前略、殺し屋カフェで働くことになりました。 2 感想
どうも、りゃおです。
読みたい新刊が多すぎて溺れそうです。
『前略、殺し屋カフェで働くことになりました。 2』の感想です。
あらすじ
紙魚子、料理をおぼえる!?
ひょんなことから、殺し屋の女の子たちが集まる喫茶店・エピタフで働くことになってしまった迅太。それからひと月あまり、彼は交渉屋としての役割を果たすようになっていた。
そして、いま、迅太は紙魚子に料理を覚えることを了承させるという、難儀な仕事を遂行していた。そんななか、エピタフに新たな依頼人が訪れる。とある企業へのハッキングから連なる殺人事件。
その事件を担当してた探偵が、己の手に余る事態の解決を求めてきたのだった。果たしてその事件の真相とは。そして迅太は、紙魚子に料理を覚えさせることはできるのか!?
感想
いや、面白かった!
1巻のときよりもさらに面白くなっていました。
可愛い女の子たちとの掛け合いに終始するのではなく、しっかりとシリアスで締りのある展開で駆け抜けているのポイント高いです。
なんといっても主人公の迅太がエピタフの交渉役として着実に成長している姿が描かれているのが良かったです。
1巻のときに気になっていた迅太の思考傾向についても今回説明がなされていました。
実はばーちゃんは只者ではなく、という展開を想像してしまいました(笑)
なんとなしに主人公が上手く解決してしまうのではなく、考えて、悩んで、試行錯誤して結果を勝ち取っていく展開が熱いです。
まだ子供らしい純粋さというか、エピタフに入る前の価値観から変わり切れていない様子が見られます。
しかし、前回の事件でアバラに指摘された反省点をしっかりと活かして交渉に臨む姿勢が素晴らしく、応援したくなります。
今まで我流でやってきたことが、四日市の助言により交渉術のしてのテクニックであると知って意識的に使っていく姿にも成長への意欲が見られます。
やはりこういう「成長していく主人公」というのが僕のツボみたいです(笑)
”組合員”としてはやや甘い価値観も、染まり切ってしまえというよりはむしろ彼の価値観は変え切らずに、”組合員”としての役割とどう折り合いをつけるか、それに対して彼がどんな答えを出すかという点に期待したいところです。
今回エピタフのメンバーの中で焦点が当てられていた糸魚子の成長と活躍も目覚ましいものでした。
自分の弱点を受け入れて、隠さずに曝け出し、人に支えてもらうことを恥と思わず感謝する。
それができる人とできない、あるいはできる環境にいない人との違い。
やや重め話題にも、糸魚子の明るく軽快なキャラクターのおかげで不必要にテンポを崩すくことなく読み進めることがでました。
とはいえ締めるところはしっかりと締める、魅力的なキャラですね。
本気を出したときの癖が素晴らしです(笑)
成功だけでなくなかなかに苦い失敗もしていますが、また新たに課題が見えることによってこれから先の迅太の成長と活躍が期待できるという点でむしろ好印象でした。
達成感と悔しさのバランスが絶妙であり、とても良い読後感です。
クセの強い新キャラが出たり、交渉役としての仕事が増えたりなど、今後新たな展開を匂わせる要素もたくさん出てきていますし、鉄火との絡みもどんどん増えていきそうですね。
楽しみです。
三角の距離は限りないゼロ 3 感想
どうも、りゃおです
ようやく上着を着るか否かを迷わずに済む気温になってきました
『三角の距離は限りないゼロ 3』の感想です
あらすじ
文化祭実行委員なんて、柄じゃない。でも僕らの関係を変えようとする春珂の願い、春珂を想う秋玻の気持ちから委員として動き始めた僕は、かつての僕を知る庄司霧香と出会う。再会なんてしたくなかった。霧香は僕が別れを告げたはずの「過去の自分」を育てた人だから……。
華やかな文化祭の裏側で、彼女は僕らの恋に隠れた、何より僕が隠した欺瞞をこそ残酷に暴いていく。
もう戻れない僕らの関係。揺さぶられる『僕自身』のあり方。そして、舞台の幕が上がる――。
