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アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

韓国ドラマ『ミスターサンシャイン』イ・ビョンホンが帰ってきた!製作費430億円の歴史超大作ドラマ

poster of korean Mr.Sunshine

Netflix

こんちくわ!Shygonです!

今回はイ・ビョンホン主演ドラマ

ミスターサンシャイン

について熱く語りたいと思います!

2018年に製作されたこのドラマは、9年ぶりに韓国ドラマ復帰を果たしたイ・ビョンホンが主演のドラマです。

日韓併合前の朝鮮を舞台に、イ・ビョンホン演じる米国海軍少佐と若い女性の揺れ動く恋心が描かれます。

 

サクッとあらすじ

1871年辛未洋擾。

アメリカ艦隊が朝鮮国軍によっての奇襲攻撃を受ける。これは朝鮮国内の混乱だけでなく、諸外国をも巻き込む歴史的な事件になってしまった。

そんな中朝鮮併合を目論む日本、責任を取らせようと軍を送るアメリカなど海外の国が朝鮮半島に集結し、翻弄されはじめるのであった。

 

チョイ海軍少佐はある極秘任務のため朝鮮に送られる。

戦争で父親を亡くしたエシンはたくましい女性で、朝鮮国を守ろうと日々鍛錬していた。

朝鮮を舞台に各国の思惑に惑わされながらも、朝鮮を必死に守ろうとするエシンと米海軍少佐と、して任務に全うするチョイは距離を縮める。

 

チョイの貧しい出生の秘密やアメリカに逃げ渡った過去など、激震の時代とともに2人の恋物語が描かれる。

 

製作費430億の歴史超大作はいかに

韓国最大のヒットメーカーの脚本家キム・ウンスクを迎え、大ヒットドラマ「太陽の末裔」、「トッケビ」で知られるイ・ウンボク監督のタッグ歴史大作ドラマを投下する!

 ユジン・チョイ

one guy with a gun stands in the winter

Netflix

朝鮮の貧しい出だが、幼い頃にアメリカに忍び込み、アメリカ人として朝鮮に出向く。幼い頃の辛い経験から自国の朝鮮を悲観的に感じる。英語、朝鮮語、日本語を話す。

世界的なスター イ・ビョンホンが演じました。

このキャスティングは韓国国内でも批判的な声が殺到。既婚ながら女性スキャンダルで、長らく韓国国内では干されていました。

 コ・エシン

one samll lady with big gun trys shooting something

Netflix

両親を戦争で亡くしながらも、朝鮮を守ろうと女性ながら銃の鍛錬を行う心強い女性。

「お嬢さん」で一躍有名になったキム・テリが心強い女性を演じる。彼女の透明感と、同時に力強い眼差しに西部劇にいそうな女の子感がぴったり。

 

SHYGON的批評

one cool guy and one small lady hide thier mouth and look each other

Netflix

朝鮮の激動の時代を描く歴史ドラマとして、日本が完全に悪者として描かれます。歴史的にみても日本は朝鮮を侵略し、1910年には韓国を併合します。

朝鮮を舞台に、代理戦争が起きた悲しい歴史をもとに、世界に振り回される男女のラブストーリーです。

 

韓国はこのようなタイプのドラマが大好きなので、見る前からなんとなくわかっていましたが、本作は日本がいかにもイジわるする完全な悪者にはなっていなかったような気がします。

たまに単純に日本を叩きたいだけのようなドラマなども存在するような気がしますが、歴史に翻弄されながらも必死に生き抜こうとする愛国心を持つ若い女性と過去の経験から自国をあまりよく思っていない軍人の関係が対照的に描かれます。

 

それとセットで日本人が多く描かれ、そのほとんどが韓国人が演じています。

日本人から見てアクセントに訛りがあって、若干違和感を感じます。でも韓国人がこれを演じているという事実に驚きを隠せません。

one ugly man is smile

Netflix

ある日本人のイジわるな軍人が度々、物語の進行を邪魔するシーンがよく出てきますが、その彼の演技は日本語の発音の違和感を超えて、圧倒されました。

日本語を話すシーンがよく出て来ますが、ほとんどが韓国人が頑張って日本語を話した程度なので、日本人からしたら少し無理があるように正直思いました。

 韓国の実力を突きつけられる

歴史ドラマということもあり、どれだけ事実に寄せて現実味を演出するかがカギになります。その観点からするとその時代を忠実に描く本作には共感することができました。

ただ日本語のシーンがあれほど多いならもう少し日本語が上手い人がやって欲しかったという印象が残ってしまいました。

 

このドラマをみてまず思うことは、韓国人スゲーなです。

映画やドラマに限らず韓国人が世界的に活躍していますが、日本との差がここで鮮明に現れている気がします。

Netflixが430億円を注ぎ込んでの大作ですが、韓国人俳優たちの高いレベルでの言語能力はいまの日本人を勝っています。

主演のイ・ビョンホンは韓国語だけでなく、英語、日本語を堪能に使い分け、このドラマの臨場感を彼ひとりだけで演出していますよね。

韓国国内では彼が主演するということに反対する声が多数あったようですが、こんな高いレベルでの会話能力&3つの言語を使い分ける俳優が他にいないので、彼のかわりができる人がいなかったのではないでしょう。

スキャンダルを起こそうと、いくら嫌われようと彼の実力は本物で、数少ない韓国を代表する俳優であることが証明されたドラマなような気がします。

 

後に430億の巨大な制作費がかけられたドラマは本当に価値はあったのか。僕は無いと思います。勿論個人的な感想ですよ。24話もあって毎回1時間をゆうに超える。

ただただ眠くなってしまいますし、僕からしたらあんなに時間の流れを遅く感じたことはないですね。

最後まで見れたのは、ちょっとおかしい日本語の会話シーンと主演のキムテリがちょっぴし可愛いが最後の繋ぎでした。

 

びぇ!

韓国ドラマ『相続者たち』韓国国内で社会現象となった2013年視聴率No.1ドラマ

poster of korean tv show The Heir

BSフジ

こんちくわ!Shygonです!

今回は視聴率28.6%を記録した韓国ドラマ

相続者たち

について熱く語りたいと思います!

