2024年5月3日~5日にかけて開催された第34回世界コンピュータ将棋選手権に参加ソフト「ねね将棋」で参加しました。
今回のテーマは、iPhoneだけで対局を行い、DL系エンジンをスマートフォンで動作させた場合の強さを示すことです。第33回ではMac上の将棋所と連携して通信を行っていましたが、今回は完全にiPhoneだけで完結するようにしました。無線LANや携帯電話回線を使えば、バッテリーが持つ範囲では、ケーブルを一切接続せず対局することも可能です。
技術的には、以下の要素の組み合わせです。
- ふかうら王をiPhone用に移植する
- 第3回世界将棋AI電竜戦本戦(2022/12/03)で実装済み
- GUIを実装する
- ふかうら王の指し手(USIプロトコル)を対局サーバで用いるCSAプロトコルに変換する(新規実装)
- 第33回世界コンピュータ将棋選手権(2022/05/03)でSwift言語で実装した盤面クラスを応用
従来使用していたiPad(第9世代)(2021年発売)から、iPhone 15 Pro(2023年発売)に端末が新しくなったことで、読みの速度が1000NPSから5000NPSに向上しています。floodgateではレート3700程度でした。
戦績
一次予選からの参加で、一次予選は28チーム中5位となりました。二次予選では一次予選から上がった11チームとシード17チームの合計28チームで争い、18位となり、ここで敗退しました。二次予選の上位18チームに与えられる、次回大会のシード権を獲得しました。
なお、二次予選のnshogi-ねね将棋戦は、nshogi側の不具合によりねね将棋の勝利となりました。
感想
長い定跡を使っているチームが多く、序盤の消費時間に大きな差が開くこともありました。本番で普段より強力なハードウェアを利用するチームは定跡のメリットが落ちるようですが、ねね将棋はハードウェアに縛りがあるので定跡は積極的に活用していくべきと思いました。ただし、開発者本人の棋力を活用して調整を行っているチームもあるようで、仮に詳しい手法がわかっても真似するのは難しい場合もあるようです。
対局中の不具合はなく、無事故で終えることができました。iPhoneを使うことは他のチームにない唯一の特徴であるため独自にノウハウを構築する必要がありましたが、過去に起きたトラブルの再発防止を図ったことが有効だったと思います。
上位ソフトとの対局では頓死気味の終わり方が多くありました。読みぬけは重要な課題です。今回まででiPhoneでふかうら王を動作させる環境構築が完了したと考えられるので、今後は評価関数の改良などに取り組んでいきたいです。
対局してくださった方、運営の皆様に感謝申し上げます。