Uber徹底研究 -ゲーミフィケーション・行動科学編-
今回はUberのドライバー向けのアプリについて話をしていきたいと思います。
前回、前々回はこちらから
- ■Uberドライバーの特徴とは
- ■Uberが使った魔法 ゲーミフィケーション
- ■Uberのゲーミフィケーションの活用事例
- ■ゲーミフィケーション以外にもまだまだある Uberの取り組み
- ■行動科学的アプローチへの懸念点
- ■さいごに
■Uberドライバーの特徴とは
ずばり、パートタイムのドライバーが多いことです。パートタイムドライバーはドライバー全体の半数以上を占めています。
Uberのように、非正規雇用で単発の仕事が多い労働者を抱える企業は、労働者に圧力をかけて仕事をさせることはできません。そんなことをすると、Uberのドライバーは嫌がってドライバーを辞めてしまうからです。辞めたドライバーは競合のLyftのドライバーになってしまうかもしれません。そのため、仕事を少しでも楽しくモチベーション高くしてもらうために、Uberは仕事に「あること」をしました。
■Uberが使った魔法 ゲーミフィケーション
その「あること」とは、「ゲーム化 (ゲーミフィケーション)」です。
皆さんはテレビゲームやスマホゲームに熱中したことはあるでしょうか。
ゲームをついついやってしまう、ワクワク興奮しながら取り組みたくなる気持ちの裏には、ゲームとしてよくできた仕組みがありました。このゲームの仕組みをゲーム以外の物事に応用しようというのがゲーミフィケーションです。
ゲーミフィケーションは例えるならば、タスクの「ポケモン化」です。そのポケモン化を説明するために、ポケモンとゲーミフィケーションに共通している要素を、ゲームの基本サイクルとともに見ていきます。
ゲームの基本サイクル
1.目的と目標を設定する
2.行動を選択する
3.目的を達成する
ポケモンの場合を考えてみると
1.ポケモンマスターになることが目的で、そのためにジムリーダーを倒したりポケモンを次々と収集していくことが目標です。
2.育成したり戦ったりするポケモンを選択し、さらに対戦ではどの技を使うのか選択します。
3.ジムリーダーを倒したり、ポケモンを収集したりして目標を達成し、最終的に目的を達成していきます。
さらに上記1~3のサイクルを加速するのが以下の2つです。
・可視化:全体像および現状を見えるようにする。
・報酬:ゴール・目標達成により報酬(金銭的、心理的、物質的報酬)がもらえる。
それぞれポケモンにあてはめると、
可視化の例
・ジムリーダーを倒して得たバッジを確認できる(全部で8個のうち、現在何個かなど)
・ポケモン図鑑で何をどれだけ集めたかを見ることができる。
・敵のポケモンを攻撃するとHPが減る
報酬の例
・ジムリーダーを倒すとバッジがもらえる
・四天王を倒すと殿堂入りする。
・伝説のポケモンと呼ばれる希少性の高いポケモンを収集できる
・ポケモンをレベルアップさせると新しい技を覚えたり、進化する
ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足
- 作者: 深田浩嗣
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2011/09/10
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また、上記要素以外にも、友人とポケモンを交換したり、対戦できるところもゲームに熱中する重要な要素だと思います。*1
それでは、どうすれば「ゲーミフィケーション」をビジネスで実現できるのかについて、Uberの事例をもとに考えていきます。
■Uberのゲーミフィケーションの活用事例
・クエスト
Uberはドライバーにインセンティブを与える方法も優れています。このインセンティブ設計にはゲーミフィケーションが用いられています。例えば「クエスト」と言って、ドライバーが週に何回顧客を車に乗せたかによってボーナスが支給される制度もあります。
出所:Uber Quest Review: Tips, Tricks, Strategy, Hacks & Earnings
このクエストにはいくつかのタスクが書かれており、次々とゲームのミッションをクリアしていく感覚で仕事ができます。
クエストには上記のゲームの基本サイクルや可視化・報酬が明確に組み込まれています。
出所:Uber Quest Review: Tips, Tricks, Strategy, Hacks & Earnings
・バッジ
Uberのドライバーアプリは、ドライバーが乗客を乗せた後には乗客からの評価・バッジをもらえる設計になっています。
出所:Uber Driver Compliments - A Fun Way for Riders to Show Appreciation | Uber
ところで、なぜバッジには人の行動を促進・継続させる効果があるのでしょうか。
そこには行動科学、行動経済学の観点から秘密があります。
バッジを獲得していくと、このバッジは自分が頑張って手に入れたという想いを生むことがあります。このように頑張って手に入れた想いが生まれるような効果を行動経済学の研究者のダン・アリエリーは「イケア(IKEA)効果」と呼んでいます。イケアで買ってきて自分で組み立てた家具のように、人は自分で頑張ってつくったものを過大評価する傾向があります。さらに、もし自分が獲得したいバッジが希少性の高いものであれば、そのバッジに対する想いはより強くなります。そのため、仕事へのモチベーションが高まり、またバッジは乗客からの評価であるため、ドライバーの承認欲求を満たす効果もあります。
参考:お客の評価で「バッジ」獲得! 運転手アプリはゲーム要素が満載|行動経済学を活用したUberの成長戦略(中編) | クーリエ・ジャポン
・ボーナスチャンスのマッピング
またドライバーのアプリ上にある地点が示され、そこに行くと報酬が何倍かにアップする仕組みができています。
出所:The New Driver App | Case studies | Design at Uber
まるでPokémon GOしてるように顧客をピックアップできるのです。
補足として、当然ながら乗客の配車場所までのルートも丁寧に教えてくれるため、運転免許証を持って運転ができれば原則的に誰でも仕事ができます。
出所:The New Driver App | Case studies | Design at Uber
・日本ではUberEATSでクエストを実行可能
食べ物を運ぶUberEATSでも同様のクエストがあります。このクエストは日本でも実行できます。少し脱線しますが、僕がよく行くジムでずっとエアロバイクをする人がいて、その人とUberEATSを関連付けた時にある事に気付きました。
それは、UberEATSで自転車を漕ぐのと、ジムでエアロバイクをしているのとでは、身体運動がほぼ同じにもかかわらず、お金をもらう立場と払う立場に分かれているということです。今後はこのように、段々と働くこと、運動すること、健康になることなどの境界がなくなっていくのではないかと思います。1つの目的を果たすのではなく、複数の目的の達成を目指すのことが増えてくるのではないかと予想しています。
■ゲーミフィケーション以外にもまだまだある Uberの取り組み
それでは、ゲーミフィケーション以外にも行動科学の観点からUberの取り組みを紹介します。
・タスクの事前割り当て
Uberドライバーが日頃、最も嫌がっていることは、仕事時間中に客がなかなか見つからず、結果的に長い空き時間ができてしまうことです。
そこでUberは「forward dispatch(事前割り当て)」という機能をドライバー用のスマホアプリに追加しました。
この機能では、ドライバーが現在の仕事を終える前に、次の仕事をアプリ画面上に提示し、ドライバーの承諾を得た上で、その仕事を割り当てます。これによりドライバーが手持ち無沙汰になることを防止しています。
このような事前割り当ては、人には今まで自分がしてきたことを変えたくない傾向(行動的モメンタム)を利用したものと考えられます。仕事中に次の配車までの時間が空いてしまうと、そこで当日の仕事を辞めようかという選択肢が生まれますが、次の配車が入ってしまえばそこで仕事を辞めづらくなります。空白の時間を生まないことにより、Uberはドライバーが継続して仕事に集中できる環境を作っているのです。
・目標達成に向けた通知
Uberはドライバーの一部の人には売上目標を立てる傾向があることに気がつきました。そこで、Uberはこの傾向をドライバーの「ログアウト時」に活用しました。
ドライバーが仕事を切り上げるためにアプリからログアウトしようとすると、「目標達成まであとわずか」と通知し、ログアウトを思いとどまらせるのです。
この事例をFBM(Fogg Behavior Model)というフレームワークを用いて整理します。FBMでは、人間の行動が生まれるための要素を下記の3つに分け、これらが同時に必要な状態にあれば行動が起こるとしています。