2013年に韓国で放送されたドラマ相続者たち。大企業の御曹司たちの高校生活の1年間を描いた本ドラマは韓国で2013年の視聴率No.1を記録したドラマです。

 

あらすじ

母子家庭のチャウンサンはアメリカに留学した姉が結婚するということでお祝いにアメリカに向かう。

しかし、その結婚はデマであり、どうしようもない生活をする姉に目を向けることが出来ず、さらに母親と必死に働いたお金を盗まれ、倒れ込んでしまう。

そんなとき同世代の韓国男子キムタンが手を差し伸べる。実はこの男、韓国最大の財閥帝国グループの御曹司だった。

 

舞台は韓国の超お金持ちしか行けない帝国高校に移り、超貧乏のウンサンを取り巻く三角関係のラブストーリーがいまはじまる...?

 

パク・シネ綺麗すぎる問題

one beautiful lady is almost crying

BSフジ

 チャ・ウンサン

主演のチャ・ウンサンを演じるのは韓国では大人気女優パク・シネ。これまでも幾度なく韓国男児の心を掴んできた彼女ですが、本作では母子家庭で育った少女を演じます。

 キム・タン

韓国最大の帝国グループの次男。

これもまた非の打ち所がないイケメン イ・ミンホが演じます。190cmの美形イケメンがチャ・ウンサンに恋します。

 チェ・ヨンド

同じく韓国最大級の財閥グループゼウスホテルの御曹司。

キム・タンとは因縁の仲で、力で相手をねじ伏せる凶暴な男です。チャ・ウンサンに密かに想いを寄せる凶暴ゴジラがたまに見せる優しいとのギャップがたまんないですね。

 

貧乏少女を取り合う御曹司たち

three males wearing student costume standing

BSフジ

母子家庭なうえに母親が喋れないハンディキャップで、生活はキツキツ。

そんな絶望的な状況で笑顔で必死に勉強して、アルバイト生活を送る頑張り屋チャ・ウンサンに、惚れてしまった御曹司たちと彼らを取り巻く様々な問題が彼らに降りかかります。

男女が両想いだから付き合ういったような普通の恋愛ができないのが御曹司の唯一の悩みです。会社の後継として会社の運命を高校生の頃から託された彼らは気ままに生活などできません。

 

常に大金が絡む家族には本当の愛情など存在せず、愛がなんなのかもわからなくなるくらい多くの人の思惑が常に飛び交っているのです。

父親が亡くなったら遺産はどう分配されるのか?大金が懐に入る可能性をかけ、家族の情などそこには一切存在せず、ただ己の欲望のために行動します。

その光景はまさに相続者たちを描くドラマそのものなんです。

 

チャ・ウンサンが可愛すぎる問題パート2

one cool guy is smile

BSフジ

「オレのことスキでしょ。」、「美男ですね」、「アルハンブラ宮殿の思い出」など次々に話題作のヒロインを演じ、常に世界中に夢を与える女優パク・シネ。

本作でも可愛すぎんだろ!とツッコみたくなるあどけなさや美しさは言葉に表現できません。

 

ク・シネの凄いところは作品ごとに人間が違うのです。

「オレのことスキでしょ。」ではヒロインのイ・ギュオンという国楽のプロを目指す音大生を演じ、「相続者たち」ではどんなに恵まれてなくても必死に努力するチャ・ウンサンを演じます。

「アルハンブラ宮殿の思い出」では失踪した弟を捜そうと奮闘するヒジュを演じます。どの女の子も同じ女優が演じているのにも関わらず、全くの別人なのです。

イ・ギュオンはウンサンでもないし、ヒジュでもない。またウンサンもヒジュ、イ・ギュオンでもないのです。

 

ク・シネはドラマごとに顔が全く違って、別人の人生をそれまでも、そしてこれからも生きるかのようなまさに役者を全うしている気がしますね。

そんなパク・シネの演じるキャラクターはとにかく綺麗。韓国ドラマは基本的に1時間以上あるし、20話くらいまであるし、長いし無駄な描写が多い。

眠くなりますが、彼女が映っているシーンが多ければ多いほど、時間を忘れてそのドラマに溶け込めるそんな魔女の魔法にいつも見事に引っかかっている気がしてるんですけど、やめられないんですよねぇ~

 

びぇ!

 

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韓国ドラマ『オレのことスキでしょ。』イケメン男子と素朴な女の子の甘酸っぱいラブストーリー

poster of korean tv show heartstrings

フジテレビ

こんちくわ!Shygonです!

今回は韓国ドラマ

オレのことスキでしょ?

について熱く語りたいと思います!

2011年に韓国で放送されました。音大を舞台に、人間国宝のおじいちゃんを持つ女の子イ・ギュウォンと全ての女の子をトリコにするバンドマン イ・シンを描くラブコメディ。

サクッとあらすじ

eight people including four ladies and four guys are standing

フジテレビ

ある音大がこの物語の舞台。

韓国の伝統的な音楽国楽の世界的な演奏者のイ・ドンジンの孫イ・ギュウォンは将来有名な国楽の演奏者になるため日々過ごしていた。

一方、学校イチモテ男のイ・シンはバンド ステューピッドのボーカルとして学校中の女の子から絶大な人気を誇っていた。

大学創立100周年記念舞台で監督を務めるキム・ソクヒョンはブロードウェイ帰りの売れっ子監督で、彼はいち早くイ・ギュウォンの才能に惚れ、舞台に参加するように促す。

西洋の音楽を嫌う祖父にバレないように舞台の練習に参加したギュウォンは次第にイ・シンに心惹かれるようになり‥

 

これが韓流ドラマなのね

one couple si almost kissing

フジテレビ

1話1時間の15話編成で完結する物語。

一言でまあ長いというのが最初の印象でした。”そんな伸ばす必要あるのか?’’と思うくらいストーリーを伸ばして伸ばして、男女の恋愛を描く生粋の純愛ドラマです。

1話1時間が僕には耐えられないくらい長く感じて、毎回ちょうど30分で飽きがくるドラマでした。だからあとの30分が地獄のはじまり。

 

そんなことを書いているとじゃあ見なくていいよとか言われそうなので、一応書いておくと、一緒に見ていた友達が韓国ドラマは後から面白くなるからと言われ続けたので頑張って、その来たる面白くなる瞬間を待ちわびて頑張って見たんですよ。

その友達男なのに、女性みたいに感受性豊かで男女が距離を縮めるだけで少年のように目を輝かせて、キュンとする。僕からしたら理解できない状況だったけど、そういえば日本の映画やドラマもそうだったなと思い出したりしました。

数年前に日本中で韓国ブームが再来して、日本のドラマや映画も韓流よりになり、韓国でヒットしたものが日本でリメイクされるほど韓国製映画ドラマが浸透しましたね。

日本の韓国みたいな表現が個人的には合わなくて、アメリカの映画に没頭するようになりましたけど、はじめてザ韓国ドラマを見たのでその率直な感想をここに残しておきます。

 

