ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

服の裏側に興味津々!「半・分解展 2023大阪 ドレスの解剖学」

大阪市中央区瓦町の大織健保会館8階講堂で2023年12月3日(日)まで開催中の 「半・分解展 2023大阪 ドレスの解剖学」に行ってきました。

100〜300年前の服に触れたり、内部の構造を見られる展覧会ということで、そんな展覧会があるんだ!とドキドキしながら福岡から会場へ。

赤ちゃんに触れるように優しく、ボタンの開閉やチェーンなどの飾りには触れないよう

にと受付で案内を受けて中へ。

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中でも驚いたのが「ポケットを巻く」こと。

こちらのピンクのドレスにポケットがあるのも驚きですが、ドレス自体にはポケットはついていないそうなのです。

一体どういうことなのでしょうか?

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種明かしをすると、まず、スカートをはく前にポケットがついたショート丈のサロンエプロンのようなものを腰に巻き、スカートにはポケットにアクセスできる穴を開けておくというもの。

セットで残ってないからだと思うのですが、ロココの時代のドレスではなく、庶民の服のスカートの下を見せて頂き、納得しました。

 

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シルクのドレスにポケットをつけて物を入れると、重みでシルクが裂けるため、こんな風にポケットを巻いているそう。

庶民の服の綿や麻の丈夫な生地にならポケットを作れそうですが、何でスカートに直にポケットがないのでしょうか。

昔の人に聞いてみないと分からないことなのでここからは推測ですが、ちょっと考えてみます。

❶ポケットを作るより、平らなエプロンを作る方が裁縫得意でなくても作りやすそうだから。

❷ポケットが別であれば、スカートを前後に回してお尻側ばかりが傷まないように着ることが出来るから。

❸昔の庶民が今ほど服を持っていなかったとしても、洗っている間に着る服が必要でしょうから、最低二着は持っているとしましょう。その二着にポケットを縫い付けるより、巻きポケット(本当の名は?)を使い回す方が手間がかかりませんし、スカートだけ履き替えればポケットから小物を入れ替える必要がありません。生地の節約にもなりますし。

何が正解かは分かりませんが、合理的な理由があったのではないかと想像が膨らみます。

QRコードでそれぞれの服の解説も見られるのですが、お勧めは服の裏側が見られるナイトツアーや、会場を回って来場者の質問に答えている主催の長谷川さんの話を聞くことでしょうか。(有料のレクチャーは売り切れの為)

 

夕焼け読書の時間帯に行くと洋服関係の本が色々読めましたよ。

 

 

sites.google.com

 

福岡市博物館の『徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~』へ

福岡市博物館の『徳川家康と歴代将軍』へ。

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恥ずかしながら静岡にある久能山東照宮のことを初めて知りました。
展示の最後の方にある徳川将軍の甲冑が壁一列に並ぶ姿は圧巻でした。

家康が使っていた眼鏡や鉛筆、三代将軍・家光が描いたフクロウの絵もあり。
身近なものがあると将軍たちに親近感が湧きます。
太刀拵(たちごしらえ)もずらりと並んでいて太刀緒の組紐の色の組み合わせが綺麗でした。

緊急事態宣言中ですが特別展と関連のある企画展の展示室は開いていて、日本号圧切長谷部などが見られました。(遠方からこちらを目当てに来られる方も多いのでこの配慮はありがたい!)
他の企画展示室は開いてなくて暗いので、いつもと違う感じでした。(怖くはないぞ!)