1. モチベーション(動機):喜び,苦悩,希望,恐れ,社会的受容,社会的拒絶などの要因によって上下する。
2. アビリティ(可能性):行動が可能な能力。スキルだけではなく、行動に必要な時間やお金なども含まれる。
3. トリガー(きっかけ):簡単にする,通知する,動機づけするの3種類。
これら3つの要素の関係を示したのが下図です。
図:フォグ式消費者行動モデル:The Fogg Behavior Model
ポイントはトリガーが発生する位置です。トリガーがアクションラインよりも右上の位置で発生した場合、ユーザーは行動を起こします。その点、Uberの通知は目標達成までに必要なアクションとそれによる報酬を明確にしているため、実行可能性が高く、モチベーションを高めてドライバーの稼働率・稼働回数を上げられると考えられます。
Uberドライバーの労働形態のように、プラットフォームを介して働く形態がますます広がるなか、同社の試みは心理学的なアプローチが労働者を管理する有効な手段になると示す一例であるといえます。
Uberは従業員の力をより多く引き出すため、社会科学を活用してきました。しかし、そこにはいくつかの懸念点もありました。
■行動科学的アプローチへの懸念点
米国では企業は従業員を手厚く保護するべきだと考えられており、特に最低賃金や時間外手当を支払うことは重要視されています。
しかしUberに対して、労働者は法的にも倫理的にも守られていないという声も挙がっています。ドライバーは個人事業主という立場であり、雇用に伴う保護はほぼ受けていないとも言われています。
保護の観点だけでなく、労働への対価についても指摘があります。
経営学者のケビン・ワーバック教授は、「ゲーム化はギグエコノミーにおいて、労働者同士のつながりを構築するなどよい面もある。一方で、乱用は不十分な対価で労働者を支配するという危険性がある」と指摘しています。*2
Uberにとっての理想は、極端に言えばドライバーが0円で働いてくれることでしょう(だからこそ自動運転の開発もしているわけで)。一方でUberにとっての脅威はドライバーが離職することでしょう。そのため、Uberにとってはドライバーに金銭面以外のモチベーションで楽しく継続的に働いてもらうことが最適解だと考えられます。
それでは、上記のような行動科学的アプローチについて、実際にライドシェア業界の中にいる人たちはどのように考えているのでしょうか。
ウーバーの経済・政策研究分野を率いるジョナサン・ホールは、「どれだけ心理的な傾向を利用しても、人々が(ジンガの)ゲームをどれだけ長くプレイするか、もしくはどれだけ長くウーバーの仕事をするか「効果は限られている、おまけ程度だ」」と言います。*3
また、Lyftのプロダクト責任者ケビン・ファンは、「ドライバーたちからは、最も嫌なのは長時間仕事がないことだと言われ続けている。客足が伸びなければ彼らは仕事を切り上げる。われわれはドライバーが常に忙しくなるようしたい」と話します。*4
Uberはゲーミフィケーションを用いても、その効果は限定的だとしていて、Lyftはドライバーのためをおもってやっていると主張しています。
結果として、Uberのドライバーは不充分な対価を受け取る可能性があります。ただ、難しいのは何をもって不十分な扱いと認定されるかです。Uberのドライバーの半分以上はパートタイムであり、自分の都合の良い時間に働ける分、多少は労働への対価が低くても構わないと思っている人も多いかもしれません。また、Uberが行動科学的アプローチでドライバーを働かせようとする取り組みと、ドライバーが好き好んで自発的に働こうとするのは紙一重です。そのため、どのような状況に対して、どれほど不十分な対価となるのかが今後もポイントになると思います。
■さいごに
今回はUberのゲーミフィケーション・行動科学に基づく取り組みを紹介・考察してきました。
ゲーミフィケーションは上手く使えば人生をより豊かにしてくれると考えられます。
集中した状態の「フロー現象」で有名な心理学者チクセントミハイは、ゲームが私たちの生活に新しい活動をもたらす最も効率的で安定的な源だとするなら、なぜ現実世界はこのようにゲームと似ていない面が多いのかと疑問に思いました。
ゲームがこれほど明確でより良い代替案を示しているのに、なぜ私たちは生活の大部分を不必要な退屈や不安の中で過ごさなければならないのでしょう。「もし幸せにしてくれるものを私たちが無視し続ければ、日に日に勢いを増している非人間的な力の永続を自ら率先して助長していることになる」とチクセントミハイは述べています。
その解決策は、チクセントミハイには明白なようです。つまり、現実の仕事の仕組みをゲームのように変えていくことで、より多くの幸福を生み出すのです。ゲームは各自が自由に選び、能力を極限に活用できるようなハードな仕事の作り方を私たちに教えてくれますし、ゲームで得た教訓は現実世界に応用することができます。私たちにとって喫緊の問題 -抑うつや無力感、社会的孤立、無意味なことばかりしていると言う感覚には、ゲームフルな仕事をもっと毎日の生活に取り入れることで効果的に対処できるでしょう。(「幸せな未来は『ゲーム』が創る」より引用)
このようにゲーミフィケーションは、日々の仕事を充実させる1つのポイントになるでしょう。今回のUberの取り組みは、自分の仕事などへのモチベーションを高めるのにも有効かもしれません。
- 作者: ジェイン・マクゴニガル,妹尾 堅一郎,武山政直,藤本 徹,藤井 清美
- 出版社/メーカー: 早川書房
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*1:
参考までに、以下にゲームデザインの12のポイントも記載しておきます。
ゲームデザインの12のポイント
1.共感ストーリー (真善美)
2.レベル設定 (級・段・ステージ)
3.バッジ効果 (見える化・可視化)
4.コレクション効果 (レアアイテム・コンプリート)
5.ソーシャル共有 (承認・競争・協力・交流)
6.自発的参加 (自己発働)
7.セルフカスタマイズ (自己決定)
8.習慣化クエスト (短期ミッション)
9.学習クエスト (実成長・能力向上)
10.逆転可能性 (最終フレームのないボウリングなんて・・・)
11.サプライズ報酬 (外発的動機付けで創造性を下げない)
12.ビジュアル・デザイン (わかりやすさ、使いやすさ、面白味)
出所:ゲーミフィケーションで会社を活性化せよ! |「Sales Force Assistant」シリーズ
・その他ゲーミフィケーションのフレームワーク
https://yukaichou.com/gamification-examples/octalysis-complete-gamification-framework/
https://growthhackjournal.com/gamification-examplesoctalysis-complete-gamification-framework-part1/
*2:How Uber Uses Psychological Tricks to Push Its Drivers’ Buttons - The New York Times
Uber徹底研究 -UXの秘密を探る-
UberはUXが非常に優れていると言われます。ではそのUXは具体的にどのようにして作られたのでしょうか。
今回は「UXとは何か?」というところから始めて、UberがUXをどのように改善してきたかを紹介したいと思います。
(ちなみに前回のビジネス概要編の投稿はこちら)
目次
■UXとは何か
UX(user experience)とは、サービスなどの利用を通じてユーザーが得る経験です。
Uberの場合は何がUXに該当するでしょうか。いくつか例を挙げてみます。
・操作しやすい
・UIデザインがキレイ
・車両を呼ぶとすぐに来てくれる
・到着までの時間や、目的地までの時間が可視化されて安心する
・運転手へのレビューがあるため安心できる
などなどたくさんあります。
それではこのようなUXを向上させるために、Uberは何をしてきたのでしょうか。まずはUberがUXを改善したきっかけから話を進めていきます。
*以下の内容はUberのUX改善に関わった、デザイナーのSimon Panらの情報・画像を参照・抜粋して作成しています。本稿は抄訳かつ要約しているため、具体的な内容は原文をご覧ください。*1
■UX改善のきっかけ
2012年に設計されたUberのアプリ(乗客用)は、規模の拡大に苦戦していました。 アプリの使い勝手に問題があったのです。問題の詳細は後述していますが、ユーザーと運転手との間で、配車場所の認識が異なるなど、ユーザーからの不満があったのです。
左が2012年、中央と右が2016年のUberアプリ上の画面
■UXの改善方法
UXを改善するために、まずは「問い」を設定しました。
1.ユーザーのどのような状況(コンテクスト)を考慮する必要があるか?