すごい印象的だったシーンは、後味の悪い男女間での会話が終わったとき、ひとりは立ち上がって、立ち去ろうとします。その時、一回立ってそっぽ向いて歩き出す。そして、もうひとりが ” 待ってよ!”って引き止める。

こんなシーンが毎回のようにあって、”おい!その動作いるかよ!”ってツッコみたくなります。なんかロボットの機会動作みたく、日本のファミレスの超マニュアル感満載の接客みたく。

そんな小さな仕草すべてがいままで日本のドラマで何回も見た記憶があって、それを理由に僕がそれらから遠退けたんです。

そんな原点とも言えるべきザ・韓国製のドラマをみて、いい経験をしたなという率直な感想。

 

パク・シネが綺麗すぎる問題

f:id:shygon:20181213090603j:plain

フジテレビ

憶測ですが、韓国ドラマに没頭する多くの人たちは普段の生活にはない胸キュンを追い求めて、韓流ドラマに行き着くのだと思いますが、その韓流ドラマたちはとにかくヒロインが美男美女。

このドラマでヒロインを務めるパク・シネは韓国を代表する女優さんで絶世の美女です。僕がこのドラマを全部見ることができたのは彼女が写ってるからで、彼女の姿を一目みようとみているようなもんです。まわりと比べても圧倒的な存在感があり、本当に美しい。

 

イケメンくんのイ・シンも普通にその辺では歩いてないようなザ・芸能人のような顔つきで、バンドのボーカル。

普通に生きてても一生会うことがなさそうなペアがひとつのドラマで鉢合わせ、一生に一度の恋を全力でする。

そんな恋を普段からしたいなあという人たちはこれをみてそんな恋を自分でもしてみたいと望みます。

そんなシェア層を向けたドラマですので、自分たちの理想の夢を可視化できるように映像にした感じなのかな

 

音大が舞台ということもあり、このドラマオリジナルの曲が結構いいです。

ヒロインのイ・シンを演じるチョン・ヨンファは歌手で、彼が書き下ろした曲に、我らがヒーローパク・シネが歌い上げるバラードは心惹かれます。

韓国語全くわからないし、このドラマを通して唯一知った”あにょ”は多分いいえとか違うみたいな意味に相当すると思いますが、そんな無知な僕でも曲は楽しめます。

その中でもおすすめの曲を一曲ご紹介しておきます。

夢か恋か

one beautiful aisian girl is smile

フジテレビ

最初の方は ” もうオレ持たないんじゃないか?”と疑うくらい長いし、僕からしたら薄っぺらい。とにかくつまらない。でも次第にひとつのテーマが浮き出てくるのです。

イケメンくんイ・シンと国楽の演奏者イ・ギュウォンの恋愛ドラマですが、これは舞台で監督を務めるキム・ソクヒョンとその彼女の話でもありました。

舞台で監督を務めることになった彼はそのテーマとして、自分が経験した昔の恋を舞台で表現しようとしました。

 

当時、彼と学生時代に付き合っていたその彼女は夢を追い求め、ニューヨークに飛び立ちます。夢を叶えるために、ふたりの関係を終わらす決断をしたのです。

捨てられたソクヒョンはそんな彼女を恨みますが、結局彼女は怪我を負い夢を断念して帰国し教授になります。逆にソクヒョンはニューヨークで大成功します。

ギュウォンとイ・シンも同じ状況に遭遇です。才能を認められたギュウォンはイギリスに飛び立ち、自分のために夢を断念してほしくないイ・シンは自分の手術を彼女には隠してひとりリハビリ生活に挑みます。

若い頃にお互い人生の瀬戸際を経験したカップルと若くてなにもかもが無知なカップルを対照的に描かれていました。

一度ブロードウエイを夢見るも怪我で自らの夢を断念した彼女はこんなことを言っていました。

 

若い頃は未練も恐れもない

だから挑戦できた。

いまからみても付き合ったことは

後悔していないし、

別れたことも後悔していない

 

なんか人生の先輩から若い世代へのメッセージのようにもとれますよね。

若いヒロインカップルのその後どうなったかはこのドラマでは描かれていませんでしたが、なぜか僕にはアンチテーゼに思えてくるのですよね。まあそんなことはどうでもいいのかこのドラマでは。

なんかこのドラマを深く見ていくと僕のお気に入りの映画「ラ・ラ・ランド」に共通するテーマがあるような気がしました。

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最後に

勘違いしないで欲しいのが、僕はこんな王道な恋愛映画ドラマが個人的に向いていないなぁと思うだけであって、じゃあそんなの観るなとは言っていません。

人それぞれ趣味趣向があるし、映画やドラマに求めているものが違えば、好んでみる映画も変わってきます。

僕なんかは社会派ドラマがとても好きで、その映画を通してなにを、どういまの現代に投げかけるのかを基準に映画を観ます。

でも反対に映画なんて意味がある必要がない。

ただ日常的に体験できないことを映画に求めた結果、なにも考えずにゲラゲラ笑えるコメディ映画や非現実を求めて胸キュン映画を見るのもよし。結局人それぞれということです。

びぇ!

 

 

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韓国映画『哭声/コクソン』あらすじ感想:耳を澄ましてごらん 死神の声が聞こえてくるよ

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20世紀フォックス
山々に囲まれ渓谷の麓にある田舎街で、ある日信じられないことが起きる。ゾンビのように腐敗し切った遺体が警察に回収され、すぐさまその噂は町中に広がった。
同様の事件が立て続けにひとつの街で起き、ついに住民も動揺を隠せないでいた。
 
すると街の人たちは、変な噂話をそこら中でするようになる。それによるとつい最近この近くに見知らぬ日本人が引っ越してきたと。
その人が町にきてから、変な事件が多発した、犯人は絶対あいつしかいない。
 
ある田舎町を舞台に、連続して起こる不変死の原因と、突如現れた謎の日本人の正体とは?
 
住民の不安はやがて怒りに変わり、単なる噂話が本当の真実に移り変わる‥
 
衝撃の結末に韓国国内に激震は走り、大ヒットを記録した本作を紐解く。
 
「哭声/コクソン」(곡성(哭聲))を観てみよう。
 

ある日人が死ぬ、これは?