等身大のパネルがあることに気付かず、素通りして帰ってきてしまったのでパネルの写真がなくて申し訳ない。ムムム。

企画展の方で「日光さんが来ない!」「日光さん、ここにいるよ!」というささやきを耳にした元審神者は心の中で鍛刀が成功しますように〜と祈りながら展示室をあとにしました。

2021年9月5日まで開催です。

福岡市博物館 (公式サイト)

家康展【公式サイト】特別展「徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~」

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初めて見たぞ。久留米市美術館『没後70年 南薫造』展へ。

7月に久留米市美術館の南薫造展に行って参りました。(2021/8/29に会期終了)
展示品の撮影は不可なので看板から雰囲気を感じて頂ければ幸いです。

初期から晩年までを順に見られるので初めて見る画家でもじっくり知ることができました。 以前久留米市美術館で行われた展覧会で知った、白馬会や岡田三郎助の名前がまた出てきて、繋がりを感じておおっと思いました。

若い頃に留学し油彩も水彩も版画もやって従軍中に絵を描く流れは木版画で有名な吉田博とも似ています。
博の方が1876年生まれで薫造は83年生まれだけど二人とも同じ1950年に亡くなっている点も同じです。お互いの作品を見たりしていたのかまでは分かりませんが想像が膨らみます。

南薫造の絵は水彩も油彩も色づかいが綺麗で人物や風景など、身近なものが描かれているので、自分もやりたくなってミュージアムショップで水彩画の技法書を買ってしまいました。

公式サイトの方でも南薫造の絵が見られます。

没後70年 南薫造 | 久留米市美術館 | 石橋文化センター

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素敵なインテリアに囲まれたい『ザ・フィンランドデザイン展』北九州市立美術館本館

『ザ・フィンランドデザイン展』は戸畑区にある北九州市立美術館本館で2021年8月29日(日)まで開催中です。※常設展と石井さんの展示は8/31まで中止(8/15時点)
(緊急事態宣言などで変更があるかもしれませんので、美術館にお越しの際は公式サイトや展覧会の公式ツイッターを事前に確認するのをお勧めします)。

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もし全て撮影可だったら、見終わるまでに倍くらい時間がかかかったはず!というくらいお洒落で可愛い、カッコイイものがたくさんの展覧会でした。
ポスターやガラス製品、陶板、布地、洋服、じゅうたんなど、暮らしに加えたいものがたくさんあります。
昨年見たルート・ブリュックの作品もいくつかありました。

岐阜県現代陶芸美術館の『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』展へ - ヨシトのたびかん

 

図録にもトリミングされたアーティストの顔写真が小さく載っているのですが、会場では大きなパネルで人物の背景に映っている道具などまで観られるのでお勧めです。
会場内の廊下の布のみ撮影可能です。

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 北九州市立美術館本館の「ザ・フィンランドデザイン」展のあとは同館の常設展と常設展示の一角のスペースの石井勢津子さんの「ホログラフィー・アート 草原から海へ」へ。 

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写真だと分からないけれど画像が前に飛び出してきて見えます。
来年の夏にこの館で開催予定の石井さんの個展も楽しみです。
※常設展と石井さんの展示は8/31まで中止(8/15時点)

石井さんの展示は常設展(コレクション展)の一室の一作品だけで、こういう予告コーナー的な展示の仕方を初めて見ました。 会場で頂いた冊子(ホログラフィーの画像を印刷してある遊び紙つき。手が込んでる!)によると、ホログラフィ技術の誕生は約70年前というから驚きです。現在はホログラムを制作するための設備や材料が揃わなくなってきているそうで、ますます来年見ておかねばと思いました。


kmma.jp

 

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三菱地所アルティアム最後の展覧会『絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。』

イムズにある三菱地所アルティアム最後の展覧会、ということで8月の上旬に行って参りました。

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ポスターは真ん中の空白がイムズ(Inter Media Station)の吹き抜けを表しているようなデザイン。吹き抜けを囲むように配置されたお店は文字となってぐるりと空白を囲み、金色の有田焼のタイルでできた外壁は無数の点で表されてる、という感じでしょうか。

 

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アルティアムの近くのエスカレーターの近くに新聞と同じくらいの大きさの、厚みのある紙でできた冊子が置かれていたので持ち帰って読みました。イムズに出店されているお店の社長さんだったり、イムズホールやアルティアムにゆかりのあるアーティストの記事が載っています。

