修士論文の練習のために論文を書いた話
私はM1の夏休みに、学内の懸賞論文に応募するため、論文の執筆をしました。
理由は3つ。
・修士論文の練習のため
・前期のレポートについて「もう少し量があれば論文になり得る」と好評価をいただいたこと
・入賞すれば賞金がもらえる
テーマは、院試の研究計画書のテーマをそのまま使いました。
前期が終わって8月初旬、研究計画書を提出したときの文献では到底不足しているので、参考文献集めからのスタートです。
提出期限は9月中旬、与えられた時間は1ヶ月強。
懸賞論文なので教授のアドバイスは不可(と言われた)。入賞しないと恥ずかしいので、同期にも内緒で孤独にコツコツと執筆しました。
懸賞論文の文字制限は20,000字。
研究計画書があったので、構成にそれほど悩まなくて済み、ギリギリで提出。
結果は、3席入賞。賞金20,000円GETし、法学部の教授陣と会食をし、学内にも「入賞者」として掲示していただき、それなりにネタになりました。
この経験で、修士論文の執筆にどのくらいの時間がかかるかなど、およその予想をすることができました。そして、その予想はだいたい合っていました。
修士論文を書くのに費やす時間は人それぞれ。3ヶ月で書く人もいれば、半年かかる人もいると思います。
もし、チャンスがあるなら、M1のときに、こんな経験も悪くありません。
人の経験談より、自分の経験値。
修士論文ー私の失敗談
私が修士論文を本格的に書き始めたのは、おそらくM2(修士2年)のこの時期(遅っ)。
そして、ひと月後くらいに「失敗した〜」って思ったことを書きたいと思います。
修士論文を書くには、たくさんの判例、たくさんの学説、たくさんの判例批評や先行論文を読みます。
私の修士論文は短めの45,000字程度。これは、指導教授に「そんなに長く書かないで。読むの大変だから。」と言われたからなのです(ほんとの話笑)。
私のような短め論文でも参考文献は、書籍30冊、論文31本、批評32本、参考判例(裁判例)25例、と、そこそこの量がありました。
この文献は、論文の末尾に「参考文献」として掲載するわけですが、論文を集める段階で「掲載形式に則って管理」しておけばよかったととても後悔しました。
その理由は、
・自分の集めた文献が一目瞭然
・コピーの重複を防ぐ
・その一覧をコピペすれば「参考文献」になる←最重要
まず、常に「自分が何を持っていて、何を持っていないか」を明確にしておく必要があります。参考文献は、資料を読めば読むほど、芋づる式に増えていくので、きちんと管理しておくことが重要です。私は最初の頃、その管理をおろそかにしていた(というか、自分の記憶力を過信していた)ので、コピーの重複や、逆に持っていると思っていたものを持っていなかったというような勘違いをして、時間をロスしました。
そのようなミスを防ぐためにも、集めた文献の管理はとても重要で、どうせ管理するなら、そのまま論文末尾に掲載できる方法で管理しておいた方が後で楽です、ってことです。
この際の留意点は、「参考文献」の形式は、一応一般的なものがあるものの、大学によって多少違いがあることもある、ということです。なので、自分の大学がどの形式なのかを最初に確認しておかないと、後で全部書き直しということになります。確認方法は、教授に聞くか、教授が(その大学で)書いた論文を確認するのが一番いいでしょう。
これと同じことが、脚注でも言えます。
参考文献を引用した場合は、脚注を入れますが、この脚注も大学ルールがあると思いますので、最初に確認しておかないと、後で痛い目をみます。後で直す時間なんてありませんので、最初から「完成形の脚注」を入れておくべきだと思います。
論文提出間際になってから、形式面を修正している時間なんてありません。時間ロスを防ぐためにも、形式は最初に確認することをお勧めします。あと、コピーをとる際に、奥付のコピーも忘れずに。
ご参考になれば。
修士論文のテーマ選び
大学院のメインテーマである修士論文。
テーマ選びに苦労する人、まったく苦労せずサクッと決める人、いろいろでした。
まず、みんながどのように決めていたかという話。
もちろん、最初は本人が希望するテーマを選び、担当教授に相談します。
弊学は、修士論文の初動が遅いので、私の在学中は2年になってから指導教授が決定しました。しかし、1年の時も、指導教授になる可能性のある教授や、名誉教授に相談することも可能。なので、早い人は1年のときに決めていたと思います。