2.誰にとっても、どんな場所でも完璧な配車とは何か?
1.に関しては早い段階で、乗客と運転手の体験に影響する要因を特定し、それらの要因を理解することが重要でした。そこで、UX改善に関わったSimonらは、まず様々なパターンで状況(コンテクスト)を洗い出し、起こりうる状況を理解することにしました。
状況(コンテクスト)把握のためのマッピング
「2.完璧な配車とは何か?」という問いに対しては、まずは完璧な状態から逆算することを考えました。
完璧な状態から逆算(Future forward)
1,2を行った結果、配車の不完全な部分を解消するため、4つの重要な問題がわかりました。
1.配車場所が不明確
2.配車までのルートが非効率
3.配車場所や目的地までの時間が不明確
4.ヒトや車の移動に対応できていない(両者とも流動的)。
これらの問題がユーザーの満足度を下げていました。
Uberの配車データを分析してみると、ほぼ全ての乗車には、配車場所を明確にするための電話や運転手に会うためにどこか他の場所に向かうなどの余計な調整作業が必要でした。
その結果、配車に何らかの問題が起こった時にその回復に費やされた時間・費用は、Uberの収益に重大な影響を及ぼしていました。サンフランシスコのような都市では、配車に何らかの問題があるために毎週100万ドル以上が無駄になっていました。
配車指定場所が不明確であった背景には、Uberのアプリの設定にも問題がありました。 配車の設定時には、Uberアプリ起動時のGPSデータを使用していました。このGPSデータを使用した結果、すべての配車の約半分は少なくとも100mほど誤差がありました。
また、多くの配車は建物の中からリクエストがありました。そのため、建物の近くのどこに配車すべきかの認識がユーザーと運転手の間でずれることがありました。
以上のような問題が、特にユーザーが配車場所に向かう際に起こっていたため、時間を無駄にしたり、心理的にマイナスの影響を受けていました。
配車時に起こるPain
■具体的な解決策
そこで、これらの問題を解決するためにまず出てきた考えが、"Destination First"です。
・Destination First
文字通り目的地を最初に設定することです。
これにより、
①配車場所に車を止めてから進む方向が分かり、
②目的地を設定している間にGPSの位置情報が更新され、乗客のより正確な位置を把握てきます。
更新後の正確な位置情報を取得するには、当時はアプリ起動時から約12〜15秒かかっていました。そこで、この更新後の位置情報をユーザーの位置として使用しました。
Uberは他にもユーザーの近くの車両を最適に配置する仕組みを作ったり、リクエスト時に配車場所を柔軟に変更できるようにすることでユーザーの満足度を高めました。
■さいごに
UX改善のBefore, Afterのデータが無いため厳密なことは言えませんが、UX改善による効果は出ていると考えられます。
なぜなら、後発の配車アプリのほとんどは、UberのUI/UXと類似のUI/UXをしていて、これはUberのUI/UXが配車アプリの現状ベストなUXとしてベンチマークになっていると考えられるためです。
本稿のようにUberのUXがどのように改善されてきたかを辿っていくことで、他の製品やサービスのUX改善にも応用できると感じました。
今回は乗客側のUberアプリについて考えてきましたが、次回は運転手側のアプリについて考えていきます。
Uber徹底研究 -ビジネス概要編-
ーUberを「シェアリングエコノミー」や「プラットフォーマー」というバズワードで片付けるのはもったいなさすぎる。ー
現在、Uberという名前をニュースで聞かない日は無いほどになりました。しかし、「Uberの一体何がすごいの?」と聞かれて即答できるでしょうか。
最近、Uberの情報を集めていくにつれて、Uberの凄さは「シェアリングエコノミー」や「プラットフォーマー」よりもっと深いところにあると思いました。特に興味を持ったのはUberが提供するサービスの面白さや、UXの作り込み、そのサービスの裏で働いているテクノロジー・データサイエンスの部分です。
そこで、今回Uberを徹底研究しました。
これから複数回の投稿で、Uberの①ビジネス*1、②UX、③テクノロジーについて解説します。*2
その中でも本稿は①ビジネスを取り上げ、おさらいの意味も込めて簡単なところから紹介します。
- ■Uberって何?
- ■Uberの提供サービス -テクノロジーによるヒトとモノの移動-
- ■Uberが目指す方向 "Amazon of transportation"
- ■Uberの経営状況 赤字と成長
- ■Uberの企業価値評価 日産・ホンダを超える
(*以下の画像は細かい文字も含まれていますが、スマホではピンチアウトで拡大できるよう設定しています。)
■Uberって何?
ご存知の方も多いと思いますが、Uberとは米Uber Technologiesが主に配車サービスとして提供するアプリ・サービスです。このサービスは非常に分かりやすいインターフェース(UI)で使い方も簡単です。
出所:「IoTやAIが可能とする新しいモビリティサービスに関する研究会」中間整理
■Uberの提供サービス -テクノロジーによるヒトとモノの移動-
Uberが提供するサービスの中でも特に米国で注目されたのがライドシェアサービスです。ライドシェアサービスとは、一般のドライバーがタクシーの運転手のように自動車を運転し、乗客を目的地まで連れていくサービスです。Uber社は運賃の25%を手数料として受け取ります。
このサービスは、乗客がタクシーに乗りたい時に、リアルタイムでマッチングをしたり、目的地までの時間を予測したりするなどのテクノロジーに支えられており(詳細は次回以降の投稿で記載)、このテクノロジーによって非常に高いUXを実現しています。
また、Uberは世界で多様なサービスを提供しています。相乗りサービスのUberPoolや日本でもよく見かけるようになったUberEATS、宅配便サービスのUberRushなどが提供されています。これらのサービスは国によって展開の方法を変えており、各国のニーズや法律に沿ったサービスを提供しています。
以上のサービス以外にも、近年は他の企業との連携をしています。
・Masabi:公共交通機関向けモバイルチケット
・Lime:シェアスクーター
・JUMP Bikes:シェアサイクル
・Getaround:カーシェア
さらにUberは 公共交通機関と連携することにより(例えばコロラド州デンバーの地域交通局Regional Transportation District(RTD)との提携)、デンバーのユーザーは、出発地から目的地までの経路案内と公共交通機関のリアルタイム情報をUberのアプリで確認できるようになります。*3
■Uberが目指す方向 "Amazon of transportation"
Uberが実現しようとしていることはただ1つ。
全てのヒト・モノの移動を支配することだと思います。別の表現ではUberは「交通版のAmazon」を目指すとも書かれています。*4
モビリティサービスには様々なものがありますが、Uberはヒトとモノの移動をEnd-to-End(Door-to-Door)でサポートするサービスを提供していくものと考えられます。そのために、移動手段を複数の中から最適なものを選べるようにしたり、モノの移動にも力を入れたりと少しずつ移動を支配しています。(下図のサービス領域をじわじわと支配しています。)
出所:「IoTやAIが可能とする新しいモビリティサービスに関する研究会」中間整理
このようなMaaS(Mobility-as-a-Service)の領域では、どれだけ陣地を確保できるかが1つのポイントになります。現在のUberの動きに対抗するかの如く、欧州ではダイムラーとBMWが提携して、カーシェアやマルチモーダルサービス等を2社で統合してサービスを提供しています。*5
現在、世界各国でMaaSの陣取り合戦が行われていますが、自動車、IT、モビリティサービス会社、鉄道会社など様々なプレーヤーが参入しており、今後も目が離せない領域です。