イムズの公式サイトで内容を見ることもできます。

https://ims-tenjin.jp/special/imspaper/

 

なんかいいなぁと思ったので挨拶文を撮影。作品は一部を除き撮影可能です。

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鹿児島睦「鳥」一部

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最果タヒ「絶滅」
頭の中で声に出し、映像を想像しながら詩を読んでみる。イムズやアルティアムがなくなっても、心に残ったものは消えないよ。

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潘 逸舟「Where are you now」
部屋にドーン!と消波ブロックのような作品があります。陸なのにいきなり海に来た感じがします。

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浅井裕介「Following the last breath」

展示の際の壁の穴や床の傷をもとにしている作品。作品がある時は床も壁も脇役だったけど、最後に主役になったのだなぁ。

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飾られている絵はイムズの外壁のタイルに描かれているそう。こんなにキラキラしたタイルだったのか~!(塗ってあるのかな?)

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塩田千春「大陸を越えて」

 部屋に入った瞬間ギョッとするけど、一足一足にまつわるメッセージを読むとほっこりするものもあります。誰も居ないのに誰かの人生を感じる空間。

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津田直「やがて、鹿は人となる/やがて、人は鹿となる」一部

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吹き抜けを眺めながら移動するエレベーターもイムズっぽさを感じるものでした。
イムズもアルティアムも、今まで色んな出会いをありがとうございます。

閉館の8月31日まで残りわずか。31日は混み合う可能性が高いのでお早めに。

 

*休館や時短などがあるかもしれませんので、行く前に確認してから行くと良いかと思います。

アルティアムの公式サイトはこちらから→http://artium.jp/

 

 

動くストランドビーストも! 『テオ・ヤンセン展』熊本市現代美術館

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青空と海を背景に砂浜を駆ける「ストランド(砂浜)ビースト(生命体)」。

オランダのアーティスト、テオ・ヤンセンが故国の海面上昇問題を解決するために生み出したストランドビーストは風を動力源として生き物のように活き活きと動きます。

ボディ全体は黄色いプラスチックチューブで出来ており、この色がなんとも骨っぽい。たくさんの脚は虫のようでもあり、ヤンセンさんと共に砂浜を走っている姿は、怪獣を従えた博士のようで、写真を見るだけでワクワクしてきます。

数年前に別の場所で開催された展示の時は動いているものは見られなかったのですが、今回の熊本市現代美術館の展示では時間帯により、動いているストランドビーストが見られるとあって蔓延防止等重点措置が解除されてから行ってみました。

 

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この展覧会、嬉しいことに写真撮影可能です。
ストランドビーストは作者亡き後も自立して砂浜で生き延びることを目指しているので、こうやって写真が広まることで関心を持ってもらうのも生存戦略の一部なのです。
まんまと引っかかってしまいました。

 

 決まった時間に動くのは3種類のビースト。平日10時30分の回で動いたのはこちらのアニマリス・オムニア・セグンダ。解説を聞きながら、動くビーストを観ます。

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長さ10メートル、幅4メートル、高さ2.5メートルの大きなストランド・ビーストです。制作年は2018年。右の方に見えるペットボトルは風を貯めておく胃袋の役割をします。風がないときはそれで動くそう。

 

 平日11時半の回で動いたのはこちらのアニマリス・プラウデンス・ヴェーラ。制作年は2013年。長さ10メートル×幅6メートル、高さ4メートルでこちらも大きい。

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 最前線で見ていると近寄ってきた時に思わず後ずさりしてしまうほど。迫力があります。

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そしてヴェーラの後に同じく11時半の回のアニマリス・アデュラリ。2012年制。それぞれ、長さ5メートル、幅2メートル、高さ1.5メートル。一番親近感が湧くサイズの2体。顔のように見える△の尻尾を振ります。意外と素早く動きます。