僕と「二重人格」の彼女たちが紡ぐ、三角関係恋物語。
感想
いつもより派手さのある展開
舞台が文化祭ということもあるのか、今回の盛り上がりは1、2巻とは全く別物でした
特に矢野くんの大立ち回りによる起死回生の一手は予想外かつ納得感のあるもので、とてもワクワクしました
序盤から中盤にかけては春珂や霧香に翻弄されやや鬱々としたものでしたが、この矢野くんのド派手な活躍のおかげでモヤモヤが一気に吹き飛ばされる気持ちのいい展開になりました
主人公による「俺に考えがある」的な展開は大好きです
今回も自分の取るべき行動に悩みに悩んでいる矢野くんですが、一歩ずつ着実に成長している感があります
まだ自身が納得できる答えを見つけられてはいませんが、なよなよとしていたものに芯が通り始めているのであともう少しかなと
カッコよくキメてくれることに期待です
活き活きとしている春珂
2巻最後で爆弾を投げてきた春珂
矢野くんが若干イラ立つほどの猛アタックです
まあ春珂に直接イラ立つというより、別な理由があるのですが・・・
とにかくそれほどの強引さで矢野くんに好いてもらおうとしてきます
なんかここまでくると逆に彼女にカッコよさを感じました
やると決めたからにはとことんやるという、初期の内気で遠慮がちなイメージからは想像もつかないようなアグレッシブな姿勢が新鮮です
そんな強かな面を全面に押し出しつつも初期の頃のような優しい面もしっかりと発揮しており、その豊かな表情がとても魅力的に映りました
圧巻のヒキ
最後の一行の魅力に慄きました
めちゃくちゃかっこいいヒキです
秋玻視点になり、なにやら不穏な雰囲気をただよわせはじめたかと思ったらその不安が現実のものに
「あ~そういう展開?やめてよ~・・・」
と思ったところで最後の一文で
「おおー?!!!」となりました
2巻のときよりも衝撃的だったかもしれません
不安と期待をほぼ同時にこちらに与えてくる見事なヒキでした
今回は春珂が大きな存在感を発揮していたのと対照的に秋玻は一歩引き気味でしたが、次巻は春珂と秋玻が同じ土俵に上がった状態でのやり取りが見られそうです
楽しみです!
三角の距離は限りないゼロ 2 感想
GWが終わってしまう・・・りゃおです
『三角の距離は限りないゼロ 2』の感想です
あらすじ
一人の中にいる二人の少女、「秋玻」と「春珂」。二重人格の彼女たちと触れ合ううち、僕は秋玻と恋人に、春珂と親友になった。
そんな幸福にどこか浮かれていたある日、僕らは友人の須藤伊津佳から相談を受ける。告白をされたいう相談――その相手は、同じく友人の広尾修司。それを知った僕らは、二人の仲を取り持つために奔走し始め……けれど、そのとき僕は、まだ気づいていなかった。その出来事が僕らの不確かな関係を、秋玻と春珂を大きく、変えることに。
――僕と彼女と彼女が紡ぐ、不思議な三角関係恋物語は、続く。
感想
秋玻
前巻はどちらかというと春珂とのやり取りがメインで進行していましたが、今回は秋玻がメインです
開幕から秋玻がデレデレです
見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいです(笑)
中盤でも矢野がたじたじなレベルで攻勢に出ています
秋玻自身もめちゃくちゃ恥ずかしそうにしながら攻めているのが可愛らしいですね
1巻のクールっぷりはどこへ(笑)
矢野くんにはすでに自分の弱い面を見せているからこそ、必要以上にクールに取り繕うことをせずありのままに近い自分を見せいているのかもしれません
春珂
秋玻とは対照的に今回は前回に比べておとなしめな春珂です
その代わり、絵日記の中で彼女の考えていることが分かるようになっています
1巻では秋玻サイドで使用されてた演出ですね
いつかそう遠くない未来に消えてしまうということ自体は受け入れてはいるものの、それまで自分がどうすべきかについての迷いが見えます
秋玻や矢野くんの望みにより「春珂のやりたいこと」をやろうとはしていますが、いざ自由を得てもそれがどこまで許される「自由」なのか
