果たして時間は無駄だったのか


一緒にいるだけで訳もなく涙が出たり、会えなければポッカリ穴が空いた気持ちになったり、体温を感じるだけで何よりも満たされてまた泣きそうになって、そんな幸せな思い出だけを集めていつまでも生きていられそうだって思った。


そんなに長くない約25年間の人生の中で、初めて自分の全部で好きだった人。


そんな彼と今日、さっき、お別れしました。


2年程前にも一度、彼から別れようと切り出されたことがあった。


理由を聞けば「俺はこの先だれとも結婚するつもりがない。お前のことは好きだけど、将来を約束できないのに縛っておくことはできない」なんて安いドラマみたいなことを言った。


そんなのを別れの理由にするなんてズルいと思ったし、本当かどうか、他に何か理由があったのかは私にはわからない。

だけど私もズルいので、先のことなんて見ていないふりをして「今は好きだから一緒にいたい、それじゃダメなのかな」と散々泣いて彼を引き止めた。

「いつか」別れることになってもいいから「今は」一緒にいたいと思ったから。


彼はそんな私を最終的に「仕方ないなあ」と抱きしめて付き合いを続けることになったけど、その後から今日までずっと私は頭の片隅に彼のその言葉があって、いずれ来るだろう「いつか」に怯えながら過ごしていたように思う。


これを話すと友達や家族はみんな「その歳でそんな時間の無駄な関係は辞めたほうがいい」と言ったし、私も心底そう思ったけど、でも離れられなかったのだ。


だからわたしはあの人と別れることになったら何も手につかなくなって泣いて泣き尽くして仕事も行けずボロボロになるんだろうと思っていたけれど、今こうして家に帰ってきてコンタクトを外して、化粧を落として、明日の仕事のために寝なくちゃと思いながらこんなブログまで書いている。


あの人はとても自由な人だ。

少し前から、きっと新しくやりたいことを見つけたんだろうなっていうのは感じていて、今回の別れもそれが理由だった。


彼は最後まで、私のことを嫌いになったとは言わずごめんと謝っていた。


別れる理由を聞いて一番最初に「本当は他にいい人ができたとか、私に飽きたとか、そんなことなんじゃないの」と思ってしまった自分に驚いた。


あんなに好きで、5年も一緒にいて、それでも私は未だに彼のことを信用できずにいたのだ。


本当の理由が他にあるのかどうかはやっぱりわからないけれど、最後にじゃあねと別れるとき、私は5年間で初めて彼が涙を流すところを見た。


「今までありがとう」なんてこれまたバカみたいに安い言葉をLINEで送ってみたけれど、まだ返事はない。


友達の延長にセックスがあるような、「好き」も「愛してる」も言い合わない心地よい関係だったけど、果たしてこの20代前半を丸ごと費やした5年間は、本当に周りが言うように無駄な時間だったのだろうか。


その答えを探すために、私はこの先また恋をしたいと思う。