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そして、触って押せちゃうビーストのアニマリス・オルディス。2006年制。長さ4メートル、幅2メートル、高さ2メートル。係りの方の案内でカーペットの上を押して前へ進み、後ろへ下がる体験ができます。
平日は混んでなかったのですぐ体験することができました。スーパーにあるカートよりは動かしにくいものの、たいした力をこめなくても動かすことができます。

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この展覧会では全部で12作品のストランドビーストを見ることができます。
大きな作品の展示なのでのんびりみても1時間くらいでしょうか。

私は平日の10時に入場し10時半の回のリ・アニメーション(動くストランドビースト)を見たあと残りの展示を観て、それでも時間が余ったので係りの人に出ても良いか伺って、一旦出てミュージアムショップで図録を買い、他の展示を観たあと、10分前に半券で再入場して11時半の回を観ました。

そんなに長く滞在できないよ!という方やご近所の方には夕方17時からの回がお勧め。3体が順に動くので効率よく観られます。

 

土日祝日やお盆の期間は予約制となっているので、公式サイトや公式ツイッターを確認してから行くとスムーズです。

テオ・ヤンセン展 | 熊本市現代美術館 CAMK

 

[体験]リ・アニメーション タイムスケジュール | 展覧会関連イベント | 熊本市現代美術館 CAMK

 

九州国立博物館『よみがえる正倉院宝物 ー再現模造にみる天平の技ー』

先週、小雨降る太宰府天満宮へ行って参りました。

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花菖蒲は満開、あじさいが見頃でした。天満宮の手水舎では「花手水」も見られました。

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九州国立博物館の『よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技』展へ。
出品作品はすべて再現された模造品だそう。

外見だけを似せるのではなく、当時と同じ材料や技法、構造の忠実な再現を目指しています。当時はあったけど今はない材料や道具を名工たちが試行錯誤しながら作る過程が映像で見られるコーナーもありました。

パンフレットにも大きく載っている螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)は明治の物と平成の物が並んで展示されています。平成に製作された琵琶は弾くと音が鳴り、会場では録音された琵琶の演奏を聴くことができます。

私のお勧めは稲垣蘭圃の「正倉院御物修理実況図」という修理の様子を描いたもの。
よくよく見ると茶目っ気たっぷりなので、会場に行ったらじーっと見て笑ってほしいなぁと思います。
自分の作業に熱中して人の桶を倒したり、顔の長い人の帽子が高さのある帽子になっていたり、一人一人の顔が違って面白いです。

2021年6/13日迄。

九州国立博物館 | 特別展:「よみがえる正倉院宝物 - 再現模造にみる天平の技 - 」

 

4階の文化交流展示室では葛飾北斎の「日新除魔図」がお勧めです。写真撮影も可能。

北斎が83歳から84歳にかけて毎日描いた獅子図や獅子舞人物図。日めくりのカレンダーのように毎日違う絵を見ることができます。(似てる構図があったり、飛ばしている日もあったりします)。
行った日付の「日新除魔図」が観られるとちょっと嬉しいので、毎回寄贈者顕彰室を覗いてしまいます。(縄文のコーナーのすぐ近くの第1室という部屋にあります)

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久留米市美術館「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」へ

最近ようやくポーの一族シリーズを全部読み終えて、会期終了間近の久留米市美術館「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」へ行ってきました。

現在、ポーの一族のシリーズの漫画は1970年代に発行された『ポーの一族』1~5巻と2016年から始まった続編『ポーの一族 春の夢』『ポーの一族 ユニコーン』『ポーの一族 秘密の花園1』が発行されています。

あらすじは、元々は人間だったエドガーとアランがバンパネラ(吸血鬼)となり、時代や場所を変えて様々な人と関わりながら生きていくお話です。人間の登場人物たちは歳を取るけれど、エドガーやアランは歳を取らずにずっと子供の姿で生きていきます。
「ずっと同じ姿だから人から怪しまれないように長く同じ所に定住せず生きていく」という設定が面白く、物語を動かしていく設定で新鮮に感じました。

