-20240407

◯読書
石持浅海『BG、あるいは死せるカイニス』

性暴力をこういう感じでロジックに組み込むのはちょっと受け入れがたい感じがあるんだけど、変な設定がどんどん開示されていくおもしろさはあった。

 

米澤穂信『春季限定いちごタルト事件』

島健吾……萌えどす!

 

ウィリアム・コッツウィンクル『ドクター・ラット』

ラストがあまりにあんまりで、え……みたいになった。

 

ジョイス・キャロル・オーツ『フォックスファイア』

https://salmon-butter.hatenablog.com/entry/2024/04/07/232716

 

◯映画
PIXAR『あの夏のルカ』

悪くはないけど私の記憶の中にある一番いいときのPIXARには及ばないかな。でもPIXARの輝きって「それ以上やったら死んじゃうよ」のやばさに比例する感じがあるからそこまで行かないでほしいみたいなところもあるという……

 

ケリー・ライカート『ファースト・カウ』

ほぼ全てのカットに重層的な意味があり、かつそれが自然な動きの中に調和している。あまりに素晴らしい西部劇のカッティングエッジ。拾い上げる/触れる/作る「手」の世界と意思を疎通し価値を介在する「言葉」の世界が出会うとき、アメリカン・ドリームが生まれる。

 

◯ダンス
ノエ・スーリエ「The Waves

体調が悪くて爆睡してしまった。ダンサー7人はすごく上手なんだと思うけどいまいちなにがなんだかわからず、「波」の朗読の部分で『いまそれふざけてます?』みたいな感じになってたり、打楽器(生演奏ですげー上手かった)のおじさんが3回くらい小物台からバチを落としてたり、そういう感じの記憶ばかりになってしまった。

ヴァージニア・ウルフを研究してる友人にどこが「波」だったと思う? と訊ねたけど、全然わかんなかったです、とのことで、ウルフがそんなに好きではないもうひとりの友人と「誰も動作による会話を成立させてない、発話のボールを受け取らず反応だけが連鎖している感じはウルフっぽいなって思ったんだけど、それを1時間見せられても私達も受け取れなくて困る」みたいな感じにで盛り上がった。

ジョイス・キャロル・オーツ『フォックスファイア』(1993、2002)DHC、井伊順彦訳

 

 

1950年代、オンタリオ州。地元の公立高校に通う少女マディはある夜、自室の窓を同級生であるレッグズが叩くところに遭遇する。彼女たちはやがてメンバーを増やしながら「フォックスファイア」という少女だけのギャングを結成し、男性からの暴力や支配に抗うための破壊活動を開始する。しかし、盗車での“はちゃめちゃドライブ”でレッグズが矯正院に送られたことをきっかけにフォックスファイアの絆は揺らぎだし、郊外のボロ屋での共同生活資金を集めるための「引っ掛け(美人局)」は、やがて取り返しのつかない結末をもたらす。

 

(ネタバレ感想)

本書は性暴力へのバックラッシュを引き起こす可能性がある。犬もひどい目に遭う。


貧困と暴力が支配する街で、少女たちの多くはネグレクトを受け、頼れる大人は誰もいない。学校でも街でも性暴力の危険にさらされ、尊厳を保つことすら難しい。そういった状況でレッグズは、ジョン・デリンジャージェシー・ジェームズといった義賊たち、あるいはプロレタリア革命の思想に共鳴し、少女たちをまとめ上げる。
女子矯正院送りになったレッグズはいちど制度の側に回れば女性すら味方ではないことを悟り、黒人にまで援助の手を広げようとする。しかしメンバーの多くはその“急進”的な考えを受け入れることができない。生活費を稼ぐため、そしてふしだらな男性性への逆襲という目的からはじまった美人局は、やがて資本家の誘拐という破滅的な発想に至る。レッグズを狂信する新入りの少女の引き起こした事態により誘拐は失敗に終わり、フォックスファイアは消滅する。

