筒井康隆 「わたしのグランパ」

今回読ませていただいたのが、筒井康隆さんの「わたしのグランパ」

わたしのグランパ (文春文庫)

わたしのグランパ (文春文庫)


この作品は2003年に映画化されており、ヒロイン役に石原さとみさんが起用されています。



刑務所に入っていた囹圄の人である祖父、彼が残してくれた「生きていた証拠」は余りにも大きい。


筒井作品らしからぬヒューマンドラマに心打たれます。


印象に残った文

①「れいご 囹圄 ろうや。獄舎。▽正しくは「れいぎょ」」


主人公である珠子は、祖父の存在は知っていましたが、どこにいるか、そもそも何をしているか知りませんでした。


そんな時、祖母に祖父は「囹圄の人」だよと言われました。


父親に言葉の意味は教えられましたが、改めて自分で辞書で調べてみると、教えられた意味とは別の意味が。


その時の一文です。


自分の祖父が犯罪者で、なおかつそれを家族は隠していた。


珠子の心境を考えると複雑ですね…


②「人間、本心から命がけになれるのは、自分が生きていた証拠を残せるようなこと、そりゃもう、たとえどんな些細なことでもいい、何かいいことをして残すことだ。」


祖父が、学校内暴力を引き起こしている珠子の同級生に対して言った言葉です。


本小説の中で、一番好きな一文です。


わたしは今年で27になります。


「まだ若い」「まだまだでしょ」


そんな声が聞こえそうですが、未来を想像して、何かを成し遂げているイメージがつきません。


ハッとさせられる一文でした。


③「今後こそ本当に、グランマの気持ちがわかった。」


珠子の祖母である操は、祖父とは一緒に住みたくないといい、引っ越してしまいます。

当初、珠子は何故一緒に住みたがらないのか不思議に思ってましたが、人情味溢れるが故に危険を顧みず行動してしまう祖父に対して常にハラハラしてしまい、遂に祖母の気持ちが理解出来ました。


その時の感情の一文です。


大切な人を想うが故に、傷つく姿を見たくない…という心境でしょうか。


男性である私は、だからこそ近くにいてあげたいと思うものです。


思ったこと


ヒューマンストーリーとして感動して、思うことは沢山あるのですが、別の視点でもう一つ思うことがありました。



「物事を成すには、用意周到が大事」


これですね。


祖父は、局面局面で孫である珠子を助けるのですが、それは刹那的なものではなく、周到に準備されていました。


これが非常に現実的だなと思いました。


「人を助けるには、そう簡単にはいかんよ。頭を動かせ。」


そう言われている気がしました。


(おわり)

フレデリック・テイラー 「科学的管理法」

お久しぶりです、おっつーです!

今回紹介するのは、フレデリックテイラーの「科学的管理法」という本です。

|新訳|科学的管理法

|新訳|科学的管理法


おススメしたい人

本書をおススメしたい人は…

・効率的な仕事論について、学説を知りたい方
経営学を学びたい方

です。

本書に方法論ももちろん載っていますが、下記にもあります通り、科学的管理法の説明と事例等にページの大半を割いています。

実践面でもう少し詳しく知りたい方は、how to 本の方がいいと思います。


この本が伝えたいこと

本書が伝えたいことは、大雑把にいいますと…「科学的管理法」とはどのようなものかということと、それが如何に素晴らしいものか、ということです。

少し内容に触れますと…

仕事において、雇用主と働き手が効率を追求して仕事をすることにより、二者は最大限に豊かさを享受できる。

しかし、効率的な仕事は怠業により阻害されている。

科学的管理法を用いることにより、怠業を解消することができる。

その方法を、事例を用いながら詳しく説明しよう!!

