『失われた未来を求めて』&仕事履歴(2021)

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あるいは私の想像力の乏しさによるのかもしれないが、私には依然として本こそあらゆるメディアの中でもっとも完璧なメディアのように思われる。[…]それは後の何世代かの人間に受け継がれる機会を高める複製芸術であり、執筆され印刷されて以降の過去の時間の痕跡が一緒に書き込まれた、開かれたタイムカプセルである。そのタイムカプセルの中では、あるテクストのどの版も、それぞれ廃墟と似通っていなくもないユートピア的空間であることが明らかになる。そのユートピアにおいて死者たちは雄弁に語り、過去は甦り、文字は真実となり、時間は止揚される。
[…]すべての本と同じように、本書もまた、何ものかを生き延びさせたい、過ぎ去ったものを甦らせ、忘れられたものを呼び覚まし、言葉を失くしたものに語らせ、なおざりにされたものを追悼したいという願いによって原動力を得ている。
(ユーディット・シャランスキー『失われたいくつかの物の目録』細井直子訳、河出書房新社、二四~二五頁)


■WEB原稿

fnmnl.tv
premium.kai-you.net
mikiki.tokyo.jp

木澤佐登志&江永泉
president.jp

書評

sb-rs.com
sb-rs.com
sb-rs.com

www.bookbang.jp
www.webchikuma.jp
ototoy.jp
福嶋亮大『ハロー、ユーラシア 21世紀「中華」圏の政治思想』書評
gunzo.kodansha.co.jp

対談・座談

闇のSF読書会
www.hayakawabooks.com
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闇の自己啓発読書会
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わく×にゃるら×動物豆知識bot×木澤佐登志「リミナルスペース座談会」
note.com
「思考の自由を取り戻し、複数の未来を提示する」対談=樋口恭介×木澤佐登志
dokushojin.com

WEB連載
s-scrap.com
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■紙媒体

「INTERNET2」
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巻末解説
www.hanmoto.com
「Qアノン、代替現実、ゲーミフィケーション
www.seidosha.co.jp
「平行世界のゲートは開かれたのか 初期インターネット都市伝説の一側面」
www.hanmoto.com
「霊は細部に宿り給う、とでもいうのだろうか ――『ほんとにあった!呪いのビデオ』のクリティカル・ポイント」
habouhou.booth.pm
岩倉文也×わく×木澤佐登志「少女・幽霊・ノスタルジー 座談会」
wak.booth.pm
「終わるまではすべてが永遠」
ecrito.booth.pm
動物化するポストヒューマン」
www.kanagawa-u.ac.jp
木澤佐登志&江永泉「闇のブックガイド ミステリー編」
www.hanmoto.com
SFマガジン』連載「さよなら、世界 〈外部〉への遁走論」
第二回~第六回
(略)

■映画パンフレット寄稿
feelsgoodmanfilm.jp
silkroad-movie.com


■その他
ブックファースト新宿店「木澤佐登志書架記」

『闇の自己啓発』&仕事履歴

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『闇の自己啓発』という本が出ます。僕を含めた四人による共著です。

闇の自己啓発

闇の自己啓発

江永泉氏(江永泉 (@nema_to_morph_a) | Twitter)が主催する「闇の自己啓発会」(Dark Self-Enlightenment parties)という読書会の記録を収めたnote記事が元になっています。書籍化にあたり、加筆修正&(脚注の役割を遥かに逸脱した)脚注の追加が成されています。
note.com

読書会はnote記事の段階ですでに尋常を逸脱していた。それは記事の編集プロセスについても言える。この読書会ではテープレコーダーが用いられることは一度としてなかった。声は記録されず、各々が発したフレーズや言葉の断片を、ひでシス氏が自身のThinkPadに逐一打ち込んでいくのだ。もちろんそれは文字起こしのようなものでは一切なく、読書会のあとに残されるのは、切れ切れの言葉や固有名詞やフレーズの散逸されたフラグメント、その堆積でしかなかった。私たちは、Googleドキュメントで共有されたそれら破片の集積をもとに、行われた読書会を再構成しようと試みた。もちろん、その試みは予め失敗を、破綻を徴づけられている。存在しない語りが付け加えられていった。反対に、語られたはずなのに書かれることなく記憶の彼方に消えていった言葉たちも存在する。加筆と追記は新たな加筆と追記を呼び、収拾のつかなくなったテクストは肥大と変形を重ね、あの日に起こったはずの、出来事としての読書会からかけ離れた、異形のテクストが生成された。
それは、言うなればドゥルーズガタリが『アンチ・オイディプス』の中で言及した、アンリ・ミショーが記述する、スキゾフレニーが制作する(欲望機械による)机の生産プロセスの様子を想起させるものだったかもしれない。