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ある田舎まちで巻き起こる謎の事件を解明するひとりの警官が主人公。娘と妻と母と一緒に住み、おっとりした性格の持ち主だ。
大人負けしないほどズカズカと物を言う娘はとにかく頭の回転が早く、将来が期待できそう。まだ6歳ほどの娘がいい歳した父親を論破し、困らせる。
 
本作はミステリー&サスペンスなので、終始険悪でどんよりした雰囲気が流れるが、娘と父親のコントだけはニヤニヤしながら見てしまう。
主人公の警官はあのちょうどいいボンクラ感と鈍臭い感じがとても最高。妻と車の中でセックスしてるとことを娘に見られてしまい、6歳の女の子に"気にしないで!"と慰められる。
 
どっちが父親で娘なのかわからなくなってくるほど、たまに立場が入れ替わる。さらに同僚の警官にまで臆病で女々しいと罵倒されるわ、娘までにも情けないと言われる。
そのどうしようもない感の漂う警官がついに本気をだすときがくる。
 
娘も誰かに洗脳され、ついにこの町に呪いが存在すると確信を得た父親は、数人の仲間を連れて森へ駆り出し、その日本人とやらが住んでいる奥地へ向かう。
普段は誰にも頼りにされない男が愛する娘が取られると本気になる。そこのギャップと熱意がひとつの醍醐味になってくる。
そして聖書からの引用から本作の幕をあけるその謎感。
 

キリストとコクソン

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"人々は恐れおののき霊を見てると思った。”
"そこでイエスは言った。”
"なぜ心に疑いを持つのか?”
"私の手や足を見よ。”
"まさに私だ。触れてみよ。”
"この通り肉と骨もある。"
「ルカによる福音書」24章37~39より 

こんな謎の宗教じみた文章がヅラヅラ書かれた冒頭から本作ははじまる。その言葉の通り本作は宗教映画だ。
キリストの話をアジアに置き換え、本作に登場する人物たちは全て聖書に出てくる登場人物に文字られ、アジアで聖書の中で描かれたお話が再現された、といった感覚 

韓国の映画を見ていると、韓国人がいかにキリスト教を信仰しているかがよくわかる。パクチャヌク監督の「渇き」では、ヴァンパイヤになった神父が主人公だし、Netflixドラマ「アルハンブラの宮殿」でも教会のシーンがたた出てくる。 

結婚式はチャペルで挙げ、葬式はお寺で行う独特な文化を持つ日本とは違い、韓国ではキリスト教の教えが根強く残っている
韓国のドラマや映画を見ていると自然に感じることだが、実に興味深い。
聖書からの引用からはじまる時点で、迷宮映画感満載だったが、この映画は正式な答えが存在しない。 

観客のなぜ?を解決するために、気を使ってヒントを監督ははじめに提示してくれた。本作「コクソン」についてのネタバレや解説に関しては他のブログで丁寧に解説してくれていたものがあったので、それを参照してください。
 
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キャストと監督

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「チェイサー」や「哀しき獣」のナ・ホンジン監督が脚本と監督を務めた。
過去2作品では裏の組織絡みのサスペンスドラマをスピィーディーかつドラマチックに描き韓国国内でも数々の賞を受賞した。
本作で感じるバイレンス描写とサスペンスならではのゾワゾワ感は、常に予測不可能なジェットコースターのようで、見終わった後の乗り物酔いは変わらない
 
ただ前作などと圧倒的に違う点は、終わり方が全くスッキリしないのだ。監督自身これをスッキリさせようとも思ってもいないらしく、胸のモヤモヤ感が止まらない。
前2作に関しては、韓国人がいかにも好きそうなバイオレントサスペンスでとくに印象は残っていない。
けど、観客に解釈を預けるという、意図的な諦めが映画の表現として斬新だし、結末を迷宮入りさせたのが、旬でもある。
 
謎の日本人を演じた國村準は外国人史上はじめての青龍映画祭(韓国の映画祭)で助演男優賞を受賞した。
同年の青龍映画祭ではカンヌ映画祭で脚光を浴びた「お嬢さん」や、「JSA」などで知られるイ・ビョンホン主演の「インサイダーズ/内部者たち」と競い合いナ・ホンジン監督が監督賞に輝いた。
主人公の警官は、「傷だらけのふたり」のクァク・ドウォンが演じた。「国際市場で逢いましょう」のファン・ジョンミンまで出演するほどの豪華キャストが脇に揃える。
 
最後まで予測ができず、なにが起こるのか全くわからないまま映画が終わった本作。観客にその結末は委ねるというように、実際にみてどう思うか感じて欲しい。
 
びぇ!

韓国映画『監視者たち』あらすじ感想:ブタが銀行強盗を捕まえる!?

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Next Entertainment World

特殊犯罪を扱う監視班と前代未聞の切り口で銀行強盗を続ける集団の攻防を描くサスペンスドラマ。

 

2007年の香港映画『天使の眼野獣の街』のリメイク作品。

『華麗なる遺産』のハン・ヒョジュが本作で韓国最大の映画祭青龍祭で主演女優賞を受賞しました。

韓国国内で500万人の観客動員数を記録した2013年最大級の大ヒット作

 

『監視者たち』(감시자들)を観てみよう。

 

さくっとあらすじ

並外れた瞬間記憶力と観察力を持つ新人刑事ハ・ユンジュは、SCUの「監視班」に配属される。

監視班は凶悪犯罪者の監視、追跡を専門とする部隊だった。

しかし、武装犯罪集団のリーダー、ジェームズは巧みに監視班の目を逃れて犯罪を繰り返す。

警察本部からは監視班の存在意義が問われる中、ユンジュら監視班の面々は総力をあげてジェームズを追跡する。

www.youtube.com

 

韓国警察特殊犯罪課

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新人捜査員と銀行強盗

SCU(=韓国警察特殊犯罪課)が組織ぐるみで銀行強盗を続ける集団を追うサスペンスドラマ。

各分野のエリートが集い劣悪な犯罪集団をチームあげて追っかける監視班は、メンバーをコードネームで呼び合う。

 

コードネームは動物の名前で統一されていて、子鹿、サル、ダチョウ、オウムなど馴染みのある動物が多い。

その中でもナマケモノや毒蛇のトリッキーな呼び名もある中、主人公の女性刑事ハンジュはブタと名付けられた。

国の組織の中でもエリートが集まる集団なのに、名前のチョイスが独特で若干の厨二病感は否めないが、そこでもひと笑い

 

主人公ハンジュは綺麗な顔立ちなのに、髪はボサボサで、髪をなびかせながら歩くイケイケ女性とは程遠いといった感じで、どっちかというとオタク臭く、ヘッドフォンを首にぶら下げて、フードを深くかぶる。

