都市もWEBもアクセシブル
私がまだ仙台にいた頃の話しですが、私が東京に出て来る大分前のことです。
私は住んでいた地域である太白区の区役所に用事があり、入り口付近にて出入り口がわからないようで困った顔をなされている白い杖をついたご老人がいらっしゃいました。
私は帰り足でしたが、その方を建物の中まで案内するがてらお話しを伺うことになり、今日が障害者用のタクシーチケットの配布なのでもらいに来たが会場がわからないとのことでした。
もちろん私も会場がわかりませんし、告知らしいような立て札も何もありませんでしたので入り口付近にあった受付で聞くことにしました。
杖の方「すみません、タクシーチケットの配布はどこで行われているのですか」
受付の方「あちらのテレビのある辺りの前です」
杖の方「だから見えないんだってば」
これには苦笑しました。
そりゃそうですよね、白い杖をついた人が案内を求めて受付まで来ているのに、ただ「あちらです」そうするとタクシーチケットの配布自体が必要無いことになります。
受付のお姉さんは言葉に詰まり居辛そうにされておられましたが、私が代わりに詳しい場所を聞き、なんとか無事にタクシーチケットの配布場所までたどり着き、御担当の方とバトンタッチすることができました。※帰りは御担当の方が案内してくれるそうで、一安心しました。
ちなみに、ここは区役所です、そして受付の窓口は障害者の方への各種福祉利用のための問い合わせの入り口でもあります。
私がWEBのアクセシビリティの前にやらなければならないことがあるのではないのですか?と聞いているのは実はこのことです。
私たちは視覚に障害のある方でも閲覧のできるようにホームページを制作します、そのための技術で、設計です、私たちはその設計のために日夜研究や勉強を続けています、どうすれば使いやすくなるのか、その内容の中にはリンク先を説明する説明文や、高齢者の方に向けた文字の拡大機能などです。
そして私の親友のお姉さんは生まれついての全盲です。
インターネットでホームページを閲覧できるようにすることも、もちろん重要です。ですがそれでいて、インターネットでホームページが閲覧できるように生活できることの都市整備位もまた必要で重要な事なのではないか、とも私は思います。都市整備やハートビル法の話しではなくごく当たり前の生活の話として。
いつ、どこで私の目が見えなくなるかはわかりません、いつどこで私が聴覚を失うやもしれません。そのときに私自身が暮らせるような世の中、そう自分に置き換えて考えてみる、そうすると今の時代には色々と欠けている事がたくさんあると思います。
それが人としての思いやりであり気遣いであり、人を思いやることの大切さはごくごく当たり前のことで、自分のことだけでいっぱいいっぱいになっている人が多いこの時代で、新宿駅で杖をついた人の杖に躓いて逆ギレしている人たちもまた、自分のことしか見えていなかったからだと思います。
忘れられがちになりやすいけれど、とても大切でとても当たり前なこと、それがアクセシビリティだと私は思うのです。
なにもカタカナにしなくても、お年寄りに配慮する、障害を持った方に配慮する、小学校の道徳の時間で既に習っているはずのことなのに忘れられがちですよね。
私が言いたいのは自治体がホームページのアクセシビリティに取り組んだ。
ホームページはアクセシビリティでも、都市は決してアクセシブルでは無い。
障害を持った方でも自活できる都市を宣言し、実施してから、初めて障害者に配慮された都市である、と宣言して欲しいというのが私の本音です。
WEBのアクセシビリティを宣言するからには、都市のアクセシビリティを整備してからやってほしいものだとも思っております。 企業用ホームページも同様です。
ある一定の規模の企業は一定数以上の障害者の方を雇用せねばならないという法律があり、それが満たされている企業は本当に極わずかです。障害者雇用のための施設の整備等には補助金も出ますし、今はエレベーターも標準で車椅子でも届く高さに押しボタンがあります、決して不可能な話しではないと私は思ってもおります。ところでホームページのアクセシビリティを訴えている企業様の足下、つまり社内は本当に整備されているのでしょうか?
