10月期アニメ

良かった順で。

『色づく世界の明日から』

「凪あす」チームということで期待。

色彩を失った主人公、色とりどりの「魔法」の瓶。どうやら、主人公が魔力を失っていることと色彩が見えないことは関連しているらしい。

未来から来た主人公が2018年の世界にいまいち馴染めない様は、キャラを置くレイヤーの違いに反映されている。画面のフォーカスの当たり方の違いだったり、光の当たり方のコントラストだったり、「浮いている」ことが視覚的に理解できる画面の作りだった。

そういったデコボコの見える画面に対して、色彩を欠いたモノトーンの画面では、焦点(とボヤケ)の作る遠近などが消滅してしまって、平板な画面に見える。

やがて君になる』第1話

そこで手をつなぐ……。キャラクターデザインの輪郭線がシャープ。高田憂希はもちろんきれいな声質ではあるが、壁を作るような硬い質感を含んだ芝居がときおりあって素晴らしかった。「特別」がいない人間(というか機械というか)らしい芝居だ。

原作を2巻まで買って読んだ。

寄宿学校のジュリエット

かわいい。ウェスティアさんのデザイン好きなのではやく出番が来てほしい。

この手の佐倉綾音の芝居も好物。『四月は君の嘘』での芝居の系列。

『リリース・ザ・スパイス』

「キャラデザの可愛らしさとストーリーの重たさのギャップ」路線ではないのか。にしても、『プリンセス・プリンシパル』のあとだとつらい設定にも思える。

「ちくわ様」の作品はよく分からない。

継続モノでは『バナナフィッシュ』がショーター退場あたりから面白いと面白くなっていると思う。

夏アニメ

夏アニメは全体的に不調。以下、良かった順。

はたらく細胞

シリーズ構成にやや疑問もあるが、しっかりした作品だった。

白血球のキャラクターデザインを見て、ああ、作者は女だ(そしてこいつの男の好みは俺は好かねえ)とも思う。

あそびあそばせ

これも楽しい。第11話(副生徒会長の週)、生徒会長が仕事から戻ってくると、前田やらなんやらでカオスな状況になっていた、というあたりの流れでは笑った。

『バックストリートガールズ(ゴクドルズ)』

バカバカしくて楽しかった。藤原啓治さんが復帰なさってよかった。 

『はねバド』

んー、期待はずれ。録画データもいつの間にか消えていた。

原作の変化をどうさばくかという点において、監督およびスタッフにポリシーが欠如しすぎでしょう、その哲学の無さがシリーズ構成の適当さに反映して、いい加減な最終回の展開につながる。

「咲メソッド」の一部を採用しつつ――ダブル主役にする、プレイスタイルからスポーツに対する思想までを対照的にする、胸の大きさだって正反対、そのうえで「魔王」を見た目上の主役に据える――「ゴッ倒す」的な「魔王」に設定してしまったことの収拾がついていない。最終回で「バドミントンって楽しいよね!」の「原初の楽しみ」を思い出したというのか(「咲」が「麻雀って楽しいよね!」でさらなる魔王っぷりを深めていることを勉強しろボケが)。

また、バドミントンのスポーツ作画に注力したというのだろうが、作画リソースを割く箇所の哲学がない、なんのためのゴージャスな作画なのか、絵コンテ全体での盛り上がりの設計がない、「作画よし、脚本ゴミ」というのでは最近の京アニと一緒になってしまう。現実の再現が最高の作画なのだとしたら、おれは現実のバドミントンのほうを見るよ、アニメートすることの意味を考えろ。

 

8月~9月

ログインの仕方忘れてた。まずは夏の思い出について笑

コートールド・ギャラリー

ロンドンに行っていた。模様替えだかなんだかで一次閉館になる前日に行った。ロッカーに荷物を預けるあたりになって一度来たことがあることに気がついた。サマセット・ハウスの中庭の写真もまた撮ってしまった。印象派からポスト印象派がメインで、セザンヌが複数並んでいて感動する。「カード遊び」は出ていなかった。主だった所蔵品は来年、日本に来るらしい。