私の非常に限定された知識から言うならばプロレタリア闘争は女性を排斥しがちであり(共闘すべき労働者すらレッグズに侮蔑的な言葉を投げるように)。決死の覚悟で臨んだ資本家の誘拐も、自立した女性たちの起こした事件ではなく(男性しかいない)労働組合の所業とかギャング団の下部組織であるガールズギャングの仕業と言われるほどである。
そういった状況に立ち向かうためにレッグズと「フォックスファイア」が仕掛けた“闘争”は、あまりにむなしい終わりを迎える。彼女たちが受ける(目をそらすことは許さぬぞという執念で書き込まれた)性被害の数々と釣り合うものではない。
語り手としてこの“真実の書”をものしたマディは誘拐の前にフォックスファイアを追放された人物だが、彼女は一貫して天文学に対する強い関心を持ち、終章では故郷を出て大学を出たのち、天文台の観測員として宇宙を監視している。
語り手としてのマディがいるのは、1990年ごろ。冷戦が終結し、社会主義に対するひとつの夢が潰えたタイミングだろう。語りの時点でのマディが何を思っているのかはわからないが、フォックスファイアにいたときと同じ情熱を持っているわけではない。結婚をして離婚をした。男の下で働いている。レッグズが見たかもしれないというキューバ革命も、マディからしてみればその後キューバがどうなったかを知っている。
それでも彼女は探さずにはいられないのだろう。隕石のように現れる何かを。星に手を掛けるほどの高みに登ることのできる存在を。だからこそ、「情熱」を書き留めようとしたのだろう。

-20240325

珍しく(と言ってはいかん気がするのだが、珍しく)小説をたくさん読んだ。

◎ニー・ヴォ『塩と運命の皇后』

中華FTっぽい世界観の中編が2本入っていて、どちらも「正しく語られ/記録されなかった女性の物語を語りおろす」という構造を取っている。人名やそれぞれの国は「中国っぽい」「モンゴル~ロシアっぽい」等とソースがはっきりしている分、主人公たちの寺院が明白にそのまま英語っていうのが結構いい。多数言語がそれ自体もつ暴力性とか英語話者が語る「歴史」とはみたいなことへの目くばせなのかな。へーって思った。

◎アンジェラ・カーター『夜ごとのサーカス』

ニー・ヴォが影響を受けた作家として解説に挙げられていたので読んだけど、これはちょっとすごいと思う。フェヴァーズとリズは(いろんなことを隠そうとはしているけれども)ウソは語っていなかったのだ、というのが章を経るごとにわかっていく仕掛け。白眉は第2章のサーカスのくだり。加藤光男(訳者)によればフェヴァーズの感情教育を代替する役目でもあるというミニヨンの挿話が一番よかったような気がするのはちょっとどうなんだろうかという気もするが。

フェミニズムの文脈の中でどう読まれているのか/どういう位置に置かれるのか、というのがちょっと気になるんだけど(2020年に日本語で作品論が出ているとのことなんで研究書に当たってみようと思います)毛羽毛羽しいゴシック要素にあふれていながらも、ものすごく極端なことは言っていないという感じで、それ故に今でも古さを感じずに読めるという印象。

◎荒木あかね『此の世の果ての殺人』

Falloutのメインクエストとサブクエストを延々こなしているような――とか言っても仕方ない気がするけど(作者のイメージソースはおそらくその辺りではない気がする)、絶望的な状況を伝えるイメージの選び方がかなりよく、そこで最後の日々を「善性」をよすがにしながら生きている人々のエピソードにはちょっとかなりグッとくるものがありますね。

でもいちばんいいのは主人公がある地点を目指す理由と、謎とはされていなかったひとつの謎が明かされるラストかな。

◎宮内悠介『カブールの園』

カリフォルニアにあったという日本人収容所の挿話はとても印象深く、登場人物がいろいろあった末にいま自分の立つ場所を「カブールの園」だ、と肯定する流れについては特に何の異論もないし、隙がないよう構成されておりよかった。

