精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

コロナウイルスに対してできること

長い間、ブログを放置していました。

この間もコンスタントに閲覧して頂いているようで頭が下がります。

 

今回はコロナウイルス予防について。

もう少し早くお伝えすべきでしたが、誰もが身近に迫っていると感じているこのタイミングでも有意義かと思います。

手洗いうがい、人混みを避けるなどは当然ですが、他にも感染を避けるためにできる事はないかと考えている方には、是非参考にして頂ければと思います。

 

 

感染や症状の緩和には、体の抗酸化力および免疫力を可能な限り高めておくことが大切です。つまり、ウイルスから攻撃を受けた時、最も重要になるのは個々の体内環境の質です。

国際オーソモレキュラー医学会、オーソモレキュラー医学会ではウイルス感染の予防や症状緩和のための栄養療法を推奨し、以下の提言を出しています。


※以下の安価なサプリメントの摂取は、大人に対する推奨量です。子どもに対しては体重によって服用量を調整してください。


✳︎ビタミンC:3,000mg /日 (またはそれ以上。分けて服用すること。)
✳︎ビタミンD3:2,000IU /日 (1日5,000IUで開始、2週間後から2,000IUに減量。5,000IUは125μg、2,000IUは50μgに相当)
✳︎マグネシウム:400 mg /日(クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウムマグネシウムキレート、または塩化マグネシウムとして)
✳︎亜鉛:20 mg/日
✳︎セレン:100 μg /日

 

ビタミンDマグネシウム亜鉛、セレンをビタミンCと同時に摂取することで、ウイルスに対する免疫機能を強化することが示されています。

コロナ増殖に対する亜鉛の有効性も様々な所で発表されています。野球選手の発症から注目された味覚障害や嗅覚障害などの症状が、亜鉛不足の症状と一致しているのも気になるところです。

敗血症の世界的権威であるPaul E Marik博士のCOVID19プロトコルでも、亜鉛はウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害すると述べられています。

 

これ以外にクロロキンやケセルチンなども有効と考えられますが、ひとまずは、オーソモレキュラー学会の指針に沿って、上記の対策を始めてみてはいかがでしょうか。

 

サプリメントはいずれもアイハーブで購入可能です。

この量であれば、副作用の心配はありません。それどころか、様々な不定愁訴の改善の可能性も十分にあります。

これが栄養療法を行う最大のメリットです。

 

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大阪マラソンへの道④ー完走へー

12月1日大阪マラソン当日。3か月間のトレーニングの集大成です。

 

前日は糖質中心で腹八分目の食事に抑え、マッサージをし、早く就寝しました。

当日は5時起床。

豆乳にMCTオイル、それから卵焼きと白ご飯の朝食を食べ、ランニングウェアの上に服を着て、会場に向かいました。

電車の中では、更にMCTオイルの補給、COQ10カルニチンナイアシンの補給も行い、アミノ酸ゼリーも飲みました。エネルギー不足だけは避けたかったので、こまめに摂取する事を心がけました。

 

第3ウエーブだったので、9時25分スタート、9時5分にスタート地点の閉鎖です。森ノ宮駅に8時過ぎに到着しました。ものすごい人でしたが、手荷物預けもしなかったため、スムーズにスタート地点に到着しました。

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天気は快晴です。待ち時間は非常に寒くなることを予想していましたが、手袋をして、前々日のEXPO2019のTOYOTAでもらったビニールをかぶっていると、十分耐えれる寒さでした。

 

9時25分スタート。非常に人が多く、身動きがとりにくい状況でしたが、走るにつれ徐々にばらけていきました。1km7分ちょっとのペースを守りながら走っていると、多くのランナーに追い越されていきます。まだ先は長いと、焦りそうになるのをぐっとこらえ、自分のペースを守り、走り続けました。沿道の応援やランナーの仮装などが非常に面白く、そちらに気を取られていると、5kmぐらいはあっという間です。造幣局を確認するのも忘れていました。

