代理人
今日もきっとどこかで 誰かが傷付いている
耳にしたくないような言葉を吐かれて 目の前が真っ暗になっている
それまで綺麗に映っていた世界が人が 全て敵になる
身体を吹き抜ける風も どこかよそよそしい
私にだって出来ないことはある 苦手な事もたくさんある
したくても出来なかったり 前まで出来ていたのに何でだろうって悔しくなる時もある
誰も完璧じゃないのは 分かっているんだ
けれどね そんな事言わないでよ
私だって 生きているんだ
あなたと同じく 生きているんだ
たった一つの言葉が その人の世界を変える
たった一つの言葉で その人の世界が変わる
傷付くのは仕方ないよ けれど傷付けてはいけないから
私たちは そうやって生きてきた
歩くのや瞬きをするのと同じで 誰にも教わらずに身につけてきた
それなのに それなのに
心の傷は 死ぬまで癒えることは無い
その傷の深さを 周りの人は知らない知れない
価値が無いと蔑まされる この痛みを誰が分かってくれるのか
涙を流して叫んだら 誰かが助けてくれるのだろうか
もう 私の世界も真っ暗だ
言った本人は覚えていなく 言われた人は覚えている
言葉の使い方を間違えると 命まで奪ってしまう
軽はずみに放った音が劈き 命の螺を緩め全てをばらばらにする
そこにいた人が 物に変わる恐ろしさを私は知っている
他人事では無く すぐそこにある恐怖
だから私は 話す事が嫌いだ
あの視線が 苦手だ
もう 全部嫌なんだ
何もかも 放り投げて
いなかったことに したい
存在していなかった事に したい
いったい私は 必要な人なのかな
もう わからないよ
また あの時と同じだ
また 夜がやってくる
大人しく 闇に包まれるのが
私には お似合いなんだ
心の痛み 請け負います
貴方が 幸せに暮せるのなら
目には見えないものでも
愛なんかなくても 私たち人間はなんでも出来てしまう怖さ
手を握ったり抱き合ったり キスをしたりセックスをしたり
そんな薄っぺらいもので いとも簡単に繋がれる
本当に大切なものなんか 無いんじゃないのかと
私もその内の一人だと思うと とても儚くて残酷でしかない
本当の意味での番を知らないからこその 真似事なんじゃないのかな
その延長線上で満足して 何事も無く生活する姿が
なんだか可笑しくて 私やみんながみんなしていることなのに
其れに気付いてしまってからは テレビで見るあの人だったり
街で見かける人皆が 大切な何かの裏側に秘めた隠し事を
何処かで共有しているみたいで 知らないふりをしているみたいで
人の奥の奥の薄汚い部分を見い出せた 七月の夜
静けさが収まらない街の中でただ一人 途方もないまま歩き続ける
何処に行こうか何をしようか そんな事は一切考えず
ただ見たままのその風景を 首からぶら下げた黒い箱に閉じ込める
一瞬だけ照らし輝く其れに 私はどれだけ救われたのだろうか
私にも人間臭い部分があるんだと 気付かされた
私はこのままでいいんだと 気付かされた
覗かなくてもいいようになったのは 時代の進化かそれとも私の成長か
両手に収まらない四角形の風景は 大切な物を写している
其れも薄っぺらい物なんだけれど 何でだろう
其れも深い物なんだけれど 何でだろう
言葉では表せられない程 違う物で
目に見えるとか 見えないとかじゃなくて
奥行きがあるとか 無いとかじゃなくて
上手く言葉で表しきれないけれど 分かって欲しいんだ
時間がかかってもいいから 分かって欲しいんだ
あの時一緒にいた時間や 貴方が泣いていた時だってそう
一瞬だったけれど それは重みのある時間で
一言ではとても 表しきれない程大切な一瞬だった
その一瞬を求めて 人は人との繋がりを求める
どんなに薄っぺらくても どんなに浅くても
自分の中にあったはずの大切な物を 見つけるために
交わり そして重なり合う
運命や奇跡で 片付けるようなものでは無い
同じ一瞬を生きている中での 時の交差点で
巡り合わせた ただそれだけにしか過ぎない
だけど人は其れを 運命や奇跡と呼ぶ
だけど其れを 大切にする
私もいつの間にか落として 探し求めていた
秘密にしていた そうしていただけだったみたい
今日の夜空は何故だか いつもより明るくはっきりと見えた
この夜を私は知っている
誰しもみんなさ 辛いことだってあるし