一方で、初出から8年が経ってここに書かれている技術がつぎつぎと現実になった「未来」を生きてみると、平等をもたらすと思われていた技術は実はより格差を拡大させるものだったではないか、みたいな気がしてしまって、ほんとに? そこでいいの? という気持ちにならないでもなかった。

「半地下」のほうは「あたしの田舎(栃木)の小学生の悪事ってせいぜい万引きと自販機蹴ってジュースをいっぱい出すやつくらいだったけど、アメリカの小学生ってドラッグをやるんだ…」というショックを受けてしまった。栃木はやっぱり田舎だなと思った。

米澤穂信さよなら妖精』(愛蔵版)

「カブールの園」と同じような懸念をテクノロジーではなく歴史(学)について思った感じ。ここ数年とみに〈国(領域国民国家)〉のもつあさましい側面とか恐ろしさを感じずにはいられない状況でこれを読むとなんというか……そっちはいい解決には思えないんだけど、みたいな気持ちになるというか。

あるいは「地域」の人間は意外と『「日本」なんて「東京」の人間がやってることでしょ』くらいにしか思ってなかったりするしね、みたいなことを思い出したり(スロヴァキアの話とかでちょっと示されていたとも思うけど)。

 

 

すさまじい延滞癖かつ怒られ回避癖があるがゆえにそういう状況になっていたのだが、本を返却して本を借りられるようになった。

家にある積み本から消費していきなさいよ、という気もするが、基本的にあんまり新しい本を買わないので、最近(ここ20年くらいを指す)流行ってるものを味見しようかな♪ みたいなモチベーションに対して私の本棚は完全に無力なのであった。

最近はミステリーが面白そうだなと思って、道玄坂上ミステリ監視塔からちょっとずつ読んでいけたらいいんだけど……ちょっとずつ読んでいってたら一生追いつけない気がするんだよな……。ミステリってどんだけ新刊出てんのよ。私もミステリをやっておけばよかったなってここ3年くらいずっと言ってる気がする(そして、やっていない)

news.yahoo.co.jp

 

闘牛場でオペラを

NIIKEI文学賞のエッセイ部門に応募して落ちたやつ。

 


柏崎のだいぶ山寄りのほうにあった母方の実家を引き払ったその年の終わりに、コロナが始まった。

新潟という土地に特段の愛があったわけではなかった。海が好きというわけでもない。唯一覚えているのは、近所の――と言っても歩いたら20分は掛かっただろう――「マルイ」というスーパーのお刺身がおいしいこと。

そんな私だが、それからも一年に一度は新潟に行っている。舞台公演を観に行くためだ。

おととしは新潟市の「りゅーとぴあ」で、専属バレエ団である「Noism」のバレエ公演を観に行った。そして去年は、小千谷の闘牛場まで『カルメン』というオペラを観に行った。

まさか闘牛場でオペラとは、と思ったものだ。

カルメン』のあらすじは、ジプシー(1)のファム・ファタル(2)にマザコン(3)の兵隊さんが懸想するも紆余曲折を経てファム・ファタルが突然現れたイケメンに寝取られてしまう、という説明するだけでスリーアウトという代物である。そのイケメンというのが闘牛士なのだ。

友人の運転で小千谷までたどり着いた私は、本気で目を疑った。なんてったって、町中がオペラに沸いているのである。「カル麺」フェアと称し、へぎ蕎麦をはじめとして町中の「麺」を出すお店が、コラボメニューを出していた。そして果物屋兼クレープショップに入ったら、おかみさんに「オペラ見に来たんでしょう?」と訊かれる始末。これはなに、とクレープを握り締めながら思ったものである。オペラでこんなに町じゅう盛り上がることって、ある?