御堂筋のイチョウ並木を気持ちよく走り、道頓堀では記念撮影をする人が多数いるのを横目に調子よく走り続けました。難波から京セラ方向への折り返しの部分では、さすがに長いな〜と感じ、アミノ酸ゼリーを少しずつ飲みながら走りました。途中のエイドやトイレは多くの人でしたので、時々水分をとる程度で流していきました。

 

10km地点で左膝の痛みを感じ、徐々に強くなりました。これまで10kmでこんな痛みを感じたことがなかったので、何かがおかしいと感じました。

考えてみると、いつも前傾姿勢を意識して走っていたのが、沿道やランナーを見ていたため、上体が上向きになり、前傾が崩れ、かかと重心で走っていたようです。この痛みが続くと走り続けられなくなると思い、急遽背筋をのばして前傾姿勢で走りました。しばらく強い痛みでしたが、徐々に和らぎ、いつもの感覚に戻りました。一安心です。

 

なにわ筋の応援も賑やかでした。21km地点に差し掛かった時には、まだ体力は残っていました。ここからはこれまで経験のない未知の領域のため気を引き締めます。やや疲労もでてきて、ゼリーを補給する気持ちにもなれず、ひたすら走りました。

何とか耐えながら、上本町へ。そろそろエネルギー補給しないと後半が心配と思っていところで、29kmのまいどエイドに到着です。

まいどエイドは、大阪マラソン名物です。様々な補給食が並んでおり、人だかりができています。さくらもちや冷やしパイナップル、いなりずし、きゅうり、シュークリーム、たこやき、からあげなど。大根のおつけものが食べたい!と思い一目散にそちらへ。あまり人気がないようで他に比べると人も少なく、スムーズにもらえました。いなりずしもあったのでそれも一つ。そしてらっきょうも頂きました。お腹が痛くなるといけないので、食べすぎは禁物です。

 

少し元気をとり戻し、いよいよ30kmへ。

30kmの壁、足が動かなくなると聞いていたので、心して30km地点に挑みます。しかし、まだまだ大丈夫!という気持ちでした。このあたりでは歩いている人が多数いたので、その人たちの間をくぐり抜け、走り続けました。若干ペースは落ちていましたが、5km37分ぐらいで走り、たくさんの人を追い抜きました。四天王寺の辺りではお坊さんも沿道におられました。ブラマヨの小杉さんもこのあたりで追い抜きました。これだけの練習期間で、ここまで走れるのはやはり、栄養療法を熟知していたおかげだと確信していました。そして、この3か月を懐かしく思う余裕もありました。

しかし35kmを過ぎ、今里筋を登る中、ゴールを意識し始めた途端、1kmが非常に長く感じられらようになりました。35km走ってきたのに、ゴールまでが果てしなく遠く感じます。ここからは、体力ではなく、根性、気持ちだと言い聞かせ、耐えて耐えて走り続けました。エイドでコーラがあったので、力を振り絞って飲みましたが、この時点での炭酸はやや負担が大きかったです。

徐々に余裕がなくなっていきます。

 

最後の2kmでは、本当に辛くてなかなか前に進めません。こんなに長い2キロは経験した事がありません。足は大丈夫ですが、呼吸器の問題のようです。ここまで来ると呼吸機能がキーポイントのようです。両手が冷たくなり、体が限界にきてると感じました。後半ほとんどエネルギーを補給できなかったことも原因だったかもしれません。とにもかくにも、あと少し。最後まで歩かずに走り続けることを目標にしていたので、ここで止まるわけにはいきません。応援してくれている人を思い出しながら、体をひきずるように、だらだらと走り、フラフラながらも何とかゴールにたどりつきました。

結果、5時間11分での完走でした。

 

今回、初めてのフルマラソンにも関わらず、足がつることもなく、極端なエネルギー不足にもならずに、ほぼ同じペースで走れたのは、エネルギー産生に必要な栄養素をしっかりと摂取していたためと思います。やはり、知識は人を助けてくれます。

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沿道での家族の応援は非常に力になり、ランニング終了後の両親や友人からのメールは、何とも言えない感謝や感動をもたらしてくれました。

 