ただし、弊学は色々と規制が入ります。まず、同期で同じテーマは絶対にダメ。12人しかいないので、被らないようにすることは可能ですが、これはもう早いもの順ですね。決めたら「これにする」と宣言してしまいます。そうすれば、後でもめることはないと思います。
次に、過去2〜3年の間に先輩が書いているテーマと丸かぶりは却下されたようです。ただし、先輩の論文の評価が悪い場合は「もっといい論文にすること」を条件に許可される場合もあったようですが笑。
次に、立法論は当然却下されます。あくまでも、解釈論で書くことですね。あとは、弊学は租税回避はあまり受け入れられませんでした。基礎もできてない修士生が壮大なテーマを選ぶなという意味だったようです。
これらの条件をクリアして、教授に相談し、OKなら晴れてテーマ決定の運びとなります。
税法研究を行なっている大学院ならどこにでもあると思いますが、弊学には「判例発表」をする講義があります。「租税判例百選」や教授が選んだ判例の中から、一つテーマを選び、それについて、概要、学説、類似判例、自分の意見などを発表し、教授に突っ込まれ、ズタズタにされるという恐ろしい講義です笑。
私は、1年間で次の5テーマの発表をしました。
・過少申告加算税における「正当な理由」(最判平成18年4月20日)
そして、「過少申告加算税における『正当な理由』」を修士論文のテーマに選びました。これが、1年の2月ころだったと思います。
この段階で、同期にサクッと宣言し、教授に仮OKをもらい、あとは資料収集と続きます。
私が入学時に教授に言われて印象に残っている言葉は、「とにかく、早くテーマを決めて、指導教授に相談と報告を怠らないこと。もっといえば、教授を巻き込むこと。早い段階から巻き込まれた教授は、その論文に愛着が沸くから、協力的になる。それを利用しない手はない。」ということでした。
私はこれに成功したと思います。
1年の段階から指導教授が決まっている方は、テーマ選びの段階から教授を巻き込みましょう笑。
ご参考になれば。
大門未知子の収入は事業所得か給与所得か
弊学は、ゼミ以外は全てレポート提出が単位取得の要件でした。
社会人がほとんどだったので、出席率で判断すると留年が多くなるという理由らしいです笑。よって、出席はそれほど厳しくなく、半分くらい出ていれば大丈夫だったと思います。
私は残業のない仕事をしており、かつ、健康だけには自信があるので、2年間で休んだのは2コマだけです。
前期講義は4月中旬〜7月中旬まで。7月初旬に課題の発表があり、7月下旬に提出する。
後期講義は9月中旬〜1月中旬まで。12月下旬〜1月初旬に課題の発表があり、1月下旬に提出する。
こんなサイクルだったと思います。つまり、1ヶ月くらいの間に、受けている講義の全てのレポートを書かなければなりません。弊学は、1年間に取得できる単位が24単位まで。1講義2単位構成なので、前期と後期で12講義。ゼミはレポートがないので、1年間で最大10講義分のレポートを書く計算になります。
課題は、先生によって様々で、頭をかかえた課題もあれば、結構サクッと終わってしまう課題もありました。分量的には平均、1200字×3〜5枚程/2単位、だったような気がします。そして、弊学は、課題の要件を満たしていて、かつ、期限に間に合えば、単位はもらえたと思います(レポートで落とされた同期は多分いない)。
具体的にどのような課題が与えられるのかというと、
「匿名組合の組合員Aがこの匿名組合の営業として行われた航空機リース事業に課する所得(または損失)について、所得税法上、その所得はなに所得として区分され課税されるべきか。」
「役員賞与の事前確定届出給与該当生の有無が問題となった事例」
「メンタルヘルスと企業の責任」
「恒久的施設についての一考察」
などでした。これを、学説と判例を交えながら、レポートにするという感じです。今考えると、結構大変そうですね笑。
そして、2年間の大学院生活の中で一番面白かった課題は、
「大門未知子の収入は事業所得か給与所得か」でした。
所得税の講義で課題が3つ与えられ「好きなものを選択」する形式で、そのうち1つがこれだったのですが、私はドラマをすべて見ていたので即決でした笑。
レポートの構成は、
1、はじめに
(1)所得の区分
(2)事業所得とは
(3)給与所得とは
2、事業所得として判断された事例(福岡地方裁判所昭和62年7月21日判決)
3、給与所得として判断された事例(東京地方裁判所平成24年9月21日判決)
