退職エントリ
株式会社参謀本部の方で技術系の人間としてアルバイトの方をさせて頂いておりましたが、この度、一身上の都合により辞めさせて頂きました。
秘密保持契約も結んでいますし、特に社内の暴露記事を書くつもりはありません。
今後もそちらの方向のご期待にはお応えできませんのでご了承ください。
ただ、自分の事を社員だと勘違なさってる方がおられたり、今後について心配してくださってくれる方がおられたので何の反応もしないのは不義理であろうと思い、筆を取らせていただきました。本エントリについては時機をみて、非表示コメントにさせて頂きますので予めご了承ください。
私の場合は、時間帯を問わない在宅仕事で(高騰しているらしい)すき屋の深夜給程度の時給を頂くことができました。すき屋深夜ワンオペと違って、細切れの空き時間を有効活用できるため、他事で多忙の身としては魅力的なアルバイトではありました。
収入がなくなることは悲しいことですが、もともと生活の便りにしていたわけではありませんし、今年度中は実家で暮らす予定であり、すぐ生活に困るということはなく、ご心配には及びません。お心遣い頂きましてありがとうございます。
参謀本部では、機械学習系の案件や発音判定ソフトの案件のためのアルゴリズム文献調査やシステム提案など、自身の専門的能力を活かせる仕事をさせて頂きました。
会社技術ブログの執筆など、いままでやったことのない種類の仕事もさせて頂き良い経験になりました。そのことについては今でも感謝しております。
全ての元スタッフの方々の今後の御活躍を深くお祈り申し上げます。
乱文乱筆ながら、これにて退職エントリとさせて頂きます。
ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 8 市場取引 2
戦略的取引
直接交渉
n=2のケースで考える
買い手の評価額が、どちらも売り手の仕入れ値より高い場合(つまりのとき)、どの売り手がどの買い手と交渉しようとも、二組の取引が成立する。
- 買い手1と売り手1、買い手2と売り手2が取引したときの総余剰は
- 買い手1と売り手2、買い手2と売り手1が取引したときの総余剰は
いずれにしろ、総余剰はである。
買い手の評価額が、どちらの売り手の仕入れより低い場合(つまりのとき)、取引はまったく成立しない。総余剰は0となる。
の時が問題となる。
買い手1は{売り手1、売り手2}の両方と取引できるが、買い手2は{売り手1}としか取引できない。
- 買い手1と売り手1が取引したときは(このとき買い手2は取引が成立する相手がいない)、総余剰は
- 買い手1と売り手2、買い手2と売り手1が取引したときの総余剰は
なのでよりとなる。つまり買い手1と売り手1だけが取引した方が総余剰は大きい。
取引が成立する数が多ければ、それだけ経済全体で見た余剰が大きくなるというわけではない。
直接交渉の場合、交渉の組のできかたによって総余剰が変化してしまう。直接交渉に任せる原始的な取引システムは余剰の損失が起こる可能性があり、これはミスマッチと呼ばれる現象の一つである。
ミスマッチという言葉で、売り手と買い手が交渉相手を見つけられない状況を指すこともある。
商品を労働と考え、売り手を労働者、買い手を企業と考えると、取引成立はすなわち労働者が賃金を支払われて雇用されるということになる。すべての労働者が雇用される場合よりも、1人だけ、それも適切な企業に雇用された方が、経済全体の余剰は増えるということを示唆している。
他の3つの取引形態では均衡では余剰を最大にする取引が起こる。他の取引形態では商品の価格(商品とお金の交換比率)が、参加者に共通の公開された情報になるため。
総余剰が大きいパターンでも全員が満足するとは限らない。
さきほどの例では、買い手2は2つめのパターンを好む.総余剰は少なくなっても、その方が自分が得するからである。
さきほどの例では、各人が2つめのパターンにおいて受けとる余剰を基準にして、1つめのパターンによって生じた余剰を適切に分配すれば、すべての主体を受け取る余剰が第1のパターンよりも大きくできる。
労働市場では「雇用されないプレーヤーに適切に余剰が補填される」という前提では、仮に失業者が出ても、余剰の大きな組み合わせで労働者が雇用される方が良い。
ただし余剰の再分配は、もっとも余剰を得ていた人にとっては余剰を下げられるのと一緒なので不満がでる。
以降の議論では、総余剰の大小で取引形態を評価して行くが、その背景には余剰が再分配されるという仮定があり、それは当然の基準ではないことに注意する必要がある。
仲買人のいる市場
- 仲買人は1人とする。
- 仲買人はpを決定し、その価格を見て売り手と買い手は取引するか決断する。
- 仲買人の利得は
- 売り手から出された商品の数と買いに要求された商品の数が等しければ(ちょうど過不足なく取引が成立するので)1