それがいまいち図り切れずにモヤモヤとしているようです
主人公たちとの会話ではなく絵日記という演出であるがゆえに別のだれが介入できない分、そこはかとなく不穏な空気が出るのはドキドキしていいですね
後半に行くにつれて春珂特有の女子女子した文章の雰囲気に変化が見られるのもより不安を煽ってきます
そして春珂の大攻勢
大暴走、大爆発と言っていいです
読んでて圧倒される勢いでした
抑えられない気持ちの爆発に身を任せた春珂らしい無邪気さかと思いきや、最後の最後に1巻で垣間見えていたあの打算的な強かさがすっと現れ、ゾクッとするような恐怖を覚えて鳥肌が立ちました
今思うと秋玻の構成は春珂の気持ちに気づいていたが故の焦りだったのかもしれません
突然のことすぎて矢野が全く反応できていません(笑)
こんなヒキかたされたら次巻が気になりすぎます
生々しさ
『ヴァギナ・デンタタ』ってラノベで使うタイトルかよって動揺してしまいました
ラノベにしては珍しく「性欲」についてのストレートな言及、それも嬉し恥ずかしというようなものではなく、生々しいリアルなもの
まさに青春というような甘酸っぱい面だけでない、ドロドロと煮えたぎるようなある種暴力的な面について触れているのは初めて見ました
矢野くんがビビッてしまっています
この巻ではまだ矢野くんが答えを出すに至れていませんが、あとがきを見る限りこの件については次巻でさらに踏み込んでいくようなので、矢野くんがどんな行動をするのかが楽しみです
前略、殺し屋カフェで働くことになりました。 感想
ラノベざんまいなGWを満喫しています、りゃおです
『前略、殺し屋カフェで働くことになりました。』の感想です
あらすじ
そこは、かわいい殺し屋たちが集う喫茶店。
夜の廃劇場。
最近越してきたばかりの街を探索しようとしていた池也迅太は、そこにいた。
そして、目の前でなにやら不穏に倒れている男をみて、そこで記憶はブラックアウト。
目が覚めると、何やらかわいい女の子たちが話しているのが聞こえてきた。「やっぱり殺すしかないと思うの」
「でも、遺体の処理だってお金がかかりますし……」あきらかに危険な会話。漂っているコーヒーの香りが不釣り合いだ。
迅太はなんとか命乞いをしようと手を尽くし、処理代を稼ぐ代わりに働かせてくれと頼んだ結果、晴れて殺し屋たちが営む喫茶店のウェイターになってしまう。店を訪れる明らかに怪しい客たち。
これまでの常識の通じない少女たち。それでも、これまでとはガラリと代わってしまった環境に、迅太は次第に馴染んでいく。そして、命の猶予は刻一刻と――。
だが、その殺し屋稼業の正体は……?
クセだらけの少女たちと、ただの普通の少年が、不思議な喫茶店で社会の闇に触れるとき物語は少しおかしな方向に動き出す。
殺し屋喫茶・エピタフ開店ですっ!
感想
なかなかに痛快な作品でした
平凡な高校生になるはずだった主人公の日常が突如として非凡なものになっていく
しかも一週間後に殺されるという期限付きの中で迅太が裏の仕事に巻き込まれていく物語です
この迅太がただの男子高校生かと思いきや、意外な度胸と機転の良さでギリギリのところでうまく回していく展開がおもしろいです
殺し屋の仕事現場に踏み込んでしまい、あわや殺されるというところで「自分の死体処理代を自分で負担する」というぶっ飛んだ提案により一週間の猶予を得るなんてすごい発想ですね
今までの日常とは異なる人々に翻弄されつつも、ここぞと言うところでしっかりキメる姿がかっこいいです
迅太が料理をするシーンがやたら結構詳しく描写されており、普通においしそうです(笑)
エピタフで働く少女たちの胃袋をがっちり掴んでいます
ただ迅太の思考の軸についてあまり説明がなく、彼の魅力である度胸・機転・粘り強さがどこから来るものなのかがイマイチ分からないなという印象を受けました
彼はこんな信条を持っているとか、過去にこんなできごとがあったなどの描写があれば、彼の武器となる長所に説得力が増し、より共感が持てる主人公になると思います