会場内の萩尾さんへのインタビューによると、最初から連載物として描かれていたわけではなく、同じキャラクターが出てくる短編を3作描いていたらさすがに編集者さんに気が付かれて、そんなに描きたかったら描いたらという流れで連載が始まったようです。
なので初めて1巻を読んだ私はムムム?同じ名前だけど微妙に違うぞ何でだろ?と思ったのでした。連載が決まったからか巻数を重ねるにつれて読みやすくなり、2016年から始まる続編では絵柄が少し変わるものの物語の核心部に迫るドキドキの展開が描かれています。

会場内には主に『ポーの一族』の漫画の原画やカラーイラストの原画、宝塚の公演で使われた衣装の展示、終わりの方にはポーの一族以外の萩尾作品の展示もありました。
私を含め来場者の方は漫画の中のセリフを読むので進みがゆっくりなので、人が居ない原画の前を見つけては移動し、また戻ってさっき読めなかったところを読むという風に鑑賞しました。

 

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展示ざれている小さな予告カットを見ていると、たいてい「返却希望」と鉛筆で添えられていて、書いてないと返ってこなかったのだろうなぁと思いました。
カットの横にあらすじも鉛筆で手書きされていて、これも先生が考えるのだなぁ、編集者さんじゃないのだなぁ、と小さい驚きがありました。

萩尾さんへのインタビュー映像でイメージと筋肉の話をされていて、頭の中のイメージが変わると描く絵も変わるし、筋力が衰えると絵も変わると仰ってたのが印象的でした。
40年ぶりに同じキャラクターを描くと同じにはならないですよね。それでもエドガーらしさを描けるところが漫画の良さというか、物語の良さなのかもしれません。変わってはいるけど、変わらない彼を感じるというか。歳を取る私、変わらない彼。私、いまリアルにポーの一族を感じているんじゃないでしょうか。

インタビュー映像で流れる作業場で、手慣れた手つきでパソコンで紳士靴の画像を角度を変えながら眺めている先生もちらりと映っていて、まだまだ進化しようとしている!と思いました。

70年代のポーの一族掲載号の雑誌の表紙や漫画雑誌の展示もあり。 文通相手募集の氏名や住所が漫画の横に載っていて時代を感じました。(私が子供の頃も文通相手募集のコーナーがありましたけども、ホホホ)
昔は好きなものについて語り合おうにもブログもツイッターもなかったから「きっとこの号のここが好き!」とかを手紙で送りあっていたんだろうなぁ。

 

鬼滅の刃』を読んだあと『ポーの一族』を読むと、「この設定、鬼滅で見たことある!」という場面を発見できて楽しいです。一族の直系の濃い血、血で仲間を増やす、血を受け入れられずに亡くなる者もいる、ずっと眠っている間は飢えないなど。
エドガーとメリーベルが兄と妹なのも炭治郎と禰豆子っぽいなぁと思いました。
萩尾さんは大牟田出身、吾峠先生も福岡出身と聞くので何か参考にされているんでしょうか。

 

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漫画に出てくるバラ、クリムゾン・グローリーも咲いていました。

2021年6月13日(日)まで!

デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展 | 久留米市美術館 | 石橋文化センター

照明も見どころ。九州国立博物館『奈良・中宮寺の国宝』展へ

先週、九州国立博物館の『奈良 中宮寺の国宝』展へ行ってきました。
入館には日時指定チケット(事前予約)が推奨されています。
スマートフォンでチケットを購入して行ったので受付はスムーズでした。


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メインの菩薩半跏思惟像は一番最後に展示されており、像の周りをぐるりと一周できます。
こちらの像がある展示室内は照明が工夫されていて、壁に障子がはめ込まれているように見えます。
それが部屋をぐるっと取り囲むため、部屋全体を光に包むことができ、像の影になる部分が少なくどこから見ても見やすく感じました。
明るいけれど眩しくない、障子越しの光のようで穏やかな気持ちで像を眺めることができたのが嬉しかったです。
ちなみにこの照明はアイリスオーヤマが協力しているそうです。