- そうでなければ(どちらかに余りがでるので)-1
- 誰も取り引きしなければ0
価格pが観察されたあとの(サブゲームでの)売り手と買い手の戦略は単純である。
- 売り手iはなら売っての利得を得る。
- 買い手iはなら買っての利得を得る。
このような価格受容行動が支配戦略となっている。
これから、仲買人の行動を分析していく。
次のグラフは、4人の場合について買い手の評価額を高い順に並べて整理したものである。
このグラフは仮に仲買人が価格p円を提示したときに、何人の買い手が買うかという関係も示している。
となるような価格pが提示されれば、買い手1と2は買うが、3と4には高すぎるので買わない事が次のように分かる。
このグラフは、価格とその時に価格受容的行動を取る買い手が買う(需要する)量との関係を表すので、この商品に対する需要曲線と呼ばれる。
次のグラフは、売り手の評価額を低い順に並べて整理したものである。
このグラフもまた、仮にこのグラフは仮に仲買人が価格p円を提示したときに、何人の売り手が売るかという関係も示している。
となるような価格pが提示されれば、売り手1と2と3は売るが、4には安すぎるので売らない事が次のように分かる。
このグラフは、価格とその時に価格受容的行動を取る売り手が売る(供給する)量との関係を表すので、この商品に対する供給曲線と呼ばれる。
需要曲線と供給曲線を重ねあわせたのが次の図である。
需要曲線は右下がり、供給曲線は右上がりなので,なら、二つの曲線はかならず交差する。数量xで交差していたなら、そこの評価額はx番目に低い売り手のものなので,交差部分の下端は,また、そこの評価額はx番目に高い売り手のものなので、交差部分の上端はとなる。図ではx=2なので{tex:B_2,S_2]が端点になっている。
を見たすようなは、仲買人の均衡戦略である。価格のもとでは、売り手も売り手も1〜x番まで取引に応じるので、過不足は生じないので仲買人の利得は、最大利得である1となる。
を上まわる価格をつけてしまうと売り手の方が多くなってしまう
を上まわる価格をつけてしまうと買い手の方が多くなってしまう
のとき交点はできないので別に考える必要がある。
- となるを選んだとき、その価格で売る売り手は1人以上存在するが、その価格で買う買い手は一人も存在しないので、過不足が生じて、仲買人の利得は-1になる
- となるを選んだとき、その価格で売る売り手は一人も存在しないが、その価格で買う買い手は1人以上存在するので、過不足が生じて、仲買人の利得は-1になる
- となるを選んだとき、その価格で売る売り手も、その価格で買う買い手も存在しないので全く取引が起きず、仲買人の利得は0となる。
仲買人は、のとき、となるを選ぶのが最適である。
このような仲買人のいる市場は完全競争市場と呼ばれ、仲買人が均衡で提示する価格のことは完全競争均衡価格と呼ばれる。
完全競争市場均衡では取引から生じうる総余剰が最大になっている。例では、1個だけ取引されたときの余剰より2個取引されたときの余剰の方が多い。3個以上取引されると負の余剰が発生るうのでやっぱり2個の時の余剰が良い。
ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 8 市場取引
戦略的取引
- 市場にはプレーヤーが2人いる
- 商品は一種類のみで、私的財である。
- プレーヤー1は商品を一つだけ持っている。
- プレイヤー1を売り手(Seller)と呼ぶ。
- プレイヤー1は、自分にとっての商品の価値がSだと知っている。
- プレーヤー1は商品を持っていない。
- プレイヤー2を買い手(Buyer)と呼ぶ。
- プレイヤー2は、自分にとっての商品の価値がBだと知っている。
- S≦Bのときに取引が成立すればB-Sの余剰が発生する。
- S>Bのときは、取引をしない方が得なので余剰は発生しない。
- プレイヤーは、お互いに商品の評価額を知っているとする。
直接交渉
買い手と売り手が取引の成立と価格について直接交渉する場合を考える。
のとき取引が合意されることはない。
のとき取引は合意され余剰はB-S発生する。
あとは、余剰をふたりで分けあう交渉の問題となり、(どちらが先にオファーを出すか、交渉が長びくにつれてどれだけの割合で余剰が減少するかにもよるが)おおまかに言えば余剰は半分づつに分配される。
仲買人のいる市場
取引を仲介する仲買人(a.k.a. Market Maker)のいる市場を考える。
仲買人の性質
- 仲買人は売り手から買いつけ買い手に商品を売りつける
- 売りさばけたら手数料を受け取る。
- 過不足が出たら自分で品物を何とかしなくてはならないのでペナルティーがある
- 取引価格の差別はしない。
仲買人のモデル
- 仲買人は取引価格pを表示し売買する。