4、小括
5、「ドクターX-外科医・大門未知子-」が東帝大学病院から得る収入は、給与所得か事業所得か
(1)事実の概要
(2)給与所得に該当する根拠
というような流れで、給与所得でレポートを作成しました。この場合、2と3は、大門未知子の収入を給与所得と判断する方向性で持っていきやすい判例なり裁判例なりを見つけることが重要なポイントだと思います。
一つ(2単位分)のレポートを書くだけでも、学説を調べ、自分の考えに有利な判例(裁判例)を探し、読んで、レポートにまとめる。なかなかの労力です。
しかし、この課題を一つ一つ丁寧にこなしていくことが、論文執筆に繋がると思います。
レポート一つ一つも大切に。
「大学院に行ってよかったよ」って話
私が弊学を選んだのは、以前にも書いたように「高校時代からの憧れの大学」だったから。
これが95%くらいです笑。
しかし、ちゃんとした理由ももちろんあります。
・免除申請に協力的なこと
・通学しやすい場所にあること
・学費が払えること
今期はコロナの影響で、弊学は前期も後期もリモート授業のようですが、来年はまた対面授業に戻る可能性もあります。当たり前ですが、通いやすい場所というのは、社会人にとってとても重要だと思います。絶対に、職場と家から通いやすい場所を選ぶべきだと思います。
次は学費ですね。弊学は入学金20万円を入れて、2年間で170万円ほどでした。東京の私立大学なら、どこもこのくらいなのではないでしょうか。
ただし、会計大学院などの専門大学院は学費が高いです。そして、履修単位数も多いです。よって、相当な覚悟が必要だと思いますが、本気で勉強したいなら、環境は整っていると思います。
私は大学院に行くと決めたら、そこからは早かったですが、それまで大学院進学を考えもしなかった理由が2つあります。
・入学するための勉強をしたくなかったこと
・税理士受験科目に関係ない勉強をしたくなかったこと
・そこそこ学費が高いこと
はっきり言って勉強したくなかっただけですが、これは大学院に入って考えが大きく変わりました。弊学は、大学の教授の講義と、実務家(弁護士や税理士)の非常勤講師の講義がありますが、どの講義もとても充実していました。同期のみんなも言っていたことですが、大学院はとてもコスパがいいです。一応研究室も与えてもらえ、恵まれた環境で、素晴らしい先生方の充実した講義を受け、かつ税法2科目免除ももらえる夢のような場所です笑。
そして、運がよければ、とてもいい同期に出会うことができます。資格の予備校と違って同期はライバルではないですから、純粋に「同じ目標がある同士」であり「協力しあえる仲間」だと思います。私は、同期に恵まれて、とても楽しい大学院生活を送ることができしたし、今後も大切にしていきたいと思っています。しかし、こればかりは「運」だとは思いますが。
大学院にいってよかったこと
・優秀な仲間との出会いがあったこと(今でも続いている)
・素晴らしい先生方との出会いがあったこと(一部、今でも続いている)
・法学の勉強の仕方、判例の読み方、論文の書き方を習得できたこと
・学費170万円なんて安いよ!と言えるくらい講義等が充実していたこと
・聞こえのいい最終学歴になったこと
・大学院に行っているということで、初対面の人から興味を持ってもらえたこと
これらは資格の予備校では得られない経験だと思います。もちろん、官報合格は素晴らしいと思いますし、アンチ院免の方がいることも十分承知しています。
でも、大学院には大学院の良さがあります。
大学院進学を考えている方のご参考になれば。
出願から面接までで感じたこと
書類選考も通過し、無事に面接に呼んでいただけましたが、書類選考も正直ドキドキでした。
理由は、
・研究計画書に自信がない
・短大と学部の成績にはもっと自信がない
研究計画書に自信がないのは、まぁ、単純に自分の能力や知識に自信がないからですね。指導を受けたからと言って、自分の研究計画書は大学院入試に通用するものなのか、論点が大きくずれていたりしないだろうか、周りはもっと優秀なのではないか、などなど、色々な不安が押し寄せてきました。
過去の成績に自信がないのは、前にも書いた通り「とりあえず大卒」だったので、成績は最悪、学歴も微妙。そんなんで大丈夫なのか、かなり心配でした。
しかし、後から考えてもみれば、そもそも弊学は「大卒」が受験の要件になっていないので、大学の成績を理由に書類選考で落ちることはないでしょう。社会人枠の院試には、過去の成績はそれほど関係ないのではないか、と今は思っています。