美人さんがアクションやサスペンス映画になると一気にオタクぽくなって、その美貌をわざとみすぼらしく感じる映画は多いが、本作のまさにその手の一種。

 

有名な代表作だと、『ミッションインポッシブル』や『ジャックリーチャー』などのトムクルーズの作品と構成が似ていて、美男美女がわざと残念な容姿に変貌し、ちゃっかり事件を解決するギャップ。

『攻殻機動隊』の主人公のように真面目なエリート新人女性デカが組織に慣れるまでの初々しさも感じ取れる。

 

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イマイチ色気を感じないオタク女子が、急に目付きが変わり、華麗にアクションを見せたり、男顔負けの図太い攻撃にも耐え、iphoneを武器にカウンター攻撃を食らわせる。

色気の全くないオタクが数秒後には、目付きが変わって、華麗な体さばきに俊敏な足さばきを披露し、まさに観客はこれを待っていたよ!と待ちきれないほどの期待感を寄せる。

 

韓国映画に共通する”韓国映画あるある”の日本語のフレーズを入れてくる演出もしっかりある。“みんな泥棒です。”と一種のパワーワードとも取れる印象的なワードが組織内を飛び交い謎の満足感に駆られるね、

日本語が出てくることがよくある韓国映画だけど、いつもその日本語チョイスがトリッキーすぎる件。

なんか笑ってしまう。

 

共同監督と脚本を務めたのが、チョ・ウィソク監督で、『監視者たち』は第3作目。2002年製作の『Make it big』は当時26歳だったチョは韓国で最も若い期待の監督のひとりだった。

『JSA』や『インサイダーズ/内部者たち』のイ・ビョンホンを主演に迎えた4作目の『MASTERマスター』は公開された2016年で11番目にヒットした作品にランクイン。

韓国を代表する清純派女優ハン・ヒョジュが主演を演じた。韓国のカメレオン俳優ソル・ギョングが監視班の所長を演じ、大ヒットした『頭の中の消しゴム』のチョンウソンが銀行強盗集団の冷酷なボスを演じた。

 

びぇ!

韓国映画『嘆きのピエタ』あらすじ感想:魂の抜けた借金取りのある男が学んだこと

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NEW
韓国の巨匠キム・ギドク監督が製作した本作はヴェネツィア映画祭で最高賞にあたる金熊賞を受賞した。
ある借金取りの男と母親を名乗る女の物語をキリストと聖母マリア様に例えて韓国のダークな部分を独自の目線で描く。
 
ギドク監督の集大成とも言える『嘆きのピエタ』(피에타)を観てみよう。
 

サクッとあらすじ

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ある韓国の町工場。
全盛期の勢いは完全に衰え、活気さえも消え失せていた。死んだ工業地帯で借金取りをするイ・ガンドは、貧乏人を障がい者にして金を巻き上げていた。
ある者は腕を切断し、ある者は足を折った。人々の生活と平然とぶち壊し、無言でその場を立ち去る。
 
ある日母親を名乗る人物がガンドのもとに現れる。
30年前にまだ幼かったガンドを捨て姿を消した女を、はじめは無視しながらも、徐々に謎の感情を持つようになる。
やがてこれまで持ったこともなかった愛情を知るようになったガンドは、その女を母親として愛するようになり、血も涙のなかった男がついに変わり始めるのだった。
 
ついに障がい者にされた人間に母親が拉致され、母親の行方を追うガンドだったが、信じられないことを目の当たりにする‥
 

労働社会に潜む闇と人間の残忍さ

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Gacktに激似すぎww

主人公のガンドがめちゃくちゃGacktに似てる。
これだけははじめに言いたかったんですよね。いくらガンドが無口でひどいことしても、韓国語をベラベラ話していても、全く話が入ってこない。
さぁそんなクダらないことはさておき、
 
本作が舞台になる韓国のある工業地帯は、人間社会の底辺を描いているようだった。
廃れきったこの街に工業など残っているはずもなく、生き残っている中小企業はとにかく生活が厳しい。
材料費すらも回収できないほど安価な報酬が追い打ちをかける。食べるものを買うお金がない人間が最終的に行き着く先は、裏レートで借金をかりることだった。
一時的に生活ができるようになっても本末転倒で、先に待っていることは返しきれないほどの借金の嵐。
 
毎日のようにガラの悪い人間たちが家の周りをウロウロし、金を返せと脅してくる。どうしようもなくなった最後には障がい者でもないのに障がい者手当を国からもらう。
障がい者じゃないならどうするか?簡単なことだ。事故に見せかけて障がい者になればいい。
主人公のガンドはそんな人生の末路みたいな人間たちを日々事故に見せかけ障がい者にすることが彼の仕事なのだ。
 
日本でも数十年前まではヤクザが主体となって各地で借金取りが存在していたが、日本からそう遠くはない韓国でも状況は変わらない。
人を殺さないようにビルから突き落としたり、指を落とすのを平然のように眺める。
その死んだ目をしたガンドにはもう、感情など一切存在せず、ただ日課のように機械を起動して、目の前で腕を切断する。
 
彼は母親に小さい頃に捨てられ、愛情を全く知らないまま大人へと成長してしまったので、まるで魂が抜け残忍なガンドにあるのは、暴力と怒りのみ。
だから、目の前で家族が泣き喚こうと、必死に訴えてこようとなにも感じない。その彼の姿は悪魔の形相をした何かであった。
ひとつだけ言えることがあるとしたら、あれは人間なんかではないということ。
 

ピエタが嘆く

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(ネタバレが含まれます)
 
感情を殺し、障がい者に仕立て上げるのが仕事で借金取りのガンド。突如母親を名乗る女が現れることで全てが変わる。
ガンドにもかすかな親近感と愛をその母親に感じ、これまでの忘れられた時間を取り戻す意味で、ふたりの時間を大切に過ごす。
 

しかし、母親が何者かにさらわれると事態は急変する。必死の思いで、思いつく限りの場所をまわり母親のありかを探すも見つからない。

そして障がい者になったかつての町工場の人間を間のあたりにすると、ガンドは徐々に自分のやってしまっていたことを初めて理解し、後悔するようになる。
そのきっかけは実の母親であり彼女との出会いであり、そこではじめて他人を大切にするということを知ったのだった。
 