- 利得は次のようになる。
- 売り手が商品を売り、買い手が商品を買えば(うまく売りさばけたので)1
- どちらか一方だけが取引に応じれば(過不足が生じるので)-1
- そうでなければ0とする。
仲買人は取引の活性化のみに興味を持つ。
仲買人の戦略の範囲
- pを自由に設定できる
- 「価格をオファーしない」というオプションもある(全員の利得は0となる)
(仲買人,売り手,買い手) | 売り手が | ||
---|---|---|---|
売る | 売らない | ||
買い手が | 買う | (1,p-S,B-p) | (-1,0,B-p) |
買わない | (-1,p-S,0) | (0,0,0) |
- B,Sは自然によって与えられ、その情報を全員が知っているとする。それゆえかかは自然が決定する。
- その情報を元に仲買人は「価格pを設定する」あるいは「価格をオファーしない」の戦略を採る。
- その価格を元に売り手、買い手は取引をするかしないか決定する。
価格pが観察されたとき支配戦略なるような
- 売り手の戦略は「安すぎれば売らない」
- ならば売り、なら売らない。
- 買い手の戦略は「高すぎれば買わない」
- なら買い、ならば買わない。
- 価格受容行動(price taking behavior)
- 観察された価格を与えられたものとして最善の支配戦略を選ぶ行動のこと。
「価格を所与として〜」という場合がそれ。「受容」するのが、この仲買人がいるときは支配戦略となる。
買い手と売り手のプレイヤーの行動の組は、どのサブゲームでもナッシュ均衡になっている。
仲買人にとってはとなるような全ての価格が均衡戦略である。
となるようなpを示されたとき、買い手は買うのが最適反応、売り手は売るのが最適反応なので、双方とも取引は成立し、仲買人の利得は、最大利得である1になるため、これ以上の戦略はない。
仲買人はとなるような価格を提示し、売り手も買い手も上記の支配戦略を採るのがナッシュ均衡。この場合はサブゲーム完全均衡でもある。
ナッシュ均衡なら他にもある。
例えば(仲買人は価格をオファーしない。売り手値段に関係なくは取引に応じる、買い手は値段に関係なく取引に応じない)はナッシュ均衡である。
「売り手値段に関係なくは取引に応じる、買い手は値段に関係なく取引に応じない」時、仲買人は「価格をオファーしない」が最適反応。
仲買人は「価格をオファーしない」の戦略を取ってるとき、
売り手も買い手もどんな戦略を取っても利得に変化はないので、「売り手値段に関係なくは取引に応じる」、「買い手は値段に関係なく取引に応じない」もまた、最適反応の一つである。
しかしながら、これはサブゲーム完全均衡でない。
というサブゲームに到達した場合は、買い手の最適反応は購入である。
今後はサブゲーム完全均衡ではないナッシュ均衡は無視する。
のときは取引が成立するような均衡は無く、仲買人が価格をオファーしないという戦略を取ってゲームが終わる。
- 売り手が取引に応じるのはのサブゲームにおいてだが,となるので買い手は取引に応じず、仲買人の利得が-1になる。
- 買い手が取引に応じるのはのサブゲームにおいてだが、となるので売り手は取引に応じず、仲買人の利得が-1になる。
- のサブゲームや「価格をオファーしない」では取引は全く成立しないが、利得は0である。
3番目の(いずれかの)_戦略が、他の戦略を弱支配しているので、仲買人は3番目の戦略を選び、取引が成立することはない。
販売店市場
- まず売り手がpを決める
- 買い手は価格pを見て、購入するかしないか決める
売買が成立したとき
- 売り手の利得はp-S(生産者余剰)
- 買い手の利得はB=p(消費者余剰)
総余剰は(p-S)+(B-p)=(B-S)となる。これは二人の取引で生じうる最大の余剰である。このとき、pは総余剰の、売り手と買い手の間での配分を決めている。
売買が成立しなかったとき,両者の利得は0である。
- S<Bのとき、余剰B-Sを分割するための売り手が最後通牒を突きつけることができる交渉ゲームになる。よって、売り手はp=Bにして余剰を全て要求し、買い手がそれを承認するのがサブゲーム完全均衡の解になる。
- S>Bのとき、売り手は価格をちょうどSにして、買い手は買わないのがサブゲーム完全均衡となる。
余剰は発生したとしても、売り手がすべて受け取る事になる。
競売買方式市場
- 競売買方式(order driven market)
- 売り手と買い手が注文を出し合って、その結果取引が成立する。
- 売り手の言い値がp、買い手の言い値がq
- p ≤ q ならば、取引は成立し、買い手がp円支払う
S < Bのとき,S < p = q < B となるp,qがナッシュ均衡となる。