ラソン前日に、大切な友人からメールでマザーテレサの言葉を頂きました。

「神様は私たちに成功してほしいとは求めていません。挑戦することを望んでいるだけです」

ラソン中に何度もこの言葉を思い出しました。そのおかげか、ゴールすることではなく、今走り続けることに集中できたように思います。

大人になると知らず知らずのうちに、自分ができそうなこと、失敗しなさそうなことばかりを選んでいるのかもしれません。

今回の挑戦は、「自分には絶対に無理」というところからのスタートでした。

これを終えて思う事は、成功に固執しなければ、失敗を恐れなければ、挑戦できることはまだまだあるということです。

 

大阪マラソンチャレンジ、最高の経験でした。

 

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大阪マラソンへの道③-最後の1か月ー

 

ランニング初心者である私が、今年の9月からトレーニングを始めて、いよいよ本番の大阪マラソンまで残り3日となりました。

10月は走りこみ期間でしたが、11月は調整期間としました。

怪我や疲労に備えて、無理に走りこまない計画をたて、(私にとっての)長距離は10日に14km、24日に17km走っただけで、あとは5kmや10kmをちょこちょこと走りました。

昨日、最後の5kmランを終え、残りの3日は筋疲労が残らないように、ゆっくり過ごそうと思います。

11月の総走行距離は96kmでした。

9月以降の総走行距離は341kmです。一般的なランナーに比べると圧倒的な準備不足かもしれませんが、限られた時間で自分の納得のいくトレーニング、体調管理はできたと思っています。

 

練習を始める前は、「本当に走れるかな」「完走するなんて無理かもしれない」など、結果に不安を感じていました。そして自分で計画したトレーニングをやり終えて思う事は「精一杯やった、結果はどうだったとしても悔いはない」という気持ちです。結果ではなく、そこに至るまでの過程がとても重要に思えます。

 

私は医師になって以降も、専門医など様々な資格試験を受けてきましたが、同じことが感じてきました。勉強を始める前は、合格できるかという事にこだわりますが、勉強を始め、進めていくと、学んでいるというこの過程が重要であり、合格などの結果は後からついてくるものだからどうでも良い、と思えるようになります。

 

当日までは、肝臓や筋肉のグリコーゲンを増やすべく、食事はやや糖質を多めにします。消化の負担をかけないように、油ものは控えます。肝臓は乳酸をしっかりと分解してもらわないといけませんので、余計な仕事をさせてしまうアルコールも禁です。ビタミン、ミネラルに加え、COQ10カルニチンの摂取を続けます。

当日の朝は効率的なエネルギー産生を促すために、いつもより多めにMCTオイルを摂取しようと思います。ランニング中もこまめにアミノ酸をとります。

 

いよいよ明日はインデックス大阪でランナー受付です。

無事スタート地点に立てますように!

 

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考えすぎると健康を害する

考えすぎると健康を害する。

I think too much and then put myself in a bad mood.

先日漢方の講演会で、富山大学大学の渡り英俊先生、順天堂大学の栗原由美子のご講演を聞く事ができました。

そこで栗原先生が紹介されていた言葉です。

 

典型的なうつ病の方をみていると、過去を悔やみ、将来を憂い、常に考えすぎている方が多いように思います。

 

漢方治療では、こういった人には「帰脾湯」がよいそうです。

帰脾湯を飲みだして、しばらくすると「気楽に思えるようになった」「考え込むことが少なくなった」と効果を実感する方がおられるようです。

 

帰脾湯というおは気血双補剤の一つで、漢方でいうところの「気」と「血」を補ってくれる薬剤です。人参や黄耆、甘草、当帰、生姜、大棗などを含みます。

帰脾湯は古来より健忘に用いられてきたという歴史があります。現在マウスレベルで記憶障害や脳の神経の変性が改善されるなどの研究結果がでつつあります。

一般的に帰脾湯の適応としては、虚証で貧血や不安、不眠がある人ですが、認知症の人に用いると認知機能とこれらの症状があわせて改善される可能性があります。

依存性がない、ふらつきや転倒がないなどのメリットもあり、高齢者にも使いやすいですね。

うつ病の患者さん、特に初老期の方は「頭が働かない」「思い出せない」「覚えられない」と言い、「認知症に違いない」と訴える方が非常に多くみられます。

うつ病による思考力の低下や不安などから、こういった訴えになると考えられますが、

こういった方にも帰脾湯というのは一役かってくれそうです。

 