自分のせいでその母親は毎日なくなった息子の墓の前で手を合わせ、子供がいた家庭は、悲しそうな顔をする子供をただみることしかできなかった。人を愛することを初めて知り、徐々に変わっていくガンド。母親への思いがより一層強まっていく。
だたその母親は実の母親なんかではなかった。わざと自分が襲われたように自演し、血眼になって探すガンドを撹乱する、ガンドに復讐をするために彼に近づいたのだった。
 
この女の正体はガンドによって息子を殺された町工場の青年の母親であり、その仕返しのためガンドのもとに母親として忍び込み大切な人が亡くなるという悔しい気持ちを感じてほしかったのであった。
偽の母親にめちゃくちゃにされたガンドは泣きながら訴えるも、そのガンドこそが女の人生をめちゃくちゃにした張本人なのだ。
 
このすべてが線となって繋がる感じがとても気味が悪い。
本作を一言で表すと因果応報や”やったことは必ず帰ってくる”になるが、本作ほど見終わった後の胸のモヤモヤ感を感じる映画は他にない。
 
ガンドはこれまで自分がなんとも思わずにやってきたことを痛感した。
たかが数万円のために一生を棒に振るほどの後遺症を残すほど追いやったこれまでの自分の行いや、それによって家族までもを巻き込んでしまったことも。
 
ついにガンドはこれまでやってきた全てのことを悔いるように足に鎖を巻きつけ車に引っ掛ける。まだあたりが薄暗い朝、車が動くのと同時にガンドは無残に引きづられる。
すべては自分が望んだこと。彼の残す血はラインを引くように道路に色濃く残るのをいまでも忘れない。
その真っ赤に染まった道路とそれを微かに照らすまだ辺りが薄暗いある朝、彼はこれまでの行いを傍観するように立ち伏せ、何事にも動じずに静かに消えていった。
 

韓国のキリストとマリア

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韓国映画はキリスト関係の映画がとても多い。
本作『嘆きのピエタ』の”ピエタ”は、十字架に架けられ死んだキリストを聖母マリア様が抱く彫刻や絵画を指す。
ルネサンスを代表する彫刻家ミケランジェロが完成させら『ピエタ』が有名だが、本作はそんな”ピエタ”を主人公と重ね合わせていた。
 
例えば、本作の他にも『哭声/コクソン』は、登場人物とキリスト教の「ルカの福音書」を重ね合わせ反響を呼び、ヴァンパイヤの神父を描いたSFファンタジー映画『渇き』がカンヌ国際映画祭で審査員賞に輝くなど、韓国映画はキリスト色が強く、国際的に評価が高い。
 
 
びぇ!

韓国映画『弓』あらすじ感想:海の上で一生を過ごす少女と老人の物語

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Kim Ki-duk Film
6歳のときに老人に引き取られ、それから老人とふたりで船の上で暮らすこと10年。
陸を見たことがない少女は、老人が営む釣具屋の手伝いをしている。
弓占いを得意とする老人は船上で楽器を奏でる。ふたりが作り上げる幻想的な世界は、少女がある青年に出会うことで崩壊していく。
 
船の上を舞台に心が通い合ったふたりの絆と愛の物語
 
さぁ孤独な少女とひとりの老人の物語『弓』()を観てみよう。
 

サクッとあらすじ

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16歳になった少女は、老人に引き取られてから、10年間一度も陸地を見たことがない。
ひとりの老人と海上に浮かぶ一隻の船で釣具屋を営みながら、少女は楽器を弾いたり弓を得意としていた。
老人とふたりきりの幻想的な世界に生きる少女の唯一の外部との接点は、釣り具屋に遊びに来るお客さん。
 
海で孤立する船にひとりぼっちの少女は、弓を射ることで自分の身を守り、楽器を弾いて孤独な世界を生き抜いていた。
老人と少女の間に会話は一切なく、あるのは楽器と弓を通じて心の意思疎通が会話の手段となっていた。
 
ある日若い青年が船にやってくる。これまでお客さんとは距離を取ってきた少女はその青年に興味を持つ。
いつものように少女に近づいてくる客は、老人が弓を射て威嚇し、少女の身を守る。
だが少女は老人の目の届かないところで青年と心を通わせはじめるが‥ 
 

海の孤独と心の孤独

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笑顔が素敵な16歳の少女と老人の間に会話のシーンが一切ない。
ふたりが映画の主人公のはずが、メインのキャラクター間の会話する場面が全くないのは極めて異常だ。
でも、不思議なことに全く飽きない。船に乗るお客さんがまわりでワーワー話すシーンだけで、この映画は成り立っているのだ。
 
少女が青年と出会い徐々に心惹かれていくシーンでも会話のシーンはほぼないし、そこに存在するのは心のキャッチボールで、言語化されていない。
セリフを極端に減らし、心で両者が繋がっているという状況が、より一層映画を謎のベールで包み込み、幻想的な世界観を創出する。
海の上という陸と遮断された場所は、少女の心の孤独感を間接的に描き、老人との限られた狭い空間で強く生きる少女像を生み出す。
 

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10年間少女を大切に育ててきた老人と、思春期を迎えやがて大人になっていく少女の対立が次第に深くなっていく。
これまで少女の身の安全を思って匿ってきた老人は、徐々に少女を執拗に保護するようになり、自分の手中の中で支配する独占欲が湧いてくるのだ。
ひとりの男の汚い欲望のために少女の人生は破壊されたのだった。これまで絆で繋がっていたはずのふたりの関係は、どこかで少女は老人のモノ化され、支配されていた。
 

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本作『弓』の題名通り、弓はとても大きな意味が込められている。ひとりの女性として身を守る道具であり、弓占いの役目にもなる。
普通は言語のキャッチボールが成立してはじめて意思疎通になるも、彼らの会話を弓を通しての会話となっていた。
印象的なラストシーンでは、彼女は弓の矢で処女を卒業し、大人の女性となって新たな一歩を踏み出した。
 
なにもなかった少女にとって『弓』とは、生きる上で重要な役割をこれまでも果たし、老人のもとを離れる覚悟をする際も、弓で終わり弓で新たな人生をはじめる。
 
"ぴんと張った糸には強さと美しい音色がある"
"死ぬまで弓のように生きたい"
 
こんな言葉で本作は幕を閉じる。
これまで小さな船しか知らなかった彼女は、これから大きな希望を持って海を彷徨うのだろう。
 
キム・ギドク監督は初期作品『魚と寝る女』でも川に浮かぶ釣り具屋を営む無口な女性を主人公にした。
本作『弓』と題材と主人公像がガッチリ重なり、少女の孤独感とまわりに頼らずに生きて行く強い女性像が映し出される。
初期作品『魚と寝る女』では、若い男女が互いに偏愛する物語だったが、本作は老人と少女にスイッチし、弓を射るシーンや楽器を奏でることで幻想的な世界を作り出した。
 
さらに同じく初期作品の『受取人不明』では、米軍が駐在する韓国のある町を舞台に、米軍駐在と韓国人の相関関係を風刺的に描いた。
『受取人不明』では、弓を射るシーンが映画の象徴的なシーンで使われるなど、本作『弓』はキム・ギドク監督にとって初期作品でやってきたことの集大成であることを意味する。
 
びぇ!