障害を持った方でも働きやすいような環境ですか?それが守られていなければ「口だけ」ということになりますね、多少辛口ですが、アクセシビリティを求められるのがWEBだけでは無いと言うことに目を向けられていない状況に遭遇したためこのような投稿になりました。
植木さんや、神森さん、他アクセシビリティを考えている人たちはごくごく当たり前に他人に気遣いのできるとても暖かい人たちです、WEBにおけるアクセシビリティを支えて下さっているのは、そういった方々の優しさであると私は常々思っています。
都市もWEBもアクセシビリティは思いやりと気遣いで出来ている、そう信じて。
ソーシャルメディアとそのリスク
皆さん、ソーシャルメディアと聞いて、何を思い浮かべますか?
Twitter?Facebook?それともmixi?Google+挙げた類の他にも沢山のソーシャルメディアがあります。そして、その数だけ危険性も高まる、と、言うことです。
ソーシャルメディアがビジネスへとシフトしてからいわゆる炎上も増えてきました。
一部ではステルスマーケティングでは無いか?その他やらせ疑惑だけで無く、爆弾に気が付かず、気がついたら炎上していた。そんな危険性をも孕んでいます。
これは決して他人事ではありません、あなたのすぐ身近にあります、そしてその危険性を秘めたまま、24時間、今も情報と言う名の爆弾は発信され続けています。
【企業の常設アカウントには覚悟が必要】
企業にとって、ソーシャルメディアは非常に魅力的です。
- 手軽に始められるコト
- コストがかからないコト
- とにかくお手軽なコト
- 公式ブログよりも敷居が低いコト
- お試し感覚でも開始できるコト
ソーシャルメディアは善く善く利用すれば強力なマーケティングツールとなります。ですが、ひとたび発信され一度走りだした情報はそうは簡単に止まりません。
常に失言危機との隣り合わせ、そうです、爆弾とも常に隣り合わせなのです。
また、継続していくためにも担当者の引き継ぎや責任の所在などの明確化など、一度作ってしまったアカウントには責任があることを認知していなければなりません。
【沈黙が良とされるとは限らない・逆ギレ禁止】
ソーシャルメディアを使いこなすことは非常に難しいものがあります。果たして自分達は使っている側なのか?それともソーシャルメディアに使われてしまっているのか?その判断もまた難しいものがあります。
社長もしくは社員が投稿した爆弾によっては、魚拓(※)で残ってしまう可能性もあり、記者会見を開いた際にはYoutube等で半ば恒久的に残ってしまうこともあるでしょう。
つぶやけば批判されるかもしれない状況にさらされた際に取る行動、それによっては、個人だけでは無く、企業生命をも左右されかねない状況にあります。
そんな時にあなた(企業)が取るべき行動は?
- 発言について代表自身が認識し、把握していること。
- 何は無くともまずは代表によるお詫び
- 心配をかけてしまった方々へのお詫び
- 事実関係についての確認及び対処方法の検討・模索
- 対応についての(ソーシャル)メディアを通じた正式な発表
問題について真摯に対応している姿勢を見せれば爆弾は不発に終わり、自ずと沈静化していくことでしょう。見苦しく逆ギレするような発言は、不発に終わるはずだった爆弾を再点火させることに変わりありません。
そして、また、ただ沈黙を貫くだけを、ソーシャルメディアの利用者はを決して良しとはしないことを十分に理解しましょう。発言には責任が伴うということを。
失言と言う名の爆弾に於いて、十分に反省していることを利用者の方々へ受け止めてもらえる日が来るまで、理解してもらえる日が来るまで、ファンをガッカリさせた責任はとても重く、たった一言の軽はずみな発言が大きな爆発を伴ってしまうことを。
それがソーシャルと言う名のメディアを利用することへの覚悟です。
【炎上と企業マーケティングの狭間で】
ソーシャルメディアの爆弾は大きく分けて3つに分類されます。
- 公式(代表)によるアカウントによる不適切な発言
- アルバイトを含む、社員による取引情報等の漏洩
- 特定の企業や製品に対する、批判や粘着した発言
不適切な発言や粘着を投稿時にオートでブロックしてくれる、そんな夢の様な便利機能はソーシャルメディアにはありません。