その他、不定愁訴(Medeically Unexplained Synptoms)に対して効果のある漢方として、半夏厚朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯柴胡桂枝湯乾姜湯、十全大補湯、五苓散、当帰芍薬散、八味地黄丸、牛車腎気丸などを紹介されていました。これらは精神科医であれば上手く使えるようになりたい漢方薬です。

 

ラソンに向けて準備をしてる私としては、この中で五苓散の熱中症予防という効果に注目しました。

五苓散は利水剤であり、浮腫みなどの水毒の治療として使われます。利尿薬と違い

体内の水分のバランスを整えます。日常的であれば、二日酔いの予防や、気圧の変化による頭痛に使うことがあります。最近では慢性硬膜下血腫の治療にも用いられるようになっています。

そして最近になって五苓散は細胞膜のアクアポリンという、水が唯一通れるチャネルに作用することがわかってきました。科学が漢方に追い付いてきた例の一つですね。

前置きが長くなりましたが、水を調整するということで高齢者の熱中症の予防にもよとのことです。

ということはランニング前に飲むと熱中症や脱水予防になるのではないでしょうか。

ランニング前には足がつるのを予防するために芍薬甘草湯、脱水予防に五苓散、この二つで決まり!という日がくるかもしれません。

 

栗原先生は「最大多数に有効な治療(ガイドライン)ではなくその人に有効な治療を行う」とおっしゃっていました。私も座右の銘にしたいほど、共感できる言葉でした。
現在の医学はエビデンス偏重主義ですが、漢方治療や栄養療法では個体差、つまりその人自身がどういう遺伝的体質で、何が不足もしくは過剰となっている状態で、症状が出ているのかを考えて治療を行います。そこには無作為に選んだ患者さんの中の、大半に効果があった治療を行うわけではありません。

目の前の患者さんに効果のある治療を模索し続けたいものです。

 

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大阪マラソンへの道②ー大会2か月前の走り込みー

 

ラソン初心者が、3ヶ月でフルマラソンを走るチャレンジ、以下の記事の続きです。

 

www.sakuranbo23.com

10月は脚力、心肺機能、精神力を高めるためにとにかく走りこむことを意識しました。11月は怪我なども含め無理ができないので、大事な1ヶ月です。

9月は90km走ったので、10月は150kmを目標にしました。

週に5日走り、毎日5km以上、調子のいい時は10km、週末には15kmか17kmを走りました。

5kmは気持ち良く、楽に走れるようなりました。もはや、走らないと気分も落ち着かず、走り終わるとその日は安心して眠れるといった具合です。走ってる途中では、疲労感を全く感じず、頭の中がすっきりとして気持ち良く感じるタイミングがあり、βエンドルフィンが出ているのを実感します。

そして人生初めて15km以上を走りました。気力は大丈夫でしたが、膝や足首が痛くなってしまったので、サポーターを購入。

サポーターを使用すると同じ15km走っても膝の痛みはほぼなくなりました。

走る速度は相変わらずゆっくりです。とにかく同じペースで走り続ける事を意識しています。

15km走るときも、1km=7分~7分20秒ぐらいで走り続けました。

 

10月26日にはハーフマラソンにエントリーしました。

初めての大会で収穫は非常に大きかったです。

スタートしてから、いつもと違う状況でペースがつかめず、1週目はなんと1km=6分15秒で走っていました。これは早すぎると思いペースを落としても、6分30秒ぐらい。その後もゆっくりゆっくりを意識して走りましたが、結局6分50秒前後をうろうろしていました。残り5kmあたりでかなりしんどくなり、最後の3kmは1km=7分30秒ぐらいかかりました。

結果は2時間20分。最後の5kmはかなり辛かったですが、一度も止まらずに走り続けることができたので大満足です。

走り終わった後は爽快感、満足感で、辛かった事は忘れてしまいそうでした。夜は焼肉をお腹いっぱい食べました。

 

