備忘録。

経済・政治・ビジネスに纏わる備忘録。

①人類未踏の高齢化社会に際して

日本の論点宗教学者 山折哲雄氏 発言メモ】

 

日本人の寿命に異変が起き始めている。

医療技術の進歩によって寿命が延び、平均寿命も80歳近くに及んでいる。

一方、少子高齢化や人口減少の危機が叫ばれ、その危機が指摘され始めるようになった。

その結果、高齢者たちの1人暮らしが増大し、老人たちの孤独死や自殺が目立つ。

 

しかしこの老人に視点を当ててみると、生の坂を上り続ける長寿老人と、死の坂を転がり落ちる衰弱老人の格差が存在する。

このような高齢格差社会の根底にあるもの、それが生と死を巡る意識の変化である。

 

思い返せば我々の社会は平均寿命50歳の安定軌道に乗っていた。

だがそれも戦後の30~40年の間に大きく変化し平均寿命80歳の社会が誕生した。

 

ここで強調すべきは平均寿命50年時代に浸透していた人生モデルが「死生観」というものであること。

「死生観」とは生と死の一体視であり、死を引き受けることが生きることであり、生きると言うことはすなわち死を覚悟しているということだった。

 

ところがこの伝統的な感覚があっという間に訪れた平均寿命80年時代のために揺らぎ始めている。

そのため生と死の間に「老」と「病」という困難な課題が顕在化したのだ。

またそれらが死そのものへの問題性を遠くへ押しやり、医療・介護・年金を巡る問題を引き起こし、今日の経済や政治が対処できない状況を生み出している。

 

私たちはこのあたりでもう一度かつての暮らしにあった、死生観という人生モデルを思い起こし、これからの人生を考えすべきではないか。