シャトルバスに乗って闘牛場までたどり着き、地元の人の手編みだという座布団を受け取って席に座った。オーケストラが音出しをしていた。遠くからは発声練習の声が聞こえた。舞台はすり鉢の底にあって、ちょうど「通行禁止」の標識みたいな具合で斜掛けにラインカーペットが敷いてある。

不思議な体験だった。

まわりで虫が鳴いていた。鳥たちが舞台の上を横切っていった。日が暮れてだんだんと暗くなると、観客席の向こうに峻厳な樹々の影が見えた。森の中で野営するジプシーたちはいかにも本物めいて見えた。

鳥の声とともに「恋は野の鳥」を聴く機会などもうないだろう。

ところで『カルメン』と言えば闘牛士たちの行進である。「小千谷カルメン」で行進していたのは、町のえらい人に、地元の子供たち。牛も居たかもしれない。地元の闘牛士たちは、実に威勢のいい掛け声を上げてくれたものである。「よしたー!」。

 

 

 

20240219

明け方、ホロコーストに加担する夢で飛び起きる。詳しい内容はもう忘れてしまった。そのまま何度か覚醒と睡眠を繰り返して始業。

調子が上がらないのでお昼休みを長めにとることにした。

まずは焼肉ランチ。学生時代よく飲み会で使っていた店。寝間着同然の格好で言ったらおっちゃんが「昔どこかで…」みたいになって、最近の学生さんはどうですか? 等いろいろと話をする。

そのあと近所の友人が買ってきてくれたケーキでお茶会をする。

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一乗寺の名店タンドレスの話はむかし造形大に通ってた友人から聞いていたけど、想像以上によかった。うまい。ここ数年食べたケーキでいちばんいいかもしれない。容赦なく生姜の効いたマドレーヌもよかった。

仕事を終わらせて、豪雨のなかでNさんと喫茶店に行き、あれこれと話をする。喫茶店が営業時間を短縮するらしくてショックを受けた。私は一体どこで作業をしたらいいんだ。

そのあとお昼に会った友人2人の飲み会に合流して解散した。営業短縮ショック冷めやらずずっとカフェ営業可物件を探してしまっているけどさすがに見つからない。先立つものもなさすぎるしさすがに無理な気がする。こんなことならコーヒー屋とかでバイトしときゃよかったな。

 

《ドンキー・アーカイヴ》vol.1「男たちと、その傷」

《ドンキー・アーカイヴ》vol.1「男たちと、その傷」

 

収録作品(収録順)
「肋骨の痛み」坂永雄一
「ブラッドブラザーズ」千葉 集
「サブスクを食べる幽霊たち」稲田一声
「不確定の傘」春眠 蛙 
「マンドラゴラ」暴力と破滅の運び手

 

BOOTH書籍通販(匿名発送対応。サークル名は記載されませんのでご安心ください)
https://brutetaro.booth.pm/items/5492420

 

BOOTH電子版(※注意事項をご確認ください)
https://booth.pm/ja/items/5492445

 

Kindle
https://amzn.asia/d/eJNsFrn

 

機械仕掛けのロバたちが、えっちらおっちら小説を運んできました。何もテーマを設けていなかったのに、みんな「傷ついた男」の話を載せてきたようです。そんなことってある? でも、よく読んでみたらバラエティ豊かなアンソロジーになってるかも……


換骨奪胎された神話。
ウィアードな家族小説。
故人のサブスクを巡るSF。
虚実が揺らぐ体験談。
エッチなBL。

 

これは、怠惰なロバたちのアーカイヴ。
これは、あなたのためのアーカイブ

 

 

去年に手の込んだ本を出しすぎたあまりに、もうあたくし作業コストの高い同人誌をもう作りたくございません、という気持ちになってしまい作った反動的なコピ本だったのですが、まあこのメンツを集めてそんな反動的で少部数なコピ本やるのはソーシャルグッドネスに反するよなと思い直し、ちょ古っ都製本工房と電子にて増刷しました。

とはいえいちばん反動的なのは内容で、私の主観で見るならばすさまじい反動だと思いますし、何も話し合ったりしていないのに「男の傷」がテーマの短編が5本集まってそのまま載るのって客観的にもかなりやばいでしょ。2024年にこんなことしちゃっていいのかなと思ってドキドキしてます。