悲しいことを たくさん抱えてる
それが全部 悪いことではないんだよ
みんな 一緒なんだから
それでもさ たった一人の人が
そんなことないよって 辛いことなんかないよって
そんな悲しい事を 平気で言ったら
貴方の気持ちも 私の気持ちも
どこに行ってしまうの わからないよ
何気ない言葉一つで 誰かが傷ついたり
何気ない笑顔一つで 誰かが一緒に笑ったり
簡単なようで 難しい
自分の気持ちも 上手く言えないのに
ちょっと我慢すればいいやって そう思ってたら
何にも お話できなくなってしまった
自分の事を 話すのって難しいね
あんなことしたよとか こんな楽しいことあったよって
言える人がうらやましい 私にはできないから
また 前と同じ自分に戻っているのかな
何が本当の私か いつの間にかわからなくなってた
せっかく貴方の笑顔で 元気になれたのに
せっかく貴方のおかげで 動けるようになったのに
なんでこうなっちゃったんだろうな なんでだろ
終わらないものなんて 無いほうがいいと思っていた
あの時感じた幸せも 昔よく遊んでた公園も
たくさんの人との繋がりも 死んだ大切な人も
全部終わらなければいいと 思ってた
でもね 終わらないものなんてなくてよかった
貴方の今抱えてる その痛みも
いつかちゃんと終わる 終わるから
だから 悲しくならないでなんて言えないけれど
自分の事を 嫌いにならないで
貴方の事をよく知っているのは 貴方自身だけれど
貴方の味方になれる人は 貴方じゃなくすぐ傍にいるから
自分ひとりじゃないって事 忘れないでください
もう十分です 苦しくなるのは
たくさん泣いたし 偉かったよ
もう十分です 優しくするのは
だって貴方はもう 優しいんだから
優しくしてください
ふと思い出す 少し前の私の事を
何をするにも 嫌になっていた時期があった
朝起きてから一度も動けなくて 顔も洗えず一日を同じ体勢で過ごして
いっそのこと 消えてしまえば楽なのにと
いつも考えては また同じ日々を過ごしていた
十八歳と二十一歳に 夢を見ることを放棄した
それは誰かにとっては たった一瞬の事だったけれど
私にとっては 十八年と一秒、二十一年と一秒で
どうでもいいことではなかったんだよな 苦しかったんだ
大切なことなんて 私にはもう無かった
目を閉じても ぐるぐると黒が渦巻くだけで
柔らかなぬくもりなんて 知らず生まれ落ちたから
もう十分だよって それだけでよかったのにな
よかったのにな
あれから 随分と時間は経ったけれど
根本的なところは 何一つ変わってはいなくて
何がしたいのか どうなりたいのか
わからない日々を 過ごしては
大切な人や物を 少しずつ失っていく
息をすることって こんなにも難しかったっけ
歩くことって こんなにも辛いことだったっけ
今まで 何気なくできていた自分を褒めてあげたいくらいに
弱ってしまったと ふと思う、齢二十四の三月の夜
ただ あの頃と違うのは
隣にいて 笑ってくれる貴方がいること
貴方と呼べる 存在があること
その事実に 私は感謝しなければならない
当たり前ではない この一瞬に
二度とない この人生に
あんまり口には出して 言えない事だけれど
救われているんだよ 本当さ
貴方の幸せを
自分の幸せを 願うのはとても簡単で
誰が好きでだとか 何が嫌いでだとか
人の気持ちなんて 考えなくてもいい
そんな事って 本当にいいんでしょうか
私は私の生き方をする たったそれだけの事なのに
どうしてこんなにも 難しいのでしょうか
大切にしてくれた人 いつも気にかけてくれた人
そばにいてくれた人 寄り添ってくれた人
貴方の事を考えると どうしても心が痛くなります
私は自分の事しか 考えていないはずなのに
どうしてこんなにも 苦しいのでしょうか
どうしようもないことの 繰り返しが
嘘みたいで 夢みたいで
あの頃に戻れるのなら もう一度だけでいいから
また笑って 幸せな瞬間を迎えたい
また会って一言 好きだよと言いたい
私は私の事しか 考えていないはずなのに
どうしてこんなにも 貴方の事を考えてしまうのでしょう
どうしてこんなにも 胸が痛むのでしょう
どんな結果が 待ち受けていようとも
どんな姿に 変わり果てていようとも
私は貴方を 決して忘れない
私は貴方と歩んだ日々を 決して忘れない