それでは次にUberの経営状況について説明します。
■Uberの経営状況 赤字と成長
Uberは創業時(2009年3月)からずっと赤字です。2016年において売上が60億ドルもありながらも赤字でした。この要因はクーポンなどの販促費や、データサイエンティスト等を雇うための人件費に加え、度々問題になる訴訟への費用が嵩んでいるためと言われています。
出所:モビリティサービスによる社会変革
また、直近の財務状況は以下の通りです。
2018年10-12月期(第4四半期)決算
・売上高:30億2000万ドル(前年同期比25%増)
増収率は同社が2年前に詳しい業績を開示し始めて以降で最小
7-9月期(第3四半期)は38%
・純損益:8億6500万ドルの赤字(7-9月期は10億7000万ドルの赤字)
2018年12月期通期では、ロシアと東南アジアの不採算事業売却による特別利益を除くと赤字が約33億ドルへと、前年の45億ドルから縮小しました。*6
出所:Uber earnings: slower bookings and revenue growth for Q4 2018 — Quartz
また、グロスブッキング(運転手への賃金支払い前の売り上げ)は142億ドルと、前年同期の108億ドルから31%増加しました。しかし、伸び率は7-9月期の34%には届きませんでした。
出所:Uber earnings: slower bookings and revenue growth for Q4 2018 — Quartz
成長が鈍化しているものの、Uberには大きな期待がかかっています。それを示すUberの企業価値評価を見ていきましょう。
■Uberの企業価値評価 日産・ホンダを超える
Uberに対しては多様な評価がされ、その評価への論争も起こっていました。ニューヨーク大学の著名教授アスワス・ダモダランは従来のファイナンス理論を用いて企業価値を計算したところ、2014年6月に論文でUberの企業価値を59億ドルと発表しました。
この論文が発表される少し前に、投資家たちはUberに12億ドルを出資し、時価総額が約170億ドルの同社株式の一部を受け取っていました。ダモダランが発表した59億ドルと投資家が想定していた170億ドルでは企業価値に大きな差があります。そのため、Uberの企業価値をめぐって様々な論争が行われてきました。
しかし、どうやらこれらの評価額は低すぎたようです。
Uberはその後、サウジ政府系ファンドやソフトバンクからも出資を受け、現在では評価額は720億ドル(約8兆円)とも言われています(下図参照)。
Uberは今年2019年にIPOを行う予定であり、日産自動車、ホンダ、ソニーなどよりも時価総額の大きな企業がマーケットに登場することになります。*7
出所:Uber aims to be 'Amazon of transportation'
Uberには海外展開などまだまだ成長の余地があるため、今後どのようにUberのビジネスが展開されていくか、目が離せません。
(次回へ続きます。)
[参考文献]
プラットフォーム・レボリューション PLATFORM REVOLUTION 未知の巨大なライバルとの競争に勝つために
- 作者: ジェフリー・G・パーカー,マーシャル・W・ヴァン・アルスタイン,サンジート・ポール・チョーダリー,妹尾堅一郎,渡部典子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/08/23
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
*3:Uber、公共交通機関の情報がアプリに--米デンバーで - CNET Japan
*4:出所:Uber aims to be 'Amazon of transportation'
*5: ダイムラーとBMW、ライドシェアなど5分野で合弁 | ロイター
【SDGs】フードロスをテクノロジーで解決できるか? -世界の膨大な食品ロスに挑む-
問題です。
1. 日本全体で1日に出る食品廃棄量はどれくらいでしょうか。
A. トラック10台分
B. トラック100台分
C. トラック1000台分
2. 日本で年間に食品廃棄処理にかかる費用はいくらでしょうか。
A. 20億円
B. 200億円
C. 2000億円
・回答
じつは、A,B,Cどれも不正解です。
日本全体で1日に出る食品廃棄量はトラック1770台分、
日本の年間の食品廃棄処理費用は2兆円にのぼります。
(出典:消費者庁 食品ロス削減関係参考資料)
小さい頃、よく食べ物を残さず食べなさい、と家庭や学校で言われた方も多いのではないでしょうか。現在、売れ残りや食べ残し、期限切れ食品など本来は食べることができたはずの食品が廃棄されるフードロス(食品ロス)が注目されています。
最初の問題に対する回答の数値からお分かりいただけるように、フードロスは非常に大きな問題になっています。 世界に目を向けると、世界全体のフードロスは生産される全食糧の3分の1~2分の1になるとも言われています。
(出典:Global Food Loss and Food Waste, Food Waste: Half Of All Food Ends Up Thrown Away)
具体的には毎年16億トンもの食品が廃棄され、その額は1.2兆ドル(約132兆円)にのぼります。
(出典:Food and Agriculture Organization of the United Nations, Global Food Losses and Food Waste, 2011; FAOSTAT database; BCG FLOW model. 2015 findings, in 2015 dollars.)
フードロスは食品の生産から消費までの各段階で起こっています。以下のグラフでは食品の廃棄量とその時の金額をバリューチェーンに沿って整理されています。
出典:TACKLING THE 1.6-BILLION-TON FOOD LOSS AND WASTE CRISIS
フードロスの量として多いのは「生産」の段階(グラフ上段)で、金額として多いのは「消費」の段階(グラフ下段)です。
*その他、フードロスの具体的な問題はこちらのwikiに良くまとまっているので、ご参考まで
欧州では、このような実情からEC委員会を中心に、食品廃棄物削減を含む「資源効率化計画」を策定し、また、欧州議会では、2014年を「ヨーロッパ反食品廃棄年」と位置づけ、2025年までに食品廃棄物を半減するとともに廃棄物の発生抑制に向けた具体的措置をEC委員会とEU諸国に要請する決議を採択しています。OECD(経済協力開発機構)では食品廃棄に関するデータの収集と各国の比較を行い、政策提言に結び付けることを目的に分析作業が進められています。
アメリカでは、ReFEDという団体がフードロスを20%減らすロードマップを発表しました。その中で、アメリカのフードロスを20%減らすことによる正味の経済的価値は1000億ドル(約11兆円)であると予測されています。
出典: A ROADMAP TO REDUCE U.S. FOOD WASTE BY 20 PERCENT
また、経済的価値を具体的に収益・コスト分析したところ、以下のグラフでは、フードロス削減の啓蒙活動をするのが最も良いと書かれています。啓蒙活動は日本でも行われていますが、下記のランキングで3位に入っている「分析」はあまり行われていません。
出典: A ROADMAP TO REDUCE U.S. FOOD WASTE BY 20 PERCENT
日本でのフードロス対策は啓蒙活動がメインで、テクノロジー目線・アナリティクス目線での施策が非常に少ないです。
(参考:消費者庁における食品ロス削減の取組 一部、経済産業省主導の取り組みもありました)
また、上記のグラフでは啓蒙活動にはコストがあまりかからない書き方をされていますが、実際には人件費等の多くの出費があるかと思います。