エピタフのメンバーである鉄火たちも個性(というかクセ?)が強いキャラになっています
紙魚子もなにやら過去があるようなので、続巻でそこらへんが言及されていくのが楽しみです
気になったのが、なぜかメインヒロインである鉄火が少し影が薄い感が否めない点です
重要な点ではしっかり登場しているのですが・・・
迅太といっしょにいる時間の長さだと紙魚子が、アクションシーンの共闘では春姫が活躍するなど登場頻度やインパクトの強さで他のキャラの影に隠れてしまっているのかもしれません
まあ今回は迅太がエピタフ内でしか行動できないという制限があるため、紙魚子との絡みの方が多くなるのは仕方ないかもしれませんね
次巻で鉄火がもっと相棒ムーブを取ってくれるのを期待したいです
ストーリーは最初から予想外の展開を見せるなど、飽きさせないものになっており面白いです
なのでキャラクター、特に主人公の迅太の内面をもっと深掘りしてくれるとよりキャラクターの魅力溢れる作品になるかなと思いました。
もうすぐ2巻が発売のようなので、楽しみです
路地裏に怪物はもういない 感想
どうも、りゃおです
平成終わってすでに3日目ですが、「平成最後を締めくくる新伝奇」こと『路地裏に怪物はもういない』の感想です
あらすじ
平成最後の夏、最後の幻想がはじまる。
一つの時代が終わろうとしている。
高度に発達した文明社会は路地裏の暗闇さえも駆逐し、この世界に幻想の居場所はなくなった。かつて人々が怖れた怪異は、誰しもがネットで正体不明を暴けるものとなった。
そんな幻想の余地がなくなった現代社会で、十代の少年少女を中心に不可思議な現象が起きる。
――乖異。
己が妄執こそが真の現実だと主張する、突如顕れた新たな病魔。現実から乖離し、現実とは異なる理で世界をねじ曲げる現象。乖異によって引き起こされるは、「死者のいない」猟奇事件。導かれるように集ったのは、過去に囚われた三人。
絶えた怪異を殺す少女・神座椿姫。
空想を終わらせる男・左右流。
そして、世界に残された最後の幻想である少年・夏野幽。
一連の事件に「真祖の吸血鬼」の存在を見いだした彼らは、それぞれの理由を胸に乖異とかかわっていくことになる……。
終わる平成。最後の夏。最後の幻想。
旧時代と新時代の狭間に問う、新感覚伝奇小説がここに。
感想
曖昧で申し訳ないのですが、「雰囲気が好き」という作品です
言葉選びのセンスが良く、各章のタイトルも含めてとてもオシャレな雰囲気に仕上がっています
『ここに〇〇が完全に成る。』というお決まりの文句も、「キタキタ!」とこちらのテンションを上げてくれていいですね
物語の内容自体も、単純な怪物によるホラーではなく登場人物の内面に焦点を当てた推理ものに近い雰囲気も混ぜ込まれています
主人公の幽がなかなかにいい性格をしています
主人公としてはやや珍しく、遠慮は一切せずにガンガン相手の懐に踏み込むような少しずれた性格です
空気が読めないのではなく、読む気がさらさらないというのが質が悪い(笑)
登場人物どころか読者すら困惑させるレベルの無遠慮さながら、しかし相手のいいところを見つけてすぐにその相手を好きになる姿は不思議な魅力があります
圧倒的な強さを誇る相棒・椿姫ですが、頼もしい味方というよりも「椿姫の”力”によって解決することになったら失敗」というリミッターのような役割を果たしています
この椿姫を抑えつつどう乖異を解決するか
その難題に臨む幽の姿が読んでいてとても面白いです
乖異事件に関わってくる、過去あるいは現在になんらかの受け入れがたいものを抱えた少女たち
やや奇妙な性格の主人公よりもこの少女たちの方がいくらか共感しやすいです
自身に降りかかった現実を受け入れられず、強すぎる妄執で現実を捻じ曲げてしまうという点も、現実に絶望して生きるのを諦めるのではなく、現実を捻じ曲げてでも自分を守ろうとする姿にはネガティブさだけでなく「生きよう」というポジティブさも感じられます
それぞれ現実らしい厳しさを抱えながらも最終的には前を向いて歩きだす
そんな優しさのあるものになっています
と思うじゃん?