という感じの本です。

思ったこと

科学的管理法、素晴らしい管理法だと思います。

雇用者にも労働者にも最大限の豊かさを還元できる…

最高ですね。

けど、今は時代が違いますね。

殆どの単純作業はロボット化されようとしています。

テイラーは本書で、「科学的管理法を用いて効率を追い求めれば、仕事がなくなるということはない」と言ってましたが、バッチリ人間にとって代わられてますね。(ロボットがやってることも一種の科学的管理法だとは思いますが)

今の時代は豊かですが、飽和感は否めないです…

(おわり)

自然界の不可思議の解決を求めて–「アースワークス」

こんにちわ、おっつーです。

最近、マンガや小説などが多かったので、久しぶりにそれ以外のジャンルを「ちゃんと」やりたいと思います笑。

「ざっくり」の域を出ない程度で笑。

 

今回ご紹介するのは、

 

ライアル・ワトソン著/内田美恵訳の「アースワークス」です。

 

 

アースワークス―大地のいとなみ (ちくま文庫)

アースワークス―大地のいとなみ (ちくま文庫)

 

 

 

 

本書は、一見信じられないような科学的に説明できないような信仰には再検討の価値があると述べています。

 

「その(上記のような信仰の)多くには、長い年月にも耐える、自然に会得された叡知が反映されているという気がしてならない。」 p10

 

「普通にはない信仰だからといって、真向から否定してしまうのではなく、むしろ、それがどうしてこれほど広い地域にわたって存在するのか、あるいはまた、どうしてこうも根強く続くのか、といった謎の解明につとめるべきではないのか。」 p10

 

端的に言うと…

 

「非科学的だと思われていることを観察、考察してみよう!」

ということです。

 

 本書は章ごとに考察するテーマが分かれており、そのため内容が少し専門的でありながら非常に読みやすい構造となっています。

 

 著者は、このような「科学」における例外、いわば不思議なものたちこそが、必要だと語ります。

 

「彼らは、表面的なことに囚われない。そうではなくて、ものの内なる形にそれぞれの方法で感応している。」

 

そんか本書の中で私が面白い、と感じた章をご紹介します! 

 

・「意識のルーツ」

 

皆さんは植物に意識や感情があると思いますか。

 

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これは一般的に言えば「無い!」と答える人の方が多いと思います。植物には話したり、聞いたりする機能もないですし、またそれらを処理する脳もありませんからね。

 

嘘発見器の使用に長けている元CIAのクリーブ・バクスターは、ある実験を行いました。それは植物に、電気伝導率の変化がわかる装置をつけ、植物に対して「善玉・悪玉ゲーム」を行い、変化が起こるかを試すというものです。悪玉であるアシスタントのヘンソンが植物に対して虐待をし、その後クリーブが励ます、ということを繰り返しました。すると、ヘンソンが部屋に入っただけで激しく反応し、クリーブが近づくとその反応は落ち着きました。

 

ここから分かることは、「植物は二人をハッキリと区別していた。」ということです。

 

…びっくりですよね。目も耳もない、また脳もない植物がどのようにして人間を知覚できるのでしょうか。

 

「植物には、人間とまったく関わりのないところで独自に機能する、まだ定義できていない基礎的な知覚がある」 p59

 

 「ここでわれわれの前にあるのは、周辺環境への高度な意識であって、それは植物を鈍感で無反応な生命系だとする古い見方に、後戻りするのは断固として許さない。」 p73

 

私たちが「これはありえないだろう笑」と考えていることは実は古い見方であり、私たちが伝説として語られてきたことは、実は現実にありえるかもしれないのです。

 

 確かに、「これ、もしかしたら現実にあるんじゃないか??」なんていう伝承ありますよね。

 

私は「河童は本当にいたんじゃないか?」と思っています笑。

 

 

「敵」とはいったい何なのか-「敵」

今回ご紹介するのは、筒井康隆氏の「敵」です。

 

敵 (新潮文庫)

敵 (新潮文庫)

 

 

敵

 

 

筒井康隆さんと言えば、多くの人は「旅のラゴス」が一番に思い浮かべると思います(一昨年、昨年あたりから本屋でみかけるようになりましたよね)。

あまり知られていないですが、「時をかける少女」」も筒井康隆さんが原作者です。

 

