ボストンの歩き方

2016年MIT入学の学部二年の日記帳

夏休みのその後

現在僕はボストンに戻り、新学期をちょうど迎えているわけですが、ブログを更新していなかった3週間ほどの間はいろいろとネット環境のない中旅をしていたわけです。なので、その体験をここでまとめていきたいと思います。まずは1週間ほどいたタイ。

 

僕が滞在していた場所はバンコクから車で3時間ほどの田舎のとこにあったのですが、大きな特徴としてBetagroという巨大会社がその市を実質コントロールしていることがあげられるでしょう。田舎なのですが、あらゆるところにその会社のロゴマークがあるといった有様です。その町で僕たちのチームは二週間小学校でエンジニアリングについてのワークショップを開いていたというわけです。

 

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そもそもこのワークショップを開くきっかけは前回も述べた通り、先学期とっていたD-lab: Education and Developementという授業です。その授業でタイの教育についてのプロジェクトを行い、カリキュラムを作った僕たちのチームは、実際にこれを試してみようということでBetagroに協力してもらい現地入りさせていただけることになりました。ワークショップは一日二時間で、対象は小学5年生。最初の一週目はさまざまな小さい工作(egg drop等)を通して設計の基本を学び、二週目は各自学校での問題を一つ見つけそれを解決するものを作るという構成にしました。ここで大変だったのがやはり授業のプランニング。現地入りしてから、想定していたものがなかったり、前日の授業で内容すべてを扱えなかったりとして毎日のように授業を改正しなければなりませんでした。特に、小学生は英語が話せないので通訳をとおして授業をしたりプリントをはいふしたりするのですが、そこで誤訳が多く目立ってしまい、いかに通訳に誤訳されない英語で説明したりプリントを書いたりするかに心を砕いていました。そんなこんなで、毎日朝8時起きてその日のプリントをつくったり前日からの反省を反映させたりし、午後1時から二時間ほどワークショップ、そしてその後その日の反省、という結構ヘビーな内容でした。去年やっていた留ふぇろというNPOのサマーキャンプに匹敵する疲労感でした。同じくらい達成感もありましたけどね。

 

この体験で一番すごいと思ったのは食べ物です。食事はすべてBetagroが持ってくれたのですが、朝ご飯、昼ご飯、夜ご飯とすべて毎日レストランに連れて行ってもらい、しかもどれも高級店。さらにさらに、辛い物耐性がないことに気を遣ってもらいそこまで辛くない料理をいろいろいただけました。さらに間食としてフルーツもいろいろいただけて幸せ。

 

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タイでの滞在をとおして最も勉強になったのはやはり、言語背景が違う環境での教育の難しさでしょう。エンジニアリングを通しての問題解決というのは西洋的な文化が根強く、その中で用いられている言葉にはタイ語に変換できないものが多くありました。また、言葉があったとしても、アメリカ人に説明すればそりゃそうだとなることでも文化の違うタイでは意味が理解してもらえないことがあったりします。例えば昔から実家の農家を継いでいる家庭で育った子にとっては伝統を受け継ぐという価値観のほうが優先されて、なぜそもそもエンジニアリングが大事なのか理解するのに苦労していました。留ふぇろでもassumptionをなくそうということはテーマにしていましたが、今回はより、僕たちが当たり前と思っている価値観をいかに還元してその根源から説明することの難しさを感じました。

 

兎にも角にもいい経験になったということです。

ではでは、

ここ数日の話

さて、一昨日をもってフロリダで二か月行っていた研究のインターンが終わりました。ブログを更新できていなかったのはここ二日ほどひたすら飛行機を乗り継いでいたからなのです。そして今現在、タイのLopburiのリゾートでだらっとしています。今日は今までの研究のまとめと、タイで何をしているのか軽くまとめようかと思います。

 

1. 研究の話

 

僕がフロリダのマックスプランクで行っていた研究は簡単に言ってしまえば記憶ができるメカニズムについてです。人が記憶をしたりなにかを学習したりすると頭の中の神経細胞間の連絡に変化が生じることが分かっています。よく使うつながりは強化され、あまり使わないつながりはなくなっていきます。これがどのような分子、タンパク質によって起こっているのかを調べるのが研究の大きなゴールです。