しっかりホラーしてました
最終章入ってから一気にきましたね
それまでは予想外な展開はなく順当に進んできたと思われていたのに、最後にこれでもかと予想外な展開のラッシュです
それまで散りばめられてきた伏線の回収も鮮やかで、思わず「おおう」と唸ってしまいました
本当に見事です
最終章は他の章とかなり毛色が異なり、下手すれば鬱々としかねないレベルです
三人称視点での文章でありながら、幽の受け入れがたい事実に対する動揺が地の文にまで反映されているのが臨場感があっていいです
それほどシビアでモヤッとし始める展開ですが、あるキャラクターのブレることのない”有り様”がとても気高く、ここにスカッとしたものを感じました
このキャラクターに影響を受け、自分がなんのために存在しているのかを探していた主人公が答えを見つけるシーン
やっぱりこういうシーンは熱くてたまらないですよね
やや静かで淡々としていながらもしっかりと熱量を持ち惹き込まれるクライマックスに仕上がっています
優しくて、でも厳しくて、だからこそ気高い
そんな印象を受けた作品でした
こういう雰囲気の作品は結構好みです
似た雰囲気で「ふあゆ」という作品を過去に出しているようですね
ちょっと気になってきたので、読んでみようと思います
錆喰いビスコ 感想
令和になって初の記事です、りゃおです
『錆喰いビスコ』の感想です
『このライトノベルがすごい!2019』で見事1位に輝いた作品ですね
前から読もう読もうと思っていたのですがついに平和が終わってしまっていました
- 作者: 瘤久保慎司,mocha
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2018/04/09
- メディア: Kindle版
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あらすじ
すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる《錆び風》の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。
彼は、師匠を救うための霊薬キノコ《錆喰い》を求め旅をしていた。
美貌の少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出すビスコ。
行く手に広がる埼玉鉄砂漠、文明を滅ぼした防衛兵器の遺構にできた街、大蛸の巣くう地下鉄の廃線――。
過酷な道中で次々に迫る脅威を、ミロの知恵の閃きと、ビスコ必中のキノコ矢が貫く! しかし、その先には邪悪な県知事の奸計が――。
愛する人を救うため、強弓が撃ち抜く冒険ファンタジー!
感想
まるでアニメ映画のよう
読んでいる途中で気づいたのが、この作品、ものすごい勢いで脳内で映像が再生されます
なんだかもう脳内シアターでアニメ映画が上映されているがごとくキャラクターがガンガン動きます
赤岸Kさんのキャラクターやmochaさんの世界観のイラストにより基本イメージがしっかりしているというのはもちろんあります
そのうえでさらに、しっかりと練られた設定や登場人物それぞれしっかりと個性があり活き活きしていること
加えて戦闘シーンではスピード感のある描写と、適度に差込まれる擬音語により臨場感溢れるものになっていること
この2点により「こんな感じの景色かな?」「このキャラならこんな動きをしそうだ」とシーンの妄想が捗るのだと思います
特に登場人物が素晴らしく活き活きしています
メインの登場人物は6人(+1匹)ですが、さきほども言った通り、それぞれキャラがしっかりと立っています
キャラそれぞれの色々な”愛”のあり方がしっかりと反映されているのがいいですね
ただ意外にも、作中で特に各キャラの背景を深く掘り下げたりはしていません
チラリと過去の話をする程度です
それでも彼らの言動・行動が全てそれぞれのイメージに即したものに一貫しているため、とくに深い説明がなくとも「こいつはこういうキャラなんだな」という意識で読み進めることができました
基本的に振る舞いが一貫しているため、序盤と終盤の間に何かあって意識に変化があったときに違いがはっきりと分かるのがいいです
ミロなんかは作中で精神的にも技術的にもどんどん成長していくので、序盤と終盤で驚くほどの違いが見れます
熱い展開の欲張りセット
成長、援軍、復活、覚醒、連携などゲームや少年漫画の熱い展開がこれまでもかと詰め込まれています
それでいて話が散らばるわけでもなく、それぞれがうまく一つのゴールにまとめあげられているため、クライマックスの大盛り上がりに向けて駆け抜けていく感じが爽快です
終盤はあんまりの欲張り具合に、「え、まだあんの?!」となりましたが、それでも一番の見せ場の盛り上がりが他のシーンとしっかり差別化されているため「結局どういう話だったっけ?」とならずに強烈な印象を植えつけてくれます
しっかり動き、しっかり熱い展開を抑えている、子供から大人まで幅広く楽しめる作品だと思います
さて、もたもたしている間にもう3巻まで出てしまっている・・・
結構一冊一冊が分厚いので気合い入れて読み進めなければ
これ錆び風によって日本の文明一回崩壊してますけど、海外はどうなんですかね?