市民オケの本番とかtexas chainsaw massacreとかヴィオラのレッスンのせいで修正に1ヶ月かかっちゃった。すまんの。電子版を作ってくださった稲田さんに大感謝。

 

あんまり論じたり評したりが得意ではないので何を言ったらいいのかわからないんですが、私が(佐藤亜紀を除いて)ずっと好きな人を集めたらこうなりました。

限定100部、物理本増刷予定はございません。もう30冊くらい売れてます(2月14日現在)。ちょ古っ都にある限りでいい紙使ってるから(表紙→しこくてんれい ゆき、本文→ラフクリーム琥珀)紙の本が好きな人は買ってね。あとでベソかいたって知らないからね。

 

 

20240206‐0208

*このブログは会社のマネージャーが読んでいます!*

 

20240206

東京に出張して、会社のイベントの準備をする。みんなが行かないならゥチが行くし💢みたいになっていたビジネス交流会的なやつの申込締切が完全に終わっていることに気づいて、もう飲みに行きま〜すみたいな気持ちになり、仕事ができない人間特有の終わりの連絡を友人に送る。

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会社の先輩と店員がひとりしかいないカレー屋に行っていると友人や友人のファムファタル(以下FF)から半ギレの返信や電話がどんどん返ってきて遊びの予定がどんどん決まる。

※FF→私の大学時代の友人。出会う男が全員ウェルテルやドン・ホセのように狂っていく傾国の美女。私はゲイなのでそのエロさが主観的にあまり理解できず、おそらくそれゆえに交友が保たれている。FFが出てくる過去の日記はこちら。

池袋東口にホテルを取っていたと思いこんでいたが完全に西口だった。こんなところ来たことないわよ、と思いながらホテルまで行ったら向かいがラブホで斜め前は無料案内所、たぶんこのホテルも元ラブホ、という感じだった。部屋の便器が座るとズレる以外は特には…という感じだった。ロビーに備え付けのコーヒーマシンが何故かおいしかった。ファミマでプリンと濃泡バブメディキュアと顔面パックをやった。

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FFがラブホでパジャマパーティをしたいというので、寝るときいまのホテルに戻れる位置だったらいいよーと返したら凄まじい勢いでラブホの情報が送られてくる。さっき別の友人が飲み会の調整してるとき1秒も口出してなかったのになんでラブホの情報になるとこんなに素早く情報を送ってくるんだろうと思った。ラブホのプロに全部お任せしますということで予約をしてもらう。

 

20240207

朝起きてMastodonを見たらオーストラリアに行っているフォロワーがウォンバットの写真をアップロードしていて、それを見た瞬間バーン!!!!!(擬音)みたいな感じでウォンバットを飼いたくなり色々調べたけど、飼えないらしかった。でも大阪府池田市五月山動物園ウォンバットライブカメラを教えてもらって眺めて和んだ。ウォンバットたちの動きを自動で追いかけるカメラの精度が低いのもなんかいい。

そうこうしているうちにお昼が近づいてきたので名刺を作る。会社のクラウドに上がっていた私の名刺の入稿データをイラレで開いて画像化し、canvaで名刺サイズにする。その画像をマイ名刺というサービスでコンビニでネットプリントをした。4枚で400円。よく考えたらこれ自分でポストカードデザインしたほうが安上がりだった。

イベント会場に向かい、ご飯を食べて、まず名刺を裁断機で作った。それからイベントが始まり、「参加者同士で話してもらうイベントってマジで楽でいいな…」みたいなことを考えながらボーっと立っていたらエンジニアの同僚がすごい勢いでケータリングで飲食をしていて、「やっぱり誰かが食べないと社員の誰も手を付けられないと思って…」と言ってきて、感謝しながら私もケータリングを食べた。おいしかった。でもその間にイベント寿司おじさん の侵入を許していたかもしれないっぽくてちょっと反省した。角煮がおいしかった。

