新しいフォントを使うというのは、新しいシャツを着ることと似ているかもしれません。
どこへ、どんなコーディネイトで出かけるか。
どんなレイアウトの中で、どの文字と組み合わせるか。
今秋モリサワから写研のフォントが発売されます。
待望の石井明朝、石井ゴシック、ゴナが使えるようになるのです。
当時の写植の雰囲気を残した「改刻」というラインナップがあります。
印画紙に文字を撮影する写植は、文字が微妙に滲むのですが、それを再現したらしい。
滲みは、文字を組んだ時に柔らかい雰囲気を生みます。
いまで言うところの「エモい」でしょうか。
印刷物の多くが写植で組まれていた時代は、すでに30年も前のこと。
ぼくは当時を知っていますが、一緒に仕事をしている人の多くはおそらく知らないでしょう。
そんな若い人たちの目に、写研の文字は魅力的に映るのだろうか。
ぼくの目に、ノスタルジーではない、純粋に素晴らしいフォントとして映るのだろうか。