下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

渡辺源四郎商店 第39回公演「法螺貝吹いたら川を渡れ」@こまばアゴラ劇場

渡辺源四郎商店 第39回公演「法螺貝吹いたら川を渡れ」@こまばアゴラ劇場

作・演出
畑澤聖悟

出演
高坂明生
山上由美子
工藤良平
音喜多咲子
小舘 史
三津谷友香
白石恭也
木村慧
塚本佳苗

三上陽永(ぽこぽこクラブ)
朔摩和門(劇団ひろさき演人)
長谷川等(浪岡演劇研究会)
柾谷伸夫(演劇集団ごめ企画)

バングラ「習作・チェーホフのかもめ」@アトリエ春風舎

バングラ「習作・チェーホフのかもめ」@アトリエ春風舎

原作:チェーホフ 構成・演出:三村聡
「人生を描くには、あるがままでもいけない。かくあるべき姿でもいけない。自由な空想にあらわれる形でなくちゃ。」
原作の台詞の一節だが、その通りに『かもめ』を再構築してみたらとんでもなく残酷な本質があらわになって驚いた。
そしてそれは、美しかった。
2021年 緊急事態宣言下での初演、2023年 豊岡演劇祭での再演を経て、更に磨きがかかったバングラ版『かもめ』をアトリエ春風舎にて再々演!

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バングラ
2017年、俳優として活動してきた三村聡が、『マクベス』を上演する為に演劇ユニットBhangra(バングラ)を立ち上げ、構成・演出を手掛ける。
以降、2018年と2019年の『ワーニャ伯父さん』、2020年の新型コロナによる延期を経て2021年の『かもめ』と継続的に古典作品を上演している。
2022年、演劇人コンクール2022に参加し、豊岡演劇祭2022期間中の江原河畔劇場にて最終上演審査作品『マクベス』を上演し、優秀演出家賞を受賞。

出演
中林舞、 奥田龍平、喜多京香(山の手事情社)、三村聡

スタッフ
作:チェーホフ
演出:三村聡
舞台監督:菅原有紗(ステージワークURAK)
照明:三浦あさ子
音響:古川直幸(Led Cetus)
衣装:綾
演出助手:渡辺可奈子(山の手事情社
宣伝美術:梅本恭子
制作:古川智史

劇団未来「パレードを待ちながら」@こまばアゴラ劇場

劇団未来「パレードを待ちながら」@こまばアゴラ劇場


劇団未来「パレードを待ちながら」@こまばアゴラ劇場を観劇。カナダの劇作家ジョン・マレルの作品を現代口語の関西弁により、上演している。戦時中のカナダの地方都市を舞台にした翻訳劇だが、翻訳劇として東京の言葉に近い言葉に翻訳されたテキストを稽古場でそれぞれの俳優が普段話している日常言語に近い言い回しに直していくことで、翻訳劇的ではないリアルな演技に変換している。海外戯曲の上演としてはかなりユニークな上演形態であり、そこで醸し出される空気感が面白かった。

作:ジョン・マレル 翻訳:吉原豊司 演出:しまよしみち
2022年初演。第77回文化庁芸術祭「優秀賞」、第1回関西えんげき大賞「優秀作品賞」W受賞。
舞台美術を刷新した再演は、2023年大阪演劇フェスティバルにおいて「作品賞」「女優賞」受賞。
今回こまばアゴラ劇場での公演は、関西えんげき大賞「副賞」により3度目の公演が実現。
昨年60周年を迎えた大阪の老舗劇団、女性5人が東京進出します。
最初で最後の「劇団未来」こまばアゴラ劇場、是非ともお見逃しなく!!


劇団未来
1962年9月2日創立。2022年9月に創立60周年を迎えました。社会人だけで構成された劇団。
座付作家・和田澄子の創作劇・2003年から東京在住のふたくちつよし作品を大阪弁化して上演。
2023年には新進気鋭の南出謙吾作品を上演。和洋新旧問わず、好きだと思った作品に必死に食らいつく!