そして晴れて呼ばれた面接。聞かれたことは、
・研究計画書について
・論文執筆以外に大学院でやってみたいこと
正直な話、面接では、研究計画書の内容について聞かれたことに自分の言葉で答えられれば大丈夫だと思います。そして、相手は大学院の教授。ど素人の私たちが考えてもいなかった質問も飛んでくる思います。そんなときは、わからないことは「わかりません」でいいと思います。
よく言われている「圧迫面接」の噂ですが、それは面接官によるのかと思います。弊学も学長の面接はかなりの圧迫だったようですが、私は幸いにも、教授の面接で全く圧迫されませんでした。
そして気になる倍率。弊学は倍率の公表をしていません。なので、あくまでも「聞いた話」と「私の想像」ですが、
・書類選考で半分は落とされる(聞いた話)
・面接でも半分以上は落とされる(私の想像)
くらいの倍率はあると思います。
院試は秋と冬の2回で、私は冬に受けたのですが、面接の時間等からして20〜30人は呼ばれていたと思います。そのうち、合格者は8名でした(冬だけ)。
「院免の大学院はどこも定員割れだから誰でも受かる」という人もいますが、それはないと思います。
ご参考になれば。
研究計画書のテーマ選び
研究計画書の指導をプロに頼むのはいいけれど、当然のことながら、テーマ選びから資料収集までは自分でやらなければなりません。
テーマを選ぶ入り口はおそらく3つ。
・法律の条文から入る
・判例から入る
・指導を受けたい教授の研究テーマを参考にする
「法律の条文から入る」は、税理士試験の税法をやっている方や、実務で税法に携わるっている方は、疑問に思う条文や、好きな条文(?)があると思います。その条文についての論文や関連判例を題材に研究計画書を作成すればいいと思います。
その条文に関連する著名な判例を探す方法は、ググってもいいと思いますし、王道はやはりこの「租税法判例六法」でしょう。
「租税法判例六法」は、条文を引けば、その条文に関連した重要判例が載っています。そこから目星をつけて、実際に判例を読んでみる、というのがいいのではないでしょうか。
ちなみに、この「租税法判例六法」は、法学研究科など税法を主に研究する大学院でしたら、絶対に使うので買っておいて損はないと思います。
「判例から入る」なら、最高裁のHPで租税判例を読むか、「租税判例百選」から選ぶのがいいと思います。
この判例集も、税法大学院なら必須アイテムだと思うので、買っておいてもいいかと思います。
判例の全文は、著名なものなら最高裁判所のHPに全文掲載されていますし、大きい図書館(国会図書館、出身大学の図書館)などで判例集をコピーする、東京近郊の方なら「租税資料館」などに赴いて、LEX/DBなどにアクセスするなどの方法が考えられると思います。
テーマが決まったら、資料集めですね。
研究テーマが決まったら、関連する学説、判例、判例批評を読み漁ります。ここで登場するのが、金子宏先生の「租税法」です。
金子先生の「租税法」には、学説、著名論文や判例批評の引用がされています。
自分の研究テーマについて、金子先生はどのように仰っているのか、反対学説はどのような考え方なのか、研究テーマの先行論文にはどのようなものがあるのか、その入り口に「租税法」はとてもいいと思います。
関連論文や判例批評をどこまで集めるかですが、修士論文を書くのなら答えは「すべて」ですが、研究計画書の段階ではそれほどたくさんはいらないんじゃないかと思います。私は、研究計画書の参考資料は10程度でした。
但し、受ける大学院の教授や卒業生の論文チェックは、絶対に忘れないように!笑
資料が揃ったら、執筆ですね。
・研究の目標と意義
・研究内容
・研究方法
などを書けばいいと思います。これは、前回書いたように、自力で書けるなら自力で、専門家の力をお借りするならお借りして、どちらでもいいと思います。
私は、専門家の力をお借りして、2ヶ月かけて研究計画書を作成しました。提出時の満足度は80%くらいです(時間が足りなかった)。
優秀な同期は、研究計画書の資料集めから執筆まで1ヶ月でできたと言っていました。私のような非優秀な人間は、2ヶ月でも満足できるものができませんでした。別の大学院を受けた私の元上司は、1週間程度で研究計画書を書き上げていました(絶対に落ちると思ったけど、受かっていました笑)。
正直な話、受ける大学によって研究計画書に求められるレベルは違うと思います。
あくまでもご参考程度に。