飛行機の移動では『ピーターラビット』、『シェイプ・オブ・ウォーター』、『レディ・プレイヤー・ワン』、『追想』(イアン・マキュアン原作)、岡田麿里さよならの朝に約束の花をかざろう』(再視聴)などを。

ゆるキャン

Crunchyrollにて全話。なるほど丁寧な作品だと思った。OPの歌唱力が素晴らしい。

 上野千鶴子『情報生産者になる』ちくま新書、2018年9月。

論文作法本。社会学。分厚い。370ページ越え。理論仮説と作業仮説の区別は、文学研究ではあまり考えたことはなかった。研究計画書などのフォーマットも扱われているのも新鮮。

 

情報生産者になる (ちくま新書)

情報生産者になる (ちくま新書)

 

 

 

 

はねバド 第1話

はねバド!』第1話

バドミントンはシャトルへの影響を考慮して夏でも窓を締め切った体育館でプレイするんだったか。それに合わせて屋内の場面が圧倒的に増え、なぜか照明も落とし気味で、屋内と室内と明暗のコントラストの強い画面が多い。

アバンタイトルは大きな試合で会場の照明も照らしまくりだが、試合の最後のポイント、シャトルを追いかけられなくなった場面で、その光と影の画面構成が登場する(その後のロッカールームも同様)。

締め切った空間でのこのギスギス(まだ第1話やぞ笑)は逃げ場がない。キアロスクーロ(明暗のコントラスト)の光のほうを見れば、「淀み」としか形容のしようのないホコリが浮いている。

この画面構成の原理は、就寝前のメガネちゃんが自室で携帯をいじっているシーン(液晶からの照り返しが明暗対照をまたまた生んでいる)でも見つかる。停滞、よどみ、のようなものの隠喩になっているだろう。

それと対比的というか、これまでの語彙でいえば「対照的」なのが、テニスコートでの「覚醒」の場面。夕焼けなのか、紫が主調の場面、背景ではかなりの速度で雲が流れ、屋外だから「よどみ」も「停滞」もない――したがって、巨乳キャラちゃんは逃げ出す、という道を選んでしまう。

ギスギスの高まりは、そういった逃げ道のない空間、体育館の場面を待つほかない。

(んー、「ウマ娘」のように第2話まで一気に見たかった。)

まっすろな未来

こみっくがーるず』第12話。

最終話。

「りぼん」系列の雑誌で若干15歳にして連載、そこから苦境があって、4コマ萌漫画に流れ着く……そんなはんざわ先生の描くかおす先生のボツネタは、萌え漫画ながら、凄まじい通低音が聞こえるような聞こえないような。

かおす先生、絵、うまくなったなぁ。絵柄かわいい。

ああ、でも、わたしが描くのはわたしのこの日常だ、って着想を得た場面も見たかった。あと、編集さんだけじゃなくて、読者アンケの評価フレーズの一つでもかおす先生には伝えてあげてもよかったような。

シリーズとおして、作品もスケジュール安定だった。副監督中西和也さんによる一人原画は2週あっただろうか。絵コンテも担当だったと思うが、正面仰角など凝ったレイアウト(まあ、自分で描くならそういう上流の指示もアリかっていう)が多かったと思う。

また、初回を見たときに書いたと思うが、赤尾ひかるを見出した時点ですでに名作である。7月からのアニメでもメインキャラらしいし、期待しております。

スペぇええ~ (『ウマ娘』Extra/第13話)

ウマ娘』Extra見る。第13レース/第13話相当……そうか、基本、一日あたり12レースまでしかやらないものな(笑)

