの手に女性ボーカルの川田さんを迎えて、4コーラスまでという作りです。
教授のカバーは2コーラスで終わってますが、はらいそのライナーノーツによると俗の替え歌は2コーラスで本土ではポピュラーなのだそう。4コーラスは正調安里屋ユンタの歌詞で、安里屋に生まれついた女の一生を綴ったもので、なんと16コーラスほど延々と続くのだとか。

すごいなー。

歌詞はバリバリの沖縄訛りで、私にはよく解りませんが、16コーラスまで入ってたならアルバムの半分が安里屋ユンタとなってたんでしょうね〜。
本当の安里屋ユンタは今まで聴いたことがないのですが、安心できるコード進行と、やはりベースがいいです。
あと跳ねる感じのドラム、ストリングスの柔らかさが安心感(奇をてらう展開がないという意味で)に繋がるのですかね〜。

自分は沖縄民謡の中でも安里屋ユンタが好きなので色んなカバーを聴いたりしましたが、これは民謡とポップスの要素がうまくミックスされてると思います。
これ以上沖縄民謡に近づけば聴きにくくなるだろうし、ポップスに近づけば民謡の良さが薄れてしまうし。
細野さんは、こういうジャンルの混ぜ方がうまくて、聴きにくい音をすんなりと聴かせてしまう音作りに長けているのだと思います。
ちなみに、安里屋ユンタのこのオケはクラウン時代にとったもので、小林旭に提供するはずの曲だったそうです。


5 フジヤマ・ママ

原曲は女性がフジヤマ・ママとして熱く心意気を語ってる歌です。
ほかにもカバーされてるようですが、細野さんの歌はこれまたイカガワシイですね。
すべての楽器を細野さんが担当しています。
この歌は一見すると普通に口ずさめそうなのですが、リズム感がかなり必要で、油断するとオケにおいてかれます(自分だけかもしれませんが(汗))
全体的に粘って跳ねる感じの曲ですね。ドラムのスネアのロール(?)が鳴ったあと、ハンドクラップでパシッとはじけます。アクセントで頭が重くてオシリではねてるというリズム感。途中ではいるマリンバも気持ちよいソロ。
特筆すべきは細野さんの歌い方でしょう。色んな方にカバーされたフジヤマ・ママですが、この歌い方は細野さんにしかできないと思います。ジャパニーズ・ルンバと同じで、これが曲のイメージを決定的にしてると思うのですが。
歌詞をみるとフジヤマ・ママの語り口として聴くべきなんでしょうが、この声で歌われるとどうも富士山に語りかけられてるよな気がして仕方ないです。。。


はらいそを初めて聴いたときに一番リピートした曲ですね。
最近はウォーリー・ビーズをリピートしがちなんですけど。


明るくて(いかがわしさはあるけど)楽しい曲です。


ファムファタール〜妖婦

これはYMO結成前夜として有名ですね。
ドラムに高橋幸宏、キーボードに坂本龍一が参加しています。
ファムファタールといえばよく「運命の女」と訳されますが、自分のイメージとしてはよくファムファタールをとりあげたグスタフ・クリムトの絵画を思い出します。
クリムトが描いたのは女性に翻弄される男性というより、翻弄しようとする女性そのものなのですが、この歌は翻弄されたいけど不安が拭えない男性の内面を描いてますね。
短調長調をいったりきたりしますが、単に暗いのではなく甘い暗さです。ドラムの音と鳥の声のせいか、密林をさ迷うようなイメージが。
細野さんは「気取ってる」といってましたが、歌い方も奇をてらうほうじゃなくストレートでフジヤマ・ママとは真逆でシリアスなのです。
で、やはりドラムがいいですね。こういうミディアムなテンポの曲は、どうしてもプレイヤーの技量が透けてしまうのですが幸宏さんのプレイは多すぎず少なすぎず、でもゲストなだけあって目立ちすぎずでやはり上手です。
聴いてると、二時間サスペンス劇場のあの妖しい感じがふとよぎりますね。



てなわけで三曲。
次はシャンバラ通信からですねー。
自分で書きたくて書いてるのですが、やはりもっと無責任にやればよかったとちょっと考えることいっぱい。。。
というのは、自分の中の細野さんブームが今はYMO後期のベース部分〜Hosonovaくらいに移行していて、はらいそをジワジワ吸収していた感覚を思い出すのが少し厳しいのでした。
むむ