ですが、考えながら走り続けられることがソーシャルメディアのもう一つの魅力でもあり、走り出したら(情報が)止まらない、それもまた魅力の一つです。
炎上を恐れてマーケティングができるか?これも根底にある問題のうちの一つです。そして炎上を起こさずにマーケティングを行うためにも以下のように情報の適切な管理を行う必要性があります。
- ソーシャルメディアの利用に於ける啓発活動の実施
- ソーシャルメディア利用者への講習会の実施
- 個人情報保護法に則った講習会・活動の実施
- ソーシャルメディアに対する社員の利用規定の策定
ざっとですが、このように情報の発信について、予めルールを定めておけば爆発の危険性は劇的に低くなります。リスクを恐れてはマーケティングは出来ませんが、回避できるリスクがあるのならば周知徹底をしておけば良いだけの話しです。
最期に一個人としての発言ですが、無用なトラブルを避けるためには感情的にはならないこと、これを常に念頭に於いてビジネスにもプライベートにもソーシャルメディアを上手に活用して下さる方が増えることを願って。
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【Pマーク】JISQ15001ガイドラインTips【Part1】
Q, システムの仕様で地図に住所を表示するようになっているのですが、その中に住所データが含まれます。個人情報に該当しますか?
A, 地図上に、拠点を示すのみならば、特定の個人を識別出来ないため、個人情報には該当しないものと取り扱います。
Q, 取引先企業の担当者の名前だけのみなら名刺等をも管理しています、これらは個人情報に該当しますか?
A, 個人情報に該当します。
※個人情報保護法の全面施行に伴い、法の定める義務に違反した場合「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事罰が課せられます。加えて、漏洩(ろうえい)による被害や、実被害が無くても、漏洩したという事実による損害賠償民事訴訟のリスクが発生します。
事故を起こした場合、委託元、委託先双方が大きなダメージを受ける事はもちろんですが、事故・事件の原因となった委託先がビジネス社会の中でその信頼を回復することは大変困難であることが推測されます。
Q, オンラインゲームで「H/N:ハンドルネーム」や「ID」を公表しています、こういった類は個人情報に該当しますか?
A, 該当する場合があります。
通常は特定の個人を識別するすることは出来ないため、個人情報には該当しませんが、保有する他の情報と照合する事は容易ですし、特定の個人を識別する可能性があります。その場合は個人情報に該当します。例外的に有名な「H/N:ハンドルネーム」やID等からは、個人の特定が可能な場合は個人情報に該当します。
Q, 個人事業主の情報等は、個人情報に該当しますか?
A, 屋号等の場合、個人が特定されますので個人情報となります。ですが、個人経営の場合は結果企業情報と見なされ、個人情報には該当しないと判断される事があります。
Q, 同姓同名で、かつ他の情報が無く氏名だけの場合でも個人情報と見なされますか?
A, 同姓同名であっても、氏名があれば特定の個人を識別出来るものと見なされています。
Q, 携帯電話*スマートフォンを含む*電話帳に氏名と電話番号が登録されています、この場合は個人情報のデータベースとして取り扱われますか?
A, 該当します。そのためデータの取り扱いのみならずパスワード等によるセキュリティやデータの閲覧時の周囲への配慮、安全管理にはくれぐれも注意してください。
Q, 録音した会話の中に個人の氏名が含まれています、この場合は個人情報の流出にあたるのでしょうか?
A, 容易に検索可能な状況・状態に為されていない場合は個人情報のデータベースには含まれないため該当しません。
Q, 個人情報の「利用」とは具体的にはどういう事を言うのですか?
A, 定義はありませんが「保有・保管」しているだけでも「利用」とみなされます。
Q, アンケートにて「第三者提供を行う場合がありますのでご了承願います」と記載されている「のみ」の場合は、第三者提供の同意を得たと言えますか?