韓国映画『受取人不明』あらすじ感想:韓国に滞在する米軍が問題を起こし続けるわけ

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Tube Entertainment
米軍が基地を構える近くのある韓国の町。
米軍を極端に近い場所で住む彼らの生活は他とは少し違う。毎日のように外国語が飛び交い、武装した兵士たちが平然とあたりを歩いている。
アジアの小国を舞台に、米軍の存在とそのまわりの住民のそれぞれの心の葛藤を描く。
 
さぁ『不明受取人』(수취인불명)を語ろう。
 

サクッとあらすじ

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黒人米軍の父親と娼婦だった韓国人母親のハーフの男チャングクは、廃バスに母親と二人で住む。母親は突然いなくなった父親がいつか戻ってきてくれると信じ、手紙を書き続けていた。
 
ウノクは右目が悪い少女。片目にコンプレックスを抱え、常に右目は髪で隠し、暮らしていた。チフムは父親の営む家業の手伝いをし、学校に通えていない。
学校に通い英語が話せるウノクに、英語をしゃべれないチフム。アメリカかぶれの悪ガキ少年らにからかわれるチフムは、助けてくれるウノクに心惹かれて行く。
 
米軍と恋仲関係にあった母親とその息子はまわりからは白い目を向けられ、目を手術するために必死に英語を勉強し、米軍に接近する若い女の子。
米黒人との混血だからと居場所がないチャングクと、米軍と距離を縮めたいウノクに、アメリカに憧れを持つ、アメリカかぶれのガキ大将。
 
米軍の駐在で揺れるある町を舞台に、それぞれの立場から韓国とアメリカの関係を紐解く。
 

住む町内に米軍がいるということ

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韓国は地形上とても複雑な国である。
北にはいつ戦争が勃発するかわからない北朝鮮と睨みを利かせ、海の向こうからはアメリカ軍が安全とかいって侵略してくる。
住んでいる町からさほど遠くない場所で、体が一回りも二回りも大きい人間が銃を腰掛け平然と歩いてる。
訳のわからない言語を話し、集団でウロウロうろついているのだ。たとえ彼らが善人だろしても、外観のイカつさと小柄なアジア人とは正反対の西洋人はまず恐怖を覚える。
 
「グエムル 漢江の怪獣」でアメリカ政府を批判したり、「JSA」では北朝鮮との関係を描くなど、国際問題が映画の中で描かれることが韓国では多い。
日本統治時代を描いたNetflixドラマ「ミスターサンシャイン」や映画「お嬢さん」でも日本が韓国を占領している外国として描かれている。
それほど韓国という国が歴史上さまざまな国に悩まされていて、それに関して不満が多いのだ。
 
日本でも沖縄をはじめ日本各地に米軍が駐在しているが、韓国でも軍人による犯罪が絶たないという。
オスプレイの騒音や米軍によるレイプ事件をメディアは多いが、いまいち実態がつかめない。
実際に住んでいる人たちがなにを見てどう感じたのかを、本作は多面的に描こうとしている。
米軍に恐怖を覚え、全ての生活が彼らの存在によって狂わされた人間と、米軍に憧れを持ち近づこうとする少女に、立場によって思うことはさまざまだ。
 
アメリカかぶれの少年に関しては、服装も韓国の田舎だと浮いてるよ?と言わんばかりの格好に、英語を話し始めちゃうイタさ。
彼らが出てくるたびに昔の自分の延長線上にいる存在で、笑みが溢れてしまうが、本作は決して真っ向から米軍を批判していないようにみえる。
さらに韓国人からの目線だけではない。米軍の人間だって来たくてこんなアジアの小国に来た訳ではない。
生まれてこれまで地平線まで広がる平地を見て育ってきた男にとって山々は耐えれるものではないし、まさに生き地獄なのだ。
 
監督を務めたキム・ギドクは韓国を代表する奇才として知られる。
ギドクにとって初期作品の本作「受取人不明」はいかに若かりし頃の彼が才能に恵まれていたかがよく分かる。社会を風刺する作品を制作しようとすると、一方面からでしかその物事を捉えようとしない。
 
痛烈にただ批判するだけの作品は多い。しかし本作は韓国の中でも、米軍に対して穏便派と反対派に分かれ、米軍の内情もひとつの意見として、全てまとめて描いている。
同じく初期作品の「魚と寝る女」と本作「受取人不明」は政治色の違う作品だが、描かれる女性像が逆風に吹かれようと強く生きる女性で、口数の少ない女性であった。
 
この2作品を経て、キム・ギドク監督の名が世界中に広がるきっかけとなるのだ。
 
びぇ!

韓国映画『魚と寝る女』あらすじ感想:孤独を生きる娼婦は雨の中に佇む。

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CJ Entertainment
大きな川のほとりにポツリと浮かぶ釣り具屋。
男たちはその簡易的な水に浮かぶ家で釣りをしたり、賭け事をしたりして楽しむ。釣った魚はすぐさま食料としてさばき、食べる。
そんな釣り具屋でひとり働く無口の女。お客に釣り具を貸すかたわら、娼婦としての顔を持つ。
 
あるひとりの男と繰り広げる偏愛ドラマ。
 
『魚と寝る女』()を観てみよう。
 

サクッとあらすじ

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川辺に佇む少女
川辺に浮かぶ釣り具屋を営むひとりの若い女は、毎晩娼婦としての顔を持つ。一言も口を開かず、客の対応を黙々とし、金を受け取る。
目的も欲望も一切なく、ただロボットのように日々の時間が経っていくのだった。
 
そんなある日ひとりの男が釣り具屋にやってくる。罪を犯し身を一時的に隠すため、釣り具屋さんにきたのだった。
そんな男と無口な女は徐々に惹かれあい、不純な恋愛感情を持つようになった。他の娼婦をわざわざ呼ぶ男に嫉妬心を持ち、嫉妬心から互いに偏愛しはじめる。
 