そのまま打ち上げに行ったあと、FFの待つラブホへ。池袋西口の北口は未知の世界だった。風俗とクラブとラブホしかなくて怖かった。同伴とか男2人連れ(たぶんソープで交友を深めようとしてる)しかいなくてすごい。

私が向かったときFFはちょうど入浴していたため、ラブホのドアの前で5分くらい待たされた。FFたるもの入浴で人を待たせるくらい朝飯前だよなと感心した。

FFは私を迎え入れるなり「東京のラブホは最悪だ。脱衣所がない。ウェルカムドリンクもフードもない」みたいなことを言っていて逆おら東京さ行くだ状態になっていた。

「男が後からくるのって同伴っぽいんかな…」

「逆逆! 同伴で嬢が先に待機するのおかしいから」

「あー…そうかも…?」

FFはマッチングアプリをはじめていて、久しぶりにきちんと関係性を築こうとする会話をした自分に気づき涙を流したと言っていた。確かに職場で不倫のオファーやワンナイトの誘いをしきりに受け地元に帰ってきては友人にFF呼ばわりされる生活ではそういった感情を催すことも仕方のないことだと思ったが、それはFFの周りの人間関係が異常なだけであり、一般的に人は初対面の人間とはきちんと関係性を築こうとするだろうと思った。オタクくんにギャルが話しかけて一目惚れみたいなやつのやばいやつが起きていると思った。「10人会うまでなにも判断しないほうがいいんじゃない…? まともな男との会話のリハビリをしたほうがいいよ…」と言って、自分のホテルに帰って寝た。

 

20240208

別の友人と会う約束していたので朝マックに行った。その晩に私がFFといっしょに飲み会をすることになっていた友人A2について、声が小さくなったと思うねんけどでもあたしも聴力落ちてるんかな…という不安しかないことを言っていて心配になった。マルコリーニのチョコをくれて、東京の人の手土産…!と思った。私なんか計画的におみやげを用意したとしても多分阿闍梨餅か京ばうむになるよ。f:id:salmon_butter:20240211014618j:image

職場に向かって、マネージャーに寿司の折り詰めをごちそうしてもらった。東京の寿司はおいしい、と友人が言っていた一方、私は回転寿司と違ってシャリと魚の温度が違うとかないんだな…というレベルの低い感動をしていたので黙って食べていた。f:id:salmon_butter:20240211014605j:image

それから移動して仕事して移動して仕事してをやっていたら飲み会に大遅刻してしまった。A2の声は確かに小さくなっていて、「妻に「動きが全体的にうるさい」と言われたから直している」と幸せそうに言っていた。FFのマッチングアプリの運用を詳しく聞いたらパラメータの複雑な恋愛ゲームの攻略みたいになっていて、愛人に手紙をまめに送っていたナポレオン・ボナパルトのことを思い出した。あまりにおもしろいので小説に書いていい!?と訊いてしまった。生きている人間に対して小説に書いていいかどうか訊くことってあんまないだろうなと思った。

そうこうしているうちに京都への終電が近づいてきたので東京駅に行く。舟和のようかんとあんこ玉のセットだけ買ってホームで待ち合わせていた関西の友人と合流した。友人は日帰りで出張していた研究会の帰りだったそう。博士論文を提出し終えたということで、おたクラブの見積画面を見せながら博士論文をハードカバー製本しませんか? というアホみたいな提案をしていた。「専門分野の語学力を活かしてマイナー言語のSFを訳して一山当ててえ…」と言っていたので一緒に探したけどあんまり見つからなかった。

京都に着いた途端近所の友人から誘われたので、そのままカラオケスナックに行く。舟和のようかんをマスターとママさんにあげたら喜んでくれて、モロゾフのウィスキー味のチョコの詰め合わせをくれた。カラオケでずっとQueenを裏声で歌っている男の子がいてよかった。女王様(こち亀OPでベンチャーズ歌ってたコンビ)の女王様物語Queenを無理やり日本語訳したメドレー)を初めて聞いた。