貴方が生きた証として 貴方と生きた証として
私は今日ここに 其れを残します
何事もなかった日々が 輝いて見える今だからこそ
生きててよかったと そう思える夜になりそうです
貴方と共に歩めた日々が 昨日のことのように思い出せるからこそ
恨んだあの日の夜も 今では好きだと呼べそうです
貴方は今 どんな顔をしていますか
私は今 泣いています
笑っていたとしても 喜んでいたとしても
貴方を思い出すと 泣いてしまう
本当に大切な人って そういうものなのです
本当に好きな人って そういうものなのです
奇跡
無理をしてまでも やるべきことなんてあるのかな
何かの為に自分を傷付けて 誰かの為に自分に嘘を付いて
そんなのってないよって 自分に言い聞かせるけれど
本当は怖いだけなんだ 失うのが怖いだけなんだ
何にもできないくせに 何でもできるようなふりばかりして
助けて欲しいよって 苦しいよって
素直に言えたら楽なのに でも出来なくて
どんなに時間が経っても どんなに歳をとっても
私は何にもなれないし どこにもいけない
でもそれでいいんだ 悲しいことじゃないから
私は貴方じゃないし 貴方は私じゃない
誰だってそう きっとそうなんだ
自分のことも守れないまま生きて 誰かの為だって言って
本当は自分に返ってくることを 期待して優しくしてる
優しくなれないなら 死んだほうがいいから
それで誰かの中で 生き続ける人生はきっとずっと
一生輝いていると 思うんだ
偶然なんかじゃなくて 奇跡だったんだよ
今こうして 貴方と出会えて目を合わせて話ができるのも
あり得ないって言った時間が 幸せの順番が
たまたま訪れた ただそれだけのことなんだ
何かが切れた音がした それは気のせいでもなくて
いつの間にか無くなっていたんだ どこにも見当たらないんだ
でもそんなのどこにもなくて 初めからなかったことにも気づけないで
そんな暮らしも悪くはなかったよ うん 悪くなかった
誰も教えてくれないことばかり 知りたがって
本当の事を知りたいんだ 貴方の事も私の事も全部
ねえ 誰かが笑っているときに 誰かは悲しんでいて
誰かが死んだときに 誰かは生まれてきていること
知っていますか 知っていましたか
そのうちの一人だということ そのうちの一人になるということ
それも偶然なんかじゃない 奇跡なんだって
私たちはその言葉を信じて また朝を迎える
みんなごめんって残して 朝を迎えない人もいる
私はその意味を過去を未来を 全部は背負えないけれど
何もかも終わるということを知ったまま またこうして息をする
それを奇跡と呼ぶ 奇跡と呼びたいんだ
変わりたいんじゃない
私が考えるに 優しさっていうのは
渡したり貰ったり そういうものでは無いと思う
意図して 渡したり貰ったりしているんだったら
それは優しさとは 決して言えるものでは無い
貴方の事を思って したたった一つの事が
貴方の事を考えて 伝えたたった一つの言葉が
本当の意味での 優しさになるんだと
意味なんかなくても いい人なんかじゃないと言われたとしても
自分のした事が ほんの少しの優しさの欠片になるのなら
それでいい それだけでいい
上辺だけの言葉で 優しくなれるのなら
誰だって苦労しないし 悩んだりもしない
人に対してこんなにも 嫌な気持ちになる事なんてなかったのに
「どうして」だなんて 言えないのも分かってるよ
それなら初めから 優しくなんてして欲しくなかった
そんな言葉 かけてほしくなかった
一体何を求めていたのか いつの間にか分からなくなってしまったな
いつの間にか傲慢になっていたのか それとも傷つきやすくなっていたのか
私は私であることの 意味すら知らないのに
分からないことが多すぎる 自分の事でも誰かの事でも
全部知りたいわけじゃない 知って楽になりたくもない
ただ 望むとするならば
生きていく上で 人と話す上で
優しさを求めるような そんな人間にはなりたくないし
当たり前だなんて言って 貴方のした事全てを蔑ろにするのも
また悩みの種を増やすだけだから 後悔するだけだから
私は 私である以上
優しくはなれなくても 誰かの為になれる人でいたい
それがいつになるのかは 誰にも分からないけれど
生きているうちは 大切な人の味方でいたい
それだけでいい そのほうがいい