驚くべきことに、この机は単純ではないが、かといってそれほど複雑でもなかった。つまり始めから複雑だったり、意図的に、あるいは計画的に複雑であったりしたわけではない。むしろ、加工されていくにつれて、この机は単純ではなくなってきたのだ。……この机はそれ自身としては、いくつもの付加物のある机であった。ちょうど、分裂症者の描くデッサンが詰め込み過ぎといわれるように。この机が完成するとすれば、それはもう何もつけ加えるてだてがなくなったときである。この机はだんだんいろんなものが積み重ねられ、それはますます机でないものになっていった……。[……]それは例外的な家具のようなもの、誰も何の役に立つのか分からない未知の道具のようなものだった。
ドゥルーズガタリ『アンチ・オイディプス 上』宇野邦一訳、河出文庫、二三〜二四頁)

誰も何の役に立つのか分からない未知の道具、人間と無関係の机……。私たちが組み上げた異様なテクストもまた、そのような代物であったかもしれない。だがミショーの机の例と異なるのは、私たちは常に「複数」であったことだ。そう、それはどこまでも集団作業であった。各々の回路が配線され、それらは交差し、フィードバックし、モジュール化し、そこからまた新たな、見たことのない回路が組み上げられていった。「闇の自己啓発」とは畢竟、そのような営みに他ならなかった。そして、そのような営みから成る本書『闇の自己啓発』も、「誰も何の役に立つのか分からない未知の道具のようなもの」として、しかしだからこそ、他ならないあなたに使われる道具として、あなたの回路と接続されるものとして、つまりはそのようなものとして在る。


仕事履歴
以下では二〇一九年五月以降の著作活動履歴をまとめておきます。それ以前の履歴については前回の記事『ニック・ランドと新反動主義』 & 最近の仕事と活動 - Mal d’archiveを参照してください。

■WEB原稿
・「現代ビジネス」or「現代新書」
gendai.ismedia.jp
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gendai.ismedia.jp
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・その他
www.bookbang.jp
i-d.vice.com
tokion.jp
sb-rs.com
fnmnl.tv

・WEB連載
失われた未来を求めて」第一回〜第十回(連載中)
www.daiwashobo.co.jp
「ビューティフル・ハーモニー」01(第二回)〜08(第九回)(連載中)
s-scrap.com

■商業誌

・『現代思想

現代思想2019年11月号 特集=反出生主義を考える』所収 「生に抗って生きること――断章と覚書」
www.seidosha.co.jp
現代思想2020年5月号 緊急特集=感染/パンデミック』所収 「戦争・権力・感染」
www.seidosha.co.jp
・『ユリイカ

ユリイカ2019年12月号 特集=Vaporwave』所収 「未来のユートピア的ノスタルジー的遠方――ヴェイパーウェイヴは代替現実の夢を視る」
www.seidosha.co.jp
ユリイカ2020年5月臨時増刊号 総特集=坪内祐三』所収 「ささやかな「カミ」に触れる――坪内祐三試論 」
www.seidosha.co.jp
ユリイカ2020年8月号 特集=今 敏の世界』所収 「夢を取り戻すことを夢見て――今 敏の分身(ダブル)」
www.seidosha.co.jp
ユリイカ2020年12月号 特集=偽書の世界』所収 「薔薇十字、ボルヘス、インターネット」
www.seidosha.co.jp

・その他

『kotoba 2020年冬号』所収 「共存に愛は必要か」
kotoba.shueisha.co.jp
『小説 野性時代 第198号 2020年5月号』所収 Column「「最後の一行」を求めて」www.kadokawa.co.jp
表現者クライテリオン (2020年5月号)』所収 「没落する西洋と躍進する中国 ――中華未来主義とは何か」
www.kinokuniya.co.jp
『読書人の雑誌 本 2020年 6月号』所収 「日本にとって「暗黒啓蒙」とは何か」


『思想としての〈新型コロナウイルス禍〉』所収 「統治・功利・AI アフターコロナにおけるポストヒューマニティ」
www.kawade.co.jp
『BLACK LIVES MATTER: 黒人たちの叛乱は何を問うのか』所収 「ダークの系譜:ヨーロッパ新右翼から暗黒啓蒙へ」
www.kawade.co.jp
『S-Fマガジン2020年8月号』所収 「この世界、そして意識 反出生主義のユートピア(?)へ」
www.hayakawa-online.co.jp
『S-Fマガジン2021年2月号』所収 【連載】「さようなら、世界 〈外部〉への遁走論」第一回「精神史のジャンクヤードへ」
www.hayakawa-online.co.jp
『文藝 2021年春季号』所収 「さようなら、いままで夢をありがとう」&「身体と精神改造のための闇のブックガイド」(闇の自己啓発会)
www.kawade.co.jp