出演
キャサリン:肉戸恵美
ジャネット:池田佳菜子
イーヴ:前田都貴子
マーガレット:三原和枝
マルタ:北条あすか
スタッフ
演出:しまよしみち
演出助手:金澤百合子、和田澄子
舞台美術:渡辺 舞
大道具:みらい工房、夢工房、安田幸二
小道具:三上華奈、肉戸恵美
衣裳:三原和枝
照明:染川充成
音響効果:東條利秀
音響オペレーター:柏倉和浩
歌唱指導:加藤光一
アクティングアドバイザー:八木延佳(TCL大阪)
宣伝美術:中面慶子
イラスト:池田佳菜子
舞台監督:林睦人
舞台監督助手:藤岡英幸、近江博子
制作:前田都貴子、北条あすか、池田佳菜子、則清泰男

茶会「アゴラ花見もどき そそる街こまば座談」@こまばアゴラ劇場

茶会「アゴラ花見もどき そそる街こまば座談」@こまばアゴラ劇場

企画:森一生青年団
駒場の過去から現在までをゆるく話したいと思います。ゆるい座談会です。
駒場では一揆があったり昭和史の重要人物が住んでいたり、おもしろい土地です。
もうすぐなくなるアゴラ劇場で、もう少しこの土地やこの劇場について話していたくて企画しました。
土地に文化が生まれ、培養されていくのを考えるのは楽しいです。劇場の近くにはなぜか川が流れている、とか。例えば下北沢にはダイダラボッチ川が流れ、駒場には空川が流れています。どちらもそそる名前です。駒場はおもしろい。そそる街です。そんなことを、集まって、なんか喋りましょう、という時間です。よろしくお願いいたします。


茶会『アゴラ花見もどき そそる街こまば座談』
遺跡とか史跡とか、かつてそこにあった建物や出来事について想像するのが好きで、そういう場所を歩いていると、かつてそこを同じように歩いた歴史上の人たちと袖振り合うような気持ちになります。そういえば劇場にも袖という空間がありますが、劇場の袖も好きです。

以前、下北沢をリサーチしたイベントをやりました。縄文時代から現在まで時代を横断して資料とともにトークし、街歩きをやって、本多劇場の本多一夫さんとトークしたりしました。いろいろあったそそる土地で、まさにその土地について話すのは少しドキドキして楽しいです。

「もしかしたらこうなんじゃないか」などと仮説を妄想して土地、人物、出来事をつなげたり組み替えたりして話したいと思います。そういう話をしていて楽しい人を集めました。

(トピック案)
駒場が最初に歴史に登場する点/将軍の鷹狩の場/1867年の一揆駒場という地名/
将軍から軍事、そして資本へ/一揆、軍事、アカデミック、リズム/
川の近くに劇場は現れる/荏原から江原へ/下北沢と渋谷に挟まれた地/
下北沢には十字架が描かれた。では駒場には何が描かれた?/
空川にえぐられた谷底に蓄積したもの/文化のダム/前田公爵と柳宗悦
帝都線が運ぶもの/帝都の線が引かれた意味/こちらとアチラ/
鍼灸と神泉のブームの間/駒場で育った文化人/各年代の重要人物を輩出しがちな地/
駒場が日本の演劇に刺さりすぎ説/映画のロケ地/淡島通り駒場を歩いた人たち/
アゴラの伝説/2.5次元演劇は駒場から生まれた? ……etc

出演
森一生青年団)、曽根千智
他、ゲスト後日発表

スタッフ
制作協力:寺垣沙織(青年団)、半澤裕彦(アゴラ企画)

日時
2024年4月30日[火] - 4月30日[火]

4月30日 火 16:00
受付開始・開場時間:開演の30分前
終了未定(最大20:00)
※入退場自由(途中入場、途中退場大丈夫です)
※軽飲食可(アルコール、匂いの強い食べ物等はご遠慮ください)

・第一部「駒場」古代〜1983
・第二部「アゴラ劇場」1983〜2024

こまばアゴラ劇場サヨナラ公演|こまばアゴラ劇場地域貢献公演 青年団第100回公演「銀河鉄道の夜」@こまばアゴラ劇場

こまばアゴラ劇場サヨナラ公演|こまばアゴラ劇場地域貢献公演 青年団第100回公演「銀河鉄道の夜」@こまばアゴラ劇場



こまばアゴラ劇場サヨナラ公演|こまばアゴラ劇場地域貢献公演 青年団第100回公演「銀河鉄道の夜を観劇。平田オリザ版「銀河鉄道の夜」は私にとって特別な作品と言っていい。それは平田オリザが原作小説を書いた映画、舞台版の「幕が上がる」に劇中劇として登場。その作品はももいろクローバーZが出演。この両者の邂逅はももクロファンでも青年団のファンでもあった私にとっては晴天の霹靂とでもいうべき大きな出来事だったからだ。

www.youtube.com



原作:宮沢賢治 作・演出:平田オリザ
「銀河ステーション―。」
星祭りの夜、1人寂しく夜空を見上げるジョバンニの耳に突如響く車掌の声。
親友カンパネルラとともに“本当の幸せ”を求めて様々な星座を旅し、2人の行き着く先は―。