このようなフードロスに対して、テクノロジーの力によって何かできないかと考えました。今回は特にソフトウェアの力を活用して、実現可能性が高いと考えられる以下の3つについて紹介していきます。
・需要予測
・食品販売最適化
・あまりものマッチング
■需要予測
こちらは、すでにスシローが面白い取り組みをしています。
回転寿司最大手の「スシロー」がデータ分析で成果を上げている。店舗に「回転すし総合管理システム」を導入し、1分後と 15 分後に必要な握りネタと数を常に予測。店長の勘と経験に IT(情報技術)の力を加味し、食べたい握り寿司をタイムリーに提供する。システムの導入で、回転して時間が経った皿が減り、廃棄量は4分の1ほどになった。(出典: スシロー、ビッグデータ分析し寿司流す 廃棄量 75%減)
素晴らしい成果が既に出ています。
ただ、大企業のように、1つの基幹システムを導入して、それを全店舗で使用できれば良いですが、多くの中小企業の場合、なかなか需要予測システムまで作り上げるのは難しいです。ここがまだ手付かずであるため、個人的に需要予測システムを開発して、ほぼ無料で簡単に需要予測ができるようにしたいです。多くの方に使ってもらえるようなシステムを作りたいと考えています。
個人で開発した需要予測サービスによって、日本で1%でも食品廃棄費用を減らすことができれば、年間200億円もコストカットができます。需要予測は単に、飲食店などのコストを最適化するだけでなく、食品の生産から配送、管理、消費、廃棄までのトータルコスト(Life Time Cost)を削減できるのです。このLife Time Costの削減は、限りある資源を最適に使用する観点で、社会にとって非常に重要だと考えています。今後は自分でも実際に手を動かし、Life Time Costを考慮したサービス開発を行っていきます。
■食品販売最適化
スーパーやコンビニに行ったときに、陳列している商品をゴソゴソとかき分け、消費期限の長い商品を探している人を見たことはないでしょうか。もしくは自分もやっている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。少なくとも僕はしたことがあります笑。
このような行動は、個人としては非常に合理的(同じ金額で商品を購入するのであれば長持ちする方を買いたい)なのですが、社会全体で考えるとフードロスにつながるため合理的ではありません。
そこで、最近実証実験されているのが、消費期限が近い食品を購入すると、その人にポイントを還元する方法です。
店頭に並ぶ消費期限が近づいた食品を「LINE Pay」で支払うと、LINEポイントが上乗せして付与されます。さらに、食品の消費期限が近づくとLINEで「食品購入時のポイントが上がった」という通知が送られる仕組みになっているとのことです。LINEポイントは1ポイント1円で「LINE Pay」の残高として利用することが可能です。この仕組みが実現すれば「LINE Pay」の利便性がさらに向上するほか、売れ残った食品の廃棄の削減や業務の効率化へとつながっていくことでしょう。
(出典:「LINE Pay」で消費期限が近い食品のポイントを高還元!経済産業省が食品ロス対策の実証実験実施へ)
これにより、例えばスーパーで陳列している商品の中から、わざわざ賞味期限の長いものが取り出されていく光景が減っていき、フードロスの削減につながります。さらに、このポイント還元は実質的なダイナミックプライシングになるため、商品の価格弾力性の調査などにデータを活用でき、店のマーケティングミックス(Product, Price, Place, Promotion)改善につながります。
また、アメリカで面白い事例があります。それは、米ウィノウ・ソリューションズ社が提供するタブレット用アプリとスマートスケール(秤)を活用した事例です。
ユーザーは、例えばレストランの厨房のゴミ箱にスマートスケールを取り付け、食材を廃棄するごとにタブレットのスクリーンで種類を選択すると、スマートスケールが食材の重さとコストを自動的に計測し、データを記録します。蓄積されたデータはクラウドソフトウェアで解析され、分析レポートが毎日配信されます。現場で働く人たちから経営者まですべての関係者が、何がどれだけ無駄になり、その傾向や損失金額まで把握できることで、具体的な対策につながります。例えば、頻繁に食べ残しが記録されたステーキは、サイズダウンし、ほとんど手を付けられないオートミールは 、取り皿の大きさを変えてみる、といった具合です。同社アプリを利用している企業では、食品廃棄量を1年間で平均50%削減、 食材調達費を3〜8%削減することに成功しているそうです。 また、こうした分析と実践を通じて、食品廃棄に対する経営者や社員の意識も大きく変わります。
同社アプリを通じて、これまでに世界で365万食が節約されました。 これは約370万ポンド(約5億3650万円)に相当し、食品削減だけでなく、企業にとって経費削減や収益性の向上につながっています。また、無駄な流通を省くことで、約6200トンのCO2 排出量が削減されたということです。
(出典: 食品ロスが半減でレストランもびっくり! 進化するアプリが食品廃棄を解決へ)
今後は、スーパーや飲食店が、いかに効率よくフードロス対策のPDCAサイクルを回せるかが重要だと思います。そのためにも食品や顧客のデータの収集や、そのデータ収集の自動化が求められてくると思います。例えば、ゴミ箱のふたにカメラを設定しておき、廃棄される食品を自動的に画像解析し、何がいつ、どれだけ廃棄されたかを自動解析することで、今後の食品発注やメニューの改善ができるようになります。
テクノロジーの力によって食品の販売を最適化できる余地はまだまだあるので、今後さらなる改善を期待しています。
■あまりものマッチング
あまった食品をそのまま捨てるのに、心が痛む方も多いのではないでしょうか。食品を捨てるのは本当に最終手段であり、捨てる以前にまだまだできることはたくさんあります。
例えば、Reduce GOが提供するサービスでは、レストラン、飲食・小売店で余ってしまいそうな食品を、月額定額で受け取ることができます。
また、TABETEのように余ってしまいそうな食品を1品単位で購入できるサービスもあります。
家庭の場合はどうでしょうか。冷蔵庫に買っておいた食品を保存しておいたものの食べきれなかった、という経験はないでしょうか。
このような時に、冷蔵庫に入っている食品から、個人の好みに合った料理をおすすめしてくれると嬉しいものです。
今では、余りものの食材からレシピを提案してくれるアプリ"Amarimo"があります。
このアプリでは、AIが好みを覚えてくれるため、アプリを使用するにつれて好みの料理をレコメンドしてくれるようになるでしょう。
今後はカメラで冷蔵庫内の食品を自動認識して、その食品から個人の好みに合った料理を自動的に提案してくれると、よりスムーズに食品を利用できるようになるかと思います。あまりものの食品を調理する方法を考えるには意志力が必要になり、そこで食品の調理をやめてしまう人もいるため、人に意志力を使わせることなく勝手に食品を消費していくように、レコメンドなどにより行動設計をすることが重要だと思います。
また、余った食品を捨てる前に、バイオメタンガスにして活用するなど食品以外の活用方法もあります。食品を廃棄するよりも、他の製品に変換する方が地球にとっても各人の財布にとっても良いものであれば、テクノロジーの力によって次々と食品の変換を進めたいものです。
■まとめ
フードロス対策として、テクノロジーを活用した需要予測、販売最適化、あまりものマッチングを考えてきました。全ての項目について言えるのは、食品のLife Time Costを下げつつ、最後まで食品が持つ価値を高めようということです。食品を廃棄するのは本当に最後の手段であり、それまでに価格を最適化したり、あまりものを活用したりするなど食品を活用できる方法はあります。
野菜などの多くの食品は工業製品などと異なり、生ものであるため商品価値が下がりやすく、ほぼリアルタイムで食品と消費者のマッチングが重要になります。ここで、食品と消費者のデータを集めて、最適化計算を行うことでフードロスの改善がまだまだできると思います。