栄養について

長距離を走る前には前回に書いたサプリに加え、BCAAを摂取しています。

そしてランニング中にも10kmあたりから、BCAAのゼリーを少しずつ飲みます。30kmを超えて足が全く動かなくなるというのは、おそらくそこで材料が枯渇することで、ATPが十分に産生できなくなるからではないかと思います。従ってそこに至る前に、BCAAや糖分などを摂取しなければなりません。10kmあたりから、お腹が痛くならない程度にこまめに摂取するようにしています。これは非常に効果があるように思います。足が痛くなったり、酸素不足でお腹が痛くなることはありましたが、体が動かないということはハーフまでの時点では経験していません。

 

BCAAについて

BCAAは必須アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンです。これは糖新生の材料になるため、運動中のエネルギー産生には不可欠です。筋肉の分解も抑制してくれます。

しかし、夜の運動後にはBCAAは摂取していません。

夜の睡眠にはメラトニンが重要です。メラトニンセロトニンから生成されますが、セロトニンの材料はトリプトファンです。

トリプトファンは脳血液関門を通って、脳内に入りますが。しかしBCAAがあると、脳血液関門を通る際にトリプトファンとBCAAが競合し、優先的にBCAAが脳内へ移行します。そうなるとトリプトファンが脳内へ移行しにくくなり安眠が阻害される可能性があります。

BCAAは脳を覚醒させる方向に働きますので、朝や昼に摂取することが望ましいです。

 

2時間走り続ける事ができればフルマラソンを完走できると聞いていたので、今月のハーフマラソンは大きなステップでした。

しかし、限界に近い状況だったので、まだまだフルマラソンを完走する自信はありません、、、

 

11月はいよいよ最後の1か月!あまり無理をせずに調整していきたいと思います。

何より大きなチャレンジを楽しみたいと思います。

 

 

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認知症発症の危険因子ー第9回認知症予防学会ー

名古屋国際会議場で開催されている、第9回認知症予防学会に来ています。

 

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2017年にランセットで、認知症発症の危険因子については以下のように発表されています。
修正可能な要因は35%、修正不可能な要因は65%です。修正不可能なものは主に遺伝的な要因です。


修正可能な要因は各年代によって異なります。


18歳未満では低い教育レベルが危険因子になります。

これは修正可能というか、親の心がけ次第かもしれません。
45歳~65歳つまり中年期では、肥満が1%、高血圧が2%、難聴が9%のリスク因子となります。

難聴が9%!なんと肥満や高血圧を抑えて圧倒的な高さです。これは最近のトピックスでもあります。もちろん難聴であれば、コミュニケーションに支障が来し、対人交流を控え、引きこもりがちになる可能性があります。こうなると社会的フレイルにつながり、認知症の原因となりそうです。学会では早期の補聴器や聴力訓練などがあげられていましたが、これらによる効果はまだ明らかではありません。

とりあえず難聴の方には、不便でも人とコミュニケーションをとるように、補聴器を使ってでも外に出ましょうとお伝えするのが良さそうです。

老人性難聴の原因について調べていると、内耳機能の低下だけでなく、脳の中枢機能の低下も原因になるとのこと、そして酸化ストレスにより進行が早くなる、つまり動脈硬化や高血圧、糖尿病などとの関連も強いようです。
・・・・つまり原因は認知症とかなりオーバーラップ・・・というかほぼ同じです。認知症と難聴は原因が共通で、お互いがお互いをリスク要因と考えているようです。そうであれば、補聴器をつけたぐらいでは大した予防にはならないでしょうね。やはり、もっと若いころから生活習慣による対策が必要で、難聴も認知症も予防しなければなりません。
ただ難聴と認知症の関係に関してはもう少し研究結果を待ってみようと思います。

 

65歳以上つまり高齢期では糖尿病が1%、社会的孤立が2%、運動不足が3%、抑うつが4%、喫煙が5%です。


注意が必要なのは年齢によってリスク要因が異なるということです。中年期では肥満がリスク要因ですが、高齢期では痩せすぎの方がリスクとなります。これは肥満のパラドックスと言われているそうですが、分子栄養学的には中年期の肥満は脂肪肝高血糖などによる慢性炎症を引き起こし、当然認知症のリスクが上がる、高齢期での痩せすぎは、必要な栄養素の欠乏と関連するので、当然こちらも認知症のリスクが上がりますね。