- 売り手は、買い手の言い値がS < q < Bのとき、p=qにするのが一番利得が大きくなる(取引が成立し(p ≤ q、かつ支払われる価格pが最大になる)ので、これが最適反応である。
- 買い手は、売り手の言い値がS < p < Bのとき、p &le q < B となるようなqを選べば,利得はB-qになり最適反応である。p=qもp &le q < B に含まれているので最適反応である。
よってS < p = q < B となるp,qはナッシュ均衡である。
S > Bのとき、
- 売り手は自分の評価額以下の価格は注文しないので S < p
- 買い手は自分の評価額以上の価格は注文しないので q < B
なので、p > S > B > qより p > qなので取引は成立しない。
ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 7 公共財 5
メカニズムデザイン
- 公共財から得られる個人の余剰の総和が公共財の費用を上回るならば、公共財を生産すべきであり、そうでないならば、生産すべきでない。
- 個人の余剰が個人情報になっているとき、素朴に各個人に公共財生産の是非をたずねて公共財生産の意思決定をするのはうまくいかないので正しいインセンティブを与えるような意思決定の手続きを考える必要がある。
- メカニズムデザイン(mechanism design)の問題
- ある主体が自分の目標とする結果を実現するために、決定に必要な個人情報を持っている主体の行動を何らかのインセンティブを与えるメカニズムを使って間接的に操作して自発的に実現させようとする問題
メカニズムデザインの問題の例
- 公共財生産の意思決定の問題
- オークションの形式の決定の問題
- 優秀な人材の採用の問題
- 古典的な市場取引の問題
- 権利・義務の付与の問題
ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 7 公共財 4
修正 Groves-Clarke メカニズム
- 生産するしないに関わらず、もし相手が費用の均等割りよりも高い申告をしているならば、申告額と均等割額の差額が自分の負担金に追加される。
もしなら、プレイヤー1の負担金の追加分はとなる。この負担額は公共財が生産されてもされなくてもプレイヤー1に課されてしまう。(もし生産されたとしたら負担金の総額はである。)[tex:r_1+r_2
- プレイヤー1の利得は
(生産される) | (生産されない) | |
(追加負担0) | ||
(追加負担) |
- プレイヤー2の利得は
(生産される) | (生産されない) | |
(追加負担0) | ||
(追加負担) |
この場合、プレイヤ1が正直に申告する事が弱支配戦略である事を示す。
の時は、通常のGCメカニズムと同じ議論により、が他の戦略を弱支配することがわかるので、の場合について考える。
自分の申告額は、公共財が生産されるかされないかを左右することはできるが、最終的な利得の中には現われてこない。
つまり、
- 公共財が生産された方が得ならば、公共財を生産されるようなを選びさえできれば良い。
- 公共財が生産された方が損ならば、公共財を生産されないようなを選びさえできれば良い。
(公共財が生産された時の利得)-(公共財が生産されなかった時の利得)=なので
- なら生産された方が良い。
- なら生産されない方が良い。
戦略を取っておけば
- のとき,なので公共財は生産される。
- のとき,なので公共財は生産されない。
以上でが弱支配戦略だと確認できた。
プレイヤー2についても同じように議論ができ、が弱支配戦略となっている。
このメカニズムにおいて公共財が生産されるとき、両プレイヤーが負担する総額は、公共財の生産額を越えているだろうか。(つまり公共財の生産を賄えるだろうか。)
まず、少なくとも一方は、生産費用の半額よりも高い額で申告をしているはずである。
生産されることが決まっているのでになっているはずである。
もし、両プレイヤーが半額より低い申告をしていたと仮定すると、,となる。このとき,この2式からとなる。これはに矛盾するので、両プレイヤーが半額より低い申告をしているということはない。
少くとも一方は、半額より高い申告をしているはずである。
- プレイヤー2のみが半額より高い申告をしていると仮定(かつ)する。(プレイヤー1の通常負担額)+(プレイヤー2の通常負担額)+(プレイヤー1の追加負担額)=となる。だったのでとなり、公共財の生産費用は賄われている事がわかる。
- プレイヤー1が半額より高い申告をする場合は、同じ議論で同じ結論になるので省略する
- 両者とも高い申告をする場合(かつ)は、両者とも追加の負担をするので、(プレイヤー1の通常負担額)+(プレイヤー2の通常負担額)+(プレイヤー1の追加負担額)+(プレイヤー2の追加負担額)=となり、費用が分担されている。