現状の予測では今後もフードロスは増えていくとされており、2030年までには、世界でフードロスの量が年間21億トンに到達し、その額は1.5兆ドル(165兆円)になるともいわれています。(出典:TACKLING THE 1.6-BILLION-TON FOOD LOSS AND WASTE CRISIS)
フードロスに対して企業単位では、高性能かつ大規模な冷却設備に食品を貯蓄して、食品の保存期間を長くするなど様々な対策をとれるかと思います。その一方で自分自身としては、フードロスを防げるようなサービスを構築していきたいです。主題の「フードロスをテクノロジーで解決できるか?」という問いに答えるためには、様々な取り組みを試行錯誤で実行していくしかないと思います。
テクノロジーの力によって、20年後、30年後にはフードロスを少しでも減らせるよう、自分でも手を動かして、課題に取り組んでいきます。
本記事は筆者同一の以下の記事と同様の内容を記載しています。
【MaaS】自動車に0円で乗るための事業を創る -新しい広告の形とは-
■広告の掲載方法を深掘りして考える
車に広告を掲載するにあたり、問題点が2つあります。
1. 車両表面に広告を貼るにはコストがかかる(ざっと60万円)
2. 広告の変更が容易ではない(車両の広告を貼りかえる必要あり)
実は、そもそも車両の表面に広告を載せる以外にも、広告掲載方法があります。
車両の屋根にデジタルスクリーンをつけて広告を表示するのです。
この方法をとっている企業が、米「Firefly」です。
FireflyはUberやLyftの車両の屋根に広告を表示し、既に
・1ヶ月当たりのインプレッションが1.5億回を超えており、
・コンテンツが再生された時間が65万時間を超えています。
(Firefly HPより)また、Fireflyはただ単に広告を表示するだけではありません。Fireflyの取り組みをForbesでは以下のように紹介しています。
"Fireflyのスマートスクリーンは広告を表示するだけでなく、大気汚染や道路の渋滞状況などのデータを取得し、都市の環境を改善する役割も果たすことになる。Fireflyのデジタルスクリーンは、地域ごとにターゲティングした広告が配信可能で、学校の周辺でアルコールの広告を表示したりはしない。また、広告の10%をNPO団体などの公益性の高い広告にするという。さらに、地元のコーヒーショップなど、地域に根ざした小規模なビジネスを支援することも目標としている。
調査企業Zenithによると、屋外広告市場の売上は2018年に3%の成長が見込まれるという。Fireflyのデジタルスクリーンは初期費用無料で導入可能だが、週に最低40時間勤務するフルタイムのドライバーが対象になる。Gunayによると、ドライバーは平均で月に300ドルを稼げるという。"
(出所:[Forbes]ウーバーの運転手に広告収入を与える企業「Firefly」が25億円調達)
・OLED TVパネル(OLEDはiPhoneXにも採用されているディスプレイ)の平均価格は2018年には1平方メートル当たり771ドルで、2022年までに1平方メートル当たり488ドルまで下がると予想されています。これに対して、LCD(液晶) TVパネルの価格は2018年第4四半期に170〜200ドルになります。
・2018年のOLEDスマートフォンパネルは1平方メートルあたり5,844ドルの平均面積価格で販売されており、これは2022年に1平方メートルあたり3,720ドルまで減少すると予想されます。(2022年にはこれらのOLEDスマートフォンの収益の16%が折りたたみ式パネルになると考えています。)
参考:https://www.displaysupplychain.com/blog
→デジタルスクリーンを車両に設置し、デジタルコンテンツを利用することで安価に広告を表示する。(既に作成済みの画像を転用する等)
多めに見積もっても、
デジタルスクリーン+センサー+コンテンツ・デザイン作成費
で合計30万円はいかないと思います。(センサーは気温・空気汚染測定等の簡易なものを想定。コンテンツ・デザインは拘りだしたらキリがないですが。)
デジタルスクリーンを車両に乗せる方が、車両の表面を加工するわけではないので、コストが安くなると思います。
→デジタルスクリーンは広告の切り替えが容易なので、こちらの問題点はすぐに解消します。
・収益:30万円(広告収入)
・費用:12万円(カーシェア費用)+3万円(デジタルスクリーン等合計使用費用・管理費用を多めに見積り) = 15万円
・利益:15万円
これなら、仮に広告料をもっと下げたり、カーシェア費用やデジタルスクリーン費用が嵩んだりしても利益が出るのではないでしょうか。
デジタルスクリーンの費用が増えるケースとしては、センサーをネットワークに常時接続してリアルタイムでデータを送るとなると、通信費・サーバー代等も発生するため、費用が増加します。
今回はざっくりと金額計算を行ったので、実際に事業化する際にはより精緻に見積る必要があります。
■今後0円車両を実現するにあたっての考察
車両の稼働率が高い方が、より多くの人に広告を見てもらいやすいため、需要の高い場所に車両を置く必要が出てきます。既に中国のDiDiなどが行っているような、需要予測・最適配置が重要になると思います。(DiDiの具体的な取り組みやアルゴリズムについては以下の記事をご参照)
「日本は周回遅れ!? 最先端の中国AIライドシェア(DiDi)の技術に迫る」
もし仮に0円車両が多く利用され、所有されている車を含めた走行車両の台数が過剰になった場合、排気ガス量も多くなるため環境への負荷が多くなってしまいます。その際には、カーシェア車両の利用価格を0円ではなく、ダイナミックプライシングにすることで稼働台数を調整可能だと思います。ダイナミックプライシングは需給バランスを見て価格を調整していますが、需給バランス以外にも環境への負荷も考慮して価格を変動させても良いかと思います。ダイナミックプライシングでも稼働台数を抑えられない場合は、配置車両数を減らすなどの手段が必要になります。
現在、1ヶ月当たりの広告料を約30万円としていますが、看板広告と比較すると30万円は高いです。仮に、広告料を月に15万円程度にすると収支がトントンになります。
車の上にデジタルスクリーンを乗せるため、バッテリーのチャージ方法は工夫する必要があります。コンセントにつないでチャージする方法が一般的ですが、車両のバッテリーからチャージできたり、太陽光パネルを設置して充電するなど多様な方法が考えられます。将来的にはEVの普及率も高まるため、車両から直接電気をもらいデジタルスクリーンのバッテリーをチャージするのが主流になると思います。
今後、運転席に人がいなくても良いレベル5の完全自動運転車が登場した場合、人件費がかからないため、カーシェアでなくとも0円でタクシーに乗って移動することも可能になるかもしれません。逆にレベル4までは、運転席に人がいなければならないため人件費がカットできず、現状のタクシーとコスト構造はほとんど変わらないでしょう。(高機能な車両のコストがかかる分、費用はより高くなると思います。)
レベル5の自動運転車の登場はまだまだ先かつ、それほどシェアも大きくなりづらいと考え、自動運転タクシーが事業をスタートさせるのは10年以上先になるかもしれません。(下記参照。様々な企業から自動運転車の普及予測が出ていますが、直近のレポートを参照しています。)出所:PwC Strategy& デジタル戦略レポート 2018
■さいごに
この事業で0円になる車両を”Zero fee car(ZFC)”と呼びたいと思います。
繰り返しになりますが、今まで行った計算は概算であるため、今後はより長期かつ細かく試算をする必要があります。(もちろん、他にもかかる費用があるなど突っ込むところはあるかと思いますが、細かい部分はまさに今、検討中です。)
【MaaS】自動車に0円で乗るための事業を創る
現在では多くの人が車を所有していますが、当然のように車は数百万円かかります。車は高価なので所有することは考えず、タクシーやカーシェアにおいて車に0円で乗る方法を考えていきます。