筒井康隆さんは、小松左京星新一と並んで「SF御三家」と呼ばれています。

私のイメージでは、「ゴリゴリなSF作家というよりも、「現実(と見せかけている)の中に非現実を混ぜるシュールなSF」という感じです。

 

ざっくりとしたあらすじ

妻に先立たれ、独り身である元大学教授の渡辺儀助は、自分自身の趣味を楽しみながら残りの余生を過ごしていた。そんなある日、趣味の一つであるチャット内のメンバーの一人が「敵です。皆が逃げ始めていますー」とのメッセージを流す。最初は現実味にないものであったが、徐々に様子が変わっていく。

 

今回読ませていただいた「敵」ですが、非常に不思議で、人によっては読みずらい小説となっています。

 

というのも、話の内容が、主人公である「渡辺儀助」の妄想か、はたまた現実なのか判別しにくいためです(よく読めばわかるのですが…)。

 

物語の大半は主人公である「儀助」の人柄や趣味等についての細かい描写です。「ここまで書くか!?」っていうほどしつこく書かれています。

 

途中までは現実的ですが、「敵」が現れてから少しずつ変わってきます。現実と夢の境がわからなくなってくるのです。ここから少し読みづらくなってきます笑。

 

では、気になるところの、この物語の主題となる「敵」とは何なのでしょうか。

 

残念ながら、「敵」に関する記述が少ないため、これ!といった回答はもちろんないです。

 

私的で勝手な憶測ですが、「敵」とは「認知症」なるものの事を言っているのではないかと思います…。

 

認知症」とは、過去の記憶を失ったり、時間や場所、自分が置かれている状況

を正しく認識できない等の症状が発症することです。

 

しかし「認知症」だと判断する人は、「認知症」になった人からみればまったくの他人です。

 

もしかしたら、「認知症」になった人からすれば、現実と非現実の区別つかず、そのため記憶間違いを起こしているだけなのかもしれません。

 

「敵」とは、現実と非現実の壁を壊すものであり、いわば「病気」のことでは?と私は思います。

 

全体的に見れば読みづらいですが、SF好きの私にとっては、好きなジャンルでした。

 

みなさんは、「敵」は一体何だと思いますか。

少女漫画でありながら、ハードボイルドの名作−「バナナフィッシュ」

またもやマンガの紹介となります。

 

 今回ご紹介するのは「バナナフィッシュ」というマンガです。

 

 

BANANA FISH バナナフィッシュ 全巻セット (小学館文庫)

BANANA FISH バナナフィッシュ 全巻セット (小学館文庫)

 

 

別冊少女コミック」で1985年から1994年まで連載されていた作品です。

著者は「海街ダイアリー」の著者である「吉田秋生」さんです。

 

「バナナフィッシュ」と聞いて「サリンジャー」を思い浮かべる人は多いと思いますが、その通り、サリンジャーの小説からタイトルがとられています。

 

少女マンガ雑誌で掲載されていたためか、画風は軽いタッチで描かれていますが、内容はかなりハードボイルドです笑。

 

読んだら「この内容で少女マンガ!?」と思うかも知れませんが、少女マンガの画風だから良いのです。これが、さいとう・たかを並のハードボイルドなら私は見てないと思います笑。

 

「バナナフィッシュ」という麻薬をテーマにして物語が展開されますが、あくまでも主軸は主人公であるアッシュとエイジの友情についてです。

 

ざっくりとしたあらすじ

 ダウンタウンのゴロツキのボスであるアッシュ・リンクスは自分自信のボスであるゴルツィネから追われていた男から「バナナフィッシュ」という言葉を聞く。それは、ベトナム戦争中に廃人となってしまったアッシュの兄であるグリフィンがしばしば口にする言葉であった。バナナフィッシュの謎を調べているさなか、最良の友となる奥村英二と出会う。

 

ラストは非常に綺麗な終わり方で、読後感が爽やかです。アッシュがすこし可哀想ではありますが…

 

本作品は名作の部類に入ると思います。

 