A, 同意を得たとは言えません。少なくとも同意しないのであれば回答せずとも良いことをユーザに対し明示・説明する必要性があります。
Q, 自社のWEBサイトで、個人情報の利用目的を公表する・明示することは個人情報の取り扱いの義務ですか?
A, 法律上の義務はありません、ですが後々にトラブルが生じた時のための証拠として重要となりますので、個人情報の送信時、画面遷移等で喪失してしまわないようデータが保存されていることが望ましいです。
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レスポンシブデザインとWebアクセシビリティ
あちらこちらに飛び火しているようですので、私なりの視点で書いてみます。
Webサイトをまずデザインありきと今更ながらに思っていらっしゃる方は、この中には居られないと想いますが、まず私が言いたいことは3つあります。
◯実装と言う意味では、アクセシビリティは「必須」だと思っています。
◯その上で、レスポンシブWEBデザインはケースbyケースで「必要」だと考えています。
◯結果、アクセシビリティは「当たり前」、レスポンシブWEBデザインは「その都度」案件の内容にも依るのですから、レスポンシブWEBデザインが「その都度」なのは、スマートフォンなどのデバイスがまだ「発展途上」にあるからです。
❏なぜ、発展途上だと思うのか?
一時期の携帯電話の様に、新しい機種が出る度に機能や特色が追加されています。その中には様々なデバイスによって違うスクリーンサイズや、モーションセンサを含む機種ごとの特色があります。これらは今後想像も付かない速度で進化していくことでしょう。
私は、現状のレスポンシブWEBデザインがこの進化の速度についていけるとは思っていません。ただ、現在ある、あらゆるデバイス市場の中では選択肢の一つとしてあってもいいとは思っています。何か含みのあるような物言いになってしまいましたが、レスポンシブWEBデザインを「Must=つまり〜でなければならない」と言う考え方には反対です。
❏アクセシビリティの新しい可能性
システム畑からの転職者である私が思うには、業務用システムやアプリケーションから弾き出される画面のソースにアクセシビリティが必要だと考えています。
認知度は非常に低いです。業務用の物では、見えればいい、使えればいいといった独特の文化があるため、Web制作に携わる人間が見たら目を覆いたくなるようなソースが使用されています。
ドキュメントタイプの宣言もない、CSSに当たるかどうかもわからない、そして直書きされたJava Script、情報の重要度は画面に関係の無いまま、システムから弾き出されたそのままになっています。
❏アクセシビリティは厚生労働省の障害者雇用にも重要?
私はそう思っています。厚生労働省は障害者雇用を推進しています。ですが、厚生労働省は、障害者の雇用対策として、障害者雇用促進法において、企業に対して、雇用する労働者の1.8%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)。この障害者雇用の枠が満たされている割合は非常に低く、雇用枠が満たされていない企業は納付金を支払わねばならなく、渋々ながらこの決して安くはない納付金を徴収されるべく支払っているのが現状です。
❏システマナイズされている限り可能な障害者雇用
日本にある企業の中で山千海千とある企業の中で、ほんの少しもシステマナイズされていない企業は無いとも思っておりますし(※但し伝統的企業を除く)仮に業務内容が何かしらのシステムを使用した物であるとすれば、業務をこなす上での壁となるのが視覚的な障害であるのならば、システムから弾き出され画面に映し出されているデータがアクセシブルであれば何の問題もありません。
❏システマナイズされている限り可能な障害者雇用
こうしてハンデを無くすことで、企業の障害者雇用枠を埋めることが可能になりますし、厚生労働省からは障害者を雇用するために必要な施設設備費等が助成されます、そういった面からもアクセシビリティは「必須」だと私自身は思うのです。
システム業界にはシステム業界なりに、WEB制作業界にはWEB制作業界なりに、お互いがお互いに手を取り歩み寄る事が出来ることを切に願っております。
言葉足らずですが、私の考えが少しでも届くことを祈って。 針生 拝