社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

事業所外みなし労働の最高裁判決

職場外での勤務は、事前に決められた時間働いたことにする「みなし労働時間制」の適用対象かが争われた訴訟の上告審判決が16日、最高裁第3小法廷であった。

今崎幸彦裁判長は、みなし制適用を認めず雇用者側に一部残業代の支払いを命じた二審福岡高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

労働基準法は、職場外の勤務について「労働時間が算定し難いとき」はみなし制を適用すると規定する。

判決によると、原告の女性(41)は2016~18年、熊本市監理団体で外国人技能実習生の指導員として勤務し、訪問指導やトラブル対応などを担当していた。

女性は勤務時間がタイムカードによって管理されておらず、訪問先などとともに記した業務日報を団体に提出していた。

二審判決では実習生への確認も可能なため日報の正確性が担保されており、実際に残業代を支払うケースもあったなどとして、団体に計29万円余りの支払いを命じていた。

しかし、今崎裁判長は外国人である実習生に確認する方法の実効性が明らかではないと指摘する。

残業代を支払ったケースでも日報だけを根拠にしていない可能性があり、日報の正確性について十分な検討もされていないなどとし、二審は規定の解釈を誤ったと判断した。

最高裁第3小法廷・今崎幸彦裁判長は、みなし制適用を否定して女性の訴えを一部認めた二審福岡高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。高裁の差し戻し審が注目される。

判決文は下記参照のこと。クリックして下さい。

092906_hanrei.pdf (courts.go.jp)

訪問介護事業所の36%が赤字経営!

厚生省は「2022年の訪問介護事業所の平均利益率は7.8%である」と2023年11月公表した。

その中で、介護業22業種の平均利益率は2.4%であり、訪問介護事業所は平均以上の利益率を確保している。これに基づき、2024年4月より介護報酬基本料を引き下げる決定を行った。

国会審議のなかで野党より、訪問介護事業所の利益率分布状況の調査の要求され、今回、その結果が発表された。

それによると、利益率ゼロ%未満赤字経営訪問介護事業所は36.7%を占めた。残りの黒字事業所を含めた平均利益率が7.8%の数字である。

中小訪問介護事業者は、1軒1軒訪問する介護先が主体で、移動費、待ち時間などがあり、効率が悪く、コストが上昇する。

一方で、大規模訪問介護事業所は、サービス付き高齢者向け住宅で、短時間に多くの入居者を効率良く、訪問介護ができるため黒字経営となる実態が明らかになった。

単に机上の計算により、官僚が介護報酬基本料の変更を決定すると大きな過ちが発生することが分かる。訪問介護業界は低賃金で人が集まらない。介護報酬引き下げで、賃金引き上げはさらに困難になる。

 

日銀の低金利政策がスタグフレーションを招く!

春闘連合中間集計が出た。定昇込みで平均5.85%要求である。昨年より高く、予想の4.0%よりも高い。昨年春闘大手企業の実績が3.6%(中小企業は2.5%)昨年を上回る結果がだせるか?
現状、失業率2.5%、物価指数上昇2.0%。しかし実際の現金給与額は前年比1~2%増加でしかない。企業が残業を圧縮、規模縮小、IT導入省力化を進めているためだ。人手不足のなか、中高年人員整理も始まっている。
エネルギー価格上昇後、国民の物価ノルム(社会規範)は変化した。長期インフレ予想は従前の0.5%から1.0%に上昇した。日銀のマイナス金利解除も近く想定される。
 現在の自然利子率はゼロ%。中立金利=自然利子率+期待インフレ率(1%)から中立金利1%になる。政策金利理論値(テイラールール)は0.93%と言われる。現状の政策金利マイナス0.1%はかなり低金利である。
 
近年の研究で、「恒久的な低金利の継続は経済成長率低下を長期化させる」ことが実証されている。低金利政策のマクロ経済への影響の大きさを実感する成果である。
日銀は2%のインフレ目標が確実視できないとの理由で、金融緩和、低金利を継続する。マイナス金利解除後もゼロ%が精一杯だろう。一方でマンション価格は上昇し、円安も長期化、トヨタ、日産の輸出企業は利益がかさ上げされ、株価上昇で富裕層も懐が温かい。
このままでは日銀対応遅れが結果的に、しつっこいインフレと景気低迷の同時進行・スタグフレーションとなる可能性が強い。財政対策で金利を上げられないジレンマが、最終的に庶民に犠牲をしわ寄せさせる結果となっている。