名作というものは、小説・論書・漫画に関わらず、私たちに何かしら「考えるべきテーマ」を与えてくれる作品、だと私は思います。

 

日本にいると、ストリートチルドレンや青少年のマフィヤなどは、現実味がないものとして感じられますが、一歩日本の外に出てみると、決して珍しい事ではないと聞きます。(管理人である私は海外渡航経験がないので、友人談ですが…)

 

自分自信がそのような環境にあるからこそなのでしょうか。主人公であるアッシュが非常に魅力的であり、またそのようなハードボイルドが少し羨ましく感じます。私だけでしょうか…。笑

 

・男性だけど少女漫画も読んで見たい

・ハードボイルド作品を見て見たいけど、くど過ぎるのはちょっと…

という人にオススメです。

史上最低のギャグマンガ??ー「黒いラブレター」

今回ご紹介するのはマンガです。

その名も「黒いラブレター」…

知ってる人は知っているコアなギャクマンガです。黒いラブレター コミック 全7巻完結セット (ジャンプコミックス)

…正直に言いまして、史上最低変態ギャグマンガです。

 

作者はウェブコミックサイトである「やわらかスピリッツ」で連載していた「ダンジョンのほとりの宿屋のオヤジ」の作者である東谷文仁さんです。

本作品は「月刊少年ジャンプ」で2003年から2007年まで連載されていました。

読み切り作品が多いです(最後らへんは連作になりますが)。

 

本書を一言で表すならば…

「変態の変態による変態のためのギャグマンガ」と言えるでしょうか笑

 

下ネタのオンパレードです。

作者の中途半端な画力も相まって、下品さが3割ほど増しになります。

 

…これだけ見ると評価は最悪ですが、ギャグマンガとしてはレベルは非常に高いと思います。

 

しかし、ここで注意してほしいのは、このマンガにギャグ以外を求めてはいけない!…ということです。

恋愛要素など問題外です。ギャグだけを楽しんで下さい笑

 

以上のように、好き嫌いがはっきりと別れる作品です。

好きな人は腹がよじれるほど笑えますが、嫌いな人は苦行です。

因みに私は、腹がよじれるほど笑いました、

 

・変態チックな下ネタが好き

・友達の変顔で笑ってしまう

・笑いに対して好き嫌いがない

 

こんな方にオススメです。

 

計画的戦争、戦争の意義ー「となり町戦争」

今回ご紹介するのは三崎亜記さんの

「となり町戦争」

です。

となり町戦争 (集英社文庫)

となり町戦争 (集英社文庫)

 

こちらの作品は映画化や舞台でも上演されおり、映画は江口洋介さんが主役で、瑛太さんも出演されています。

 となり町戦争 [DVD]

となり町戦争 [DVD]

第17回小説すばる新人賞を受賞されました。

 

ざっくりとしたあらすじ

 

舞坂町のアパートで暮らしている北原は、ある日町の広報で、舞坂町とその隣町とが戦争状態になったことを知る。しかし、現実には何も変わらない日常があるだけだった。そんなある日、役場からとなり町への偵察業務を命じられた。そして徐々に「戦争」の輪郭が見えてくる…

 

本書を一言で表すと「深くなく読みやすいSFフィクション」という感じです。笑

 

戦争が計画的に管理され、戦争というものの本質が表現されているのは良いと思うのですが、主人公とヒロインの関係を主眼に置いているのか、「戦争」やそれ以外のものを主テーマとしているのか、あやふやな感じがしました。

 

どっちも深く入れず、ていう感じですかね。

 

主題は独創的だと思うので、ストーリーをもっと「戦争」に密接させれば、面白くなったのではないか、と思いました。

 

本書が好きな人は、チャイナ・ミエヴィルの

「都市と都市」

がオススメです。

 都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

こちらの本は、国境がない二ヶ国間の関係を描いたSFフィクションです。

伝えたいメッセージは異なるかもしれませんが、設定は似ています。

しかし、こちらの方がよりメッセージ性は強く、読み応えもあります。

お時間がある方は是非!!