桃鉄で日本地理を、信長の野望で戦国武将を、そして、ダビスタで競走馬を学んだ世代としては、スペちゃん世代はドンピシャだった。クソガキとしてなにも分からないまま(毎週の中継を見て、自然と馴染んでいたサラブレッドの世代が、振り返ってみるに、こんな黄金期だと知らなかった。

まず、サイレンススズカの扱い。ライスシャワーもそうだったが、最期について中継で見てしまった記憶があったが、どのようにスズカを描くのか、放送前は本当に心配だった。(スペちゃんが駆け寄るにしても、第7話で足を引きずるショットは本当に見ていて心が痛む。)

すでに書いていることだが、この作品では、スズカについてはカッティングの効果が絶大。

まず、オープニングにある天皇賞秋。実際のレースを踏まえた大逃げのカット(大けやきの向こうを回るところ)と直線に入ってからのカットを分割して、わたしたちが知っているあの光景から1コマをまたいで if の世界に入っていくというのが見事だった。カッティングなしに、地続きで最終コーナーをまわって直線に入っていく走りを描いては、単にウソを描くことになるだろうが、瞬き一つで、カッティング一つで並行世界に入っていくという、この作品のポリシーには倫理感さえ感じ取れる。

つぎに、スペシャルウィークサイレンススズカの対決を第10話のようにカッティングありきで見せた(画面上では競争になっているが、競馬場では併走していない)こと。if の水準での誰が強い論争は荒れそうだものなぁ。そして、この並行モンタージュが可能にするレースを目撃できるのは、視聴者(夢見るファン)だけであるという、このおじさんの涙腺を刺激するメッセージ。

そうすると、最終話のあれはどうなのだということになるが、世代的にはブライアンの馬券を買うかも。というか、あんなん、展開さえ分からん。

トレーナーさん(CV・沖野晃司)、熱かった。最終話での名前を呼ぶ場面での「スペぇ」の芝居。

(追記)明坂聡美さんの実況もお疲れ様でした。動画で実際のものをいくらでも聞けてしまえる時代、いろいろ勉強なさったんだと思う。Extraでの「先頭から見てみましょう」の雰囲気がとてもよかった。

劇場版を思わせる、真っ黒な地に白字がひたすら流れるエンディングクレジットも、(あんな曲ながら)感動的だった。

かりにゲームが出たら、スズカさん、マックイーンちゃん、スカーレットちゃんを育成したい。なかのひとの見た目でセイウンスカイ、声質ではトウカイテイオーを、勝負服ではグラスちゃん。

(スペちゃんとグラスちゃんをおなじチームにしておなじレースに一度も出さないというプレイは可能でしょうか。)

「こみが」など今週のアニメ

こみっくがーるず』第11話、いいお話だった。出来上がったネームだけではなく、着想が降りてきた場面も見たかった。

ひそまそ』第10話、ここに来て岡田麿里脚本らしい展開。恋愛以前の「少女的なもの」の偏愛。

ウマ娘』第12話、グラスワンダーがサイコレズっぽくなってきてるやん(笑) 聞き耳を立てるときの効果音、可愛すぎ。

「リズ」二回目も行ってきた。特典のフィルムはなかった。

合奏シーン、オーボエ、フルートのパートに金管などのパートが加わっていく曲の構成だが、オーボエ1人でほかのパートすべての音圧を跳ね返しているのに感心した。

タイトルが出るまでの場面はまた息をのむ。素晴らしい。希のポニーテールは重力に逆らうようで、彼女の背中も反っているように見えて、つぼみの黒髪ロングは重力にしたがって、まっすぐ降りて、前かがみとはいわないまでも、胸を張っているという姿勢でもないという、この対比。あと、みぞれの笑ったときの顔の目元、可愛すぎ。

冷たい飲み物を買うこともできず(氷がガラガラ言ってしまう)、ポップコーンの音でさえ気になって、ビニール袋をがさこそすることも許されぬ(飲食物の持ち込みは禁止だが)、究極の視聴マナーが要求される作品。