国宝の菩薩半跏思惟像の展示室の先の部屋では中宮寺や像についての映像が流れています。
元々彩色されていてこんな風だったよ、飾りも付いてたから跡があるよ、というのを見たらまた見たくなって像の部屋に戻って見ました。
同じような方もいらっしゃって、そうなるよね~とニヤリとしました。
自分で好きなように見た後に解説を受けてじっくり見ると先ほど気づかなかったところが見えてくるのが面白いところです。

そして、国宝の菩薩半跏思惟像にたどり着く前にガンダーラ、中国、朝鮮半島、日本の半跏思惟像が一堂に展示されているのもこちらの展覧会の魅力です。
四角い箱のようなものに腰掛けている像もあれば、クグロフのような台座のパターンも。(こちらが多い気が)。
衣紋が綺麗に見えるのと土台が台形だと全体が落ち着くからでしょうか。

お堂では半跏思惟像を正面からしか見ることができません。
今回は側面や後ろ姿が見られるチャンスですので機会があればお勧めしたい展覧会です。

 

九州国立博物館 | 特別展:「奈良 中宮寺の国宝」

 

会場内撮影不可のため描いてみました。

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遠出した気分になるかも?久留米市美術館『生誕130周年記念 髙島野十郎展』

緊急事態宣言が明けたらと思っていましたが、延長されてしまったのでこのまま行けなくなったら後悔するなぁと思い、平日に行ってきました。

1890(明治23)年、久留米市生まれの画家、髙島野十郎展。

入館時に検温、アルコール消毒、名前と住所の記入を求められます。展示されている作品の撮影はできませんのでこちらの看板をば。「野十郎と言えばコレ!」という作品が並んでいます。

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13時過ぎごろで、最初の部屋は平日の割に多いなと感じたものの、2つ目、3つ目と展示室を移動するにしたがって人はまばらになり、ゆっくりと観ることができました。

今回の展示の構成は青年期、欧州滞在期間の滞欧期、戦前期、戦後期、光と闇の全部で5章。

久留米を出て東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業し画家の道へ進む野十郎。
ヨーロッパに滞在して絵を描き、戦時中は福岡に戻り絵を描き、戦後は関東の方で絵を描き、という生涯ずっと絵を描いていたのが分かる流れになっていました。

 

青年期には岸田劉生っぽい重く暗い色調の自画像もあれば、ゴッホっぽいタッチの絵もあったり。

青年期から晩年までずっと登場するりんごに注目するのも楽しいかもしれません。
スーパーで買えるようなりんごとは違って一回り小さくて形もどこかいびつで、傷がある方を見せるように描いてある作品もあり、何か思い入れがあったのかなぁと考えてしまいます。
果物や花と共に、同じお皿や壺が描かれているのを見つけて嬉しくなったりも。

初めて見た気がするのですが個人蔵の『晴と曇』という、晴れた山並みと曇りの日の山並みの風景を左右に分けて描いた作品がありました。山にある家の台所に立って小さな窓から外を見ているような気分になる作品です。よく見ると山並みの形が違うので天気が違うだけでなく、場所自体も違うのかもしれません。

屋内だけでなく外の風景や自然の作品が多いので、絵の中で遠出したような気分が味わえるような展覧会でした。

 

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久留米市美術館 『生誕130周年記念 髙島野十郎展』
2021年1月20日(水)~4月4日(日)まで。

新型コロナウイルス感染症の関係で会期が変更になる可能性もありますので、ご来館の際は公式サイトや公式ツイッターをご覧になってからのお出かけをお勧めします。 

生誕130年記念 髙島野十郎展 | 久留米市美術館 | 石橋文化センター