あの日、あの時、みた夢

幼い頃から、よく夢をみる子だった。

ああ、それは寝ている時にみる夢。将来の夢、の方ではない。

 

その日見た夢の話をしては、よく大人を困らせたことがある。

たしか「冷蔵庫に食べられた」「巨大な蜂に襲われた」「時空の狭間に閉じ込められた」など、断片的に思い出せるその少し空想じみたストーリーは、今もなお、私の貴重な睡眠時間を奪っている。

 

そんなに不思議な夢を見るのなら、一度診断してみれば?

 

そう言われたことがある。

自分が気づかない、いや気づこうとしない胸の奥で信号を発しているのかもしれないと思ってたけど、何かと照らし合わせることで、それが自分の世界から切り離されてしまうような何とも表現しづらい寂しい気持ちに襲われて、心に留めていることにした。

 

振り返ってみれば、わたしの人生は、まるで夢のような筋書きばかりだ。

覚えていないのである。断片的にしか。

数年前の傷も、数か月前に交わした約束も、数日前に何に感動したいたのかも。

これらの出来事は輪郭をかたどらず、ぼんやりとした雲のようにただ浮かんでいる。

ああ、これも夢だったのか。

 

いや、それは、夢じゃない。