出演
チーム蠍座:菊池佳南 富田真喜 山﨑千里佳 たむらみずほ 奈良悠加
チーム白鳥座:山田遥野 永田莉子 福田倫子 知念史麻 髙橋智子

スタッフ
舞台美術:杉山 至
舞台監督:中西隆雄
照明:西本 彩
音響:泉田雄太
映像:ワタナベカズキ
映像操作:島田曜蔵
衣裳:正金 彩 中原明子
票券:服部悦子
制作:赤刎千久子

simokitazawa.hatenablog.com

加茂慶太郎・宮崎玲奈『実験ラボ2024年4月10日』

加茂慶太郎・宮崎玲奈『実験ラボ2024年4月10日』


『実験ラボ2024年4月10日』では加茂慶太郎・宮崎玲奈のふたりがそれぞれの作品をふたりで試演。その間の稽古も観客に公開し、将来の上演に向けての試行錯誤が行われた。
加茂慶太郎の作品を見るのは今回が初めて。逆に宮崎玲奈はこれまで何度も作品を見たことはあったが、演出およびに作品制作の過程を見るのはこれが初めてで非常に刺激的な経験であった。

加茂慶太郎と宮崎玲奈による、いま創作において問いたい命題を思いっきり実験する場。

🗓️2024年4月10日(水)
📍STスポット

こまばアゴラ劇場サヨナラ公演 青年団第99回公演「S高原から」(2回目)@こまばアゴラ劇場

こまばアゴラ劇場サヨナラ公演 青年団第99回公演「S高原から」(2回目)@こまばアゴラ劇場




作・演出:平田オリザ
高原のサナトリウムで静養する人、働く人、面会に訪れる人…。
静かな日常のさりげない会話の中にも、死は確実に存在する。
平田オリザが新たに見つめ直す「生と死」。



出演
島田曜蔵 大竹 直 村田牧子 井上みなみ 串尾一輝 中藤 奨 永山由里恵 南波 圭 吉田 庸 木村巴秋 南風盛もえ 和田華子 瀬戸ゆりか 田崎小春 松井壮大 山田遥野

【出演者変更のお知らせ】2024.02.15
出演を予定しておりました倉島聡は、体調不良のため休演させていただくこととなりました。倉島に代わり、永山由里恵が出演いたします。

スタッフ
舞台美術:杉山 至
舞台監督:中西隆雄
照明:西本 彩
衣裳:正金 彩 中原明子
宣伝美術:kyo.designworks
票券:服部悦子
制作:金澤 昭

こまばアゴラ劇場サヨナラ公演 青年団第99回公演「S高原から」@こまばアゴラ劇場

こまばアゴラ劇場サヨナラ公演 青年団第99回公演「S高原から」@こまばアゴラ劇場


青年団によるこまばアゴラ劇場サヨナラ公演の第一弾。おそらくこまばアゴラ劇場でもっとも多くの公演回数を観劇した青年団の作品が「S高原から」ではないかと思っている。これはこの作品が青年団の初期を代表する作品であるからということもあるが、現代口語演劇、群像会話劇、そして私が名付けた「関係性の演劇」の典型的な作品であることからある時期繰り返し若手公演として上演されたこともあるからだ。
これがどういう作品であるかについては何度も繰り返して評しており、それを引用すると次のようになる。

平田の芝居と最初に出合ったのは「ソウル市民」だったのだが、当時、「静かな演劇」ないし「静かな劇」と呼ばれていた平田の舞台について、その呼称には違和感があったもののそれがなにであるのかは分からず、この「S高原から」を見てその本質から平田オリザによる群像会話劇を「関係性の演劇」と呼ぶべきではないかとはっきりと確信したのもこの舞台によってであった。

 「関係性の演劇」とは登場人物の関性をそれぞれの会話を通じて提示することで、その設定の背後に隠蔽された構造を浮かび上がらせるという仕掛けを持った演劇のこと。平田の作品をこう呼ぶことにしたのは「静かな演劇」と呼ばれていながら、一部では新劇(リアリズム演劇)への回帰とも当時、解釈されていた平田の演劇は西洋近代劇の理論的支柱と目されていたスタニスラフスキー(そしてその後継であるメソッド演劇論)が前提としていた内面を持つ個人としての全人的存在である人間を否定して、人間というものはいわば複数の関係性を束ねる結節点のようなものとして存在しているにすぎないというまったく前提の異なる人間観をもとに構想されていたからだ
。そういう違いがあり、だから、一見見掛けが似ているところがあったとしても、「関係性の演劇」とリアリズム演劇(近代演劇)は別物であるということ。こういう演劇観は後に平田自身が著作のなかで明らかにしていることだから、現在時点でことさら強調するのも間抜けな感じが否めないが、要するにそういうことをはっきり感じさせた作品がこの「S高原から」だったわけだ。