■どん兵衛タクシーの先行事例
タクシー事業者にとっては、契約スポンサーとMOVの双方から広告宣伝費を得られる。つまり、仮に乗車料金分が契約スポンサー収入とほぼ同じならば、MOVからの収入がタクシー事業者にとっての利益となる。さらに、新しい顧客層へのタクシー利用を促進することで顧客数が伸びる可能性がある。
■カーシェアのコスト構造を考える
2018年の段階ではコストが1ヶ月約9.4万円であり、A.T.カーニーの分析結果よりもコストが2万円以上低くなっています。
■タクシーとカーシェアのコスト比較
・タクシーのコスト:少なめに見積もって約43万円
・カーシェアのコスト:約12万円(高い見積りのA.T.カーニーの試算を採用)
これより、タクシーよりもカーシェアの方がコストを1/3以下に抑えることができそうです。タイムズカープラスの現状のコストを目安にするならタクシーよりもコストを1/4以下にできます。
車両は新車ではなく、走行距離の少ない中古車を使うことで安く抑えられます。ざっと120万円まで減らすと、年間の減価償却費が40万円になります。
(なお、中古車の場合はメンテナンスコストが新車よりも少しかさむことが考えられます。)
■カーシェアコストを広告で賄えるか
・カーシェアのコストは1台当たり12万円/月
・東京23区内でのカーシェア
を想定して話を続けます。
車は駐車場に止まっている間も、看板のように広告機能が一応あるので、もっと広告料は高くても良いかもしれませんが、シミュレーションでは低めに設定してみます。
(例:https://dessin.co.jp/seibutaxi/seibutaxi.html)
凝ったデザイン・表面加工・広告掲載終了後の広告除去作業も考えて、さらに倍の約60万円かかるとし、これを1年で支払うとすると1ヶ月当たり約5万円のコスト増になります。ここで1台・1ヶ月の推定収支を計算します。
・収益:30万円(広告収入)
・費用:12万円+5万円(1年間のみ) = 17万円
・利益:13万円
広告収入の見積もりはもっと減らしても大丈夫そうですね。
■今後0円車両を実現するにあたっての考察
■さいごに
2018年の「超」振り返り
2018年ももう終わりに近づいてきました。
今回は2018年の振り返りをしていきたいと思います。この振り返りをする目的は3つあります。
1. 2018年に起こったことをログとして残しておくため
2. そのログ情報を整理して、示唆を得るため
3. その示唆を基に2019年はどのようなアクションを取るべきかを検討するため(こちら別途実施)
今までの冬休みはインプットに多くの時間を割いていたので、今年は振り返りとアウトプットに時間を割こうと考え、以上のような目的を設定しました。
そして、振り返りのための時間をがっつり取り、自分研究をしてみました。
2018年のまとめ
振り返り方法は後述しますが、先に今年の超要約を書いておきたいと思います。
自分なりに振り返ってみた結果、今年を漢字一文字で表すと「心」でした。仕事で様々な状況に直面した時に(あまり詳しいことは書けませんが)、自分の「心」について考察することが多かったためです。自分はどんな時に頑張れるのか、楽しめるのか、どんな時に傷つき、どのような方法で回復するのかを具体的にログを取って考えてきました。しんどい状況もたくさんありましたが、その時にどうやってその状況を打破したのかを具体的な状況ともに残すことができました。こうして自分の取り扱い説明書を自分で筆を執って少しずつ書くことができたと思っています。
人生誰しも山あり谷ありだと思いますが、それは自分の「心」が世界をどう捉えるかによって、人生の途中に山が見えるのが谷が見えるのか、実は平たんな道が続いているのか、見え方が変わってくると思います。下記の後半では、心の要素の中でも重要な「幸福」について考え、その幸福の高め方を内部要因・外部要因に分けて考えていきます。
最後に、振り返った結果のポイントをまとめて、2019年につなげていきたいと思います。
*今回は学術的な「幸福論」について語るのではなく、あくまで個人の経験から積み上げて、幸福について考えて、2018年の回顧録として残します。
振り返り方法・内容
振り返りといっても方法はたくさんあると思いますが、今回はあくまで自分が設定した目的に沿った振り返り方法を紹介します。個人のやり方なのでご参考まで。
振り返りのインプット
そもそも、振り返るためには、そのもととなる情報が必要です。年末の今、なんとなくこんなことがあったなぁと思いだす方法もあるかと思いますが、その場合だと当時の状況や自分が考えていたことの解像度が低くなります。そのため、その当時の成果物やメモや写真、動画などログとして残っているものを見ながら、振り返ると具体的な情報に基づいた、解像度の高い振り返りができると思います。
僕の場合は忘れっぽいので、毎日起こったことや、考えたことをノートやメモ帳やGoogleDocsなどに書き溜めていました。
特に、今年の振り返りで有効だったのが、STAR PLANNERというノートです。
このノートの特徴はこちらに書いてありますが、特に良かったのが以下の3点です。
1. 毎日できたことを書いたこと
2. 毎日改善点を書いたこと
3. 月単位でその月の気づきやできたこと、習慣化できたことなどを整理できたこと
1と2は毎日2分だけでも時間があれば書けるにも関わらず、振り返った時の効果が大きかったのでかなりお勧めです。毎日2分なら、地球上の誰もが捻出できると思います。特に1のできたことを書くのは、端的に言うと自信につながります。どんな些細なことでも良いのでできたことを書いていると、振り返ってみたときに「自分はこんなことができるようになったのか」とポジティブな気持ちになります。逆に何もできた気になっていないと不安になるため、毎日何かしらできたことを書くのはかなりお勧めです。従来から「できたことノート」で自信がついた人が多いように、この方法は非常に普遍性があると思います。
2.の改善点を書くのは、自分ができることを増やしていき、もっと成長するために有効なログです。
理想的には2で書いた改善点を、後日「できたこと」に書けるまでに実行できると良いと思います。
そして、3の「月単位で整理」というのも有効でした。というのもなかなか年末に振り返るときに、1日単位で振り返っていくと時間がかかるためです。1ヶ月単位で整理したものがあると年末の時にも振り返りやすく、かつ1ヶ月単位で整理していた当時にも頭の整理がされていくので、必要な情報が精錬されると思います。2019年も1ヶ月単位の振り返りは実施していきます。
情報の整理
これまで、振り返りのためにインプットを用意してきました。これらの情報を基に2018年の整理をしていきます。そのために設定したフレームワークが以下のものです。
まず、これまでのインプットで既に分かっている以下3つを横軸に並べます。
①注力したこと(仕事でしたことなど)
②できたこと
③改善点
そして、縦軸には
1. What
2. Why
3. How (So what)
を並べます。
1. Whatの部分は既存インプットのコピーになると思いますが、
ここで重要なのはWhyとHow(So what)の部分です。
「できたこと」に対しては、Whyを自分に問いかけ、なぜそれができたのかを考えます。この問いかけに対して、自分が答えることで再現性の高い「できたこと」をつくれます。さらに、Whyを探求すると自分が思っていた「できたこと」以外にも汎用的に「できたこと」が生まれてくるかもしれません。例えば、
What: Courseraを受講し始めて、データサイエンスの学習に継続して取り組めた。さらにCourseraの学習方法の良さ(インプットした後にすぐにアウトプットをして理解度が即座に分かる)に気づけた。
Why: 上司が日々忙しいにも関わらず、Courseraを受講していることを知り、自分もやらないと、という気持ちになれたから。
→自分よりも先に進んでいる誰かの存在がやる気につながるのかも!人と一緒に勉強すると継続できるかも!