喫煙のリスクに関しては、過去の喫煙ではなく現在喫煙している、ということがリスク要因になるようです。つまりずっと吸ってるから今更やめても一緒と思わずに、今から禁煙することが大切ですね。


うつに関しては、中年期までのうつは認知症と関連を認めず、高齢期のうつが関連するとのこと。これは臨床をしていて実感することと一致します。しかし臨床で経験する中で高齢期のうつ病は、うつの診断基準を十分に満たし、認知症を除外診断できたとしても、認知症の初期もしくは前段階を見ているのかもしれないと感じることも多く、ここは関連性の評価は難しいところです。


あと面白かったのが、歩行速度の低下はMCI(軽度認知機能低下、認知症の前段階)の発症に先行するというものです。男性はMCI発症の15年前、女性は5年前から、歩行速度ががくっと落ちることがあるそうです。横断歩道を青のうちに渡れなくなってくると、注意が必要かもしれませんね。

 

現在、抗認知症薬の開発は停滞しています。それは認知症は発症の何年も前から脳の細胞レベルでの変化は始まっていること、そして認知症の原因が多岐に渡るからといえるでしょう。

 

できる限り若い頃から予防となる生活習慣を心がけたいものです。

 

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双極性障害の話

双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。

 

その違いは簡単に言うと、躁病エピソードがⅠ型は躁状態、Ⅱ型は軽躁状態ということです。この二つは「程度の差」ではなく、病態が異なると捉えた方がよいです。

 

Ⅰ型の場合、躁状態になった際には、ほぼ確実に入院が必要になります。

躁状態では、本来のその人がするはずのない問題行動を次から次へとやっていまいます。上司に喧嘩をふっかけたり、財産を使い果たしたり、莫大な借金をしたり、浮気をしたり。病気であったとしても「取返しのつかない行為」をしていまうのがこの病気です。入院は治療のためでもありますが、何より「取返しのつかない行為」を阻止するためでもあります。その人の尊厳を守る事と、被害を最小限にとどめる事が、治療のポイントの1つだと考えます。これそ阻止できないと、その後に訪れるうつ状態で、これらの行為を後悔し、自責の念にかられ、追い討ちをかける事になります。

 

II型の軽躁状態では、必ずしも入院は必要ありません。いつもよりテンションが高い、良く喋る、アイデアが次々思い浮かぶ、といった状態になります。周囲も、元気でよく動き、よく働くなどで容認することもあります。

本人も元気で何でもできるこの状態が本来の自分と考え、この状態を希求してしまいがちです。ここがII型の治療を難しくさせる1つの要因です。

ではなぜこの状態を予防しないといけないのでしょうか。

それは「躁状態は持続可能なパフォーマンスではない」からです。これは双極性障害の人だけでなく、家族や職場の人も覚えておかなくてはなりません。

躁状態の後には、ほぼ必ずうつ状態がやってきます。動きすぎた故、その後に長い長いうつ状態に突入することが多々あります。

II型は、多くの期間をうつ病相で過ごすと言われています。双極性うつの治療は未だ確立されておらず、治療は容易ではありません。この点からも治療者は、患者さんに嫌がられつつも軽躁に注意を払います。

再発を予防するためには、患者さんも周囲も、これらの事をよく理解し、受け入れる必要があります。

双極性障害では適切な心理教育を受けた人の再発が少ないというデータもあります。

うつ病学会のHPに心理教育の資料があるので載せておきます。

 

https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/ippan/shiryo.html

 

Ⅰ型の再発予防に対して薬物療法は非常に有効です。

Ⅱ型はI型に比べて薬物療法の有効性は劣ります。Ⅱ型は過眠、過食や不安症を合併する事が多いので、病態が複雑になりがちです。

症状や合併症をみると、Ⅱ型は栄養療法で取り扱う、低血糖症や副腎疲労や過緊張の問題などがかなり関与しているとも言えます。

私はⅡ型は特に、疾病の心理教育だけでなく栄養療法が重要だと考えています。

 

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