生きづらさと宇宙人
毎晩のように母や兄を殴る姿を見ていた。
私は殴られなかったが
テストの成績が悪いと、10センチの距離で父親が映画シャイニングのポスターのような顔で食事中ずっと私を睨み続けるという、
客観的に見たらコメディのようなことが
日常的に起こっていた家庭で育った。
その時の私は、顔は平静を装い食事を取りながら
足の震えが止まらず、これがばれたら殴られるという恐怖に晒され続けていた。
今も脳裏に刻まれている恐ろしい記憶の1つを語ろう。
空気の読めない兄(当時小学校5年・私は3年)がテストで60点台の点数を取ったにもかかわらず
ドリフのテレビ番組を見て爆笑していた。
その瞬間父は立ち上がり兄の元へ駆け寄りいきなり兄の顔面をボコボコにタコ殴りした。
母親は悲鳴をあげて身体を張って父を止め、私は恐怖で固まり、兄は顔面から血を流し逃げた。
数時間後警察の手によって家に戻ってきた兄だったが、警察は父を咎めなかった。(昭和54年頃)
てっきり警察からお咎めが来るか父が逮捕されるかと思っていたのに無罪放免だったので、私はこの家で自由に振舞うと殺されるかもしれないと本気で信じ、自分の気持ちを殺すことだけに専念した実家での日々だった。
父の行動が全く理解できず、ジキルとハイドの生まれ変わりだと思った。恐ろしいだけなら逃げたかもしれないが、優しい時もあったので、母もどうしたらよいかわからないようで、暴力を受けつつも離婚できずにいた。
今思うと父はもともと自閉症スペクトラムを持っていたのに、それを理解しない世間体だけを重んじる母親に厳しく育てられたためにモンスター化してしまったのではないかと思われる。
しかも、数ヶ月前に気づいたが、尊敬し愛していた母も、もともとADHD気質があったようで、それが父の異常行動に拍車をかけていたことに気づいて、愕然とした。
大人の発達障害を、もっと世に広めて、生きやすい社会を作っていきたい。
彼らはモンスターでも宇宙人でもなかった。