さよならだけが人生だ
コロナ過の中、まもなく、人事異動のシーズンです。本年度末、大人数での送別会は難しいかもしれませんね。 別れといえば、
この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ
(「勧酒」于武陵・井伏鱒二訳)
という詩があります。元は漢詩ですが、井伏鱒二が見事な日本語訳に仕上げてくれました(原文はカタカナ)。
人生にはどこかで悲しい別れがあり、どんなに美しく咲いている花でも突然の嵐によってその全てを奪われることがある、そういうはかなさこそが人生なのだから、それは受け入れて、前を向いて歩いていこうよ、というようなニュアンスを感じることができます。
寺山修司はこの言葉によって幾度も青春のクライシスを乗り越えることができたといいます。別れに限らず、不遇にあるときも、人生には、そういう一面もあるのだから、そういった心の準備をしておけば、前を向いて生きていけると、そっと背中を押してくれる詩でもありますね。
読書の秋に
読書の秋です。ところで,日本人はどのくらい本を読んでいるのでしょうか。文化庁が実施した「国語に関する世論調査」(平成30年度)によれば,「1か月に大体何冊くらい本を読むか」という設問に対し,47.3%の方が,1か月に1冊も本を読まないと回答しています。また,これは,平成20年度,平成25年度の調査と比較しても,あまり変化は見られないようです。この調査を見る限り,半数近い方が,1か月に1冊も本を読まないというのが現実であるようです。
確かに,現代は,インターネットの発達により,より簡単に「情報」に接することができるようになりました。本を読まなくても,それなりの「情報」は入手できます。インターネットでは,検索機能を利用することにより,必要とするときに,必要とする「情報」が,手に入れられるようになったと思います。また、紙の本には、著者だけではなく、出版社、編集者、その他本を作成することに携わるすべての方の意向が反映され、一つのテーマについて体系的であるといえます。このように、インターネットにはインターネットの良さが、紙の本には紙の本の良さがあると思います。これからの時代は,インターネットと紙の本の利点をうまく組み合わせ,いわば,「いいとこ取り」をして,活用していきたいものです。
いい仕事をしていくために,また,よりよく生きるために,何が必要でしょうか。その一つとして「本質を見抜く力」(=洞察力)が挙げられると思います。この「本質を見抜く力」を養うために,読書は格好の手段になると思います。著者の主張に対して,ここは共感できる,ここは違うのではないか,私ならこう考える,その理由はこうだと,自分で「本質を見抜く」思考を養成する訓練にもなると考えられるからです。
このように,読後,いわばアウトプットとして,自分なりに考え,気づきを残していくようにすれば,本の内容が長く記憶され,単なる知識を超えた「本質を見抜く力」を涵養でき,読書が重要な学びの手段になっていくといえるのではないでしょうか。
コロナ禍後の心構え
緊急事態宣言を脱し、状況が少し落ち着いてきたように見えても、まだまだ先行き不透明な状況が続いています。4月と状況が異なるとはいえ、特に東京では、数の上では新規感染者が増えています。
このような状況では、だれもが不安になってしまいますが、結局のところ、今ある現実を冷静に受け止めた上、信頼できる情報、対処方針に従いながら、前を向いて歩いていくことが肝要だと思います。
大切なのは、今の現実をどう調整して歩いていくかであって、いたずらに先を嘆いたり、過ぎ去ったことに対し、くよくよしても仕方がないことです。
状況は、そのまま受け入れて、それぞれが、ビジョン、目標を持ちながら、「今、ここ」を、心明るく楽しく生きることが私たちにとって最も大切なことなのではないでしょうか。