といったことが考えられます。
Howは特に改善点で使用します。具体的には、自分が書いた改善点に対して、まずWhyで、なぜそれができなかったのか原因を考え、その原因に対して、どうすれば解決するのかを自分に問いかけます。例えば、
What: 自分の考え・意見を否定されたときに、何も切り返せないことがあった。
Why: 自分の考えを自分でも多面的に検証できていないため。セルフレビューに抜け漏れのある可能性がある。また、指摘した人に対してもすぐにWhyを聞くこと(質問の意図など)を出来ていなかったから。
How(So what): セルフレビューの時間に自分の考えや説明内容に対して、自分でも質問を投げかける。自分の説明に対して「なぜ?」「それで?」と問いかけ、それに対する必要を事前に用意しておく。相手に否定されることを事前に想定し、すぐに切り返せるように反論を準備しておく。具体的なイメージとしては、自分が製品のプレスリリースをする時に、記者からの想定質問を用意しておき、それに対して答える。
といったことが考えられます。そして得られた解決策を実行することで、また新しい「できたこと」につながります。
振り返りのアウトプット
以上のように振り返って整理してみた結果(サンプル)を以下に記載します。
(職務経歴書に書くような、具体的に仕事で何をしたかについては割愛させていただきます。)
振り返りで得られた示唆
色々と書いてきましたが、2018年に重要だと思ったことをシンプルに整理したいと思います。
本稿の上部で、自分にとっての今年の漢字は「心」だという話をしました。
この心の中でもウエイトを占めると考えられる「幸福」について考えてみました。
まず幸福度を高めるため(文言確認)には、
・ネガティブな感情を下げる
・ポジティブな感情を高める
の2種類しかありません。
これら2種類に対して、要因が外部要因か内部要因かで起こっている状況を整理しました。
以下4つの象限に分けて考えてみました。
・ネガティブ減×外部要因
・ポジティブ増×外部要因
・ネガティブ減×内部要因
・ポジティブ増×内部要因
もちろん、マズローの欲求段階説のような整理の仕方もありますが、
今回の目的はあくまで自分でも気づいていなかった観点を得るためであるので、上記のような整理にしました。
*実際に、この分類を整理して、後述の自分でも気づいていなかった観点を発見できたので良かったと思っています。
**1つ1つ何がどの象限に入っていなければならないという厳密なMECEは考えず、自分が2018年の段階で素直にどう感じているか、どう考えているかを優先して考えました。
このようにして考えた結果、以下の2つのポイントに気づきました。
1. ネガティブ減×内部要因の領域で、自分が持っている手数が少ない
各象限の具体的なアクションを書いていたところ、ネガティブ減×内部要因の部分だけ筆が止まりました。自分が持っているアクションの手数が少なかったのです。このネガティブ減×内部要因の領域は、自分が精神的なダメージを受けたときに、どう回復するかがテーマです。少し前に流行ったレジリエンスというところでしょうか。僕が精神的なダメージを受けたときに実施していたのは、自分に「大丈夫、OK」と言い聞かせることです。すこしでも自分を安定させ、次の行動に進めるように積極的に自分にOKと言ってきました。しかし、それ以外の手段はあまり思い浮かばず、もっと自分を安定にする手段が必要だと思い、少し調べたり考えたりしました。
例えば、以下いくつか列挙します。
- 自分の気持ちや考えを全て紙に書き出す
書いた後には、その気持ちや考えをグルーピングして、それらが出てきた原因を考えます。その原因を深堀して、最終的に絞り込んだ原因に対して、何をするべきか対処法を、高速でリストアップしていきます。この時には、速さと量が重要です。あまり考え込むと、それがまた不安を生み出すので。
また、自分がこれからしたいことを紙に書き出すと、未来にどんな楽しみが待っているかを考え、自分への期待が高まります。 - 運動する
ランニングには抗うつ効果がある。以下の本を参考にしました。一言でいうと「ストレスを感じにくくするためには運動しましょう」ということです。"定期的に運動を続けていると、運動以外のことが原因のストレスをかかえているときでも、コルチゾール(ストレス物質)の分泌量はわずかしか上がらなくなっていく。運動によるものでも仕事に関わるものでも、ストレスに対する反応は、身体が運動によって鍛えられるにしたがって徐々に抑えられていくのだ。つまり、運動がストレスに対して過剰に反応しないように身体をしつけるのである。単に運動をしたために『全般的にいくらか気分がよくなっている』だけでなく、身体を活発に動かしたことでストレスに対する抵抗力が高まるのである。"
-
人と話す
こちらによると、自分の体験を言葉で表現するのが得意な人は幸福感が高いそうです。 -
旅行に行く
日常から離れて、新しい場所で新しい刺激を得る、もしくはリラックスする。 -
自然に触れる
こちらによると、自然界にある「ゆらぎ」が疲労の予防や改善に効果があることが明らかになっているそうです。
"「ゆらぎ」とは、光や音などの物理量が平均値を中心に変動する現象のことです。そよ風、木洩れ日、せせらぎ、さざ波のように、自然界のあらゆる現象は「ゆらぎ」そのもので構成されています。" - 寝る
これが一番効果がありそうです。
2. 四つの象限のうち、複数の象限を重ねたアクションが存在する
マトリクスを整理していく中で、必ずしもどれか1つの象限だけに存在するとは限らないアクションが存在するのことに気が付きました。例えば、「飲食店の需要予測」を考えます。単純に需要予測だけを考えると、必要分の発注だけが可能になり、余計な納入コストが減るメリットがあります。野菜を入荷したときに、不要な入荷コストが減ったり、さらには管理コスト・廃棄コストも減ります。この状態では、上述の4つの象限の内、ネガティブ減×外部要因の象限のみを満たしていますが、実は他の観点でもメリットがあるのです。それは、需要予測によって廃棄物を減らすことで、社会全体のコスト削減、環境負荷軽減を実現することです。そんなの何となく知っている、という方も多いのではないでしょうか。しかし、もう少し現実の数値を見ると印象が変わると思います。
まず、食品ロスについて以下のスライドを参照ください。
出所:消費者庁 食品ロス削減関係参考資料
個人的に衝撃的だったのが、廃棄物の処理に年間2兆円かかっていることです。2兆円です。例えば、これを需要予測で仮にたった1%でも削減できれば、20億円のコストカットに加え、CO2などの温室効果ガスの排出削減にもつながります。1%というと僅かに見えますが、実際の金額を見ると非常に大きなインパクトがあると思います。
このような社会全体のコスト削減、環境負荷軽減を実現できると考えると、4象限の内、個人的にはポジティブ増×内部要因のマトリクスも満たすと思います。
昔ながらにして日本には三方よしの文化があります。上記の社会的コストの削減と環境負荷軽減は日本の文化的な文脈にも沿った、幸福の在り方ではないかと思います。
*食品ロスについて後日詳細を書きたいと思っており、現在リサーチ中です。需要予測は僕の専門分野であり、まさに今需要予測を多くの方に活用してもらえる方法を検討中です。
みんなで話そう
今年を振り返ってみた結果を友達と話すと、より理解が深まったり自分では気づけなかった視点を得られます。
以前から、以下のようにグループで振り返る方法もありますので、ご参考まで。
実際に僕が友達と2018年の振り返りをした時も、「なぜその選択をしたのか」などの質問をもらい、改めて自分のことについて考えるきっかけを得られました。さらに、友達のアクションやその理由、印象に残ったことなどを聞いていると、自分とは違ったものの見方や選好性などを知ることができ、一人では発見できない視座・視点を得られました。
年始には、「2019年の目標」をテーマとして皆で集まって話します。2018年を振り返った結果・示唆に基づいて、2019年の目標を定めていきたいと思います。
*今回の投稿では、2018年を振り返った結果までですが、2019年の具体的なアクションについては現在整理中で実際に行動に移せるような現実的なものを作成しています。
さいごに 振り返りをしてよかったこと
今回、2018年の12月はインプットの時間を減らし、振り返りの時間を多くとることにしました。時間は常にトレードオフなので、インプットの時間を減らした分、新しい知識の獲得量は減ったと思います。しかし、それ以上に振り返りをしたことで、自分にとって2018年があった意味を確認することができ、何ができて、何がダメだったのかを冷静に分析できたと思います。
振り返りをすることで、自分が世界のどんな文脈上に生きていて、どんな意味を持って生活しているのか、人生の意味づくりができたのではないかと思っています。今まで何となく過ごしていた単位時間のカプセルに、高速で意味を詰め込んで自分だけのタイムカプセルを作っているかのような感覚です。人間を客観的に、生物としてみるならば、人間が生きる意味はないと言われていますが、個人として人間、自分を考えると、生きた意味を創り、残していくことは非常に重要であると考えています。自分が生きた足跡を社会に残すために、偉業とまではいわなくても自分がしたことをノートなどにログをとり、残していくことには自分が生きた意味を残す大切な作業になるかと思います。何が正解かわからない現代において、自分の信念、意味を残していくことがこれからはより重要になっていくと考えています。