 冒頭で「平田の方法論がよくも悪くも典型的な形で具現されていて」と書いたのにはちょっとしたアイロニーも実は含まれたもの言いでもあった。「関係性」ないし「関係的」というのは「記号的」と言い換えることも可能で、この戯曲には例えば「ソウル市民」ややはり平田の代表作と目されている「東京ノート」と比較してみたときに関係性の提示のありかたがあまりにも露わであり、それゆえ舞台を見終わった後の印象として個別の事象よりも全体として設計図のように描かれた骨組みがより前面にはっきり出てきて、図式的に感じられる欠点もあるということは指摘しておかなければならない。つまり、あまりにも平田の理論通りに作られていて余剰がないというか、教科書的な作品でもあるのだ。

 トーマス・マンの「魔の山」を下敷きに構想された「S高原から」は高原にあるサナトリウムの中庭にある休憩場所が舞台となる。ここには感染はしないけれど、治療の方法がなく完治することもないという病気*2に罹った患者が入院している。この芝居には大きく分類すると入院患者、病院のスタッフ、外部からこの病院への訪問者(患者の面会者)という3種類にグループ分けできる人物が登場し、それが相次ぎこの場所に現れ、さまざまなフェーズの会話を交わすことで物語は進行していく。

 「魔の山」から平田が引用してこの舞台のなかで何度も変奏されながら繰り返されるのがこの閉ざされた空間であるサナトリウムと下界との間に流れる主観的な時間の違いである。これは付き合っていた恋人との別れを経験することになる患者、「もうこんなに長くいるのだからここから降りてほしい」という婚約者と降りない患者などいくつかのエピソードによって繰り返し基調低音のように繰り返される。

 そしてそこに隠されているのはもちろん「死」ということだ。「死」は一般に私たちが暮らしている下界においては隠蔽された存在だ。だが、この患者たちにとってはいつか自分にもやってくる日常そのものでもある。ここに平田が描き出した会話を克明に観察していくと

 患者のグループは冗談などに見せかけて頻繁に「死」のことを話題にするのに対して、訪問者たちはその話題を回避する、あるいは見て見ないふりをする。そして、患者の友人たちは患者本人がいない時だけ、直接それに触れることを避けるようにして「あいつ相当悪いんじゃないか」などとそれを話題にするが、本人の前ではそれを本人が話題にしても笑ってそれを回避するような態度をとる。

 「死」とは「関係性の不在」であり、「関係性の演劇」においてそれを直接提示することはできない。繰り返される別れのエピソードは外部との関係性がしだいに希薄になってきていること、つまり、患者らが生きながら、ここで死んでいる状況を平田は象徴的に提示しているわけだ。
 平田の「関係性の演劇」には実はもうひとつ特徴がある。それは同じような関係を持つ2つの関係性がもうひとつの関係性を連想させるということ。簡単に言えば隠喩(メタファー)である。この舞台のラストは中庭に置かれたソファの上でまるで死んだように眠りつづけるある患者の姿で終わるのだが、この眠る患者の姿から観客はやがて来る「死」の姿を感じ取ることになり、そこでこの舞台は終わりを迎えるのである。


青年団「S高原から」のレビューから引用(http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20050716

 何度も見ている「S高原から」ではあるが、今回の上演についてどこか既視感があるなと思い上演記録を調べたところ、2022年4月に今回とほぼ同じキャストによる上演があり、それを3回見ていることがこのサイトの過去ログを検索して判明したのだ。

作・演出:平田オリザ
高原のサナトリウムで静養する人、働く人、面会に訪れる人…。
静かな日常のさりげない会話の中にも、死は確実に存在する。
平田オリザが新たに見つめ直す「生と死」。



出演
島田曜蔵 大竹 直 村田牧子 井上みなみ 串尾一輝 中藤 奨 永山由里恵 南波 圭 吉田 庸 木村巴秋 南風盛もえ 和田華子 瀬戸ゆりか 田崎小春 松井壮大 山田遥野

【出演者変更のお知らせ】2024.02.15
出演を予定しておりました倉島聡は、体調不良のため休演させていただくこととなりました。倉島に代わり、永山由里恵が出演いたします。

