家政婦の歴史と、木下古栗の受けたパワハラ
ただ、おそらく濱口は意図していないだろうが、ぼくがこの本を読んで感じたのは、人間は思った以上に尋常じゃなく視野の狭い生き物なんだろうな、ということだ。本書を書くきっかけとなった家政婦の過労死裁判の弁護を担当している明石順平らも、本書の中で批判されているような官報などの著者らも、別に極端にフェミニズム的関心がないというわけではないだろう。彼ら彼女らはたぶん家政婦の問題を本気で「見落としていた」のであり、濱口があらためて整理してしまうととんでもなくアホに見えてしまうという側面もあると思う。
続きを読むなぜ市川沙央『ハンチバック』ではネットスラングが多用されているのか
『ハンチバック』を読んでふと気になったのは、ネットスラングの多さだ。「◯◯み」とか純文で使う言葉じゃねーぞ。中卒の人間が大学の通信課程に通うのを「学歴ロンダリング」と表現するのは、だいぶ学歴厨が過ぎる*1。「裏オプ」とか文芸誌読んでる爺さん婆さんどもには通じなくないですか? 直接的な言葉選びから細かい文体まで、ところどころにネット文化圏の影響を感じずにはいられない。ツイッターとかで調べてみても、そのような感想を抱いた人は多少いるようだ。
で、これなんでなんすかね。
*1:ぼくもそれなりには学歴厨ではあるのだけど、学歴ロンダリングという言葉をこの用法で使うのはあんまり見たことがない気がする。普通学歴ロンダリングって偏差値の高くない大学から偏差値の高い大学の院に行くことを指すパターンが多いので。その用法よりも『ハンチバック』での用法のほうが一段きつい表現に感じた。
なぜ市川沙央『ハンチバック』の冒頭には三文エロ記事があるのか
たいして面白くはないが、生成過程は気になる/フリー・グーグルトン『茹で甲斐』
長編エッセイで振り返る木下古栗の20年/フリー・グーグルトン『高尾症候群』
今年の10冊(2022)
2022年に読んだ、印象に残った本およびその印象のまとめ(小説とノンフィクションをそれぞれ10冊ずつ)。
続きを読む1200円でも割高なのでは/「風ノ旅ビト」
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ゲームシステムやストーリーについて説明はほぼないが、まあふわっと雰囲気はわかるようになっており、まあこういうのもアリだとは思う。バイブレーションの使い方が特徴的で、キャラクターの移動などに合わせて微弱なバイブレーションを起こしているのは、表現の拡張としてけっこう好印象。
にしたって、このボリュームだとさすがに満足はできないかなあ。ロープライスゲーで1200円なんですが、それにしたって割高なんじゃないだろうか。ぼくは昔無料で配られたときに入手したので損した気分にはならないですが……。