海外まで被害およんじゃってるのかな?
三角の距離は限りないゼロ 感想
意図せず恋愛もの一辺倒、りゃおです
今回は『三角の距離は限りないゼロ』の感想です
二重人格 × 三角関係というテーマを高いレベルでまとめた素晴らしい作品でした
あらすじ
一人なのに「二人」な君と誰でもない僕の、トライアングルラブストーリー。
人前でどうしても「偽りの自分」を演じてしまう僕。そんな僕が恋に落ちた相手は、どんなときも自分を貫く物静かな転校生、水瀬秋玻だった。
けれど、彼女の中にはもう一人―優しくて、どこか抜けた少女、水瀬春珂がいた。
「一人」の中にいる「二人」…多重人格の「秋玻」と「春珂」。
僕は春珂が秋玻を演じる学校生活がうまく行くように手を貸す代わりに、秋玻への恋を応援してもらうようになる。
そうして始まった僕と「彼女たち」の不思議で歪な三角関係は、けれど僕が彼女たちの秘密を知るにつれて、奇妙にねじれていき―不確かな僕らの距離はどこまでも限りなく、ゼロに近づいていく。
これは僕と彼女と彼女が紡ぐ、三角関係恋物語。
感想
文章と展開の魅力
詩的な風景描写や簡潔でスマートな文章により、心地よいテンポで読むことができます
冒頭の水瀬秋玻との出会いからクライマックスまでの間のストーリーの組み立てに隙がなく、気をそらされることなく最後まで読み切ることができます
それによりクライマックスのインパクトが非常に大きく、とても気持ちの良い読後感でした
二重人格 × 三角関係というテーマとしては、あっと驚かされるような展開はなく割と予想の範囲内に収まったものです
しかし、それにも関わらず読んだ後の気持ち良さはやはりキャラクターの、特に秋玻と春珂の魅力によるものだと思います
キャラクターの魅力
主人公である矢野くんは、不誠実さと自分を偽ることに嫌気を感じながらも「キャラを演じる」ことをやめられないというコンプレックスを持っています
この等身大の弱さがとても共感しやすく、主人公の近くで読み進めることができます
また、春珂(と秋玻)への協力の持ちかけも、秋玻とお近づきになりたいという打算も含まれている部分がむしろ好ましいですね
恋愛ものの主人公としては(主人公らしく?)行動力は弱いものの、最後はしっかりと頑張ってくれます
そして秋玻と春珂について
堂々として自信ありげなクール系の秋玻
弱気ながらも明るく可愛らしい春珂
この全く逆な2つの人格がストーリーの魅力ーーーーーではないんです
読み進めれば読み進めるほど見えてくる、2つの人格それぞれが持つ、さらなる二面
賢しく、無邪気で
弱々しく、強かで
お人好しだけど、少し卑怯で
そんな矛盾したような様々な面を秋玻と春珂の両方が持っています
二重人格キャラでありながら、全く逆の性格”ではない”ところが、この作品の魅力なんだと思います
”夏”と”冬”ではなく、あくまで”春”と”秋”なんです
この間で揺れる感情が読み取れるからこそ、引き込まれるような切なく甘酸っぱいストーリーになっているのだと感じました
登場人物を極力少なくし、この3人の心情の深掘りに絞っていることでのめり込むようにキャラクターの心の動きに注目できる点は素晴らしいです
2回読む
一度読み切って、また最初から丁寧に読み直す
これをやると本当に切なさが倍増します
同じ作品を読んでいるはずなのに別の作品を読んでいるかのような新たな気づきがたくさん出てきます
どちらかというと春珂寄りの目線から見えていたものが、今度は秋玻寄りの目線で見ることができ、この切なさときたら
ああ、もう
とにかく一冊で2回楽しめる、いや2回読むべき作品です
さて、すでに2巻3巻が出ているので早速読み進めるとします
冒頭の手紙がなかなかに不穏な気配を放っているので少し怖いですが、楽しみです
(ところで、秋玻が”身をよじり”何かに気づいたって、卑猥な想像しかできないんですけど、そういうことなんですかね?)