この一環として、記憶が形成されている瞬間にどのようにタンパク質が動いているかというの重要な見識になっています。刺激が着た瞬間にどこかに集まりだしたり、動いて行ったりするタンパク質があればそれはシグナルを伝達していると考えられるからです。そこでタンパク質の動きを追えるようにタンパク質にタグをつけるということを研究テーマにもらっていました。

具体的にはIUEといってマウスの胎児の脳にDNAを注射することでタンパク質にタグをつけるというもので、マッドサイエンティストな感じがありますが、二か月の特訓のおかげで手術スキルが上がったように思えます。

 

2. タイ

現在はタイのリゾートに来ていますが、決してあそんでいるというわけではありません。というとうそになりますね。タイに来ているのは先学期とった授業の一貫です。 D lab: Educationという教育学の授業をとっていたのですが、これはチームごとにどこかの国とパートナアップしてそこでの教育問題に対する解決策を作るというものでした。僕たちのチームはタイにおいて、仏教というバックグラウンドとマッチしたエンジニアリングのカリキュラムをつくるというテーマで半年の間プロジェクトをしていました。そして現在夏休みを利用してタイでサマースクールを開催してカリキュラムが実際機能するかどうかを調べているという次第です。ということでチームメート4人とMITの先生2人で旅をしているわけですが、とにかくものすごい優遇されていて申し訳ないくらいです。たくさんご飯を頂けるし、休みの日はこのようにリゾートに連れて行ってもらっています。僕はインターンの関係で昨日から合流したのですが、他のチームメートは先週から現地入りしててサマースクールも始まっているので明日から本格的に僕も参加していくことになります。英語が通じない環境でどうなるか楽しみです。

 

ではでは、

フリースタイルダンジョンとR-指定

小さい頃、ナルトが大好きで、放映日の毎週木曜日が楽しみだったのを覚えています。大学生にもなりテレビも見なくなってそういう感が薄れていたわけなのですが、最近は毎週火曜日がとても楽しみです。

なぜなら、毎週火曜日の深夜1:30-2:00(日本時間)はフリースタイルダンジョンが放映されるからです。フリースタイルダンジョンとはラップMCバトルの番組です。ラップMCバトルとは即興ラップでお互いをdisりあったり、観客を盛り上げたりしてそのテクニックや印象で勝敗を決めるというものです。この番組にはモンスターといわれる、HIP HOPを代表する6人のラッパーがおり、チャレンジャーはこの中から選ばれる4人と対戦してどんどんとダンジョンを進んでいきます。といってももちろんモンスターたちはどれも凄腕ラッパーのため、ほとんどのチャレンジャーは第一ステージ、第二ステージで脱落してしまうのですが、運よく(?)第四層まで倒すと出てくるのがラスボスの般若という伝説的ラッパーです。

この番組で面白いのは、出てくるラッパー誰もが日本トップクラスのアーティストだということ。モンスターもチャレンジャーも全国大会で優勝しているようなバトルラッパーなので素人目でもリズムの取り方や、韻の踏み方、言葉の選び方など鳥肌が立つほどすごいのが分かります。

 

さて、このフリースタイルダンジョンは現在第5シーズンを放送中なのですが、今が過去一番に面白いと言ってもいいぐらい面白いです。というのは現在行われているのは新旧モンスター対決だからです。

 

実は現在のモンスターたちは第二代モンスターです。初代モンスターとして第三シーズンまで勤め上げてきたのは、漢 a.k.a. GAMI、DATOMA、CHICO CARLITO、T-Pablow、サイプレス上野、そしてR-指定という当時の新進気鋭から大御所までを集めた盤石の布陣。あまりにも強すぎるメンツのため、このダンジョンは無理ゲーと言われていました。特にラスボス般若前に立ちはだかるR-指定はUBM(ラップMCバトルの日本一を決める大会)で史上唯一3連覇を果たした正真正銘の最強ラッパーで、即興とは思えない手の込んだ韻の踏み方、文学的な掛詞(ダジャレラップと揶揄される)などめちゃくちゃかっこいいです。事実、たくさんの挑戦者がこのダンジョンに挑むも、突破して賞金100万円を獲得したのはUBMでR-指定の前に2連覇を達成している晋平太ただ一人。