愛し方がわからないんだ。

自分の感情を上手く言葉にできない。
常に無口で簡単な受け答えすらもままならない。
自分の気持ちを伝えたくても、それを伝えられない。
 
そんな孤独の中に生きる女が選んだ方法が偏愛だ。
私のほうを向いてよ!と言わんばかりに暴力を降り、鋭い眼光を向ける。
全ては自分の存在を認めて欲しい、それだけだ。
 
陸地から離れた川に浮かぶ釣り具屋は、一般社会で隔離された人間を象徴し、そこから逃れようとする人たちの集まりにもなっていた。
釣り部屋に足を運ぶ客も、変な小金持ちやそれを客とする娼婦の人たちだ。
 
そんな一般社会から一歩離れた場所には、犯罪者の隠れ家の温床にもなっていた。人間の末路が凝縮した場所で出会う若い男女。ふつうなわけがない。
 
自分を認めて欲しい、振り向いて欲しいの一心で、邪魔な人間を殺し、川に埋める。
それが娼婦だろうが、ギャングだろうが、それが彼女にとっての唯一の表現方法なのだ。
 
他人を傷つけることも厭わず、自分の体に傷をつけることにも躊躇しない。
ふたりの男女は他人を傷つけ、自らの手で自分すらも傷つける。口の中に釣り具の刃を入れて引っ張ってみたり、膣部に刃を入れて思いっきり引っこ抜く。
 

 連続殺人がなくならないひとつのわけ

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世の中には、一般の常識を持つ人間からすると、到底理解できないことがある。
連続殺人事件はいつになっても無くなりはしないし、毎日のように自殺をするものが後を絶たない。
 
世の中に対して偏った感情とお思い込みが、思いもよらない事件を巻き起こすことだってある。死にたければ、ひとりで死ねばいいと、正論染みたことを言えば言うほど、彼らは疎外感を感じ、危険な感情を触発させる。
 
そんな偏った考えや、立場の人間の内情を描こうとキム・ギドク監督はした。2000年に公開された本作「魚と寝る女」は、偏愛する男女の末路を描き、キム・ギドク監督の初期作品としてカルト的人気を博した。
 
綺麗な国民的女優が殺人鬼を演じた「親切なクムジャさん」でも人間のダークな部分を描いたが、ギドク監督の作品は度肝を抜いてる。
92分で強く生きようとする若い男女の内面を本作では描き切った。奇才として人気を博すギドク監督の初期作品を覗いてみた。
 
びぇ!

自称コワモテ男が初恋でみせる乙女心

poster of korean movie Man in Love

Next Entertainment World

よくある傷だらけのふたりの恋愛物語。

まさに題名の通り40年間なにも考えずに生きてきた借金取りと、父親の看病のため借金がある銀行員女性の恋愛映画。

本作ほど王道感満載の恋愛映画はなく、恋愛映画好きには、熱狂するポイントがいつくもある。

 

自由奔放に生きてきたどうしようもない男が運命の女性になると、激変する。これまでの行動をさっぱりやめ、一直線にその女性のことを想い続ける。

これまであれほど人から嫌われそうなことをやってきた人間が、急に初恋に落ちた小学生のように可愛く見える。

はじめは売れないギャングスターのような格好をし、ズガズカ他人の領域に入ってくるアホなど、女性は好きじゃない。

 

それでも諦めが悪い馬鹿は、小学生の絵描き教室レベルの絵に何個もの四角の箱を描く。

 

"これが全部埋まったら借金帳消しにしてやる。"

"一日1時間会うたびにこれのマスが一個埋まるよ。"

という謎すぎるデート文句をつける。

 

one man trys to touch one young lady

ねぇ〜待ってよ!と話しかけるおじさん

大ヒット韓国映画『頭の中の消しゴム』に本作は非常に似ている。主人公の男が、性格も良いイケメンか田舎の40過ぎのイタいギャングもどきかの違い。

初恋の女性を見つけ、やっと自分も幸せな家庭が築ける、これまで弟の家庭にいい年をしながら迷惑をかけ、自分は好き勝手やっている。

 

そんな人生の変換期をやっと迎えるのにも関わらず、災難が起きてしまう。主人公はすでにガンに犯され、生きれても半年と宣告される。

なぜ人間は平等じゃないだ??と神さまに聞きたくなるくらい、絶妙のタイミングでその仕打ちを受ける。

韓国映画を少し見てみようと最近よく見ているが、はじめはなぜこれがアジア全土にウケているかさっぱりわからなかった。

 

いっつも韓国映画に出てくる主人公女性は、恵まれない元気な女の子。そして、その主人公の周りにいる女性はみんな本当に性格が悪い。

たぶんこれを見て、世界中の僕を代表して男性どもは"韓国の女性可愛いし、頑張り屋じゃん!"と勘違いするかもしれないが、よく考えて欲しい。

 

主人公以外キレイに性格が鬼悪い。

つまり韓国の女性は気が強いのだ。

 

これ以上いうとディスったと思われるので、言葉を頑張って選んだ結果気が強いという表現が適切かと。

 

one man and one young lady standing

そういう観点で考えると、本作は意地悪してくるほかの女性が出てこないので、主人公ふたりにだけフォーカスできる。

主人公のヒロインが土屋太鳳にそっくりで見分けがつかないほどでびっくりした、というのが本作の1番の感想なのかも。

 

邦画君の膵臓を食べたいも、主人公の女の子は癌に侵されるも、他人に気を使わせないくらい元気に振る舞い、自分の病気を隠そうとする。

昔好きだった吉高由里子主演のドラマ美丘でも、同じような女の子が病気ながら、必死に生きる希望を探す物語であった。

 

そんな病気がある子元気なわけがないや、病気の子がこんなに可愛いわけがないとかいう意味のわからない批判をまたに見るが、こんな恋愛映画で行われることなど現実になるなんて思わないほうが良い。

現実的かどうかの話ではなく、その映画やドラマを通じて、病気ではない人間が生きる希望や生きることについて考えるキッカケになれば、そのドラマの存在意義はきっちり成立する。

 

だってもしいい年したおじさんが必死に生きることを訴える映画見たって、誰も見ないでしょう?

 

例に挙げた二作も両方ともヒロインがとても綺麗。綺麗だからみんな見る。じゃあこの映画はどうか。いい年したチンピラおじさんがガンに侵される。

でも映画としてとても面白いし、共感してしまう。他の映画がしてこない角度から生きる希望を描こうとした異色な作品なわけ。

とても美しかった。

 

びぇ!