■序文or解説
エヴァン・ラトリフ著『魔王──奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』所収 「解説/不可視の帝国」
www.hayakawa-online.co.jp
ニック・ランド著『暗黒の啓蒙書』所収 「序文/『暗黒の啓蒙書』への「入口」」
bookclub.kodansha.co.jp

■その他&同人誌
『DAWN N°1.5 Survival Issue』所収 「#STAYHOME100」&「サイケデリックの嗜み」
dawntokyo.buyshop.jp
『感傷マゾvol.03 架空のノスタルジー特集号』所収 「『さよならを教えて』についてお話させていただきます」
booth.pm
『インターネット2』所収 「夢を見ながら歩き続けなければならない」
booth.pm
『インターネット2 VOL.2 アンダーグラウンドへの憧憬』所収 「LSDと私」&「にゃるら×木澤佐登志対談」
booth.pm

『ニック・ランドと新反動主義』 & 最近の仕事と活動

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書き上げてしまった自分の文章or本については基本的に一切の興味を無くしてしまう性なので、今回も事務報告的な告知となってしまうことを予めご了承ください。

まずは星海社から新書が出ました。
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『ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』。内容についてはタイトルの通り、と言ってしまえばそれまでですが、平たく言えば『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の五章と六章をさらに掘り下げて発展させたもの、ということになるかと思います。もともと『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の五章を書き上げて、それの一部をブログに上げたところ星海社の編集者に声をかけられたという経緯があり、そういう意味では『ニック・ランドと新反動主義』は『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の幸福な副産物と言えなくもありません。
なお、第一章の「ピーター・ティール」は去年の十一月に文学フリマにおいて領布された早稲田大学現代文学会の同人誌『Mare vol.5 アンチ・タイムライン』に寄稿したテキスト「ピーター・ティール論――封建主義2.0のススメ」を改稿したものになっています。ちなみに、この第一章は星海社のWEBサイトにて「試し読み」として全文読むことができるようです。
それと、第二章と第三章は仲山ひふみ氏が査読として内容をチェックしてくださっており、要所々々に仲山氏の有益なアドバイスや修正案が反映されています。この場を借りて深甚の感謝を。

その他の最近やった仕事や活動は以下にリストアップしておきます。

■『現代ビジネス』

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いろいろと書いています。

■連載『ビューティフルハーモニー』

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令和の時代における「調和」と「壊乱」と「コントロール」を巡る考察。0回目となるプロローグではアルファ碁とニック・ランドの「始原的な抽象作用」について書きました。こちらの連載では肩の力を抜いて好き放題書く予定です。

■『小説すばる2019年5月号』
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こちらには「私的偉人伝」という一ページコラムに寄稿しています。マーク・フィッシャーについて、なるべくコンパクトにまとめたテキストです。

■『現代思想2019年6月号 特集=加速主義』
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「気をつけろ、外は砂漠が広がっている ――マーク・フィッシャー私論」という文章を寄稿しています。
この原稿を書いていた時期は精神的にかなり落ち込んでいた(現在もですが)時期にあたり、そのときの「シンドさ」がわりとダイレクトに文章に表れているという、そういった意味での「私論」でもあります。まあ、フィッシャーについて好きなように&好きなだけ書くことができたので(自分としては)さしあたり満足しています。

■『小池紘平の世界 Vol.1』

五月のコミティア領布された合同誌。僕は「LITTLE GIRLS」という文章を寄稿しました。なお、挿絵を『COMIC LO』への寄稿歴もある作家の4番街さんが描いてくださっており、とても貴重な経験になったと思います。
内容についてはあえて自己検閲=ノーコメント(といっても特に「過激」なことは書いていないのであしからず)。即売会における同人誌という小部数の形態にはWEB媒体や商業出版にはない独自の利点――すなわち読者を意図的に限定できるというものがあります。インターネットとSNSによって失われてしまったマイクロユートピアンな共同体、それは端的に言えば「炎上的」な祝祭からもっとも遠いひとときの安息の地でもあり、そして僕はこのような空間をこそ大事にしてきたい、という素朴な思いを持っているのです。

■藤想合同誌『3』

二月のコミティア領布された同人誌。僕の他にもいろいろな方が参加されていました。「三がテーマであること」「人間が登場してはいけない」みたいなハードなレギュレーションが十三個設定されているというもの。ちなみに僕は三日分の日記を書きました。まともにレギュレーションをクリアしようと思ったら奇想天外なSFにせざるを得ない、という状況下であえて平凡な日記を書こうと試みたらどうなるか、という一種の実験でもありました。

■インタビュー

ダークウェブよりヤバい「普通のウェブ」
いろいろ偉そうに喋ってます。

■読書会

hidesys.hatenablog.com
闇の自己啓発会とかいう、いかにも危なそうな集まりに参加して『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の読書会を行った模様のレポート。