スタッフ
舞台美術:杉山 至
舞台監督:中西隆雄
照明:西本 彩
衣裳:正金 彩 中原明子
宣伝美術:kyo.designworks
票券:服部悦子
制作:金澤 昭

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劇団身体ゲンゴロウ5周年記念公演「ナマリの銅像」@新宿スターフィールド

劇団身体ゲンゴロウ5周年記念公演「ナマリの銅像」@新宿スターフィールド

劇団身体ゲンゴロウ5周年記念公演「ナマリの銅像」@新宿スターフィールドを観劇。1637年12月、島原・天草の農民たち(キリシタン軍)は原城(現・長崎県南島原市)に集結し、女性・子供・老人も含む総勢3万7千人が立て籠もった。これが俗にいう「天草四郎の乱」で「ナマリの銅像」はこの史実を基に製作されている。
 伝説では天草四郎ジャンヌ・ダルクのように自ら信じる思想に殉じた悲劇的な人物として描かれることも多いが、この「ナマリの銅像」ではマイクパフォーマンスの腕を買われ政治的な闘争に駆り出されることになるパチンコバイトの少年・四郎と重ね合わされ、何の変哲もない人間が状況に流されて英雄的な役割を演じざるを得なくなってしまう「普通の人の悲劇」として描かれていく。
 作品として少し分かりにくいのは最後の部分に戦争の勇士として銅像が作られた若者たちの像が戦争が終わり、用済みになったように壊されて廃棄され、ただの金属原料になってしまうというエピソードと途中でアジテーションをするパチンコ店の少年のイメージがどうもミスマッチで結びつかない感じがあることだ。ハンドマイクで反乱する闘志たちをあおる少年の姿は1960年代末の安保闘争を連想させる。それゆえ、この作品はいずれも多勢に無勢で敗北に追い込まれていく安保闘争における学生たちと幕府の武力の前に全滅に追い込まれる「天草四郎の乱」の島原・天草の農民たちを重ね合わせるというアイデアはそれなりの整合性があったとは思う*1が、これを最後の場面で太平洋戦争に従軍した若者たちに重ねあわせたのはいささか唐突な感が否めないと感じた。
 作品の表題からすれば作者が最後の場面が重要と考えているのは間違いなさそうなのだが、戦犯だとして戦時の英雄の像を廃棄するエピソードと島原の乱キリシタンのためにイコンとしての像を作り続けた少女の物語はやはりちょっと結びつきが弱いと感じざるをえない。  

《原案》菅井啓汰、武田朋也
《脚本・演出》菅井啓汰

《あらすじ》
ある日、少年は神にされたー
結成5周年を迎える「劇団身体ゲンゴロウ」の代表作、『ナマリの銅像』が大きくリニューアルして蘇る!

圧政強まる島原で、まもなく一揆と噂が走る。
パチンコバイトの少年・四郎は、口先達者の意気地なし。けれどマイクパフォーマンスの腕を買われ、神の子・天草四郎を演じることになり…

若者は、鉄砲見るまで無鉄砲。
母親は足並み揃えて改宗し、
親父がビクビクしながら竹槍を持てば、
傘連判の百姓共の右往左往の芝居の始まり。

四郎の口先は、神を人々に信じさせ始め…傘連番の人々の物語が走り出す。

運命に魅せられ、試され、殺された。
誰もが知ってる英雄の、誰も知らない物語。
教科書には描かれなかった、少年たちの青春譚再びー
《出演》
[A]初鹿野海雄、山﨑紗羅、新治龍之介、四家祐志、小林かのん、廣田直己、濵田創、越智愛
[B]初鹿野海雄、近藤璃乙、山本嵐太、四家祐志、小林かのん、廣田直己、濵田創、新治龍之介

《日程》
3/27(水) 19:00 A班 ◎
3/28(木) 19:00 B班 ◎
3/29(金) 14:00 A班 ◎ / 20:00 B班 
3/30(土) 13:00 A班 ☆A
3/31(日) 13:00 B班 ☆B / 18:00 A班 
◎…アフタートークあり。ゲストは公式SNSにて発表。
☆…本編終了後、アフターエピソードとして短編を上演。
出演:初鹿野海雄、新治龍之介(A)/山本嵐太(B)、山﨑紗羅(A)/近藤璃乙(B)、小林かのん、濵田創

上演時間:約2時間

《会場》
新宿スターフィールド
(東京都新宿区新宿2-13-6 光亜ビルB1F)
アクセス:JR新宿駅より徒歩10分、新宿三丁目駅より徒歩8分

*1:ただ、逆に言えば類似のアイデアの作品は大島渚作品など映画ですでに作られており、斬新さには欠けるかもしれない。