関係ないですが、晋平太vsR-指定のラップバトルはお互いにものすごいテクニックでせめぎあうとともにムチャクチャ熱い気持ちのぶつかり合いで一見の価値ありです。

 

その後、シーズン4からモンスターは一新し、ACE、裂固、崇勲、輪入道、呂布カルマ、そしてFORKというまたまた豪華メンツに変わりました。しかしなんとこの最強メンツがLick-G、にがり a.k.a. 赤い稲妻と立て続けにダンジョン突破を許してしまったのです。そしてこのメンツに代モンスターが喝を入れに来ているという感じです。

 

ネタばれしたくないので、詳細は省きますが、現在ダンジョンに挑戦しているのはその初代の中の最強と言われるR-指定です。そして、それに迎えうつ第一層に名乗りを上げたのは二代モンスター最強の呼び声高いFORKです。この二人の対決は、youtubeなどに落ちているので、ぜひ見てほしいです。とにかく即興なのにお互いのリリックがとても文学的、しかもライムで踏む連続音節の数がすごい。さらにいろいろとメタな要素(ほかの有名HIP HOPやJPOPの歌詞の引用や時事問題の隠喩)も盛り込んでいて頭の回転早すぎ!って感じです。試合後に呂布カルマが、この試合に勝敗をつけるのは野暮なはなしという通り、芸術っていう感じの戦いです。ぜひ見てみてください。

 

ではでは、

大学入試の女子差別について、アメリカ大学との比較の視点から

今、東京医科大入試においての女子減点が大きな問題となっているように思います。実際僕もこのニュースを聞いたときは耳を疑いました。ただ学閥主義など、昔からの慣習がまだ残っている医学の世界を鑑みたとき、そのような不正が起こってしまう土壌は確かにあるように感じてしまいます。

 

ここで一つ考えたいのが性別を入試の合否に関係させることの妥当性です。ここで日本を考える前にアメリカについて考えてみたいと思います。アメリカの大学は自分たちを作るコミュニティというものを大事にしています。試験というある意味絶対的基準での判断をする日本の大学と違い、合格基準がとても曖昧なアメリカの大学ですが、その分合格を出すことに各学校のテイストが出るのです。そしてほとんどの大学で、自分のコミュニティに求めるものとして共通している項目が多様性です。ほとんどの大学は合格者の性別や人種を公表して、それをアピールしているわけです。MITは理系重視の大学でさえ東大理系や東工大と違い男女比はほぼ1:1ですし、性的マイノリティや多人種の比率も均等になるように努力しています。もちろんこれに逆行するようなコミュニティ形成をする大学が現れても問題ないわけですが、そんなものは勝手に淘汰されていきます。総合判断という曖昧な基準に立っている分、アメリカの大学には厳しい衆人環視がなされ、独善的・差別的基準は生き残れなくなっているように思えます。

 

これに対して、日本では絶対的なテストの点数という基準が存在します。これはいわば大学が自身の作るコミュニティに対して無頓着ということのように思えます。入試を通る能力があればどんな人間でもいいといったような雰囲気を醸し出しているわけです。これも一つの哲学ですからいいとは思うのですが、この考えに則る以上絶対的基準は絶対的基準でなければなりません。

今回の不正は、日本の大学入試システムを正当化している唯一の哲学を歪曲させた卑怯なものと言わざるを得ません。これが、事前に「男子何割、女子何割に合格を出します」と言っていたなら僕は問題がなかったように感じます。もちろん、こんなことをしたら社会的にバッシングを受けたり受験者が減ったりするでしょうが、それでも貫き通したいポリシーなら大学の勝手です。それを恐れて、絶対基準であるという前提を疑う者がいないことをいいことに水面下で性差別を行っていた人たちには、医者という以前に一人の大人としての自覚が完全に失われているように思い憤りを禁じえません。

 

ではでは、